雪国の者達 「うーん……」 暗闇から目覚めようと、瞼がゆっくり動く。彼女の今見える光は、目の形に切り取られている世界だ。意識が戻ったと分かったプリンは、パッチリと皿の目を開いた。体も軽くなり、ガバッと身を起こした。 「こ、ここはどこでしゅか?」 さっきまでマリオ達と雪山の下にいた筈だったのに、と、不安が募る。 プリンは、焦茶色の岩が自然と削り取られた洞窟にいた。空洞感は、小さな学校の教室並で然程広くは無い。出口は直ぐ目の前に広がっているが、今は何故自分がここにいるのか、理解に困った。 念のため、出口から恐る恐る抜け出てみる。一歩出れば、並ぶ雪山が近くから遠くまでハッキリと見渡せた。しかし歩き出して間も無く、ガラッと言う小石が崩れ落ちた音にビク付き、反射的に立ち止まって少し下がった。ここは断崖絶壁で、下は底無しの闇だ。落ちたら二度と這上がって来れないだろう。飛行して飛び越える事も考えたが、向こう側の崖まで(恐らく百メートルはあり)、かなりの距離がある。プリンは飛ぶのに限りがあるので即座に無理だと断言した。 閉じ込められた、自分は一人ぼっちになってしまったんだと、目をうるませる。涙も溢れ出、雪山の何処かにいる仲間達に、震える声で静かに口を開いた。 「マリオしゃん……皆しゃん……早く助けに来てくだしゃい……」 不安と恐怖にかられ、大粒の涙を溢す。彼女の雫は太陽に反射し、キラキラと煌めきながら、闇の底へ吸い込まれていった。 雪山を登山するスマメン。大自然が生み出しただけあって、緩やかな斜面から急な坂まであり、かなり苦労した。ファンシーズの一部は、他のスマメンに乗っかって運ばれた。ピチューはリンク、ピカチュウはマリオに肩車をして貰っていた。カービィとメタナイトは浮遊しながら、この先障害物とかが無いか見張り役を努める。マーシスは身が軽いので、深い雪でも面の上を難無く歩いていた。マリオは、積もった雪を掻き分けながら彼を見て、どこかの本で見たエルフみたいだと、何と無く思い出していた。 「この先には、確かトッピー達がいる筈だよ」 マーシスの前を歩いて皆を案内をするアイスクライマーの内、ポポは前を見ながら、木槌を前へ振った。 「トッピー?」 と、マリオがオウム返しをした。ポポは歩きながら振り返り、付け足す。 「青いアザラシみたいな動物で、雪山を守る種族なんだ。ここら辺りの事なら何でも知ってるから、恐竜の話もきっと聞けるよ」 「それは悪くない話だ」 と、マーシスは言った。 「毎回、私達は初めて来るのだからな、情報集めは欠かせん」 「だね。じゃ、まずはそれから行こう」 マリオが言った。 暫くすると平な場所に出た。それは広範囲で、所々に沢山のかまくらが作られていた。中には雪で作られた、真っ白な柱や建物がある。 「何だここ?」 マリオは思わず呟いた。 「トッピーの村よ」 と、ナナは応えた。 すると、スマメンの元に一匹の青アザラシが現れた。それは雪の上を、手で前から後ろへ掻き、体を滑らせながらこちらへ来た。 「これはこれは、アイスクライマーさん」 声からして男性の様だ。ペコリと頭を下げ、つられてスマメンもお辞儀した。 「トッピーさん、僕達、マリオさん達と一緒に欠片を探してるんだ。良かったら協力してくれる?」 ポポはトッピーにそう言った。それを聞くトッピーは少し首を傾げる。 「欠片と申しますと?」 「実は……」 「あ、詳しい話は私のかまくらで。ここにいては皆様寒いでしょう」 言い終わるや否や、一人派手なくしゃみをした人物がいた。マリオである。クスクス笑ったトッピーは、腹を軸に体を半回転させ、スケートのようについーっと滑っていった。 「……ついていこうか」 赤い鼻をすすりながらマリオは言った。 かまくらは初めは狭いイメージがあったが、トッピーのかまくらは雪が彫刻された、民家に近い形をしていた。その大きさはスマメン全員でも余裕である。雪で出来ている為にドアや開閉出来る窓は無いが、入ると中も民家そのものだ。 「正に芸術ですね」 リンクは目を輝かせた。 スネークは白い壁を見つめ、人差し指を壁に付けてみた。少しだけ力を込めると、指はすんなりと壁を貫いた。 「本物の雪だな」 スネークは目を少しだけ見開いた。 「対して寒さは変わらないね」 カービィは一瞬身震いした。 「ささ、こちらです」 トッピーは、玄関の近くにあるリビングへスマメンを招いた。全員椅子に座り、クッキーを乗せた雪の皿が出されたところで本題に移る。 マリオは、トッピーに事情を全て話した。 「そうなのですか」 目を綴じながら耳を傾けるトッピーは、その状態のまま頷いた。そして目を開き、頬に手を当てた。 「ほんの些細な事でも構わない。