ダイヤモンドシティの仲間達 欠片が次に導いた場所。 マリオ達は、ある都会の入り口前に立っていた。中々の大都会で、緑もある。人々もかなりの賑わいを見せていた。 「ここはどこだ?」 マリオは見渡しながら言った。 子リンは、横に立てられている大きな看板に目を通した。 「えーっと、『Welcome to ダイヤモンドシティ!』って書いてあるな」 「ダイヤモンドっ!? ダイヤモンドで出来た街なのっ?」 「いや、それは違うと思うぞ」 浮遊しているカービィははしゃいでいたが、マリオに冷たく突っ込まれた。 「ここにも欠片があると言う訳ですね」 リンクは言った。 「この街は何だか広いから、皆で分かれて情報集めをしよう」 マリオは腕を組みながら、隊長らしい言葉を発した。その言葉に、メンバーは即了解した。 ピカチュウを肩に乗せているマリオは、街の真ん中の歩道を歩いていた。横には車道があり、沢山の車がそれなりのスピードで通り、立ち並ぶ背の高いビルは、まるで自分達を見下している様に見える。 「何だか懐かしい匂いがするのは気のせいかな」 「ピィカ?」 マリオは後頭部に腕を回した。ピカチュウは首を傾げていたが、腕に潰されない為に、彼の頭の上に乗っかった。 街の人達に話を聞いた後、暫く歩道を歩いている時、後ろからバイクの音が聞こえて来た。最初は気にしなかった彼等だが、そのバイクのエンジン音は、あまりにも騒音公害にまで及んでいた。ピカチュウは思わず耳を塞いでしまった。 「だあー煩いなっ! 誰だよ!」 マリオも流石に苛々が募り始め、遂に振り返った。 「おわぁ!?」 バイクの持ち主が不意に声を上げた。バイクのエンジンが異常を起こしたらしい。激しく傾きながらこちらへ向かって来た。 マリオ達は慌ててその場をローリングした。そこにバイクがスライディングし、近くのショップに突入してしまった。硝子の割れる音が響き、マリオ達は見開いて唖然としてしまう。 「正かこんな事になるとは……」 「ピカチュ……」 「いたたた……」 ショップの中から、一人の男が腰を擦りながら現れた。 「ったく、またエンジントラブル発生か。最近、調子が悪いな。ドクタークライゴアに見て貰おう」 「この声……」 マリオ達はそこへ歩いて行った。その声に心当たりがあるのである。 近くまで行くと、相手もこちらに気付き、マリオ達も誰だか分かった。 「ワリオ!」 「ピッカチュー!」 「ああ! 貴様らは!」 マリオ達は笑顔で、ワリオは驚嘆した顔で互いに指を差し合った。 「久しぶりだなぁ。元気にしてるか?」 「今の時点でパワーダウンだっ」 ワリオは怒りながらバイクを起こした。 「懐かしい匂いって、ワリオの臭いだったのだろうか……」 「ピーカ?」 マリオは顎を擦りながら呟いた。 「何をぶたくさ言っているんだ?」 ワリオはかなり不機嫌な状態みたいだ。聞かれていたかと、マリオ達は、ハハッと愛想笑いをしてみせた。 「……あ?」 ワリオは、マリオの側にいるピカチュウを見た。見られたピカチュウは、「ピ?」と小首を傾げる。 「電気鼠もいるとはな。何だマリオ、どうやって連れて来たのだ?」 「あ。それはだね……」 「あー! まさかアレだな!?」 マリオが事情を説明しようとしたとこを突如ワリオが遮る。そして唐突にマリオに指を思い切り突きつけた。 「オレ様が設立した素晴らしいワリオカンパニーを、スマブラの仲間を引き連れて乗っ取ろうと言うのだな!? そうはさせるか!」 「……はぁ?」 いきなり訳の解らないことを言われ、マリオは思い切り顔を顰めてしまった。 「ワリオが会社を持っているのはマスターハンド王から聞いたことあるけど、別にそんな目的じゃ……」 「そんなとは何だ! あれでオレ様はガッポリ大儲けをだな!!」 「わ、解った解った。ごめんごめん!」 何故かワリオの気に触れたらしく、目を血走らせながら思い切り顔を近付けては怒鳴ってきた。