辺りから聴こえる笛や太鼓の音に心が踊る。
提灯の灯りが優しく夜を照らし、屋台からは食欲がそそるいい匂い。
そう、今日は、キノコ王国の夏祭りの日。なので、いつも大冒険や大乱闘しているみんなは一時休戦。羽を休めるためにキノコ王国に集合してお祭りを楽しむ約束をしていた。

「すまない、待たせたな」

艶やかに彩られた浴衣に身を包む姫たちのもとに現れたのは

「サムス!?」

ピーチとゼルダはサムスの格好を見て声をあげた。

「何だ?私の顔に何かついているのか?」

口に手をあて、驚きの顔をする姫たちにサムスは「?」マークがついている。

「サムス…その格好は、あまりにもいつも通りで、その…」

ピーチが言葉を濁す。

サムスの格好はいつものゼロスーツ姿。今にも戦場に飛び出していきそうな姿は、夏祭りの雰囲気には少々味気ない。

「浴衣は着てこなかったのですね…」

ゼルダの残念そうな声。

「私は別に…このままでいいと思うが」

「ぜんっぜん良くなぁいっ!」

「ピ、ピーチ姫?」

「今なら間に合うわ。キノコ城で浴衣に着替えましょ」

ピーチが指をパッチンしたら、豪華なリムジンが飛んでくる。
窓から「どちらまで?」とキノピオが顔を出すと、「ちょっと、キノコ城まで」とピーチがウインクした。

サムス・アランは女性である前に一人の戦士だ。 賞金稼ぎで食べている自分の居場所は戦場で、今日を生き抜くことばかりが脳内の大半を占めていた。 だから、女性らしいお洒落だとか装いのことはさっぱりわからない。それが喜びや楽しみであることも知らない。なぜ、姫達がこうも着飾ることにご執心なのかも理解できなかった。

ピーチのクローゼットの中には色とりどりのドレスがたくさん。
その中の一角に、綺麗な柄の浴衣が並べられている。彼女はそれを全て出して並べてみた。

「さぁて、サムスを可愛く変身させるわよ」

ピーチがどれにしようかしら、と選び始める。

「赤、藤色も似合いますね。でもやっぱりここは・・・・」

姫達がチョイスしたのは、空色が眩しい桜柄の浴衣にブルーデイジーの髪飾り。どちらのサムスのレモン色の髪に似合う色だ。

「サムス、浴衣は自分で着られて?」

「すまないゼルダ。着たことがないのだ」

「そう。それなら着付けして差し上げますよ」

ゼルダは慣れた手つきで浴衣の位置を調節し、帯をしめる。
品格のあるその手の動きにサムスは思わず「おぉ・・・!」と感嘆の声をあげた。
その女性らしい仕草が素直にうらやましいと思う。そして、自分に欠けているのはこういった部分なのだろうと感じ、少し切なくなった。

もしも私が、戦場に立つ女ではなく、ごく普通の娘だったら、こういった教養を身につけて幸せに暮らしていたのだろうか───

いや、考えるだけ野暮だ。
私はもう、この生き方しかできないのだから。

「こうしていると、サムスも立派なレディね」

ピーチがだんだんと形になってゆく浴衣姿を見て言う。

「そんな・・・・私には似合わないだろう」

「そんなことないわ。とても素敵ですよ」

しなやかな身体に和服がとても似合う。
サムスっていつもはとっても勇ましくて強気なのに、今はなんだかしおらくて可愛い。ゼルダは手を動かしながらそう思った。
和服にはきっと、それを作った国の特質である謙虚で優しい心を引き出す力があるのかもしれない。

再びお祭り会場に戻ると、ウサギずきんを被った子供リンクを先頭に、ネスやむらびとが走り回っていた。
ただでさえ身軽ですばしっこい子供たちがうさぎ頭巾を被ると目にも留まらぬ速さ。音速ファルコンも真っ青だ。
カービィとデデデはたこ焼きをどれだけ食べられるか競っていて、ドンキーはバナナのたたき売りに参加している。

