奪還作戦開始!








 流星群は遠くから見れば、輝く幻想的な光の雨だが、近付けば近付く程、それは炎で燃える恐ろしき隕石の嵐となる。隕石の大きさは異なり、ゴルフボール並のものや、城下町と同じ大きさの大岩が飛んで来る事もあった。
 マリオ達を乗せているワープスターには意志があり、襲って来る炎の隕石を避けながら目的地へ飛んで行った。

「振り落とされないでよっ」
「分かってるっ!」

 ワープスターも必死の様子であり、激しく動き回っている。マリオ達は振り落とされぬ様、ワープスターに確りとしがみついていた。
 やがて隕石の嵐を抜けると、無限大に広がる宇宙空間が目に入った。正に銀河の世界で、地上からではハッキリとは見えなかった惑星も、目に大きく映っていた。カービィ達がさっきまでいた星は、青色の軌道みたいな線が二本で囲み、大きな黄色い星の形をしていた。

(へえ、あれがカービィ達の住んでいる星なんだ)

 マリオは宇宙から、カービィ達の星であるポップスターを見た。

「……妙だな」

 メタナイトは呟いた。

「何が?」

 と、カービィは訊いた。

「隕石は宇宙空間を飛んでいる筈だ。先程までは雨の如くだったが、今いきなりおさまったのは何故だ」
「確かに」

 マリオは顎を擦った。

「まあ、良いじゃん、危なかったし」

 カービィは難しい事はサッパリなので開き直らせた。お陰でマリオ達も、細かい事は一々考えない様にしようと決めた。

「! マリオ!」

 メタナイトは、ある方向に顔を向けた。奥に、周りより一層輝きが目立っている星が見えた。独特な虹色に光り、光の中には虹色の小さな欠片があった。

「欠片だっ」
「ワープスター、お願いっ」

 ワープスターは、マリオ達を乗せて欠片の元へ飛んで行く。その間にマリオは変な胸騒ぎがしたが、何事も起こらない事を祈った。

 ──お前等もしつこいな。

 その時、どこかからか声がし、ワープスターは止まった。マリオ達はどこから声がするのかとキョロキョロ見回した。

「欠片集めをしなくちゃいけないだなんて、運が悪かったね。それは、ボクに消される運命だからサ」

 取りに行くつもりだった欠片が姿を消し、代りに電気で描かれた光が現れた。そこから、大きな目を持った紫の顔に、青と赤に別れたピエロの様な帽子を被り、首元に赤いリボンを結んだ男が現れた。足はカービィみたいに丸く、腕は無い。

「誰だ、お前は」

 マリオは恐れる事無く問う。それに対し、男はケケケッと不気味な高笑いをした。

「偉大なるマルク様を知らないなんて、どれだけ世間知らずなのサ。ま、リアルダークマターを倒すその力は認めるけどサ」
「! リアルダークマターを知っている……?」

 マリオは目を丸くした。

「マルクはリアルダークマターと同じ、闇の世界に住む者だからだ」

 メタナイトが答えた。

「そうサ。だけど、バカ大王に乗り移ったのは失敗だったみたいだよ。逃げて来た腰抜けには宇宙のチリになって貰ったサ」
「っ! 何だって!?」
「弱い奴まで、同じ世界にいて貰っちゃ困るんでね。ボク等まで弱虫扱いされちゃうからサ」

 マリオ達は驚いた。同じ世界に住む者を消しただなんて……。

「っ……お前……仲間を何だと思ってるんだっ!」

 怒りを溢れ出させるマリオは、マルクに指を突き付けて叫んだ。

「誰に対して口を利いてるのサ」

 マルクは笑みを止めず、目を細めてマリオ達を睨んだ。

「まあ、君達も直に宇宙のチリになって貰うから気にしないけどサ」

 するとマルクの体から手が生えた。それは、黄色い蝙蝠の翼だ。

「そろそろ楽しいお遊びの時間だ。楽しませてくれよ? ほっほっほっほ!」

 マルクは翼を一旦綴じ、そして一気に広げると、四枚の丸いブーメランカッターを飛ばした。

「わっと!」

 ワープスター含め、スマメンはそこから離れた。
 戦闘態勢に入る。マリオはマントを首に巻き付け、メタナイトは剣を構え、カービィは赤い鉢巻きを巻いてファイターカービィになった。

