再び現れし男 「ハッ!」 リンクは地面を蹴り上げると思い切りジャンプし、ボスに向かって剣をなぎ払った。ボスはその場を飛び立ち、彼の攻撃をかわした。 「ギャア!」 声を上げながら翼を振り上げた。リンクは上を向くと即座に盾で攻撃を防いだ。向こうもかなりの力を繰り出し、リンクの足が地面へ僅かにめり込んだ。 「ぐうっ!」 身体中が痺れるが、互い攻防を弾き返すと後退りをした。 「リンクっ」 「だ、大丈夫です」 リンクは前を睨みながら、後ろにいる仲間に返事をした。 ボスは先程の衝撃に目眩がし、頭をぶんぶん振ると体勢を立て直した。 「行くぞ、マーシス!」 「ああ」 マリオはマントの力を最大限まで上げ、高速で偽アイスクライマーへ向かって飛んでいく。 「何とかプリンに当たらない様に攻撃するんだ」 「御意」 「フン、中々楽しめそうだね」 クアンとエミーは互いの手を合わせると、そこから雪のパワーを発生させる。そして、マリオ達に向かって吹雪攻撃『ブリザード』を発した。 「フンッ!」 マリオは下へ降り、マーシスは上へ飛んだ。彼等の間にブリザードの線が通過した。 「えいや!」 マリオは下から拳を構え、ニットピッカーを攻撃しようと飛び上がった。マーシスは上から攻撃を仕掛けようと、剣先を下へ向け、重力を使って攻撃力を高めながら落ちていく。瞬時の攻撃だが、ニットピッカーは見切っていて、その場からマッハの如く消えた。 「何!?」 二人は声を揃え、危うく自分の仲間を攻撃してしまう所だった。二人は直ぐに拳と剣を引っ込め、マーシスはマリオの背中へ戻った。 「畜生、どこへ消えた?」 マリオは、ニットピッカー達の行方を顔と目で追った。 「! マリオ殿、下だ!」 「えっ」 マーシスが叫んだ時は、マリオの直ぐ下に彼等がいた。ニットピッカーの頭部がマリオの腹部を攻撃した。 「ぐうぅっ……!」 「マリオ殿!」 「わわあ!」 「うおぉ!」 腹を抑えるマリオは飛行のバランスを崩し、二人は崖の下へ真っ逆さまに落ちて行ってしまった。 「マリオしゃーん! マーシスしゃーん!」 「マリオさあぁん!」 ニットピッカーに乗っているプリン、洞窟の前から見守っているアイスクライマーは、奈落の底へ消えたマリオ達を見下ろした。崖の下には闇が広がり、物音の無い、ただ冷たい風の音が滑らかに流れるだけだった。 「思ったより呆気なかったね」 偽アイスクライマーは崖下を見ながら肩をすくめた。 「噂のリーダーさんがこんなに弱いんじゃ、お仲間さんも心配だよ」 勿論、二人は他人事のつもりで話しており、その後笑いを上げた。 その時、ニットピッカーの顔が何かの衝撃を受け、偽アイスクライマーの足場がぐらつく。良く見ると、ニットピッカーの顔に白い冷気が振り掛かっていた。方向からして洞窟の方角から来ていて、全員そちらへ顔を向けた。 「それで勝ったつもり? はやとちりも程々にしたらどうだ、偽者め!」 洞窟前にいる本物のアイスクライマーは、怒りの表情を露にしていた。 それでも怯まず、偽アイスクライマーは目を細める。 「流石、本物は違うねえ」 「ポポしゃん、ナナしゃん……」 プリンは目から雫を溢していた。 彼女の目の前にハンマーが現れ、プリンはビクッとした。 「まだまだ楽しめそうだ」 「うわ! くっ……!」 吹き飛ばされたリンクの体は地面に当たった反動で後ろへ一回転したが、何とか倒れる事は抑えた。 「力対決だけではまるでキリが無いな」 メタナイトは言った。それを耳に入れたリンクは、彼に振り向くと頷いた。 「分かってますよ、メタナイト」 リンクにも考えはあった。力だけでは無く、知識も無ければ勝てない。そう考えれば……。 ボスは飛び上がり、急降下攻撃を仕掛ける。クチバシを尖らせてはリンクを串刺にしようと企てているのだ。しかし、リンクはその場を動かず、只、反撃のタイミングを待つ。そして、背中に手を素早く回しては、ある物を取り出すと即座にそれを撃ち放った。紐状の様な影が放たれ、ボスの体に命中した。 「ギィッ……!?」 「うおおおおおぉぉぉ!!」 ボスが見開く間にリンクは声を上げ、その紐状を横へ力一杯引っ張った。すると、ボスは横へ向かって高速で飛んでいく。 