マリオは両手で相手を抑えながら顔を思い切りそらし、謝る必要無いと思いつつも謝罪した。これ以上相手にするのも疲れると思ったからである。 「ふん。解れば良いのだ。おっ、そうだ!」 ワリオの感情が百八十度変わった。今度は飛びきりな笑顔になっている。 怒ったり笑ったりと忙しい人だなと、マリオ達は何と無く思った。 「会社の見学はNGだが、特別にオレ様の偉大なる聖域へ連れていってやろう。有り難く思うのだ!」 「せ、聖域?」 胸を這っているワリオだが、マリオ達はポカンとしている。 「さあ、オレ様の素晴らしいマシンに乗るのだ!」 さっきショップへ突っ込ませたバイクをこちらに寄せて来る。マリオとピカチュウは顔を見合わせ、仕方がないなとバイクに渋々跨った。 ワリオは前に乗るとエンジンを鳴らす。パイプから黒い煙が何度も噴射され、また騒音が響く。そして、バイクは猛スピードを上げて直ぐに走り出した。 「うわっ!」 「ピッカ!」 マリオ達は危うく落とされる所だった。 「コラー!! 弁償しろー!」 既に小さく見えるショップから、店員の声を聞いた気がした。 マーシスはある建物を見上げていた。その建物から何やら歓声が聞こえるものだから、気になっているのである。 「何かが開催されているのだろうか」 「ちょっとどいて、そこのお兄さん!」 マーシスは振り返り、言われた通りそこから一歩ずれた。彼の横を赤いスクーターが通る。スクーターの主は、オレンジ色のロングヘアで、白い私服を着ている少女だ。 少女はそのまま建物内へ入っていった。 「モナー! 早く早くー!」 「解ってるよー!」 建物内から、そんな会話が聞こえた気がした。 本当に何をやっているのかとマーシスは少し興味を持ち、建物へと歩き出した。 建物内には、人工芝が敷き詰められた広いホールがある。天井は無く、青空が広がっていた。人工芝を駆け抜ける男達。一人の男が楕円系のボールを片腕に持ち、行く手を阻む敵を避けながら、ゴールに向かって走っていた。 「ほお。あれが噂のラグビーボールと言う奴か」 階段から、マーシスはゲームを観戦していた。 「GO! GO! GO!」 少女達の元気な声が聞こえると思いきや、目の前の巨大な電光掲示板に映像が映し出された。統一の服を着、ボンボンを叩きながら、チームを応援している姿が画面に現れた。いわゆるチアガールと言うものだ。 「ん?」 マーシスは映像を見た。チアガールの真ん中で、唯一バトンをクルクルと回している少女がいる。良く見れば、先程スクーターを走らせていた少女だ。 「彼女はリーダーだったのだな」 と、マーシスは呟いた。 その時である。 「!」 マーシスは脳内を何かが貫いた感覚がした。それを感じると即首を動かした。周りは何とも感じていないみたいだが、明らかに嫌悪を抱く様な気がマーシスにはあった。 (何かが……来る?) マーシスは、剣の柄を握り締めながら警戒した。 「……」 メタナイトは立ち止まり、空を見上げていた。彼もまた、何かを感じ取った様である。 「気のせいで無いのなら、これは……」 「キャア! 危なぁーい!」 どこからか少女の悲鳴が聞こえて来た。メタナイトは、何だ? と、悲鳴がした方を見た。 少女の乗っている、ショッキングピンクのミニバイクが暴走している。それは彼女の意思では無いのは、彼女の慌て振りを見れば一目で見抜けた。少女は何とかミニバイクを止めようと必死だ。だがそれはまるで生き物の様にあちこち走り回っては通行人をけちらしていき、そのままメタナイトへ向かっている。 メタナイトは激突ギリギリで跳んで回避し、空中でギャラクシアを引き抜くと一振りした。彼以外の時が止まり、メタナイトはミニバイクの後ろへ着地し、ギャラクシアを鞘へおさめる。キンッと、おさまった音がした瞬間、ミニバイクだけが真っ二つに壊れた。少女はミニバイクから倒れ、軽く尻餅をついた。 