操り人形








「お前は……クルヴィ!」
「覚えてくれてたんだ? 嬉しいね」

 クルヴィと呼ばれたピカチュウのクローンは、大人しくなったリザードンの肩に座り、小さな手を組んで皆を見下した。

「何でお前がここにいるんだっ」

 マリオは睨む様に彼を見上げた。
 リンク達は戸惑っていたが、あいつが例のピカチュウのクローンなんだと、今分かった様子だ。

「何でって、分かるでしょ? 欠片を頂きに来たんだよ」
「だけど、欠片を持っていなければ、お前達はこの世界には来れない筈だろ!」

 クルヴィに指を突き付けてマリオは叫んだ。そう、マリオ達がこの世界へ来れたのは、マリオが持っている欠片に寄る力なのだ。それ以外の者が他の者の世界へ来るのは不可能なのである。
 その問いにクルヴィは、血の色をした目を細めた。

「君達は知らなくても良いよ。それより、リザードンを早く止めたらどうなの?」

 そう言った後、リザードンは機械の如く再び動き出した。翼を広げ、上へ上へと舞い上がって行く。マリオ達は、何をする気だと彼等を見上げる。大分高いとこまで来たリザードンは、クルヴィが上げる片腕を下げた瞬間、斜め下へ向かって一気に急降下をした。そして地面すれすれのとこで高速でUターンをした。

「うわあ!」

 そこから爆発的に発生した暴風にマリオ達は吹き飛ばされてしまった。全員、木や地面に背中を思い切り叩き付けられる。幸い気絶した者はいなかったが、かなりのダメージはくらっていた。

「うぅ……み、皆、大丈夫か……」

 マリオは、体を痙攣させながら立ち上がった。他の者達もよろめきつつ立ち上がった。

「早くあいつを止めないと、トキワの森だけじゃない、世界が炎で焼き尽くされるっ」

 レッドは怒りの表情を露にし、再び空へ飛び立ったリザードンを見上げた。ベルトに付けているモンスターボールを全て地面へ投げ付け、手持ちポケモンを全て外へ出した。

「よしっ! 本戦開始だっ」

 マリオの声を合図に全員武器や技を構えた。

「また来たぞ!」

 スネークが叫んだ時は、リザードンが同じ技を繰り出して来た時だった。そこへリンクは弓を取り出して矢を構え、間を置く事無くリザードンに向かって矢を放った。

「グアァッ」

 矢は見事にリザードンの片翼を貫いた。バランスを崩したリザードンは思い切って地面へ激突した。急降下で蓄積された重力に寄って、ダメージも相当なものだと見る。クルヴィは危うく自滅技を逃れ、リザードンの頭に軽やかに着地した。

