呪われた世界








「よっと」

 珍しく低い位置へ欠片が導き、マリオ達は今度は確りと着地出来た。
 しかし今は、そんな事に素直に喜べないマリオ。全員、不安を抱かせて辺りを見回した。

「……何だここ……」

 空は、暗黒の雲が渦巻く闇に覆われている。風はそれなりに強く、木もかなりの角度で傾いていて、マリオも帽子を押さえるのがやっとだった。草は茶色掛かった緑色で、今にも枯れそうだ。平原は見渡しやすいが、建物はほぼシルエットだ。城の様な形から火山らしき影まで、色々な黒い景色がある。

「既に悪魔の手に落ちた、って言う、在り来たりな言葉が似合いそうだな」

 スネークは言った。

「……」
「リンク?」

 明らかに様子が変わっているのはリンクだ。見開いていて、顔色も少し悪い。

(正か?)

 マリオは直感した。そして、案の定の言葉をリンクは発した。

「ここは……俺の住んでいる国です!」
「何だって!?」

 両者は驚きの口調だが、やむを得なかった。

「何故であろう、リンク殿の国が、この様な姿に」

 マーシスは遠くを見ながら言った。リンクは悔しさの余り、歯をくいしばりながらうつ向く。

「俺が最後にこの国へ戻った時は、こんな風にはなっていなかった……っ」
「って事は、やっぱり宝玉が欠片になってからかな」

 ポポが言った。

「欠片を手にする為なら、ギガ軍は手段は選ばない……やってくれるな」

 マリオの感情は半ば怒っていた。

「……今はこの平原にとどまるのは危険だ」

 メタナイトはマントをはためかせながら言った。危険な事に敏感な二匹のネズミポケモン、ピカチュウとピチューもかなり怯えていた。

「どこからも強い殺気を感じる」
「うーん、ゾクゾクするな、何か」

 マリオは腕を握って身震いした。彼にふと振り向いたナナは、何故か彼を見て思わぬ悲鳴を上げていた。それに驚いたスマメンは全員マリオを見ると、一部が悲鳴、もう一部は目を少し丸くしていた。

「え、どうしたの、皆?」

 マリオは、皆の痛々しい視線を感じているが、意味がさっぱり分からなかった。身震いは確かにして……あれ? 何だか寒いな……。

「隊長! う、う、後ろっ!」

 カービィがわたわたしながら言う。マリオは眉をひそめ、顔を出来る限り後ろへ素早く半回転させた。そこで目が合った人物らしき物体。黒い顔に黄色い目をしていて、紫系のボロ布を纏っている者が、マリオの両肩を握っていた。オプションに、蒼白い鬼火が幾つか、物体の辺りを浮遊していた。

「うっぎゃああああああぁぁ!!」

 マリオはお化けと言うより、いきなりそこに何かがいた事に驚いて悲鳴を上げた。相手も彼の叫びに驚き、慌てた。

「マリオさん! 伏せて!」

 リンクの声にマリオは即座に離れた。リンクは弓を構え、幽霊に向かって矢を放った。矢は幽霊に見事命中し、幽霊はかん高い悲鳴を上げながら、蒼白い炎に包まれて消え去った。

「ふう、ビックリしたあ」

 マリオは胸を擦った。

「ポウが現れたって事は、メタナイトの言う通り、ハイラル平原に長くいてはいけませんね」

 リンクは弓を下ろして言った。

「おーい! 皆あ!」
「お? この声は……」

 スマメンは、少年の呼び声を聞き、その方向に振り向いた。馬に乗っている、リンクと同じ容姿の少年が手を振りながら現れた。

「子リン!」

 子リンはスマメンの前で馬を止めた。

「マリオさん達、やっぱり来たんだね」
「やっぱりって、どう言うことだ?」

 リンクが尋ねた。

「話は後。とにかくついてきて。ここにいたら危ないから」
「よしっ」

 子リンは馬から下り、馬を連れて駆け出した。マリオ達も彼等について行く。




 スマメンは、カカリコ村と呼ばれる小さな村へと連れて来られた。平原とのギャップがあり、村はワイワイと賑わっていた。空は先程とは違って、不思議な虹色カーテンとなっていた。

