VSリアルダークマター








「何だよ、あの化け物は!」

 顔を青ざめているマリオは悲鳴に似た声を出した。デデデ大王の腹は黒い霧の玉と化し、そこから開く大きな目はスマメンを睨んでいた。あまりにも恐ろしく不気味な姿で、マーシスとスマメン全員に恐怖心が植え付けられた。

「あれは……っ」

 メタナイトは心当たりがあるらしい。

「リアルダークマターだ!」
「リ、リアルダークマター?」

 マリオは眉を潜めて言った。

「闇の世界に住んでいる悪の親玉の一人だ。人に乗り移り、悪事を繰り返してきている曲者だ」
「じ、じゃあ……」

 口籠らせたマリオにメタナイトは頷いた。

「恐らく間違いはない。住民達の食べ物を取り上げた張本人だ。デデデ陛下の言う通り、我々を誘き寄せる為に」
「どうりで変だと思ったよ」

 カービィは手に拳を当て、頭上に浮かんだ電球を点らせた。

「大王がプププランドの人達から食べ物を巻き上げるなんて、いくら何でも突然過ぎると思ってたもん」
「んにゃろー……」

 食べ物の話を聞いている内に、スマメンからもはっきりと見える位に、マリオからも赤いオーラが漏れ出ていた。しかも大王のよりでかい。彼は本気の怒りモードになっていて、前で握り締めている両手も力一杯だ。

「あいつを倒して、今度こそ食べ物を取り返すぞ!」
「貴様ラすまっしゅぶらざーず如キニ、コノ私ガ負ケルモノカァ!」

 大王の腹にいるリアルダークマターは、目の前で黒い電流の弾を作り出すと、スマメンに向かって連射した。だが、そのスピードは極めて遅い。

「何だ、結構遅いな。こんなのちょろいって」

 スマメンは軽々と黒弾を避けた。ところがその弾はピタリと止まると、今度はスピードを上げてマリオ達を追跡し始めたのだ。

「! 何だ!?」

 幾らカーブしても、弾もカーブして彼らを追い詰めてゆく。

「うおぉっ!」

 追い詰められたスネークは悪弾をくらってしまった。当たった悪弾は、獲物の全身に強力な電気を流した。

「スネーク!」

 マリオは追い掛けられながら叫んだ。麻痺してしまい、スネークは体を抑えながら膝を付いてしまった。電撃を受けて大半黒焦げ状態になってしまい、かなりのダメージを受けていると見て取れる。

「くっ……すまない、一旦退かせて貰う」

 止むを得まいと、彼は戦場から離脱した。

「くそ!」

 マリオは壁へ追いやられた。振り返ると、悪弾は速度を落とさずこちらへ向かって来る。マリオは壁に向かって跳んで壁を蹴り、反対側へジャンプした。彼の足下を勢い任せに飛んできた悪弾が通過し、壁に激突した。マリオは一先ず危機を逃れる。

「フフフ……何度避ケテモ同ジ事……」

 マリオへ大王の向きを変え、リアルダークマターは彼に向かってまた悪弾を作り出した。

「げげっ」

 マリオは目を丸くした後、再び悪弾との鬼ごっこをやらされる羽目になってしまった。

「畜生!」
「マリオさん、キリが無いですよ!」

 リンクは盾で攻撃を塞いでいるが、また彼に悪弾が作り出され、かなりピンチの状態である。

「わあ! また来るよぉ!」

 ファンシーズにメタナイト、マーシスは攻撃を仕掛けて弾を掻き消すが、同じく振り出しへと戻されている。

「うー、一体どうすれば……」

 マリオは走りながらアイデアを捻り出そうとする。

「……よしっ、皆! ボクの後ろへ回って!」

 そして良い考えが浮かんだマリオは直ぐに全員へ呼び掛けた。

「皆で悪弾をボクへ連れて来るんだ!」
「マ、マリオさん!?」

 リンクは代表して何を言い出すんだと反論した。

「逃げると体力を余計に消耗するだろ? だからって弾の餌食になるのは危険だ。大丈夫、ボクに任せて」

 マリオは笑顔でウィンクして見せた。

「マリオの言う通りだ」

 口を開いたのはメタナイトだ。

「今の状況だと、全員やられるのも時間の問題だ。ここは彼に賭けよう」
「よ、よーしっ、一か八かだからね! 頼んだよ、マリオ隊長!」

 カービィも賛成した。
 マリオは頷くと、ある場所へ向かって走り出した。スマメンもそこへ向かう。

「何ヲスル気ダ。ドコヘ逃ゲテモ変ワラヌ」

 リアルダークマターはマリオを見ながら言った。
 マリオは彼の言葉を無視し、リアルダークマターの側まで走ってきた。

「マリオさん! 来ますよ!」

 追い付いたスマメンがマリオの背後へ回ると、所々から悪弾が彼に向かってやって来た。タイミングを見計らおうと、迫ってくる悪弾達を睨む。

「とおっ!」

 マントを首から解いたマリオはそれを悪弾に向け、片手で一振りする。すると悪弾はマントに引っ掛かって一端止まる。そして、数々の小さな悪弾は、合体して大きな弾と化した。

