30分デート








「村長!30分だけ商店街の方へ行っても大丈夫ですか?」

しずえが時計をちらちらと見ながらすこし言いづらそうに自分の気持ちを伝えた。村長は、首をかしげながらもそれを承諾し、彼女が嬉しそうに出ていくのを見守った。いつも働いている彼女にこれくらいの事はしてあげないとねと思いつつ彼女が帰ってくるまでに仕事を終わらせなければと、必死に目の前の書類の文字をつづらせた。


しずえは、リンリンと髪飾りの鈴を鳴らしながら商店街へ向かった。まめつぶデパートの前まで行くとあたりを見回した。


(あ、いた‥!)


山吹色の帽子と黒縁のメガネをかけた白い犬、DJ K.K.こととたけけが本を読みながら待っていた。しずえは、慌てて傍に駆け寄ると、鈴の音色を聞きつけたのか、彼はこちらを振り返った。


「やぁ、しずえ」

「こんばんは、とたけけさん!待たせちゃいましたか?」

「ううん、僕も今来たところだよ」


とたけけは呼んでいた本を閉じてしまうとしずえに向かって手を差し出した。


「じゃぁ、今日は博物館の方へ行こうか?」

「はい!」

しずえは、頬を赤く染めながら相手の手に自分の手を重ねた。



今日は、二人にとって久々のデートの日だった。毎日のように仕事がある二人は、休みも取れないまま過ごすことが多かった。その為、二人はたとえ少しの時間でも会いたいという考えで、彼の出勤する30分前の間、一緒にデートをするということだった。 一か月に数回だけのデートだが、二人はそれだけで満足だった。



博物館にたどり着くとふーたに挨拶をし、今日は水族館の方へ向かった。薄暗い部屋は、青いライトで水槽を照らされている。ゆらゆらを揺れる海藻の間を魚や海の幸がのんびりと泳いでいた。


「また、、魚の種類が増えたんじゃないかな?」

「はい、村長さんや村民の皆さんが力を合わせてここに寄贈していますから」

「そうか…ふふ、いつかすべての種類がそろうといいよね」

「はい!」

しずえは、水槽に近づいてじっと魚たちの泳ぐ姿を見ていた。そして、その姿をとたけけは優しい眼で見ていた。はしゃいでいる彼女はいつもの大人びた姿はなく本当に少女のようで微笑ましかった。やがて、十分楽しんだのか再び彼の方へと目線を向けた


「とたけけさん、あっちの方も見に行きましょう?」

「うん、そうだね」


とたけけは、クスッと笑いながら彼女の手を取り水族館の中を歩いた。フータの描いた説明を見ながら二人は新しい知識を集め、面白い魚や怖い鮫などを見て声を上げ、備え付けの椅子で少し休みながらたのしい時間を過ごした。しかし、その30分という時間もあとわずかになると二人は博物館を出てクラブ444のほうへ向かった。


「名残惜しいけど、今日のデートはここまでだね」

「はい…」


しずえは、笑みを浮かべながらもしょんぼりしていた。また次会えるのは一週間以上の間がある。寂しいと思うがそのくらいは我慢しなければと頭を切り替えた時だった。 自分の鼻にあいての鼻が軽く当たるのを感じた。しずえは、顔を赤くしながら目をぱちくりさせるとそっと相手の方を見た。とたけけは、帽子のすばをつまみちょっとだけ降ろすとまた顔を上げた。


「いってきます、しずえ。また電話するよ」

「…はい、とたけけさん。いってらっしゃい」


しずえの顔には自然を笑みが広がり、相手がクラブの中へ入っていくのを見届けると軽い足取りで自分の仕事場へと戻っていったのだ。



村長は、そんな状態で帰ってきたしずえを見て、何かを感じ取ったのか、約束より10分遅れたことを問いただすことはせず、彼女ののろけ話を聞こうと思い、先ほど買ってきた少し冷めたコーヒーを持ち彼女の元へと向かった



FIN










LIN様より頂きました!
LIN様のサイトが開設から2周年と言うことで、リクエスト企画に参加させて頂きました。
素敵なほのぼのとたしずー!読みながら想像してはニヤニヤしてしまいましたっ。
お互い仕事が忙しいでしょうが、だからこそこの一時を凄く大事にするだろうなぁと読んでて思いました。
ラストのちゅーも時めいてしまいました。とたしず結婚しろ!
LIN様、有難うございました!





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