「はあ!」 紐状が離れると、ボスは崖に思い切り体をぶつけだ。その衝撃で空間が暫し痺れる。 「!」 「!?」 崖の上を飛んでいた偽アイスクライマー達や、崖の上のアイスクライマーは攻撃を一端止め、何が起こったか下を確認した。崖の壁にボスの体が打ち付けられていて、やがてその体も壁から離れると、そのままボスは気を失ったまま闇の底へ消えていった。 「はあ、はあ、はあぁ……っ」 フックショットで相当な体力を使ったせいだろう、疲労を溜めたリンクは、息を荒らしながら膝を付いた。 「オイオイ、無理するな」 スネークは後ろから、リンクの肩に手を置いた。 「すみません……」 リンクは大きく息をしながら返事をした。 「それより、マリオさんとマーシスさんはっ?」 「!」 リンクの言葉にスマメンは崖の方を向いた。あれからマリオとマーシスは崖下から上がってこない。気配も未だ無いのだ。 「ピカピイィー!」 ピカチュウは、大粒の涙を溢しながら叫んだ。 「今頃底無しの闇で苦しんでるだろうねー」 クアンは言った。 「さーて、そろそろ欠片を頂きに行きましょうか。ディバ隊長の喜ぶ顔を早く見たいしね」 エミーがクスッと笑いながら言うと、スマメンは洞窟の方を見た。洞窟の前で倒れている二人のエスキモーがいた。かなりの傷を負い、気絶していた。 「アイスクライマー!」 「本物だから少しはやるかと思ってたけど、リーダーがこんなに弱いんじゃ無理も無いわね」 ニットピッカーからジャンプし、体を回転させながらアイスクライマーを飛び越え、洞窟の前へ着地した。 「不味い! このままでは欠片を取られてしまいます!」 「ワープスター!」 カービィが空に向かって叫ぶと、即座にワープスターが空から現れた。カービィは直ぐにワープスターに乗り、偽アイスクライマーを止めに入ろうとする。所がそこで、偽アイスクライマーを乗せていたニットピッカーが目の前に現れ、カービィは慌てて止まった。彼の背中に、拘束状態のプリンが乗っていた。 「プリン!」 「カービィッ」 「うわっ」 ニットピッカーはカービィを攻撃する。カービィは応戦したいが、相手は仲間を乗せている。むやみに攻撃する訳にはいかなかった。 「ピンク丸はニットピッカーと遊んでな」 「じゃ、また会いましょう」 偽アイスクライマーは手を振って洞窟へ入ろうとした。すると、中からかん高い鳴き声が響いた。偽アイスクライマーが驚いて立ち止まると、洞窟からは翼竜の子供が威嚇をしていた。母親の縄張りを守らねばと思っていると考えられる。 「に、逃げて……!」 ナナは体を少しだけ起こし、翼竜の子供に警告をする。が、翼竜には彼等の言葉が通じないのだろうか、その場で偽アイスクライマーを睨み続けていた。 「……君も消されたいの?」 クアンはハンマーを肩に掛けた。 翼竜の子供は必死に何度も鳴き声を発し、彼らを追っ払おうとした。何とも無い偽アイスクライマーは見合わせ、ニヤニヤと笑む。 「うーん、よっぽど遊びたいらしいよ?」 クアンは翼竜の子を細目で見据え、顎を擦りながらエミーに話した。 「私達で遊んであげましょうか」 エミーは、手にハンマーを軽く当てながら言葉を返した。 彼等の言う遊びがどんなものか知りたくもない。一番近くにいるアイスクライマーは、彼等を阻止しなければと立ち上がろうとした。しかし、地面に付けた手に少しだけ力を入れただけで、負わされた傷が疼き、また地面へ体を沈めてしまう。 カービィもニットピッカーに行く手を阻まれ、苦戦しており、リンク達の位置からでは飛び道具は届かない。後は……。 「ファイアボール!」 「!? なっ……!」 偽アイスクライマーは反射的に後ろへ一歩ジャンプした。彼等がさっきいた場所を赤いファイアボールが飛んで来た。この色で攻撃をするスマメンは、たった一人。 「ど、どこだ!」 偽アイスクライマーの他、スマメンも彼等のいる場所を目で探し回った。その中、ピカチュウが顔をふと上げた。 「ピカッチュ!」 ピカチュウは空を差し示す。そこには、二人の戦士が浮遊していた。マリオと、彼の背中に膝を付いて乗っているマーシスの姿があった。 「マリオさん! マーシスさん!」 