プププランドの戦友 広がる青空に、少量の雲が気持ち良く流れてゆく。緑の山が見渡せる原っぱには土の道が続いており、側を木々や花が所々に生えていて、まるで絵本の世界だ。 歌を歌う、黄色い小鳥が数匹、春風を受けながら空を飛んでいた。だが、目の前に突如白い光が現れたので、目を皿の様にして驚くと反対方向へ飛んで逃げてしまった。その光は大きくなってから直ぐに小さくなり、消えたと同時にマリオ達がそこに現れた。 「どわあああ!」 今回も地面から少し高いところに現れ、またマリオ達はヒューッと落ちていく。お馴染み、リンクとスネークは地面へ無事着地。そしてマリオは、ピチューとプリンをプラスして、今度は四の生き物の下敷きになった。 「ぐぇ……っ!」 胃の中から何かが出てきそうな勢いでマリオは変な声を発した。彼の上には、下がクッションでホッとしているカービィとポケモンズ。 「ま、またですか」 リンクとスネークは後ろにいるマリオ達を見下ろし、リンクは冷や汗をかいて呟いた。 「……も、もお……欠片を見付ける前に、死んじゃいそ……」 下敷き状態のマリオは地面に突っ伏しながら言った。 「……」 マリオに乗ったまま、カービィは辺りの景色を、暫く無言で見渡した。 「ここ……僕らの星だっ」 「何だって?」 マリオは体をガバッと起こした。その弾みで、上に乗っかっていたピカチュウ達は後ろへ転倒してしまった。カービィはタイミング良く浮遊してそれを回避する。 マリオに向くと、間違いないと頷いた。 「ポップスターの中の国で、プププランドって言うんだ。ここもどこかに欠片があるって事だよね」 「間違いは無いだろうね。光が導いてくれたんだからな」 「で、カー君の町ってのはあるのか」 スネークは腕を組むとカービィに問い掛けた。カービィは、うーんとキョロキョロさせた後、道の奥を指差した。 「あっちだよ」 笑顔で指差すのだから恐らく間違いは無いのだろう。 「よしっ。そうと決まれば情報集めだ」 確りと立ち上がったマリオは、カービィの差す道の奥を睨んだ。 「それに、小腹も減った事だし」 マリオは自分の腹を軽く擦った。 「任せて。レストランはちゃんとあるよ。僕が案内するからっ」 カービィは自信満々な笑顔でマリオに言った。 「……」 カービィの住む町にマリオ達は辿り着いた。しかし、スマブラメンバーは入口で佇んでしまった。まるで固まっている様に動かず、町中を凝視している。 カービィの話に寄れば、町は小さいが、明るく平和で、人も沢山住んでいて賑やかだと言う。見た目は確かに、丸っこい家々や店、可愛らしいレストラン等が建っていて、それは住人がいれば賑やかな話になるだろう。 しかし、今の町を一言で言えば、ゴーストタウンだ。住人は人っ子一人おらず、おまけに果物や野菜が売っていそうな屋台を見てみても、人はおろか、売り物を入れると思われる箱はもぬけの空。ピカチュウとピチューはレストランの内部を窓から覗いてみたが、後から来たマリオ達へ顔を向けると悲しい顔で首を横に振った。今のこの町に似合う、からっ風が枯れ葉を飛ばした。 「初めて来たのにも関わらず……」 見開いているスネークが言うと、 「妙だって言葉が最初に浮かびます」 同じく目をぱちくりさせているリンクが続いて言った。 「どうなってるんだ? なあ、カービィ」 ピカチュウ達が戻ってくると、マリオは側で浮遊しているカービィに訊いた。カービィは汗を流し、ハテナを幾つか浮かべている。 「おーい、みんなぁー!」 カービィは町全体に響く位に大きな声を上げた。数回こだまし、空しく消えてゆく声。しーんと静まっても、一人も現れる気配や、返事は返って来ない。マリオ達も協力して何回も叫んだが、誰も出てこなかった。 