「やった! これで奴は空を飛べなくなったぞ」

 マリオ達は有利になったととらえていた。
 リザードンの様子をジッと見ていたクルヴィは、クスッと笑うとマリオ達に振り向いた。

「勇者さんの攻撃が裏目に出ちゃったみたいだね。折角手加減してたのにさ……」
「えっ……」

 それを聞いたリンクはドキッとした。リザードンは目を覚まし、負傷した翼を閉じると、ゆっくりと立ち上がった。

「君達は、よっぽど熱いバトルが好きなんだね。良いよ、灰になるまで遊んであげるから」
「……確かに嘘鼠の言う通りだな……」

 スネークの呟きにマリオ達は振り向いた。

「空中戦は罠だったんだ。その能力を封じられたあの怪物の次の攻撃は、炎だ。炎戦は、この森全体に被害が及ぶ」
「! し、しまったっ……」

 リンクはとんでもない事をしてしまったと顔色を悪くした。彼を見るクルヴィは吹き出した。

「ご苦労様」

 気付けばリンクの目の前にオレンジ色の物が。リザードンの振った尻尾がリンクを攻撃したのだ。

「ぐはっ!」

 再び木に叩き付けられたリンクは、今度こそ気絶してしまった。

「リンク!」
「隊長、勇者さんは俺に任せろ」
「! スネーク……」

 マリオが彼の安否を伺おうと走り出そうとしたが、先にスネークが彼の元へ来た。

「心配するな、気を失ってるだけだ。俺はこいつを安全な場所へ連れて行く。あんた達は、あの炎の怪物を何とかするんだ」
「……あ、ああ。頼んだ」

 スネークはリンクを担ぐとその場を離れた。

「優秀な戦士が二人もいなくなっちゃったね」

 正に人事でケラケラ笑うクルヴィ。そんな彼をマリオ達は思い切り睨んだ。

「リンク達の意志を無駄にするな! 行くぞっ」
「カメックス!」

 レッドは、手持ちの内のポケモンで、水色の肌をしている大きな亀ポケモン──カメックスを呼んだ。カメックスはリザードンの前に出る。

「ハイドロポンプだ!」

 レッドがリザードンを指差して叫ぶと、カメックスは甲羅の肩の部分から白色の大砲を出し、巨大な水の塊を発射した。

「うわっ」

 クルヴィはそこから離れて回避した。

「グァアアァァァッ!」

 ほのおタイプのリザードンに水技は大ダメージだ。
 休まずカメックスの頭を足場にし、ピカチュウ、ピチュー、プリンはジャンプしてリザードンへ飛びかかる。プリンは往復ビンタをリザードンの頬にお見舞いした。痛々しいビンタの連続音が響く。続いてピチューは自らの体を回転させ、リザードンの腹部へロケット頭突き技を繰り出した。腹部に減り込み、リザードンは息を吹く。おまけにピチューも自分で目を回してしまい、プリンに運ばれて行った。そしてピカチュウは顔を上げると、どす黒い曇り空から光を呼び出し、リザードンへ大ダメージの雷をくらわせた。リザードンはかなりのダメージをくらい、それでも振り切ろうと首を振った。

「まだまだっ。これでとどめだっ!」

 最後にマリオは、リザードンへとびきりのアッパーを仕掛けた。下からストレートパンチを受けたリザードンは、首が折れるか折れまいかのとこまで顔を反返らせた。そして、勢い余って後ろへ仰け反り、そのまま倒れてしまった。

「やったっ!」
「……ふーん。結構やるんだ」

 クルヴィは倒されたリザードンを見詰めながら頷いた。

「でも、こんなんで負ける訳無いよね、リザードン君?」

 クルヴィは、リザードンの頭をポンポン叩きながら、静かに呟いた。すると体がピクンと動き、リザードンは体を起こした。

「な!? そ、そんなバカな……っ!」

 マリオ達は冷や汗を流し、一歩後ずさった。

「もうリザードンは動ける体じゃないっ」

 レッドは叫んだ。

「……フフッ」

 クルヴィは、側にある木の枝に移ると、クスクス笑った。

「奴は僕の操り人形さ。幾等倒しても無駄って事。それに、ロケット団に鍛え上げられたポケモンだから、かなりの実力者だ」
「なっ! ロケット団のポケモン!?」
「さあリザードン、森ごとこいつらを焼き殺せ!」

 マリオ達は酷く驚いたが、気にしないクルヴィはリザードンに命令を下した。リザードンは大怪我をしているのにも関わらず、また火炎放射を出そうと息を吸い込んだ。

「危ないっ!」

 繰り出された火炎放射は、容赦無く森を黒焦げにしていった。

「あちちっ! うー畜生っ」

 マリオ達は大木の陰に身を隠した。

「これじゃ、らちがあかないっ。やっぱりあのクローンを何とかしないと」

 レッドはそう言うがマリオは首を横に振った。

「でもリザードンはあんなに暴れてる。クルヴィばっかに手子摺ってたら、森は更なる危険に襲われるよ……こうなったら、同時に二匹を倒すしか無いっ」
「……くそっ。リザードンは……リザードンは、何も……悪く無いのに……っ!」