「逃げても無駄サ」

 マルクの翼にブーメランを戻すと、再びマリオ達に向かってそれが放たれた。

「同じ技はもう効かないぜ!」

 マリオはマントを使い、一振りしてブーメラン達を弾き返した。そのままブーメランはマルクを攻撃した。

「うっ!……中々楽しませてくれるじゃないのサ」

 あまり効いていない様だ。

「てやっ!」

 カービィは空中でキックをした。そこから衝撃派が現れ、マルクへ向かう。しかし、マルクは衝撃派が来る直前、光と共に姿を消した。

「! どこだ?」

 スマメンは慎重に見渡した。無音が耳に痛く響く。
 暫くすると、上から下へ向かって何かが通った。緑の種の様だ。いくつか降り注ぎ、スマメンの足下で止まる。スマメンはそれをジッと見ていたが……。

「! 危険だ!」

 メタナイトが叫んだと同時に、種から刺付きの玉が、重ねながら一気に生えてきた。

「わわっ」

 マリオの赤い服が刺で僅かに破れた。

「何のー!」

 マリオは玉に足を掛け、道にして走り出した。

「おぉっ!?」

 偶然道の先に現れたマルクは目を真ん丸にした。そして、頬がマリオの強烈なパンチをくらう。

「こしゃくな……っ」

 マルクは翼を使って一時後退した。

「シュッ!」

 そこへメタナイトの剣が振られる。マルクは翼を使って危うくそれを受け止めた。
 マルクは翼でブーメランを出す時と同じ仕草をし、今度は無数の矢を一気に放った。それは無重力状態の利用か、音速並のスピードでメタナイトを襲った。

「っく!」

 メタナイトはマントで己を包んで防御するが、流石のマントも連続して襲う矢には適わず、破れて行く。遂に防御は完全に効かなくなり、矢の嵐はメタナイトを容赦なく攻撃した。

「ぐあぁ!!」
「メタナイト!」

 マリオはマントの力を借り、攻撃を受けているメタナイトに向かって飛ぶが、彼の前に一瞬の光が現れたと思いきや、マルクがそこにワープして現れた。

「!」
「仲間の心配してる場合?」

 口端を上げ、マルクは手の甲を振った。翼がマリオをバシッと打つ。

「うわあ! っくそぉ……!」

 宇宙空間での戦いは不利なとこが多く、マリオは打たれた拍子で体を回転させながら飛ばされてしまった。

「だから仲間は戦いの邪魔になるのサ」

 マルクはマリオを見ながら面白可笑しく言った。

「っ!」

 それを耳にしたマリオは目の色を変え、マントで何とか止まった。
 マリオの横にカービィが並び、二人でマルクへ飛んで行った。

「くらえ!」
「ダブルパアァンチ!」

 マリオとカービィは二人揃って相手にパンチを繰り出した。とっさに翼を綴じるマルクだが、翼を通して拳の強い衝撃が伝わり、一瞬唸る。

「ぅぐ……っ!」
「どうだ! 仲間でしか出来ない技だってあるんだぞ!」
「……ふ……ふっふ、所詮、その程度サ」

 翼をゆっくりと広げ、マルクは最初と同じ嫌らしい笑い声を上げた。

「二人で合体技? そんなの、二分の一の力が合わさっただけサ」
「何!」
「戦士は常に一人でも十分な程の力が要るものサ。仲間の力なんか必要ないのサ……それとも何だい」

 言葉を濁すと、先程の矢の攻撃でボロボロになり、気絶してしまったメタナイトの腕を掴み、マリオ達の目の前に突き付けた。

「君達は、欠片と仲間、どっちを取る訳なのサ?」
「な、何だって!?」
「君達はボクの持ってる欠片を必要としてるんだろう? だったら仲間を攻撃してでもボクを倒す事出来るのかい?」
「……!」