「ねえ子リン、あれって何?」

 カービィは空を指差して問う。

「結界だよ。ここは唯一守られている村なんだ」

 子リンは歩きながら応えた。

「ゼルダが張った結界だから、スマッシュ戦士しか出入りは出来ないんだ」
「ゼルダも無事なんだな」

 リンクは安堵の表情を浮かべ、ホッとしていた。

「……お熱いな」

 隣のスネークは目線を逸らして言ってみた。その言葉はリンクの耳の中へ確りと入り込み、リンクの顔がボッと熱る。

「ち、違いますよっ!」

 ふと聞いていたファンシーズはクスクス笑っていた。リンクは赤いままスネークを見た後、速歩きでマリオの隣まで行ってしまった。

「リンク、そうだったの?」
「マ、マリオさんまでっ!」

 違うって言ってるのに……と少し落ち込むリンクにマリオは微笑した。

「ふふ、分かってるよ」
「リンクさん、子供だねー」

 子リンが言った。子供に子供呼ばわりされた事に、リンクは更に落ち込んでしまった。

「冗談は置いといて、そろそろゼルダのいる家に着くよ」
「一体この世界に何が起こったんだろうな」

 マリオは腕を組んだ。ゼルダの話を聞けば恐らく分かるだろう。
 村の真ん中辺りへ来た時、村人達が彼等を見つめる。スマメンは、浴びる視線やヒソヒソ話が聞こえる中、多少気まずくなりながら歩を進めて行く。

「珍しい容姿をしてるからだと思うので、あまり気にしない方が良いですよ」

 と、リンクが言った。

「ここだよ」

 村に建つ民家より一回り小さい木の家へたどり着いた。子リンは馬を止め、扉を叩いた。

「インパさん、マリオさん達が来ました」

 子リンがそう言うと、扉が開かれる。中から現れたのは、銀の髪を後ろに束ね、身軽な格好をしている女性だ。おまけに、腰に短剣を装備している。

「インパさんっ」

 リンクは思わず前に出た。

「二人の緑の勇者。正に、ゼルダ様の夢のお告げの通りだ」
「失礼ですが、貴方は?」

 マリオは彼女に尋ねた。

「私の名はインパ。ゼルダ様をお守りする者。貴殿方の事はゼルダ様から聞いていた」
「乳母だよ、ゼルダの」

 子リンが付け足した。

「さあ、ゼルダ様がお待ちしている。入りなさい」

 スマメンは家へ入った。
 暖炉の前の椅子に静かに座っている女性がこちらを向いた。王女の容姿に金色に輝く長髪──ゼルダだ。少しハッとした感じで立ち上がる。

「リンク、皆さん、無事に来てくださったのですね」

 安心感に小さく息を吐いていた。

「おう。さっき、お化けと対面してビビったけど」

 マリオは頭を掻いて見せた。
 スマメンはテーブルの椅子に座り、ゼルダもそこへ移る。インパは彼女の側で腕を組んで立っていた。

「ゼルダ、夢のお告げで、俺達が来るのを知ったんだな?」

 リンクがそう訊くと、ゼルダは躊躇いも無く頷いた。

「そして、この世界を再び闇が支配すると言う、神からのお言葉も聞いています」
「それを止めるには、我々の力が要ると言う事だな?」

 マーシスは呟いた。

「そう。私には感じるのです、この闇の力には、この世界とは未知なるパワーが潜んでいます」
「未知なる……」

 スマメンは少し反応した。

「正か、ギガ軍の仕業とか?」

 マリオは言った。

「それは分かりません。けれど、可能性はあります」
「だったら不味いよ!」

 マリオは立ち上がった。

「マリオさんっ」
「一刻も早く欠片を見付けに行かないと先を越される! 早く行こう!」
「待って、マリオさん!」

 ゼルダやスマメンが止めるのも聞かず、マリオが扉に向かって歩き出そうとした時、扉の前に誰かが現れた。見た格好はインパと変わらないが、彼は金髪に、頭や体の一部に包帯が巻かれていた。マリオは突然の登場に思わず肩を上げた。