「家まで行ってみましょう」 リンクは一番近くにある民家へ向かった。マリオ達もそれに続く。扉の前で立ち止まり、皆を向いてから再び扉を見て、数回ノックしてみた。 「あのー、すみませーん」 だが、無反応だった。もう一度試みたが、結果は同じだった。 「無駄だ。何度呼び掛けても、皆恐れていて外に出れないのだ」 その時、上空のどこかからか声がした。マリオ達は驚いて辺りを見回した。声の主はマリオ達の後ろへ降りてきた。 「あっ!」 振り返ったスマメンは驚いた。そこに立っているのは、カービィと同じ形と背をしていて、青いマントをはためかせた白仮面の男。 「久しぶりだな」 「メタナイトッ」 マリオは彼の名を呼んだ。 「うわーっ。久しぶりだね、メタナイト!」 さっきまで落ち込み気味だったカービィだが、彼を見た途端、パッと無邪気な笑顔になった。そして飛び付く様に彼の前まで飛んできたのである。 「相変わらずだな、カービィ」 メタナイトがどんな表情をしているのかは伺えないが、声の色からして呆れていると分かる。分かっているのかいないのか、カービィはえへへと自分の頭を軽く叩いて見せた。 「メタナイト、今の言葉は一体、どういう事ですか?」 と、リンクは訊いた。メタナイトは彼を見ると、 「まずはここにいても仕方がない。私の隠れ家へ来なさい」 そう言うとメタナイトは自分の隠れ家へ向かって歩いていった。スマメンは顔を見合わせ、彼についていく事にした。 町の外れの木の側には、小さな穴と、その穴から地下へ続く梯子があった。そこを下りると暗い地下室に出た。木で作られた隠れ家で、一部、古い本や資料が注ぎ込まれている棚があり、真ん中には小さなランプと、地図、そして羽ペンやインクを乗せた木のテーブルが設置されている。 ランプ一つしか無い為に暗くて狭い一部屋だが、全員入る事は出来た。 メタナイトは椅子につくと、地図を見ながら口を開いた。 「少し前からだ。プププランド全体にあの様な事件が起こっている。原因はデデデ大王だ」 「デデデデ?」 目を上に上げて名前を言ってみたマリオだが、メタナイトに冷たく突っ込まれる。 「デが一つ多い、マリオ。プププランドを治めている権力者だ。彼はある日突然、住人の食べ物を全て取り上げてしまったのだ」 「何だってぇ!?」 ぐぎゅるるる……。 マリオは叫ぶと同時に、カービィと共に自分の腹を思い切り鳴かせた。二人は自分の腹を見下ろす。メタナイトは、ふうっと溜め息をついた。 「すまない。私も今、手元に食料を残していない」 「そ、そんなぁ……」 マリオとカービィは机に伸びてしまった。二人を、他のスマメンは哀れな目で見守る。 「これ位の事で我慢出来なかったら、俺は傭兵失格だな」 腕を組み、二人を見ながらスネークは言った。そんな彼に、リンクは悲しい笑顔をしてみせた。 ピカチュウ達は宥めようと、マリオやカービィの頭を小さな手で撫でた。カービィは不意に顔を上げ、目の前にいるピカチュウをジーッと見た。その変な目に、ピカチュウは顔を少し引かせた。 「……美味しそうな饅頭ー……」 「ピ、ピカッ!」 カービィはピカチュウが黄色い饅頭に見えるらしく、自然と開いた口から涎をダラダラ流す。危険だと悟ったピカチュウは、リンクの肩の後ろに素早く身を隠した。 「今の住人も、カービィと同じ位に危険な状態だ」 メタナイトはカービィを見ながら言った。 「空腹のあまり、他の人が食べ物に見えてしまうと?」 リンクが胡散臭い顔で訊いてみると、メタナイトは暫く間を置いてから、こくんと頷いた。 「誰かが来ても、住人はそれを理由に顔を見ようとさえしないのだ。