 レッドは唇を噛み締め、涙を流しそうな位に悔やんだ。

「でも、あいつ、ロケット団のポケモンだったんだろ? 悪心はまだあるかも知れない……」
「ロケット団はポケモンを道具として扱っていたんだ! ポケモンは……何も関係無いっ……」
「レッド……」
(伊達にポケモンマスターを名乗ってる訳じゃない。本当にポケモンを想っているんだ……)

 マリオはグッと堪えると、レッドの肩に手を置いた。

「気持ちは凄く分かるよ。けど、今はピカチュウの故郷の森を……危険にさらされている人々を救わなきゃ。この世界の未来を委ねるって、君の大好きなおばさん達が言ってたろ?」
「……」

 レッドは目線を反らしていたが、マリオに向くと、頷いた。

「分かってる……俺も心を鬼にするよ」
「その意気だ」
「無駄話はおしまいかい?」
「! わわっ!」

 クルヴィの声と同時に大木が炎に包まれる。マリオ達は慌ててそこから離れた。
 リザードン達の前に全員は姿を現すと、改めて身構えた。

「いくでしゅよお!」

 プリンはクルヴィに向かってジャンプした。

「んっ!?」

 彼が怯んだとこで頬を思い切りはたいた。

「ぐっ」

 手の衝撃でクルヴィは枝から落ちたが、落下中に体を回転させて着地した。

「ピカッ」
「ピチュッ」

 クルヴィの前に三匹のポケモンが現れる。交互に見ながら、クルヴィは余裕そうに目を細めた。

「……三匹で挑むとは。結構スマブラにも卑怯なとこがあるんだね」
「お互い様でしゅっ! 行くでしゅっ」
「まあ、集まっても何ら変わりないからいっか……行くよっ」

 一方、マリオとレッドはリザードンを相手に挑んだ。

「かかってこい、リザードン!」
「グアァッ!」

 リザードンは手を振り上げた。鋭い爪を光らせ、マリオ達に向かって振り下ろした。

「はっ!」

 マリオは黄色いマントを取り出し、爪を受け流した。おまけに、マントの力でリザードンは後ろへクルンと回ってしまった。

「!?」

 一体何が起こったのかと分からず、リザードンは獲物を見失ったとキョロキョロさせていた。

「今だ、バタフリー! サイケ光線っ!」

 隙を狙ってレッドが叫ぶと、バタフリーは口から光り輝く光線を吐き出し、リザードンの背後へお見舞いした。

「グオォォッ……!」
「背中を攻めるのは一寸反則だけど」

 マリオはマントを首に巻き付けながら言った。

「とにかくリザードンを気絶させるんだっ」
「分かってるさ」

 バタフリーがレッドの側へ戻るとレッドは返事をした。

「けど、まだ相当な体力があるみたいだ」

 リザードンはまだ倒れず、立っている。マリオはそのドラゴンを見詰めながら言う。

「早く何とかさせないと、トキワの森は完全におしまいだな」
「休まず行こうっ!」
「グウゥ……グアッ!」

 リザードンはこちらを向くと、傷ついていない翼を一振りした。それもかなりの力があり、マリオ達は再び吹き飛ばされる。

「わっぷ!」




「捨て身タァックル!」

 プリンはくるっと丸くなり、高速回転させるとクルヴィにアタックした。ドカッと言う音と共にクルヴィは吹っ飛ばされる。

「うわっ! く、中々やるじゃん……」

 木に足を付いてダメージを最小限に抑え、下へ下りた。首をブンブンと横に振って立ちくらみを消し、そして怪しげに笑んだ。

「ならば、こっちも本気を出させてもらうよ」

 クルヴィはその場で足を動かし、素早くあちこちに動き回った。プリン達はクルヴィを目で追うが、彼は次第に見えぬ程の速さで駆け抜ける。

「!? えぇっ!」
「ピカッ!」

 次第にクルヴィの体から、彼と同じクルヴィが何体か現れた。気付けば彼と同じ表情をしているクルヴィの分身達がプリンらを囲んでいる。

「これは……影分身でしゅかっ!」
「フッフ。本物がどれだか分かるかな?」

 クルヴィと分身は同時に同じ言葉を発する。見た目も全くクルヴィのまんまで、プリン達にはどれが本物か見当がつかない。
 そうこうしている内に、クルヴィ達は、真ん中の三匹の獲物に十万ボルトを繰り出した。