「まだ居場所も伝えていないのにどこへ行くつもりだ?」
「シ、シークッ!」

 シークと呼ばれた男は、指の各々の間に跳針を挟んでいた。

(……ここで現れても無意味なんじゃ……)

 と、マリオはやれやれと諦め、後頭部を掻いた。

「ボクが悪かったよ、ゼルダ姫様」

 と、シークに言った。シークは、右手に印された黄金色の聖三角形『トライフォース』を掲げた。トライフォースから放たれた光が彼を包み、解き放たれた時は、シークはゼルダの姿に戻っていた。

「ご免なさい、熱血な貴方を止めるにはこの方法しか無くて……」
「ゼルダ様、立派な心掛けです」

 インパは目を閉じて何度も頷いていた。

(やれやれ、仕方ないな)

 マリオは自業自得だと自覚して席に戻った。

「まだ欠片のありかはハッキリしていないのです」
「あ、そうだったんだ」
「……マリオさん、どこへ行くつもりだったんですか?」

 リンクは呆れて訊いた。マリオは、いやぁ、と自分の頭を撫でる。

「なので、今はこの村で待機している事です。準備を整えたり、戦力を上げるのも大事です」
「ごもっともだ」

 口を開いたのはマーシスだった。

「仮にギガ軍だとすると、相手の戦力も何段階かはパワーアップしているだろう」

 リンクはそんな彼に頷く。

「俺達も更に鍛えるべきですね」
「よっし、今度こそ行くか! 皆で鍛えて、欠片を取り戻そう!」

 そうマリオがまた扉へ向かおうとしたが、扉の前にまたもやシークが現れた。さっきよりも更にビックリしたマリオは、今度は尻餅をついた。

「な、何だよ、シークッ!」

 苛立つマリオは、気付けば声を荒げていた。

「その格好で出るつもりか?」
「えっ。だって、いつもの事じゃないか。今までの人はすんなり受け入れてたけど?」
「世界が変われば人も変わる。覚えて置いてくれないか?」
「ど、どう言う意味?」
「マリオさん」

 代わりにリンクが立ち上がって言葉を繋げた。

「さっきの住人達の視線を思い出せませんか?」
「……ああ、言われてみれば。最初は珍しい人達だと思われてたのかって……」
「実は、理由はある」
「えっ?」

 マリオ達はインパに顔を向けた。

「最近、異国の服を着て訪れた者が、詐欺師だったと言う話がある」
「あ、悪人って事!?」
「あれから自分達と同じ服以外の服を着ている者に対しては、警戒心を強めているのだ」
「はあ」