「いたた……」 少女は倒れた状態で尻を擦った。 彼女は三編みの茶髪に丸く大きな眼鏡を掛けている。 「怪我は無いか」 「は、はい。ありがとうございます」 少女は差し出したメタナイトの手を握って立ち上がった。 「うーん、今度こそ上手くいったと思ってたのに……」 少女はブツブツ言いながら汚れた服をはたく。 「何の事だ?」 「さっきのミニバイクの事です。 あ、申し遅れました。私の名前はペニー。科学者のタマゴです」 「……私はメタナイトと申す」 「宜しくお願いします、メタナイトさんっ」 ペニーはペコリと頭を下げた。 「所でさっき言っていたミニバイクとは、それの事か?」 メタナイトは、壊れたミニバイクを見て訊いた。 「そうなんですよー!」 ペニーは、聞いてくださいと言わんばかりの顔をし、腰に手を当てた。 「色んな乗り物を開発して実験したんです。今回はかなりの自信作だったんですが、やっぱり失敗してしまった様ね……」 ペニーはミニバイクを見ながら肩を落とした。 「そう気を落とすな。今回が自信作ならば、そなたの実力が、確実に進歩している証拠だ」 メタナイトが、後ろから話し掛けた。 「メタナイトさん……」 ペニーは、頬を少し染めた。 「失敗を積み重ねてゆくからこそ、成功へ近付いて行くのだ。誰でも一度で成功した事など、ないのだ」 「そ、そうですよね!」 ペニーは握り拳を作った。 「ありがとうございます、メタナイトさんっ。私、ヤル気が出ました! ……そうだ! お礼に私の開発品をもっと見せてあげますよっ」 「あ、ああ。それはかたじけないが、私は……」 「遠慮しないでください! 私の色んな研究成果を見せてあげますから!」 メタナイトは、欠片の情報集めの途中なのにも関わらず、ペニーに背中を押され、強制的に連行されて行ったのだった。 「『ネオ・クラブ・サトー』?」 「ピチュ?」 プリンとピチューは、建物の玄関にある小さな看板を読む。一体どう言うとこなのか、二匹は興味を持った。 プリンは取っ手にジャンプしては掴む。だが、押しても引いても開かない。 「むー。開かないでしゅねー」 「ピッチュ……」 ピチューも駄目で元々、扉をペチペチと叩くが、矢張り開く事は無い。 「Hey! 君達、ノッてるかーい?」 後ろから陽気な声が聞こえ、プリン達はビックリしてしまった。 慌てて振り返ると、サングラスを掛け、水色のアフロが決まっているダンサーな男がいた。何故か人差し指を上に掲げ、もう片手は腰に当て、片膝を少し上げて決めポーズをしていた。プリン達は、気付けばポケーッとしてしまっていた。 「君達、新しく入ったダンサーかい?」 「え? えーと……」 「生憎、このクラブ・サトーはオープン時間がまだなんだYO」 「ピチュー……」 プリンは、落ち込んだピチューを見た。 「残念でしゅね。また来ましゅか」 と、プリン達が歩き出そうとした時、 「待ちなYO! 帰ったら折角のダンスの練習時間が勿体無いじゃないか」 「れ、練習時間でしゅか?」 「そうだYO! 新ダンサーなら練習を怠けるのは良くないぜ!」 こちらへ来た男の顔が異様にキラキラしていて、プリン達はそのオーラにタジタジしていた。 「い、いえ、プリン達は別に……」 「心配要らないYO! 君達をビッグにする為にこのジミーT.(サング)が一から教えてやるYO!」 「! ビッグ……?」 その言葉に、プリンの中の何かが目覚めた。 「ピチュ?」 ピチューは、恐る恐る彼女の顔を覗き込んでみた。プリンの顔も何故にキラキラと輝き出していた。 「プリン……踊りましゅ! 頑張りましゅ!」 「ピッチュウ!?」 今まで(気付けば)休んでいたアイドルの血が騒ぎ出したらしい。ガッツポーズまでする彼女に、ピチューは目を真ん丸にしてしまった。 「OK! その意気だ」 ジミーは歯を見せて親指を立てた。 「じゃあ早速やるぜ!」 ジミーは懐を軽くあさるとカードを取り出した。 