アイスクライマーは倒れた状態で彼等に名前を呼んだ。プリンから話を聞いていた為、マーシスと言う名も知っていた。 「やっぱりクローンはせっかちな性格なんだな。いい加減、ボク達を認めたらどうなんだ?」 不機嫌そうにしているマリオは、片目を細めて腕を組んだ。 「い、いつの間に空を飛んでいたんだ!」 激しく動揺している偽アイスクライマーに、マリオの代わりにマーシスが剣を構えた状態で応えた。 「我々が、あれから闇の世界へ行ったとでも? 我々は落ちて直ぐにその場を移動したのだ」 「少し遠くへ行って、そのまま上空へ向かえば、気配は消せるだろ?」 「くっそ!」 偽アイスクライマーは、手から大きな氷を取り出すと、それを野球ボール、ハンマーをバットの代わりにした。思い切り打ち、二つの氷が、向かってくる二人に向かって放たれた。 「よっ!」 マントを自在に操れるマリオは、難無く彼等の技を避けた。 マーシスは剣攻撃を構え、彼等に止めを差しに掛かった。偽アイスクライマーは逃げる隙が無い。 「わぁ!」 高い金属音が山に木霊した。衝撃で辺りに濃い霧が吹き上がる。金属音だなんて何故に、と疑問を抱く。すると、彼等の目に、とんでもない光景が飛込んできた。霧が晴れた途端に表れた光景。マーシスの剣と、誰かの剣が交わっていた。その主は、紫の鎧に赤い髪、血色に燃える瞳。そして、狂気に似合う微笑み。 「お、お前はっ……」 マリオは彼を指差し、震えながら声を上げた。 「ディバ!!」 「へえ、覚えててくれてたんだ?」 ディバはマリオを睨み、ニヤリと歯を見せた。 ギガ精鋭部隊隊長ディバ。ギガに続く、冷酷非道な男。彼が現れた時点で、辺りの空間が緊迫していた。 忘れる訳が無い。スマメンに怪我を負わせた上、スマッシュ王国が危うく彼等の手に渡るとこだったのだ。 「な、何でお前がここにいるんだ!」 「何でとはご挨拶だねぇ」 ディバはマーシスの剣を弾き返し、マーシスはその勢いで、地面に足を着きながら少し後ろへ退いた。 「僕の可愛い仲間達が何でここへ来れたのか、不思議に思わないのかな?」 「えっ?」 そう訊かれてもマリオ達は理解に苦しむ。答えを探すだけ無駄な気がする。そんな彼等に、ディバは良い気分でクスッと笑んだ。 そしてクルッと体を半回転させ、偽アイスクライマーに向く。 「じゃあ行こうか、クアンにエミー」 「えっ、何で!?」 「折角ここまで来たのに!」 偽アイスクライマーは慌てて抗議をした。だがディバは聞く耳を持たない、一言呟いてからは。 「弱虫が威張るな」 「!」 二人は、ヒッと短い悲鳴を上げた。ディバがどんな顔をして偽アイスクライマーに喋ったかはスマメンには見えなかった。唯、偽アイスクライマーが顔色を悪くして怯えているのは目に入った。 ディバはマリオに振り向くともう一度微笑み、 「じゃ、ア・バ・ヨ」 と言い残し、三人は消え去った。 「正か敵の影にあいつがいただなんて……っ」 「マリオ殿、彼が?」 「ああ、残酷な血で生まれた奴だ」 マリオ達は真剣な眼差しで、彼等のいなくなった場所を見ていた。 「さあて、と……?」 少しした後、マリオは、ゆっくりとニットピッカーに顔を向けた。目が合ったニットピッカーは肩を思い切り上げ、冷や汗をだらだら流す。 「えいや!」 後ろからカービィのハンマーがポカリと振り下ろされ、ニットピッカーは気絶した。ワープスターは、ニットピッカーとプリンを乗せた。 「ナイスだ、カービィ」 マリオは片目を瞑って親指を立てた。カービィも同じ仕草で返事をした。 そして、プリンを縛る縄を解放した。 「マリオしゃん、皆しゃん、ありがとうでしゅ……」 プリンは笑顔で涙を溢した。 「当たり前だろ」 マリオはプリンの側へ寄り、彼女の頭を優しく撫でた。 「大切な仲間なんだから」 スマメンは洞窟に集まり、マリオは怪我人の手当てをした。殆どが軽傷で済んだ。 「ちゃんと大人しくしてるんだぞ」 治療を受けた翼竜親子は、物珍しげにマリオを見つめていた。 「正か、僕らのクローンがいただなんて思わなかったよ」 ポポは悲しげに言った。ナナも同じ気持ちで言う。 「皆、ゴメンね、私達のクローンが、悪巧みを考えていたから」 「君達のせいではありませんよ」 リンクはニコッと微笑んだ。 