 納得した様なしない様な。マリオ達は微妙な感じだった。

「君達の為に、私が村人の服を用意しておいた」

 インパは言った。そして大きな木箱を軽々と持ち上げ、テーブルの上に置く。中から、ここの村人と同じ服を何着か取り出し、

「さあ、これを着て行くのだ。小動物達には、アクセサリーを付けて貰う」
「やれやれ、この服は着慣れてるんだがな」

 スネークは自分の着ている服を見下ろして溜め息をついた。

「ちょっと待って?」

 マリオが軽く手を上げた。

「正か、ボクの帽子まで取るの?」
「当然だ」

 マリオは、今自分の被っている帽子を指差した。彼の質問にインパは即答した。

「あ、あの、それだけは勘弁して欲しいんだけどー……」

 マリオの帽子は、彼のパワーの源なのだ。帽子が無いと戦いで中々有利にならないのである。

「駄目だ」

 理由を語っても、インパは聞き入れずに首を振る。

「帽子が無くても、私が直に武術を教え込んであげよう」
「インパさんの武術はかなり優れているんです」

 インパに鍛えられた経験があるのか、リンクは自信満々で言っていた。彼女の鍛え方がどんなものか少し不安なマリオだが、仕方なく渋々帽子を取り外した。

「では皆様、頑張ってください」

 いつの間にかシークはゼルダの姿に戻っていた。

「私はここでまだやる事があるので」
「分かった。姫様も気を付けてな」

 カカリコの村人の格好になったマリオは、彼女にウィンクをした。




 カカリコ村を改めて見ると、正に『村』と言った感じだ。陽気に会話を交える主婦。犬を抱えながら散歩するマダム。あちこち走り回る大工達(男の癖に女性みたいな走り方だ)。そして象徴なのか、丘の高い位置にある大きな風車が村を見下ろしていた。

「結構良い村なんだな」

 マリオは辺りを眺めながら、隣を歩くリンクに言った。

「ピカッチュ!」

 マリオの頭の上に乗っかっているピカチュウも好評だ。
 因みにピカチュウは洒落たフードを被っている。

「俺も、この村が大好きです」

 リンクの笑顔は、それはそれは嬉しそうだった。マリオ達も吊られて笑みを溢してしまう。

「でも俺の家は……森なんです」
「……そうだったね」

 初めは何とも感じなかったマリオ達だが、ふとリンクを見て、その気持ちも一変した。リンクの表情は、さっきと違い、悲しい色に染まっていた。

 ──そうか。唯一、暗黒の闇から守られているのは、この村だけなんだよな。

 リンクが育った森は、きっと闇に支配されてしまっているだろう。

(ギガの野郎……)

 ピカチュウの故郷を焼き、カービィの大好きな人々を苦しめ、アイシクルマウンテンの恐竜親子にまで怪我を負わせた。多くの人を犠牲にしてでも欠片を手に入れようとするギガ。奴に対して、マリオは静かに怒りを覚えた。

「チャー……」

 ピカチュウは悲しい目でマリオを見下ろした。

(絶対に許さない!)
「何かを売ってください!」
「ん?」

 いきなり誰かの声を耳にした。マリオ達は我に帰り、顔を上げた。道端に敷かれた一人分の小さなシートに正座をし、ベレーの様な黒い帽子を深々と被った茶髪男が、こちらを見ながら自分の太股を両手で繰り返し叩いている。二人と一匹は一時ポカンとしてしまった。

「良かったら何か買い取りますよ」
「え? あ、どうしようか、リンク」
「そうですね。取り合えず何か要らない物とかでも……」
「あー! それはあー!」

 迷っている間に、突然男が両手と声を上げた。

「ち、ちょっとそれを見せてください!」
「えっ、こ、これ?」

 興奮状態で男が差した指先にあるのは、マリオのポケットに入っている宝玉の欠片だ。僅かな光が放たれている為、近くにいるこの男は気付いたのだろう。

「い、言っとくけど、これは売らないからねっ」

 念のため、マリオは懐に手を突っ込みながら、予め忠告した。

「分かってますよー。そんな恐ろしい物、買い取れる訳がありませんっ」
(恐ろしい物?)