 マリオ達は、これ以上動く事が出来なかった。

「ど、どうしよう、マリオ隊長……」

 マリオも、カービィと同じ位に頭を痛めていた。選択の余地が無いのだ。その様子を見るマルクは大笑いした。

「おっほっほっほ! だから仲間なんか作らなければ良かったんだよっ」

 マルクはメタナイトを上へ放った。そして彼へ標準を合わせ、白い光を溜めている。

「や、止めろおぉー!」

 嫌な予感がした二人はマルクを止めようとするが、彼等の今のスピードでは間に合わない。すると、カービィはメタナイトへ方向を変えた。マルクの光はビームと化して発射され、揺れる事無く真っ直ぐにメタナイトへ向かって行った。カービィは追い付き、メタナイトを横から強く押した。

「……!」

 今の衝動でメタナイトは意識を取り戻した。そして、押された方を見た。マリオもカービィのとこへ行くが……。

「うわああああぁぁぁ!!」
「カービィ!!」

 彼等の目の前をビームが走る。それはカービィへ諸に直撃した。ビームの中に身構えた黒い影があるから、間違いは無かった。そして光のビームが止み、カービィは跡形も無く宇宙の藻屑となって消えてしまった。マリオとメタナイトは、見開いたまま茫然としてしまった。手応えあったと、マルクは苦笑を漏らす。

「あーあ、お仲間さんが消えちゃったのサ」
「そ、そんな……」

 マリオの目には涙が溢れていた。メタナイトは言葉を失ってしまっている。

「心配要らないサ」

 マルクは気の毒だと言う微笑みを浮かべた。

「君達も連れてってやるサ、仲間のもとへ」
「っ……わああぁ!!」
「! 待て、マリオ! 早まるな!」

 メタナイトが止めようとも無駄だった。マリオは、我を忘れた状態だった。泣き叫びながらマルクへ攻撃を仕掛けようとする。マルクは苦笑すると、繰り出してきたマリオのパンチを手で難無く抑えた。捕まってしまっても、マリオは涙を流しながら、マルクの手の中で暴れていた。

「泣かせるね、仲間の仇を討つって奴?」
「うわぁっ!」

 マルクは一度手を離すと、口から暴風を吐き出してマリオを吹き飛ばした。

「マリオ!」

 飛んで来たマリオを、メタナイトは自らの体を使ってでも慌てて受け止めた。

「そうだなぁ、序でに……」

 マルクは体をポップスターへ半回転させた。

「君達の仲間の最期を見物させてやるサ」
「何だって!?」

 マルクは顔を上へ上げた。すると、あちこちから隕石が現れた。軌道は明らかにポップスターをターゲットにしていた。

「さっきの隕石!」
「こっちに来る前に君達を隕石で仕留めようと思っていたんだけど、しぶといね。ならば、ポップスターにいる残りの仲間を、あの綺麗な星諸とも消してやるのサ」
「や、やめろ!」

 マルクは、顔を青ざめるマリオ達に、ニヤリと笑んだ。

「最高のショータイムを見せてやるサ。おっほっほっほ!」

 その時、

「ぐあっ!」

 マルクの背後を何かが通ったと同時、彼に衝撃が走った。すると、隕石の軌道が一気に反れた。

「え?」

 マリオ達は、何だ? とハテナを浮かべた。

「勝手に殺さないでよ!」
「な! そ、そんな馬鹿な!?」

 マリオ達にも見えた。その人物を見て驚くばかりで、マリオは笑顔になると声を上げた。

「カービィ!」

 元気満々なファイターカービィがそこにいたのだ。

「反撃開始ー!」
「な、何でピンピンしてるんだ! 確か、たった今ボクのビームで仕留めた筈……!」
「とりゃああああ!!」

 唖然としているマルクに向かってカービィは頭突きした。

「ぐは!」
「よっし、お遊びの続きだ!」

 マリオの後ろからワープスターが飛んで来た。マリオはそれに足を付け、サーフィンの様に宇宙空間を飛行する。メタナイトは未だに驚いたまま蝙蝠の翼を生やし、マリオと共に飛び回った。