悪気は無いってことだけは、知って貰いたい」 「全く、情けない連中だな」 スネークは短い息を思い切り吐いた。メタナイトはフッと笑った。 「そなたの様な者が、心強い味方になる。これから城へ行こうとしていたところだから、どうなるかと思っていた」 「大王のいる城へですか?」 リンクは訊いた。 「ああ」 メタナイトは地図に描かれている、プププランド全面図の奥の方を指し示した。 「場所はこの城マーク。デデデ城だ」 例の二人を除いたスマメンは、彼の指先の、簡単に描かれた城マークを見た。 「結構近いですね」 「あの町の奥を進めばすぐだからな」 「よーし!」 さっきまで抜け殻になっていたマリオは、机を叩くと反動で確りと立ち上がった。彼の表情は、別の意味で怒っていると思われる。 「大王から食べ物を取り戻そう! そして、大王を倒してボク達も食い倒れだ!」 「おー!」 同情したカービィも、ジャンプすると声を上げた。 今、ここにいる者達はこう思っているだろう。 (本来の目的を忘れないで欲しい) と。 マリオ達はさっきのゴーストタウンを通り、丘の上に建っている大きな城の前まで来た。その大きさは小さな町にいる間に比べ、城門前へ来るとかなりの圧倒さがあった。 「あの事件を起こした城だからな」 メタナイトは剣を構えた状態で言った。 「警備も強化されている事だろう」 「強行突破は、毎度お決まりのパターンだよ」 マリオは余裕の笑みで舌を出し、手の平に拳をパシッと当てた。 「行くぜ!」 そう叫ぶと、マリオはリンクと一緒に大きな扉を蹴破った。 中にいるのは、黄色い顔以外赤い肌を持っていて、槍を構えた丸い兵だ。ロビーにいるだけでもかなりの数だ。 「ワドルディ兵だっ」 「これくらい。さっさと片付けてやるっ!」 スマメンの殴り込みが開始した。相手は雑魚レベルなのか、弱攻撃で次々と倒されていった。しかし、中でもマリオとカービィのやり方はどこか異常で、見た目かなりの恨みが込められていた。 「……今の彼らに近付くのは危険かも知れませんね……」 派手なショーを行っている二人を、リンク達は青筋を出して遠くから見守っていた。 お陰で、短時間でロビーの兵は全滅した。 「よしっ! 次行くぜ!」 マリオ達はロビーをクリアして間もなく、真ん中の大きな赤い階段を駆け上り、さっきより一回り小さい扉を今度はマリオ一人が蹴破った。 今度は広々とした、天井の高い明るい回廊だ。天井は恐らく最上階まであるのだろう。明かりの代わりにしていないだろうが、松明が壁に並んで赤く燃えている。 「侵入者か」 「んっ?」 奥の高台の上に立っている男がいた。かなりの殺気が部屋内を漂い、スマメンは息を呑んだ。その男は、カービィ達の暮らすファンシーな世界には似合わない、リアル体型な大人の男性で、菫色の長髪は背中まである。純白のマントに、薄紫掛かった白い鎧を着ていて、顔は、目の部分のみ覆う白い仮面を付けている。片手に構えている剣は長く、柄は青と金で細工されていた。 男はマリオ達を見下ろすと高台からジャンプし、赤い絨毯へ軽やかに着地した。 「ここから先は蟻一匹も通さん。退き返した方が身の為だぞ」 剣先をマリオ達に突き付け、静かに忠告した。それでもマリオ達は一歩も引かず、身構えた。 「ボク達が素直に引き下がると思ってるのか?」 マリオは口端を吊上げた。それに対し、男も剣先をゆっくり下ろすと、ニッと笑んだ。 「命知らずな……覚悟するが良い」 「やっ!」 床を思い切り蹴り上げ、マリオは拳を繰り出した。ドカッと大きな音が響き、部屋内が一瞬痺れた。 「やった!」 カービィは笑顔で飛び跳ねる。しかし……。 「……!」 マリオは目を丸くした。何と男は、マリオの拳を指一本で難なく受け止めたのである。 