「それ、何でしゅか?」 「IDカードさ。クラブ・サトーの専属ダンサーだけに与えられる称号!」 彼の掲げるそのカードは、太陽の光で逆光を受けていた。何故かそれが逆に眩しく見えたりする。 「これさえあれば、時間問わず出入り自由なのさ」 「しゅごいでしゅね!」 「さあ、レッツ・ダンスゥイーング!」 ジミーはくるくると華麗に回りながら、扉の隣に設置されている差し込み口にそれを差し込んだ。ピッと電子音が鳴り、扉からガコッと音が聞こえた。ジミーが取っ手を握って引くと、難無く扉は開いた。 プリンは遠慮無く彼の後についていった。 ピチューは唖然としていたが、独りになるのは嫌で、慌てて彼等の後を追って行った。 「フンフフーン」 カービィは鼻唄を歌いながら道をステップしていた。 「ん?」 そこでカービィが何と無く遠くを眺め、見たもの。それは、都会の外れの丘の上に建っている、和風の古城だ。 「わあ! 和風のお城だあ!」 カービィはピョンピョン飛び跳ね、興奮する。そして体を膨らませて浮遊し、手を動かしてそこへ向かおうとした。 大分古城まで近付いた時、城から小さな光を見た。カービィがそれにハテナを浮かべていると、光の方角から手裏剣が飛んで来た。 「わっと!」 驚いたカービィはその場を緊急回避した。何とか回避出来たが、それから次々と手裏剣が飛んでくる。 「よ! ほっ! は!」 だがカービィは、それらを全て器用に回避した。 「忍者ごっこかな? 面白そうっ」 カービィは無邪気に笑い、忍者の格好になった。 背中に装備してある刀を引き抜き、両手で構えた。 茂みから二体の忍者の影が飛び出し、相手も同様、空中で刀を引き抜いた。三人の刀が交わり、カービィが振り上げると二体は弾き飛ばされる。 だが二体は地面へ落下する前に姿を消した。カービィは見開き、辺りを目で探す。そして彼の前後に一人ずつ忍者が現れ、カービィは挟み撃ちをされる。忍者は刀を構え直し、襲い掛かる。 「おっとお!」 カービィは更に上へ飛んだ。忍者は仲間を危うく攻撃しかけ、互いの手足を合わせた。すると、カービィはそれを見計らい、刀からハンマーへと切り替えると、二人を同時に叩き落とした。 「きゃあ!」 攻撃した時、女の子の声をカービィは聞いた気がした。否、明らかに忍者の影から聞こえた。しかもまだ幼い。影達はカービィのハンマーで地面へぶつかろうとしていた。 だが、時既に遅しと言う字は、カービィの辞書には載っていない。 「来て、ワープスター!」 カービィは空に向かって叫んだ。空がキラリと光り、ワープスターが音速……いや、光速並に登場した。そして、地面スレスレで二人の忍者を乗せたのである。 「良かったぁ。怪我は無いみたいだね」 カービィが安心しているのも気にせず、乗っている二人は、ワープスターを見ていた。 「あれ? くのいちだったんだね」 薄いピンク色の髪を上で一つに縛った少女と、茶色の髪を上で二つに縛った少女の二人だ。髪は皆天へ向かって伸びていて、二人共見た目幼く、カービィの言う通り、くのいちの格好をしていた。 「……あなた、あたちたちよりすごくつよいのね」 「それなのに、あたちたちをたすけてくれて、どうもありがとう」 二人は礼儀正しくお辞儀をした。 「いやあ、お礼は食べ物にしてよ。丁度お腹空いちゃった所なんだ」 カービィは、鳴った腹を擦りながら舌をペロッと出した。二人は顔を見合わせたが、ニコッと微笑む。 「いいわよ。とのにたのんで、りょうりをだちてもらうから」 「本当に!? わーい!」 「ふふ。あたちはカットっていうの。こっちが、あたちのいもうとのアナ」 ピンク髪のカットに紹介され、茶髪のアナはよろちくねと言った。 「僕はカービィ。宜しく、カットにアナ!」 「じゃあ、さっそくおちろへいくよ!」 「おちろまできょうそうだ!」 カット達はワープスターから降りると、かなりの速さで走って行った。