「きゃああ!」
「ピカピイイィ!」
「ピィチュウウ!!」

 同じでんきタイプのピカチュウやピチューでさえ、クルヴィの鍛え上げられた電撃にはかなりのダメージを受けていた。やられる様を楽しげに見ているクルヴィは、強い電気をそのまま喰らわせた。




「あでっ!」

 リザードンの攻撃で地面に叩き付けられたマリオ達。体力を大量に消耗してしまい、立ち上がるのが精一杯になってしまった。

「駄目だっ……さっきと違って、全然歯が立たないよっ!」

 マリオは、打たれた腕を抑えて言った。

「クルヴィの操る力は、普通じゃないんだな……」

 倒れてしまったポケモン達を見ながらレッドは言った。
 マリオは頭の中で思い浮かんだ。

(……リンクとスネークは戦闘に参加出来ない。後もう一人……もう一人誰かが戦闘に来てくれたら……っ)

 リザードンがこちらへ歩み寄って来る。マリオ達は彼を見ながら息を呑んだ。

(何か……何か方法は無いのかっ……!)
「グオォアァ……!」

 力を振り絞って、リザードンは再び翼で強風を巻き起した。

「わあぁ!」
「レッド!」

 踏ん張っても、レッドが唯一風に吹き飛ばされてしまった。彼の背中の先には大きな岩が待ち構えている。ぶつかったらひとたまりも無い。

「まずい!」

 マリオはマントを使って低空飛行し、レッドを捕まえようとするが、どう足掻いても間に合わない。

「くそっ! レッドオォ!!」




「ピ……」

 クルヴィの電撃が止んだ。すると三匹の内、ピチューが遂に倒れてしまった。

「ピチューッ!」

 ピカチュウ達は、気を失ったピチューを何度も揺さぶった。しかし、ピチューが起きる気配は見せない。

「相変わらず弱いね、その小鼠さん」

 分身中のクルヴィは、やれやれと首を横に振った。

「トレーニングに結構励んでいたのに、ちっとも上達してないじゃないか」

 上から言う様にクルヴィはピチューに罵声を浴びせる。

「っ……!」

 それを聞いたピカチュウとプリンは、怒りを込めた目でクルヴィ達を睨み付けた。クルヴィは全く気にしない様子で、呑気に自分の頭を片足で掻いていた。

「怒ってないでさっさと本物を見付けたらどうなの? ま、見付けるには相当な時間と体力がいるだろうけどね」
「うぅ……」

 ピカチュウ達は悔しがるが、自分達もかなり負傷していた。分身を一匹一匹倒すにはかなりの時間が要る。

「これでとどめだよ」

 分身達から電気が走り出す。今までよりも強い気が感じられる。今度はフルパワーで仕掛けるつもりだ。ピカチュウとプリンは防御態勢を取るが、やられる覚悟はしていた。
 二チーム共々、絶体絶命だった。

「トルネエェェドっ!」

 その時、どこからともなく高い声がした。ピカチュウ達だけで無く、クルヴィも驚いて辺りを見回した。そうしている間に、木々の奥から大きな竜巻がやってきた。明らかにクルヴィ達の方へ向かっている。

「! 何!」

 その竜巻はプリン達を除いて、クルヴィ達を竜巻へ巻き込んだ。

「ぐあっ」

 分身のクルヴィは、竜巻に触れた途端に消えてゆく。そして竜巻が消え、中から現れた一つの大きな星は別の方へ向かった。気を取られていたピカチュウ達はクルヴィの方を見た。すると、彼の分身は全て消えていて、唯一消えなかったクルヴィがいた。