 マリオ達は顔を見合わせ、首を傾げた。
 少し警戒しながら、マリオは男に欠片を差し出した。男は引ったくる様にそれを奪い取った。意味深にジーッと見つめている。

「……ふーむ、これは……なるほどー……」
「な、何か分かったのか?」

 男は目深に被る帽子の影から、目をキラリと光らせた。

「あなた方は、この世界の人間ではありませんね?」

 人差し指を出して断言した。

「え! 何で分かったのっ?」

 村人と同じ格好をしていると言うのに一度で見抜かれてしまった。

「なめないでください、私だって色んな国を旅して来たのですから」

 男は余裕と勝ち誇りを掛け合わせた笑顔で言ってやった。
 そして改めて欠片を見つめる。

「この欠片には様々な不思議なパワーを秘めている様ですね」
「ま、まあな」

 欠片が掛け合わされるし、秘められた力を与えられるし、ボク達をワープさせたりと、この欠片は色んな力を見せてくれる。

「例えるなら、この欠片に選ばれた戦士は……」

 男は言うのに勇気が要るのか、帽子を被り直し、冷や汗をダラダラ流しながら唾を呑み込む。

「どうしました?」

 リンクは心配になると体を少しだけ屈め、男の顔を少し覗き込んだ。男は汗まみれな顔を上げ、漸く口を開いた。

「光の力だけで無く、闇の力……即ち、破壊の力を得る事を許されます」
「闇の力!?」
「破壊の力!?」

 マリオとリンクは順番に言った。ピカチュウは目を丸くしていた。

「まあまあ落ち着いて」

 男は手を出して彼等を制した。

「つまり、闇の力には闇の力で対抗せよと、神はそう仰っている訳なんですよ」
「しかし、逆に闇の力の使い方を間違えると、厄介な事にもなりますよ」

 リンクは腕を組んだ。

「だから選ばれし戦士にだけ許される訳なんです」

 男は話しながらマリオに欠片を返した。

「まあ、裏切ったら終わりですがね」
「……」

 空間の神に選ばれし戦士か。それを裏切る者も出る?

「マリオさん、これは、俺達だけの秘密にしましょう」
「……そうだな」

 マリオは懐に欠片をしまった。




 大木から作られた丸太に、自然に出来た輪の中心に矢が当てられた。それは全ての的に刻まれていた。

「し、信じられない!」

 射終えたスネークは、的当てゲームの主催である女性が見開いてるのも気に留めず、彼女に弓矢を返した。

「動かないターゲットはあまり面白く無い。今度は動く的とか用意した方が盛り上がるだろう」

 そう言い残してその場を去った。女性や客人は、驚きの眼で彼の背中を見送った。
 暫く村の裏通りを歩いていると、スネークの腕を誰かが掴んだ。スネークは直ぐに察して身を翻そうとしたが、相手は即で彼の腕を後ろに回した。関節から走る激痛に、スネークは少しだけ唸った。

「……ほお、この俺の動きを見切れたのは、あいつ以来だな」

 後ろを振り向くと、汚れた灰色のフードとマントをはおっている大男がいた。フードに隠れて顔は見えないが、低い声からして男性だと思われる。

「──俺に手を出すとは命知らずだな」
「……」

 スネークは男を睨む。大男は黙って彼を見ていたが、漸く手を離した。スネークは、右手に握る拳銃を閉まった。もしもの時に隠し持っていたのである。

「ふん。その様なものを突きつけられても、俺は死なないからな」
「俺に何の用だ」

 壁に背中を預け、腕を組んだ。大男も腕を組む。

「懐かしい顔を見掛けたからな、一寸ご挨拶に」
「ああ、最高のおもてなしだったな」

 スネークは冷ややかに微笑んだ。それに対し、大男は、ククッと喉を鳴らした。

「もしかして、お前が仕掛けたのか? あの暗雲」

 そうスネークは肩をすくめて見せた。

「……」




 夜が訪れた。
 村の端に建つ修練場から、激しくぶつかり合う音が響き渡る。

「とっ! てやっ!」

 広い部屋内には、リンクとマリオが武術を競い合っていた。勿論、マリオには帽子が無いと言うハンデがある。流石に中々力を出せない状況だった。

「どうした、技が殆んど空回りしているぞ」

 彼等を見守るインパは、マリオを見ながら言った。

(帽子が無いからだよ!)

 と、内心で泣きながらマリオは彼に向かって攻撃を続けた。

(これならどうだ!)