スピード的に考えるとワープスターの方が楽勝だが、カービィは、彼女達のスピードに合わせてワープスターを飛ばした。 「あたちたち、ダイヤモンドじょうをパトロールちているの」 カットは走りながら言った。 「あやちいひとをみつけて、つかまえるのがのがおちごとなのよ」 アナが言った。 「へえ。小さいのに頼もしいねーっ」 カービィは感心した目をした。それに姉妹は照れ臭く笑った。 カービィ達は、ダイヤモンド城へ真っ直ぐに向かって行った。 「わあ! 海よ、ポポ!」 海を滅多に見ないアイスクライマーの中、ナナは目をキラキラして海を眺めた。 「本当だね。って、ダイヤモンドシティから随分離れちゃったじゃないかっ」 ポポは背後にあるダイヤモンドシティを見た。 「良いの良いのっ。たまにはリラックスも大事でしょ?」 ナナはポポにウィンクした。ポポは彼女を見て、何かを突かれた。 (仕方ないなぁ、全く) ポポはナナに弱かったのである。 暫くナナが海ではしゃいでいると、 「よし、五分間の休憩じゃっ」 「はいっ、マスター」 「ん?」 アイスクライマーは声をしたとこを振り向いた。 少し先に、二人の男がいるのが分かる。片方が白髭の老人で、もう一人、青い中国服を着た黒髪の若者がいた。 アイスクライマーは、彼等が何をしているのか気になり、早歩きで向かった。 「あのーすみません」 と、ナナが話し掛けてみると、若者はサッとこちらを向き、 「オッス!」 と、威勢の良い声を上げ、拳を後ろへと引かせる。 「俺、修行中の身である、ヤングクリケットと言います。クリケットと呼んでも構いません。以後、お見知り置きをっ!」 「あ、ど、どうも」 元気ある声にアイスクライマーは少しだけ戸惑った。 「私達はアイスクライマーよ。私はナナ」 「僕はポポだよ」 「宜しくな、ナナちゃん、ポポ君」 三人は握手を交した。 「クリケット、さっきまで何をしてたの?」 ポポは問う。 「ウィー拳の修行だよ」 「ウィー拳?」 「俺の流派。師匠に稽古をつけて貰ってるんだ。俺達がダイヤモンドシティに滞在しているのは、街に伝わる『お作法』の謎の解明さ」 「お作法って何?」 ナナは訊くが、クリケットは腕を組んだ。 「俺も良く分からないんだけど、何でも『ウィー拳』と『お作法』が融合すると、究極の拳法を編み出す事が出来るみたいなんだ」 「そうなんだ! 凄いね! もし究極の拳法が出来たら、見せてねっ」 「ああ、分かった!」 「コラ、クリケットよ」 いつからいたのか、彼等の近くに老人が現れた。聞かれていたアイスクライマー達は肩を上げた。 「その話はせぬ様にと、あれ程言っておるでは無いかっ」 「す、すみません、マスターマンティス……っ」 クリケットは深々と頭を下げた。彼を見て、アイスクライマーは罪悪感を抱いた。 「まだまだ修行が足りんな」 穏やかに聞こえた師匠の声が、今はきびしめになっている。 「そろそろ休憩時間が終わるな。朝までウィー拳の稽古をつけてやるぞ」 「ハイッ。じゃあね、アイスクライマー」 相変わらずの笑顔でクリケットは手を上げると、砂浜を走り去って行った。 「また会えるかな?」 「きっと会えるわよ」 再会したらちゃんと謝りたい、と、二人は同じ気持ちを持っていた。 「……」 スネークは歩きながら顔を動かしていた。あちこちに目線が行ってしまうのは恐らく無理もない。 牙を剥いた花達。通り掛かる小さな虫や小動物を丸呑みする葉っぱ。凶暴化して、ちっとも可愛くない鳥達がゲラゲラ笑っていたりと、かなり奇妙な場所に来たのだ。 「ここは肝試しか?」 と、スネークは後頭部を撫でた。 暫く歩いていると、丘の上で建物の影を見た。そこは、お金持ちが住んでいそうなお屋敷である。只、空が赤色の闇なので、見た目は怪しい雰囲気だ。屋根の上では、カラスがギャアギャアとやかましく鳴いている。 「誰かいるのか?」 スネークは気になり、扉の前でノックをした。