「し、しまった!」

 影分身を消されてしまったクルヴィは戸惑っていた。

「あいつでしゅ!」
「ピッカ!」

 プリンが指を差し、ピカチュウは頷いた。

「さあ、反撃開始でしゅ!!」

 後少しで岩に激突するとこのレッドの後ろに、何か光るものが通りがかった。さっきの大きな星である。その光はレッドをぎりぎりのとこで受け止め、マリオの側まで来た。

「ふうっ、危なかったぁ」
「カ、カービィ!!」

 大きな星のワープスターに乗ったカービィが笑顔で参上したのである。休んでいたお陰で、怪我もすっかり治っていた。

「皆、僕をほったらかしてバトルしてるなんて狡いよお!」

 時と場所を弁えず無邪気に地団駄踏んでいる。
 ぽかんとしていたマリオだが、ハッと我に帰った。

「それどころじゃないっ。カービィ、協力してくれるか」
「言われなくても分かってるっ」

 カービィは、待ってましたとでも言う様に元気良く敬礼をした。元気になって何よりだとマリオはカービィに笑顔を見せた後、ワープスターに乗っているレッドへ顔を向けた。

「レッド、大丈夫か?」
「あ、ああ。有難う、えーと、カービィ」

 礼を言ったレッドにカービィは振り向くと、片目をパチンと閉じた。

「レッド君はこの星に掴まってて。ここにいれば、安全だからね」

 カービィはワープスターから浮遊し、マリオの前まで来た。

「で、隊長。僕は何をすればいい?」
「そうだな」

 マリオは腕を組みながらレッドの方を向いた。

「レッドも出来る限り協力してくれ」
「うん、オッケー」

 マリオはカービィとレッドに、ある案を小声で言った。
 その後ろから、獲物を見付けたリザードンが、ゆっくりと歩み寄る。

「ピチューをバカにした罪を償ってもらうでしゅ!」

 プリンはタタタタ……とクルヴィまで走る。共に走るピカチュウは、走りながら体中から放電させる。その時、プリンはクルンと丸くなり、転がり始めた。

「ピカアァ!」

 すると、ピカチュウは電気をプリンへ送り込んだのだ。それを見るクルヴィは赤い目を丸くした。

「なっ……自分の仲間に!?」
「怒りの電撃捨て身タックルでしゅー!」

 超高速で回転させるプリンの体は、ピカチュウの電撃を浴びず、回転の外でその電気を操れた。そしてそのスピード感は、クルヴィに回避させる余裕を与えなかった。

「うあぁぁっ!!」

 クルヴィはプリンとピカチュウの合体技をくらい、宙を舞う。ピカチュウは、反動でフワリと浮かび上がったプリンの球体を飛び、クルヴィの真上まで飛んだ。

「ピイカアァァ!」

 まだ出している電気を自らの体に浴びせ、体をドリル回転させて急降下した。

「ぐあぁ!」

 見事クルヴィにスペシャル技をお見舞いした。その衝撃でクルヴィは地面へ叩き付けられた。
 ピカチュウとプリンは攻撃を終らすと優雅に地面へ着地した。

「く、く……そ……っ。こんな……奴らにぃ……っ」

 大ダメージを受けたクルヴィはぜえぜえ息を荒らし、体を震わせながら立ち上がろうとしていた。

「行くぜ、リザードンっ!」
「?」

 リザードンは何をするつもりだと目をぱちくりさせた。マントマリオは、なんとカメックスの大砲前で宙に浮いているのだ。

「カメックス! ハイドロポンプ!」

 ワープスターに乗りながら、レッドはカメックスに命令を下した。カメックスはマリオの背中に向かって水大砲を発射させた。

「うおおおぉぉっ!」

 マリオは水の力でリザードンへ向かって突進する。その直前、カービィ所持のファイナルカッターを構えた。

「グッ!?」

 それを見たリザードンは何だ!? と怯んだ。

「くらええええええ!!」

 弱点である水とスピード、そしてマリオの腕力で、カービィのカッターは鋭い水の刃と化し、リザードンを切り裂いた。

「グオアアァァァァァ!!」

 耳が痛くなる程にリザードンは悲鳴を上げた。マリオはリザードンに背中を向けて立ち止った。リザードンは倒れ、今度こそ戦闘不能となった。

(大丈夫だ、急所は外してある)