 マリオは地面に片手を付き、キックを繰り出して足払いを仕掛ける。だが、リンクはそこからいなくなっていた。すると、上から頭をコツンと叩かれた。

「イテッ!」
「あ! すみませんっ!」

 リンクは慌てて謝罪した。

「今までその帽子とやらに頼っていた様だな」

 インパはマリオ達の側へ歩み寄る。マリオは、叩かれた頭を撫でながら黙り込んでしまった。

「マリオと言ったな。人は何故強くならねばならないのか、良く考える事だ」
「……強くならなきゃならない……」

 マリオは頭を抑えながら彼女に振り返った。リンクも彼女を見る。インパは、真っ直ぐにマリオの目を見据えながら、首を縦に一回振った。

「この世に生を受けた者は、宿命を持って生まれた故、強くならなくてはならない」
「宿命……」
「守るべきものがある限りな。肝に命じて置く事だ」

 インパはさっきの場所へ戻った。
 ボク等はスマッシュブラザーズとして色々な世界を旅している。今、守るべきなのは、ボク等の世界。自分達の故郷の為に、強くならなくてはならない。
 マリオは目の色を変え、スッと背伸びした。

「リンク、もう一戦だ!」

 マリオは拳を突き出した。

「ハ、ハイッ」

 リンクは口端を上げて武器を構え、二人は持ち場へ戻った。




 翌朝。
 インパに呼び出されたスマメンは、ゼルダのいる家へ集まった。暗雲の正体が大体分かったらしい。

「私が昨日見た夢、それは神が見せるお告げの続きでした」
「その夢が、暗雲の正体を見せてくれたんだね?」

 子リンは身を乗り出した。ゼルダはアイコンタクトで返事をした。

「どうやら、闇の底へ封印した筈の強大な魔力が復活した様なのです」
「強大な魔力?」

 リンクと子リンは同時に言葉を発した。

「そいつは正か……」
「リンク」

 名を上げる直前で隣のマリオがリンクを呼んだ。

「ガノンドロフの仕業って言いたいのか?」
「だって、それしか考えられないじゃないですか」

 焦る様子で話すリンク。だがマリオは首を横に振りながら言った。

「ガノンドロフはスマッシュ戦士の一人なんだ。こんな過剰な悪さをしたら、王様に異次元空間へ永久追放されるよ」
「そうですけど……」
「……」

 スネークは黙って彼等を見ていた。何かを考えている様に見えるが、口は固く閉ざしている。

「ハッキリしてはいないので、彼が犯人なのかはまだ分かっていません」

 ゼルダは言った。

「ですがこうしている間にも、闇は物凄い勢いでハイラルを覆いつくしています。この村に張ってある結界も、いつ破られるかは時間の問題なのです」
「それなら、ぐずぐずしてはいられないね」

 マリオはテーブルに両手を付けて立ち上がった。

「ゼルダ姫、その魔力、どっから来てる?」
「……ハイラル城からです。この村を出て、そのまま真っ直ぐに行くと分かります」

 ゼルダは城の方角へ顔を向けた。

「よしっ、俺が案内するよっ」

 続いて子リンが立ち上がり、立てた親指を自らの顔へ向けた。

「私はこの村を守らねばならぬ。武運を祈るぞ」

 インパは言った。

「そう、君達の服を返そう。そのままでは動きづらいだろうからな」
「ありがとう、インパさん。
 じゃあ行こうぜ、皆!」




 スマメンはカカリコ村を出た。空は昨日よりも更なる暗闇に覆われていた。

「あまり長居したくないな」

 スネークは空を見上げて呟いた。

「早くあの闇を生み出す元凶を突き止めましょう。時間がありません」

 リンクは言った。

「じゃあ皆、ついてきて」

 子リンは馬に乗り、馬を走らせた。マリオ達も、子リンを見失わぬ為にも全速力で走り出した。
 城下町への入り口は村からそんなに離れてはおらず、マリオ達の疲れの蓄積は少ない方で済んだ。
 城下町は、呪われる前はさぞかし賑やかであったろう。今は黒い霧に包まれ、廃れた町と化していた。

「またゾクゾクして来たな」

 マリオは腕を握って身震いした。そう言った彼にふと振り向いたナナは、何故か彼を見て思わぬ悲鳴を上げていた。それに驚いたスマメンも全員マリオを見ると、一部が悲鳴、もう一部は目を少し丸くしていた。

「またまたぁ。どうしたんだよ、皆?」

 マリオは、皆の痛々しい視線を感じているが、意味がさっぱり分からなかった。身震いは確かにして……あれ? 何だか寒いな……。今回はオプションとして重い気もするけど……。