「くっ、下等が!」
「それはボクらを本当に倒してから言えっての!」

 ワープスターはスピードを上げ、マリオはマルクに強力なパンチをお見舞いした。

「ぐぉっ!」
「はぁ!」

 続いてメタナイトが、マルクの翼に、剣で素早い連続斬りを仕掛けた。

「ぐあああぁ!」

 マルクの口から雄叫びが上がる。
 マリオ達は一端離れ、三人で横に並んだ。そして一気に向かう。

「マルク! さっき二人で挑んだ時、二分の一の力が合わさっただけって言ったよな!」

 怯んでいるマルクにマリオは叫んだ。

「じゃあ、三人ならどうだああああああああ!!」

 それぞれの技が繰り出されるが、全てほぼ同時に出される。そして、マルクの胴体を一気に貫いた。

「!!」

 マルクのリボンを結んでいた胴体には、ぽっかりと穴が空いていた。

「ギャアアアアァァァァァッ!!」

 マルクは悲鳴と共に爆発し、今度は彼が宇宙の藻屑となって消え去った。マリオは背中を向けたまま、ずれた帽子の鍔を片手で前に戻した。

「……カービィ、良くぞ無事でいたな」

 メタナイトは呟いた。カービィは、へへっと笑った。

「後で話すよ」
「?」

 思いも寄らない返事に、メタナイトは僅かに戸惑った。

「お?」

 マリオの目の前を宝玉の欠片が通る。マルクが倒された為に姿を現したのだろう。それはそのままカービィの頭の上に乗っかった。

「わっ」

 欠片から白い光が放たれ、カービィを包む。マリオ達と同様、光はカービィの中へ入って行った。

「やっと欠片を取り戻したな」

 マリオはカービィに微笑んだ。カービィも欠片を手に取り、ニコッと笑んだ。

「うん!」
 ──へえ、流石スマッシュブラザーズだね。
 ──我々が任せただけ無駄だったな。
「!?」

 またどこかからか声がした。カービィとメタナイトの声だった様な気がしたが、彼等はそう喋った覚えが無い。その時、風と共に彼等の目の前に何者かが現れた。カービィとメタナイト?

「!!」

 マリオ達は酷く驚いた。彼らの目が赤いのだ。

「確か初対面だったよね?」

 赤い目をしたカービィは悪魔の笑みで手を上げた。

「僕はリズって呼んでね」

 手を自分へ向け、カービィのクローン──リズは言った。

「私はメタナイトの血より生まれし、フビルと申す」

 マントで身を包むメタナイトのクローン──フビルは言った。

「マリオ達を倒したら欠片の力を渡すって言ってみたけど、呆気無かったね」
「仮に倒したとしても、欠片はマルクの物にはならなかったがな」
「! マルクはギガ軍と協力していたのか……!」

 マリオはリズ達を怒りの形相で睨み付けた。

「もしかして、リアルダークマターも……?」

 カービィは恐々と言った。

「まあまあ、そう怒らないでよ。悪者倒しただけ良かったじゃん」

 リズはクスクス笑う。

「ふざけるな!」
「マリオ!」

 殴り掛かろうとしたマリオだが、メタナイトに腕を掴まれ、止められてしまう。

「そうそう、相手の実力も知らないでいきなり殴り掛かるの、良くないよ」

 リズは腕を組んで何度も頷いた。

「だが、再会の時が来たら、一度そなたと剣を交えたいものだ」

 フビルはメタナイトを見て言った。
 そして黒いワープスターが現れ、リズ達を乗せた。

「では、さらばだ」
「じゃあねー」

 リズ達を乗せたワープスターは猛スピードで宇宙の奥へと消えた。

「くっそー!」

 マリオは拳を下へ振った。

「これからの旅は更に気を引き締めていかないとな」

 メタナイトは言った。

「ねえねえ! 僕のクローンもいたよ! 僕、ここまで有名人になったんだね!」
「……」

 カービィは別の意味で興奮している様子であった。マリオ達は思い切り呆れていた。

「とにかく、この先の旅も油断は出来ないな」

 マリオ達は、リズ達の消えて行った方向を暫く見詰め続けた。










 ──to be continued──