相棒








 木や草が生い茂るジャングル。無数のツルが、木の枝に沢山絡み付いている。
 ジャングルは、ドンキーコングとディディーコングにとっては庭であり、どんな障害物があろうと難無く越えてしまう。ツルを掴み、枝は一回転して乗り越え、二匹はやがてとある広場へ出た。
 広場には、バナナが山の様に積み上がっていた。

「あったあった。まだこんなところにあったんだね」

 赤いキャップを被った猿のディディーは、バナナの山に駆け寄った。
 赤いネクタイがお洒落なゴリラのドンキーも行こうとした時、何かの気配を感じてサッと後ろを見た──が、誰もいない。だが、妙な気配がするのに変化はないので、なるべく警戒をしつつ、ディディーのとこまで行った。

「まだオイラ達の家まで運ばれてなかったんだね。クランキー達怒ってたから何のことだと思ってたよ」
「どうやって運べば良いかな? クッパ軍団の使ってたあの車、僕運転出来ないよ」
「うーん……あ! あれ、もしかするとトロッコの線路じゃない、ドンキー?」

 バナナの山の後ろには線路があった。オマケに運が良く、トロッコが二台置いてあったのだ。

「やったねドンキー! この二台を繋げれば、バナナを沢山運べるよ」
「うん、じゃあバナナを運ぼう」

 二匹は後ろのトロッコにどんどんバナナを積んでいった。前のトロッコを使って引っ張るのである。
 ディディーはふと辺りを見回し、足を止めた。ドンキーがせっせと運んでいるのにも関わらず、作業を止めてしまい、なぜか次第に落ち込んでいくのだ。

「どうしたのディディー? 疲れたの?」

 大分詰め込んだバナナを見た後、あまり元気がないディディーを見たドンキーは驚いた。
 良く見ると、ディディーの体が少し震えている。うつ向いた表情も、今にも泣きそうだ。

「ディディー?」

 ドンキーが心配そうに見つめる。
 そしてディディーが、やっと口にした言葉は、

「ここで捕まったんだよね、ドンキーは、クッパに」
「……」

 ドンキーは黙り込むが、ディディーを見る目は動かさない。
 ディディーの、沢山のバナナを持つ腕に力が入ってくる。

「オイラ、あの時、クッパの持ってた武器が何なのか分からなかった。危険な香りがするのは分かってたけど、そう思ってたらドンキーがかばってくれて、オイラの代わりに捕まって……オイラがもっと確りしていたら、ドンキーは捕まらなかった。こんなオイラ、相棒失格だよ!」

 涙が流れそうな目をギュッと瞑り、必死で話す。そして話し終えて目を開き、顔を上げた。
 すると、話を聞いていたのかいないのか、ドンキーは彼をよそにバナナ達を運んでいるのである。

「あれ? ド、ドンキー?」

 ディディーはポカンとしてしまっていた。彼は本当に人──いや、猿の話を聞いていたのだろうか、目を丸くしてしまう。

「よいしょっと」

 ドンキーはバナナを運び終え、パンパンと手を叩くと、ディディーのとこへ戻ってきた。

「ディディー、トロッコの運転、お願いね」
「え?」
「僕、ここのトロッコあんまし使ってないから、よく分かんないんだよね」

 ニッと笑い、頭を掻く。だがディディーはまだ唖然としていた。

「ディディーは僕の相棒なんだから、離れることはないよ」

 ドンキーはトロッコに向かって歩きながら話す。ディディーは相変わらず彼の背中を見ていた。ドンキーはトロッコの前で立ち止まるとこちらを向いた。


「ディディー、助けに来てくれたじゃない。フィギュアにされちゃったから身動き取れなかったけど、ディディーが来てくれたから、亜空軍にパンチが出来るようになったんだから」

 両腕に力を込め、力瘤を見せる。

「ドンキー……」

 ディディーはまだ涙目だが、今の涙は、さっきの様な悲しみと違う。

「ディディーと友達になれて、相棒になってくれて良かったよ」
「オ、オイラ、オイラもだよドンキー!」

 ディディーは涙を振り払い、明るい笑顔になると、ドンキーのとこへ駆けていった。

「!?」

 ドンキーはハッとし、地面を睨んだ。彼の様子が変わったのにディディーは驚いて急ブレーキする。

「ど、どうしたの、ドンキー?」
「ディディー、そこから離れて!」

 大声で言われたから、ディディーはとっさにその場を離れた。その場から少しずつ山が盛り上がり、そこから巨大な緑の龍が飛び出してきた。

「何、あいつ?」
「あいつはレックウザだよ!」

 初めて見たから額に手をかざすドンキーに対し、隣のディディーは怒りの表情で答えた。
 緑のポケモン──レックウザは、空中からドンキー達を睨む。ドンキーとディディーは素早く攻撃体勢に入り、負けじと睨み返した。
 だがディディーは感じた。前の様に、レックウザの黒い目と黄色い瞳からは、強い殺気が感じられないのである。

「子猿よ、あの時の礼をたっぷりしてやろう」

 動かない口から、そんな声を聞いた気がした。その声は勇ましく、圧されそうな感覚だ。
 最初に会った時は、あれ程恐怖を抱いていたディディーだが、今はニヤリと笑っている。そして小さな人差し指を、レックウザに向かって思い切り差した。

「オイラはもう負けないぞ! 相棒と一緒なんだからねっ」
「ディディーっ」

 二匹のパートナーは顔を見合わせ首を縦に振った。ドンキーは腕を振り、ディディーはポップガンを構えた。
 レックウザは二匹を見て、密かに口端を上げた。

「お前達から生まれる一つの力、試させて貰おう」

 そして、コング達とレックウザは、戦闘を開始した。




 親友であり、相棒だから、互いの力が一つになる。それは、決して離れることはないのだ。










 ──Fin──








 【後書き】


 うちの好きなスマックスコンビ第二弾です。
 まあ、この二匹はずっと昔からの王道コンビですけどね。ドンキーゲームの頃から好きです。

 ドンキー達の口調は64版とアニメを参考にしました。どちらも小さい頃だが、ハマったなあ。
 ドンキーの台詞を書いてる時、頭の中で山ちゃんの声が聞こえました(笑)。
 ディディー可愛いです、本当。ドンキーと一緒だと尚微笑ましいです。

 あと関係ないですが、ドンキーのBGMは神だと思います。野生感があって燃えてきます。