「隊長! う、う、後ろっ!」

 カービィがわたわたしながら言う。マリオは眉をひそめ、顔を出来る限り後ろへ素早く半回転させた。
 今度は目が無い茶色いゾンビがマリオの背中に乗し掛かっていた。

「わぎゃあああああああぁぁ!!」
「キャー!」

 マリオが悲鳴を上げるとゾンビも悲鳴を上げた。

「マリオさん、奴の目を見ないでください!」
「えっ、わわっ!」

 ゾンビの目が光った気がし、マリオは慌てて目を閉じた。

「ハァッ!」

 子リンはゾンビを後ろから攻撃した。ゾンビは崩れ落ち、倒れ込んだ。

「わ、スネークさん!」

 ポポは彼を見るなり目を丸くしてあたふたした。

「ボスに近付く度に、敵キャラのレベルもアップと言う奴か!」

 スネークは後ろへ銃撃した。彼を襲おうとした別のゾンビが倒れた。

「ピカッチュ!」
「ピィチュ!」
「プリッ」

 ポケモン達も、襲い掛かろうとするゾンビにトリプル攻撃で挑んだ。
 だがゾンビは次々と現れ、こちらへ歩んで来る。

「畜生、キリが無い!」

 マリオは汗を拭った。

「ならば、イチかバチか賭けをしよう」

 マーシスはそう言うと高くジャンプした。何をする気だとマリオ達は彼を見上げた。マーシスは剣を天に掲げ、刃から強く白い光を放った。それは広範囲に広がり、するとゾンビは光を浴びた途端、その場で石の様に固まってしまった。

「……!」

 スマメンの中でも、リンクや子リンが特に驚いていた。

「さあ早くっ、急いでこの町から脱出するのだ」

 マーシスが言い、スマメンは町の外へ走っていった。
 城下町を抜け、マリオ達は城を見上げた。矢張り城からは最も邪悪な気配が漂う。

「マーシスさん」

 リンクは表情を曇らせていた。

「何故、リーデッド達が光に弱いと分かったのですか?」

 マーシスは彼を暫し見た後、城へ目線を戻し、

「アンデッド系のモンスターは、太陽の光に弱いと言う。修業をしている間に得た知識だ」
「そうですか」

 リンクは何と無く納得した。

「あの城には」

 浮遊しているメタナイトは言った。

「人の気配がある」
「正か……人質!?」

 隣を飛ぶカービィが顔を青ざめて言うが、メタナイトはカービィを見ると、顔を横に振った。

「それは違う。これは……」
「俺の気配とでも言いたいのかな?」

 城の前の空中から灰色のフード男が現れた。大きな体格に、マリオ達は思わず圧された。

「だ、誰だっ!?」

 マリオは問う。フード男はそれを聞く度ニヤリと笑んだ。

「俺の声を覚えていないとは言わせないぞ」
「?」

 マリオ達は、彼の声を思い出そうとした。どこかで聞いた覚えのある声質だった。
 しかし、唯一スネークが、既に知っている様なそぶりだった。何事も動じず、黙り込むだけだ。

「ならば、思い出させてやろう」

 片手を天に向かって掲げ、手から電流交えた悪魔の光玉を作り出し、それはみるみる大きくなる。手を一振りし、スマメンから軌道を反らした状態で光玉を放った。後ろの岩の壁が一気に崩れ落ちる。

「あの光玉、見覚えがあるぞ」

 マリオは恐々と呟いた。魔力の力では無く、あのフード男が一体誰なのか、分かったからだ。

「ま、正か……」

 リンクと子リンは皆の前に出、剣と盾をとっさに構えた。
 フード男はフードを掴み、思い切り取り払った。

「久しぶりだな、また会えて嬉しいぞ」

 黒の肌に赤髪の短髪、そして黒い服。彼を見て一部が声を上げた。

「ガノンドロフ!!」










 ──to be continued──