だが、いつまで待っても返事は無い。 ありがちと思いつつも、ドアノブを握り、手前に引いてみた。矢張り鍵は開いていた。 「不用心だな」 そうは言っていても、結局侵入してみる事にした。 灯りがろうそくだからか、天井が薄暗く、床には紅い絨毯が敷かれている。棚には謎の文字が書かれている本がズラリと並び、机の上には、蛇が巣くうしゃれこうべや、毒々しい林檎等、これまた肝試しかおとぎ話の世界を感じさせた。 スネークがあちらこちら見物していると、小さな音が聞こえた。それは、何かを煮ている音。奥を見ると、小さな木の扉があった。閉め切って無く、僅かに出来た隙間から、紫色の光がボヤけている。スネークは躊躇いも無くその扉に近付き、そっと開いた。 この部屋の壁は本棚で出来ているとしか思えない位に、天井まで高い本棚が並んでいた。 空いている道の中心に、子供の後ろ姿があった。その子は、赤い小悪魔と思わせる小さな生き物と一緒に、その子より大きめな鍋の中を覗き込んでいる。鍋から紫色の煙が溢れ出ていて、何かが煮えたぎる音が室内を支配する。 スネークはその様子を、扉からジッと見ていた。だが、不安定な状態でしまわれている本が、スネークの足元へバサリと落ちた。スネークはその本に、鍋を見ていた子達は彼にサッと振り向いた。 「あ、すまなかった」 スネークは冷静に謝罪した。 「研究の邪魔をしてしまったみたいだな。悪い」 「……」 子供は無言でスネークを見つめた。 その子は黒い長髪を兎型に縛った少女で、目は赤く、オレンジのスカーフに赤い服を着ていた。 「……アンタ、誰や?」 赤い小悪魔は怪しい目付き(迫力は無い。寧ろ可愛らしい)でスネークまで飛んで行き、彼の周りを飛び回る。 「ダイヤモンドシティでは見掛けない顔やけんど、旅行者か?」 「俺をどんな風に見たって構わない」 スネークは顔を反らした。 「だが、用が済んだらここを出る」 「そうなん?」 「……レッド……煩い……」 彼女が、ポツリと呟いた。レッドと呼ばれた小悪魔は肩を上げた。 「か、堪忍な、アシュリー……」 レッドは持ち場へ戻り、壺を見る。 アシュリーは、スネークを見たまま、手招きした。スネークは少し経ってから、それに引かれる様に歩いて行った。 巨大な鍋の中をチラリと覗くと、様々な色をした液体が混じって泡を出していた。 「何の研究だ?」 「……」 アシュリーは無言のまま杖でかき回していたが、 「レッド、説明して」 と一言言ったきり、また黙り込んで液体を混ぜ続ける。 「しゃーないなー、アシュリーは。あんさん、名前は?」 「……スネークだ」 「オレはレッド。この子は魔法使いの見習い、アシュリーや。今、アシュリーは、物に命を吹き込ませる魔法を作っとるんや」 「命を吹き込ませるだと?」 スネークは眉間に皺を寄せた。 「せや。アシュリーの気まぐれなんやけどな。数週間前から行ってる研究なんや。実は今日完成する予定なんやで」 「それは楽しみだな」 胡散臭い顔で言うスネーク。アシュリーはチラッと彼を見たが、再び調合に意識を集中させた。 少しすると、壺が一瞬ピカッと光り、煙が小爆発をした。 「……出来たわ」 アシュリーは呟いた。それを合図に、レッドは大きなフラスコ並の瓶を懐から取り出し、アシュリーに差し出した。彼女は壺の中身を見ながらそれを受取る。 レッドを見ると、レッドは体を回転させて赤いステッキに変身し、アシュリーのもう片手に渡った。アシュリーは、ステッキ先を壺の中身に向けた。すると壺の液体が光り、一部が瓶の中へと入り込んだ。 一部始終を見守っていたスネークは、最後にお見事だと口笛を吹いた。 「ゲームセンターか」 子リンは、ある建物前で立ち止まっていた。そこはゲームセンター。ハイラル城下町にもあるが、この街のゲームセンターは、数倍以上も豪華そうだ。 子リンは、取り合えず入ってみる事にした。