 マリオは背後で倒れたリザードンに、心で語りかけた。

「な、何をしている、リザードン。さっさとそいつらを……っ」

 息を荒らしながら命令するクルヴィ。しかし、例え倒されてもクルヴィの命令を聞けば起き上がる彼は、もう動かなくなっていた。

「な、なぜだっ……どうした、リザードンっ」

 言う事が聞けないのかとクルヴィは焦った。

「フリーッ」
「!」

 リザードンの上からバタフリーが翼を動かし、青い粉を振り掛けていた。青い粉の正体は『眠り粉』で、リザードンは深い眠りについてしまっているのだ。

「っ……くそ……覚えていろっ!」

 クルヴィはそう捨て台詞を残し、その場から姿を消した。

「ピカッ!」
「あ、待ちなしゃい!」

 後を追おうとしたピカチュウ達だが、クルヴィは跡形も無く消え去った。

「うぅ、逃げられたでしゅっ……」

 プリンは手を握り締めながら言った。
 レッドはモンスターボールを懐から取り出し、リザードンに向かって投げた。

「行け、モンスターボール!」

 リザードンの近くまでいくとボールはパカッと開き、リザードンを中へ吸い込んだ。地面に落ち、暫くぴくぴくと動いていたがそれも静まり、ボールは見事リザードンを中へ収める事が出来た。

「やった! リザードンを捕まえたぞ!」

 ワープスターから降り、レッドはボールを拾い上げて空へ掲げた。
 リザードンがゲットされたからか、トキワの森を燃やしていた炎もすっかり消え去った。後は、一部焼け野原と化した森となった。

「そうか、もうロケット団のポケモンじゃないから野生化してた訳か」

 と、マリオは考えながら言った。

「隊長、やってくれたな」
「皆さん、本当に凄いですっ」

 木の影から、スネークと、スネークの肩に自分の腕を預けているリンクが現れた。

「スネーク! リンクっ!」

 マリオは笑顔で二人の元へ行った。

「皆さんでポケモンセンターへ行きましょう。皆の手当てをしなくちゃ」

 レッドはモンスターボールと、自分のポケモン達を見て言った。マリオ達も彼の言葉に頷く。

「? おい、あれは何だ」

 スネークは、リザードンがゲットされた場所を見ると言った。全員そこを見ると、地面から何か光る物が見えた。マリオは咄嗟に叫んだ。

「欠片だっ」
「ピカピッ」

 一番近くにいたピカチュウは、光る場所の地面を掘る。中からは虹色ダイヤの小さな欠片が顔を出した。躊躇無くピカチュウはそれを手に取った。

「ピカッ?」

 すると、欠片からは、マリオの時と同じ光が放たれ、ピカチュウの体を包み込んだ。そして、ピカチュウの中へとその光は吸い込まれて行った。

「欠片の能力、今回は鼠さんへ差し出したか」

 と、スネークは呟いた。

「流れ星の噂は、本当だったんだな」

 レッドは驚いて言った。




 トキワの森事件の真相は明らかになった。あの森の様子が変わったのは、クルヴィが凶暴なポケモン達を操っていた所為である。
 現在、ポケモン警官達が、そのポケモン達の捕獲に向かっていた。

「皆、酷い怪我ね。でも、全員の命に別状は無いわよ」

 ポケモンセンターの看護士は、一部包帯を巻かれているマリオ達に笑顔で言った。マリオ達はそれを聞いて、心から安堵の溜め息をついた。
 病室にいるピカチュウ、プリン、ピチュー、レッドの手持ちポケモン、そして、先程ゲットしたリザードンは、心地良く熟睡していた。