「そうだよ。悪いのはあいつらの方なんだから」 続いてマリオが口を開いた。 「……」 「ナナ?」 「……やっぱり、ああ言うスリリングなバトルをやる事が強くなれる秘訣なのかもね」 「……え?」 何を言い出すのかと思った時、ナナは背筋を伸ばした。 「私達も連れてってよ、リーダー!」 「え!? い、いきなりどうしたの!」 「もっと戦って、強くなるのよ。リーダー達と一緒に冒険してね」 「ナ、ナナ、危険だよ。さっきの戦いを見たろ?」 弱気なポポは、ナナを止めようとした。だが、ナナは行くのを止める所か、ポポを見つめるとこう告げた。 「クローンに負けちゃって平気なの?」 「えっ」 「翼竜の子を守れなくて、悔しく無かったのっ?」 ナナの目がうるんでいた。スマメンは、彼女の涙目を辛そうに見た。 ナナはマリオに振り向いた。 「リーダー、お願い」 「……」 マリオはポポへ目線を向けた。 「ポポ、大丈夫か? 嫌ならここに残っても良いよ」 「……」 ポポはうつ向き、決断を探る。そして顔を上げると、今まで見たことの無い勇ましき表情が表れていた。 「僕も行くよ」 「……そう言ってくれるって信じてたよ」 マリオは親指を立てた。ポポも同じ仕草で返事をした。 翼竜の子は彼等を見ていた。その後、後ろへ顔を向け、ある物をくわえると、ポポにそれを差し出した。 「どうしたの?」 ポポは顔を上げた。 そして、翼竜の子のくわえている物を見ると、それは光る欠片だった。 「宝玉の欠片か」 マーシスは言った。 「助けてくれたお礼って奴だね?」 カービィが言った。 「……ありがとう」 ポポは微笑み、欠片を手に取った。 「ねえ、不思議に思った事があるんでしゅけど」 翼竜の側にいるプリンが挙手した。 「翼竜しゃんは、どうしてプリンを拐ったんしゅかね?」 「プリンがマシュマロにでも見えたんじゃないか?」 スネークは即答した。 「適当な事言わないでくだしゃい!」 プリンは体を風船の様に膨らませながら怒った。 「貴方達が噂のスマッシュ戦士だと分かったからですよ」 その時、どこからか女性の声が聞こえた。スマメンは驚いて辺りを見回すが、女性らしき姿は見当たらない。 「私は、貴殿方の言葉は分かっていました」 その言葉にピンと来て、スマメンは翼竜へ顔を向けた。翼竜は笑顔で皆を見ていた。 「この国に、宇宙を手にしようと企む悪魔の手下が潜り込んだのを、仲間から聞いたのです」 「あの偽アイスクライマーか」 マリオが言うと翼竜は頭を縦に振った。 「彼等を倒せるのはスマッシュブラザーズと言う戦士しかいないと聞いて、私は貴殿方を探しました……悪魔の手下に襲われた子供を助けて貰いたかったのも理由の一つです」 「しかし、何故プリンだけをここへ連れて来たのですか?」 それならマリオさん達も連れていくべきだったのでは? と、リンクは尋ねた。翼竜は申し訳なさそうに目を閉じてはうつ向いた。 「アイスクライマーの他のスマッシュ戦士は、あの時はプリンさんしか見なかったので、てっきりあそこにいた戦士は彼女だけだと思い込んでしまったのです。皆さん、態々ここまで来て下さって……危険な目に合わせてしまって……ご免なさいね」 雪崩のせいでチームから大分離れてしまったプリンを、翼竜が見付けたと言う訳だ。 「気にする事は無いよ。皆無事だったんだし、欠片も戻った訳だしな」 マリオは欠片を取り出して言った。 「……ありがとうございます」 翼竜は深々と頭を下げた。 「皆さん、色々とありがとうございました」 今度は子供特有の片言が聞こえた。翼竜の子供が、礼儀良くお辞儀をした。何だか微笑ましい光景で、スマメンは笑みを溢した。 「これでもう悪い噂は広まらないだろう。これからも幸せに過ごせる事を祈っている」 メタナイトが言い、翼竜親子は快い返事をした。 ポポは欠片を片手にマリオに振り向くと、マリオも欠片を掲げた。 「じゃ、元気でな!」 スマメンが光り出す中、マリオは言った。 「ご武運を祈っています」 「サヨーナラー」 そして欠片の光は、マリオ達を次の世界へと導き、その場を消え去った。 ──to be continued── |