私達には今、情報が必要なのだ」 マーシスは考え込むトッピーに真剣な声で言った。トッピーは、うーん……と悩み、暫くすると、目を開いて顔を上げた。 「最近、あいつが暴れてるのもそれのせいなのかな」 「えっ」 何の話だと、スマメンは色々な人と顔を見合わせた。 「いや、ホワイトベアがまた暴れ出したんですよ」 「ホワイトベアっ」 ポカンとするマリオにナナは応えた。 「雪山に住んでる白熊よ。結構力持ちなの」 「ふーん。まあ、ホワイトベアの意味は大体分かってたけどね」 マリオは腕を組んだ。 「最近悪さをしなくなったと思ったら、また性格が蘇ったみたいです」 「どんな性格を?」 リンクは訊いた。 「足を踏み鳴らすのが好きだったりするんです。悪戯好きで、良く雪崩を起こしたりして僕らの村を半壊したりするんです」 「雪崩……」 マリオ達は、何と無くさっきの事を思い出した。大吹雪の中のあの雪崩を。 「恐竜の巣へ行くには、ホワイトベアの縄張りを通る必要があります」 「そうか……」 マリオは呟きながら立ち上がった。 「じゃあ、通さない奴はブッ飛ばせば良いんだな」 拳を作り、空にパンチを繰り出した。 「ホワイトベアはあまり聞き入れませんからね。しかも、強い奴と戦う事にしか興味無いんです」 「良し、気を引き締めよう。一刻も早く、プリンと欠片を……」 その時、積み重ねられたクッキーがカタカタと揺れ出した。スマメンがそれに気付いたと同時、ここ全体への揺れが始まった。 「……!?」 「じ、地震!?」 マリオ達は慌ててかまくらを飛び出した。外は未だ続く地震に騒ぎを起こし、トッピー達はあちこち逃げ回っていた。 「マリオさん達! 早く逃げよう!」 「えっ?」 慌てるアイスクライマーに唖然としていたスマメンだが、次の発言で漸く状況を理解した。 「ホワイトベアだ!」 「ホワイトベアが雪崩を起こしているのよ!」 「何だって!?」 スマメンは山を見上げた。高い位置から雪崩がやって来る。しかも物凄いスピードだ。 「マリオさん! 早く逃げましょう!」 リンクも走り出した。 「な、何なんだよ、今日は!」 マリオは、先へ逃げるスマメン達を追いながら叫んだ。矢張り、雪崩のスピードは半端では無く、まんまとマリオ達を追い詰めた。 「わあああああああ!」 雪崩はトッピーの村を飲み込み、やがて止まったのだった。雪で作られたトッピーの村は雪に埋まり、殆んど原形を失ってしまった。 雪の層から点々と雪が盛り上がり、中からトッピーやスマメン達が息を吸いながら出てきた。 「ぷはあ! もー、今日は災難続きだなぁー」 マリオは顔を出すと、愚痴を溢しながら抜け出た。 「……」 アイスクライマーは雪の層に立つと、何かを探す様に目を動かしていた。直ぐ側にいるマリオは不審を抱く。 「どうしたの?」 マリオの言葉に反応せず、ひたすら顔を動かしていた。そして、ある一点を見付けると二人でそこを指し示した。 「マリオさん、あれ!」 雪山からこちらへ降りてくる者がいた。歩く度に僅かに地響きが起こる。その者は体格がでかく、白い体にサングラス、おまけにピンクのパンツを履いていた。マリオは目をぱちくりさせた。それはどう見ても熊人に見え、もしやと思っていた。 「正かあれが?」 マリオも指を差しながらアイスクライマーに振り向いた。彼等もこちらを向くと応えた。 「ホワイトベアだ」 「こちらの存在に気付いたみたいだな」 コウモリの翼でメタナイトはマリオの隣まで浮遊して来た。 「やっぱりボクらが狙いかっ」 マリオはホワイトベアを睨みながら、目の前で、自分の拳をもう片手で握った。 「態々こちらまで来てくれるとはね」 「ホワイトベアを何とか静めましょう」 リンクは即座に武器を構えた。 「ああ、分かってるさ!」 マリオも拳を構えた。 「な、何でしゅか、今の?」 崖に座っていたプリンは、さっきの異変に思わず立ち上がった。山の奥に目を凝らすが、良く見えない。気になるが、この状況では、悔しいが確かめる事は出来なかった。 「マリオしゃん達、大丈夫でしょうか……」 自分より仲間を心配し始め、ハラハラしてしまう。仲間達が無事である事を、今は祈るしか無かった。 そんな時だ。 「!?」 何か後ろから声が聞こえた。耳にした途端、プリンは心臓が飛び出しそうになり、とっさに洞窟を向いた。 「だ、誰でしゅか!?」 静かにしないと気付かない位に小さくか細い声だったが、プリンにははっきりと聞こえた。洞窟に、他に誰かが拐われたのかと第一に考えた。それでもプリンの用心は消えず、恐る恐る洞窟へ戻り、奥を確かめた。目を細めて暗い内部を良く見ると、そこにいる者にプリンはドキリとした。 「あ、あれは……っ?」 ──to be continued── |