「ねえねえマリオ隊長っ」

 あまり怪我をしていないカービィはマリオの頭の上に乗っかると言った。

「どんなバトルだったの? 僕民家で寝てたから前半戦は分からなかったんだけど……」
「ハイハイ、後で話すから」

 本当にカービィはバトル好きだなあと、マリオは笑顔で溜め息をついた。

「今度こそ、ロケット団に悪用されたポケモンはいなくなったと願いたい」

 レッドは、リザードンを見詰めながら口を開いた。マリオは、後ろからレッドの肩に手を置いた。

「きっと、もう大丈夫だよ」
「……ありがとう、マリオさん」
「ピカチュウの故郷の大半は焼けちゃったけど、ボランティアが植木活動をしてるんだよね? ボクも手伝うよ」
「僕も!」
「俺も手伝いますよ」
「まあ、協力してやるか」

 マリオと仲間達は笑顔で言った。レッドは鼻を啜ると、縦に頷いた。
 彼等は思い出す。戦いが終わって森を出る際、ピカチュウが悲しい目で、変わり果てた自分の故郷を眺めていた事を。生き物は故郷と言う場所で生まれ、そこで強く育つ。数えきれない程、沢山の思い出が詰まっているふるさとを破壊されるのは、許される事では無い。
 マリオ達は、絶対にギガよりも早く欠片を取り戻そうと、改めて決意した。




 数日後。
 別れの時間がやって来た。
 トキワシティの出口で、住人達はマリオ達を見送る。

「本当に残念ねえ。もう少しここにいてくれたら、養子にしてやっても良かったのにねぇ」

 民家の中年女性は残念がって言った。マリオ達は苦笑いをしていたが、内心は結構ですときっぱり言っていた。

「ピカチュウ、元気でな」
「ピッカ」

 レッドはピカチュウを強く抱き締めた。

「故郷が元に戻るまでは結構時間がいるけど、辛抱してくれるか?」
「ピカッチュ!」

 悲しむと思っていた皆だが、それどころか、ピカチュウは明るく返事をしていた。

(ピカチュウ、強くなったな)

 マリオはピカチュウを見て思った。
 レッドは微笑んだ後、プリン達を見た。

「プリンにピチューも、頑張ってくれ」
「プリッ!」
「ピッチュ」

 プリンとピチューも元気な笑顔を見せた。
 レッドはピカチュウを降ろす。ピカチュウは一端レッドに振り向いてから、マリオの頭の上に戻った。

「リザードンも無事で何よりです。レッドさんの新パートナーになると聞いて安心しました」

 と、リンクは微笑んだ。

「立派なポケモンに育ててみせるよ」

 レッドはリンクに拳を見せた。

「トキワの森の復興は、カントーボランティアが全力を尽くしています。どうか皆さん、お気を付けて」

 ジュンサー始め、警察官達は敬礼して言った。
 レッドはマリオの前に立った。

「また遊びに来てくれよ」

 そう言って手を差し出す。

「今度は色んな街を案内するからなっ」
「……ああ」

 マリオ達は少し表情を曇らせた。ここへ来れたのは、欠片の導きがあったからだ。その欠片を手にした今、この世界に住むピカチュウ達を除いて、スマブラ戦士が来ることは恐らく無いだろう。だが、その複雑な気持ちを隠そうとマリオは笑顔を作り、レッドの手を確りと握り締めた。

「ピカピッ」

 ピカチュウは懐から欠片を取り出した。マリオもポケットから欠片を取り出す。欠片はフワリと浮かび上がり、二つが一つへ合体した。宝玉の欠片が少し大きくなり、そして、白く優しい光を放ち始めた。

「じゃあ皆、元気でね!」
「ありがとなーっ」

 マリオ達は別れを告げ、レッド達も手を振る。
 光は大きくなってマリオ達を包み込み、そして、彼等と共に消えていった。










 ──to be continued──