「何っ!」

 リアルダークマターは大きな目を見開いた。

「お前の弾……返してやるぜ!!」

 マリオは、巨大弾を作り上げたマントを持つ手を、思い切って振り上げた。弾はスピードを上げてリアルダークマターを直撃した。

「ウグアアアァァァ……!!」

 大きな弾は巨大電撃となり、大王諸共彼に大ダメージを与えた。リアルダークマターの目が閉じ、浮遊していた大王は床へ倒れた。

「ぷはあぁぁ……」
「マリオさんっ、大丈夫ですか?」
「やったでしゅね!」
「ピカピ!」

 マリオも仰向けになって倒れ込み、スマメンが駆け寄った。

「うぅ、腹ぺこだぁ……」

 脱力した口調で、空に向かってマリオは言った。

「もう起き上がってくれないと良いけど……」
「マリオさんは起き上がってくれないと困りますよ」

 クスッと笑うリンクは、マリオへ手を差し伸べた。マリオは力無く笑うと彼の手を取り、立ち上がった。

「……グ……」
「?」

 何か声がしたと、スマメンは倒れている大王に振り向いた。見ると、大王の腹が黒い電気を弾かせていた。

「コノ……私……負ケ……ガ……」
「な! ま、まだくたばってなかったのか!」
「コノ、私ガ……負ケル等……有リ得ヌ……ッ」

 気絶している大王の体がふわりと浮かび、空中で真正面へ傾いた。腹の黒はまた蘇り、リアルダークマターの目が再び開く。かなりのダメージを受けた所為か、瞼は半分程しか開いていなかった。
 だが何か次の手を考えているのが、スマメンには分かった。

「全員、アノ世ヘ送ッテヤルゾオォォ!!」

 目が閉じられると、今度は牙を剥き出した口へと変化した。何度もガチンガチンと音を立てながら、噛み付こうとマリオ達へ向かってきた。

「わわわっ!」

 スマメンは彼の攻撃を間一髪避けた。石壁に歯を立てたリアルダークマターは、難なくその壁を噛み砕いた。

「何て威力だ!」

 マリオは青筋を作った。

「これでもくらえ!」

 リンクは懐から爆弾を取り出し、リアルダークマターに向かって投げ付けた。それに気付いたリアルダークマターは爆弾を口に入れ、爆発させる前に中で食べてしまった。

「そ、そんなっ……!」
「ピッカチュウ!」

 続けてピカチュウが、彼に向かって雷を打ち落とした。かなりのダメージを与えた筈だと思われたが、リアルダークマターは平然としていた。

「ピ!? ピカアァ!」

 ピカチュウは、口から放たれた悪弾をまともに受けてしまい、気絶してしまった。そして食らい付こうと鋭い牙の口がピカチュウに向けて開かれる。

「危ないっ!」

 側にいたリンクは咄嗟にピカチュウを掴んで床を転がり、回避した。

「フフフ、スグ楽ニシテヤルゾ……」

 ピカチュウを抱き締めているリンクにリアルダークマターが牙を剥いた。

「リンク!」

 マリオは彼らの前に出、牙へパンチをくらわせた。

「ヌッ……!」

 力は互角で、互い弾き飛ばされる。

「! わわっ!」

 空腹で力が多少抜けていたマリオはうっかり躓き、尻餅をついてしまった。

「死ネエエエェェ!」

 隙を作ってしまったマリオに牙が大口を開いて襲う。

「わああ!」
「マリオさあああああん!!」

 駄目だ! とマリオは顔を反らし、強く目を瞑った。ガチィンと音が響く。だが、痛みは全く無く、マリオは状況を確認しようと、そっと目を開いた。目の前を、白いマントがはためいている。

「マ、マーシス!」

 さっきの音は、牙とマーシスの剣が交わった音だったのだ。

「我々に刃向かう者は無論、許さん」

 マーシスはリアルダークマターを睨みながら呟く。

「だが、陛下を利用する極悪人は、私の手で消してくれる!!」

 怒りを爆発させたマーシスは牙を弾き返すと、瞬時でリアルダークマターの口内を剣で貫いた。

「グアアアアアァァァ!!」

 リアルダークマターは、この上無い悲鳴を上げた。

「今だ、マリオ殿!」

 マーシスは剣を引き抜き、マリオに叫んだ。ハッとしたマリオは頷き、

「でやああぁぁ!」

 リアルダークマターの口内へ強力なパンチをお見舞いしてやった。

「グオオアアァァァァッ!!」

 リアルダークマターは、黒い霧となって大王から出ていった。その黒い霧は玉へ固められると、空へ飛んでいき、そのまま消えてしまった。悪霊が消え失せた大王は気を失ったまま倒れるが、マーシスに支えられた。

「陛下、お気を確かに」
「マーシス……」

 メタナイトは立ち尽くしていた。

「あれ程怒りを露にしたマーシスは初めて見た」
「そうなんだ……」

 マリオは驚きの声で言った。他のスマメンも、ジッとマーシス達を見詰めていた。デデデ大王の手下としての誇りを持っている事を見届けたのである。
 その時、マリオが突然、蹌踉めきながら倒れてしまった。

「マリオさん!」
「マリオ!」
「マリオしゃん!」
「ピチュッ!」

 マリオはそれどころでは無かった。極度の空腹に最後まで勝てず、目の前が真っ暗になり、意識を飛ばしてしまった。










 ──to be continued──