余裕な顔で、仮面からマリオを睨み付ける。 「弱い!」 「うぐあっ!」 男は剣を一振りし、突風を巻き起こすとマリオを吹き飛ばした。 「うわぁっ!」 飛ばされたマリオは物凄いスピードでスマメンの方へ飛んで来て、一部の仲間とぶつかって共に倒れてしまった。 「相手のステータスを何も知らずに飛び掛かる弱き戦士よ」 男は剣を鞘におさめる。 「まだまだ修行が足りんな」 「うぅ、師匠みたいな台詞を言われてしまった」 マリオは頭を抱えて起き上がった。 「ど、どうしよう、メタナイト……」 カービィはオドオドしながらメタナイトに尋ねた。 「……」 「……メタナイト?」 様子が変だと、カービィは横から彼の顔を覗き込んだ。メタナイトは、周りの声を聞こえていない様子だ。さっきから目の前の男ばかり見ている。 男も、ハッとしてメタナイトを見た。 「! そなたは……マーシス! マーシスでは無いかっ」 「! メ、メタナイト、か?」 名前を呼ばれた途端、男の様子は一変した。 「え?」 マリオ達は唖然として二人を見た。知り合いなのかと、驚くばかりである。 周りを気にせず、二人は語る。 「マーシス、そなたはまだここにいたのか」 「ああ。だが、少し前に修行から戻ってきたのだ。それよりメタナイト、なぜそいつらの味方にいる。不法侵入者なのだぞ?」 「それは違う。マリオ達は、この国の危機を救う為にここへ来たのだ。悪い事をするつもりは一切無い」 「! そうなのか?」 マリオ達はメタナイトの話を聞き、頭の中でロビーでのバトルを密かに思い出していた。 「マーシス、どうか協力してくれ。デデデ陛下と話がしたいっ」 そう言いながらメタナイトは一歩前に出た。 「……」 暫く黙っていた男だが、ピリピリしていた空間は、やがてフッと穏やかになった。 「良いだろう。友の頼みだ。私も協力しよう」 「かたじけない」 マーシスと呼ばれた男はメタナイトの前で膝を付き、手を握り合った。 「あ、あのー……」 状況を未だに理解出来ないマリオ達。マリオはメタナイトに恐る恐る話し掛けた。メタナイトはこちらを向く。 「彼はマーシス・シンサー。私の大切な戦友だ」 「先程は失礼した、マリオ隊長殿」 マーシスは胸に手を当て、マリオに軽く頭を下げた。 「ボクを知ってるの?」 「スマッシュ王国の話はいつもメタナイトから聞いている。デデデ陛下の手下として働いていたが、暫く修行に行かせて貰っていたのだ」 「それで、またこの城へ、ついこの間戻ったと」 スネークが言うと、マーシスは頷いた。 「その通り。私が戻って来た後、陛下のご命令を受け、ここで見張りをしていたのだ」 「じゃあ、今の国の状況を、マーシスは全く分かっていなかったって事?」 マリオが眉をひそめながら訊くと、マーシスは少しの間黙ってしまった。 「……誠に申し訳ない。正か危機に陥っていたとは思わなかった。ならば、一刻も早く陛下のとこへ行き、事情を聞こう」 「マーシス、マリオ達を案内してやってくれ。私は先に大王のいる階へ行こう」 「分かった」 メタナイトはマントを紫コウモリの翼へ変えると、そのまま上へと飛んで行った。 「ではスマッシュブラザーズよ、この先は私が案内しよう」 マーシスは奥の扉へその場から手をかざした。すると、奥の扉が全開した。 「陛下は最上階におられるが、兵専用のエレベーターを使えばすぐに行ける」 「よーしっ! 早く食べ物を取り戻そうな、カービィ!」 「うんっ!」 かなりの張り切り振りを見せるマリオとカービィに、マーシスは何の事だとハテナを浮かべていた。 (食べ物の恨み、恐るべし……) 彼らを見て、また青筋を作ってしまったスマメンだった。 ──to be continued── |