「みなさん、お楽しみのようね」

夏祭りを各々で楽しんでいる様子を見ながらピーチは扇子をパタパタと扇いだ。

「とりあえず、かき氷でもいただきましょうか」

ゼルダがイチゴ味のかき氷を3つ屋台から買って、二人に手渡す。

「ありがとう」

受け取ったサムスは嬉しそうに礼を言って、甘いシロップのたっぷりかかったかき氷をシャキっとすくい口に運ぶ。

「ここに来る前にルピーをたくさん両替してきて良かったわ」

ゼルダの住むハイラルとキノコ王国とでは使用する通貨が違うため、お小遣いをコインに両替して持って来ている。

食べ歩きなんてはしたない、ってお城の大臣たちが見たら驚くかもしれないけれど、今日は特別。
かき氷をつつきながら、金魚すくいや水風船釣りをする仲間たちを応援するの。

並ぶ屋台をみながら歩いていると、その中に射的が出来るお店が一件。
そして、そこには見覚えのある二足歩行の狐の影。

「フォックス!?」

いつもの装いとは違い、甚平を着たフォックス・マクラウドが店番をしていた。
射的の的として棚に並んでいるのは、スマブラメンバーやアイテムの形をしたフィギュアたちだ。

「やぁ、今日は一日稼がせてもらうぞ」

借金を背負いながら宇宙を飛び回るフォックスは、夏祭りすらただの遊びで終わらせないようだ。

「ならば私がしっかり撃ち取ってやろう」

サムスがおもちゃのライフルを構える。
さすが普段実践を積んでいるだけあって様になっている、というか、ガチな雰囲気がムンムンだ。
ピーチとゼルダが「サムス〜!頑張って〜!」と黄色い声をあげている。

「面白そうだな。俺も混ぜてもらおうか」

「スネーク!?」

振り返るとスマブラ・オブ・渋メンと称されるスネークの姿があった。
が、いつも渋カッコいい彼も、今日はお祭り仕様。浴衣を着て、頭にはキータンのお面。これは遊ぶ気満々だ。

「どちらが多く撃ち取るか勝負しようじゃないか」

「望むところだ、サムス」

両者、銃を構えて棚の上のフィギュアに集中し・・・・

「そこだァ!」

パァン!パァン!と、どんどん棚の上のヒーローたちを撃ち落としていった。

「よせ、サムス!スネーク!これ以上撃たれると店が赤字に・・・・っっ!」

そして今日一日で、フォックスの借金が更に増えるのであった。

今回の勝負は、僅かな差でスネークの勝ち。
惚れ惚れするような射的の腕前は、サムスも素直に見習いたいと思っている。

「さすがだな、スネーク」

「サムスこそ。・・・・今日はやけに女らしいと思ったが、銃を持つと相変わらずだな」

「なっ・・・・!」

「似合っているぞ、浴衣」

スネークの言葉に、頬を染めて俯きながらも、今日、二人に頑張って着付けしてもらって良かったと密かに思うサムスだった。

「たまにはこんな日も良いものだ。な、サムス」

「そうだな・・・・」

フォックスの射的屋での戦利品を抱きしめながら、ドォン!と上がる花火を眺める。
戦場を忘れ、宿命を忘れて、ただの一人の男と女になれる、限りある時間の中で過ごす貴重なひととき。
平和というのは、どうしてこう、涙が溢れるぐらいに幸福なものなのだろうか───

「ふふ、なんだか二人ともいい感じね、ゼルダ」

「そうですね。浴衣、着せてあげて良かったわ」

後ろから見守る二人もまた、明日からは戦う姫に戻る。

「あら、マリオ、遅かったじゃない」

「リンクも。何をしていたのかしら」

遅れてきた彼らを出迎えて、まだまだ祭りの夜は続くのです。










 時子様より、浴衣サムス絵を元に小説を頂いてしまいました! まさか書いて下さるとは感激してしまいました……!
 普段は戦場で生きているサムス姐さんだから、スマブラの皆と一緒に夏祭りを心から楽しんでいるのを想像しただけでほっこりしました(*´▽`*)ピーチ姫にゼルダ姫、本当GJです!フォックスがちょっと気の毒ですけども(笑)
 そしてまさかのスネサム要素まで……! さすが狙撃のプロな二人な上、いい雰囲気にまでなっていて読んでてニヤニヤしてしまいました(>_<*)
 危険と隣り合わせが当たり前の日々を送る二人にも、こういう時間があってもいいですよね…。
 時子様、有難う御座いました!