だが自動ドアが開いた途端、突如飛込んで来た大音量に思わず耳を塞いでしまった。ゲームセンターのBGMや、ゲーム機から流れる音楽のボリュームが半端では無い事を、彼はこの時噛み締めた。 「一寸お前、そこどいてくれない? 入り口で立たないでくれるかな」 背後から声がし、振り返ってみた。そこには、黄色いヘルメットみたいな帽子を被っている少年がいた。 今は苛々状態で腕を組んでいる。 「あ、ご、ご免」 「……もしかしてお前、ゲーム初心者だったりする?」 少年は子リンの顔を少し覗き込む。 「あ、ああ。初めて来たから」 「そうなんだ! なら、ゲームの事ならこのぼくちんに任せな」 少年は胸を張って鼻を高くし、自分の胸をドンッと叩いた。 「ぼくちんはナインボルト。得意なのはゲーム! お前は?」 「俺はリンク。皆からは子リンって呼ばれてるんだ」 「へぇー。ゲームの主人公と同じ名前なんだな。おまけにその格好……ふぅん?」 「?」 言葉をだくした後、子リンをまじまじと眺めるナインボルト。子リンは頭の上からハテナを出し、彼を唯見ていた。 「ゲーム初心者なのに有名な勇者のコスプレでなりきるとか、それこそ中々の勇者だとぼくちんは思うんだけど」 (……何を言っているんだ……?) 「ところで、子リン、だっけ?」 「ん? ああ」 「子リンて呼ばれてるのはチビだから?」 「違う!」 強ち間違いではないと思いつつも、うっかり子リンは突っ込んでしまった。 「あははっ。そんなに怒るなよ、チビリン」 「チ、チビリン?」 (な、何か変な響きがするな……) それを聞いて、子リンは怒る気力を無くした。 「ま、仲良くしようぜ。今からゲームの基本を教えてやるから。な!」 ナインボルトはパチッとウィンクをした。子リンは、はあ、とやる気のない返事をしてしまった。そして手を引っ張られ、ゲーマーの海に巻き込まれて行った。 「うーん、曖昧だなぁ」 リンクは頭を掻いた。街の人からの話に寄ると、知らなかったり、流れ星が怪しい等、いまいちピンと来ない情報ばかりである。 「まだ行って無い場所はあるかな……」 「お! お客さんでっか?」 深いが明るい声がした。 リンクの横で、タクシーの洗浄を行っている二人がいた。二人と言うより、二匹と言った方が良いかも知れない。 猫とブルドッグが、人型な上、運転手の格好をしているのだ。そんな二匹が、ホースとスポンジを駆使してタクシーをピカピカに磨いていた。だがリンクは驚かない。スマブラには、動物もいれば、奇妙な生物までいるのだから。 「お客さん、運がええですな」 猫が言った。 「今からこの愛車に付いた泡を洗い流すとこや。良かったら乗って行きまへん?」 「あ、そ、そうですねえ……」 「もしかしたら、旅行とかでっか?」 タクシーの奥にいるブルドッグが言った。リンクはそれを聞き、少し考えてから、 「うーん、旅行だとは言い難いですが、一応、この街を全部回りたいとは思ってます」 「さいでっか!」 「良かったらサービスでシティ一周させますよ?」 猫は笑顔で、ホースの水でタクシーを洗いながら言った。 「あ、まだ行って無いとこだけでお願い出来ますか?」 と、リンクは言った。 「かしこまりっ。お客様のご要望第一がうちらのモットーやからの。構いまへんわ。どちらまで?」 (どちらまでって言われてもなぁ……) リンクは取り合えず、自分の道のりを記憶を辿って言ってみた。 「それなら残るは……『明日の昇る丘』やね」 猫はタクシーを拭きながら言った。 「明日の昇る丘……ですか」 「見晴らし抜群。ダイヤモンドシティを一辺に見渡せる最高のスポットとして知られてるんですわ」 ブルドッグはニコニコして言った。 「そうなんですか。それは楽しみです」 リンクも笑顔になった。 「さ、さ、乗ってください」 見事に輝いたタクシーに、ブルドッグが運転席側に乗り、猫は客席の方の扉を開けた。 「あ、因みにわしの名はスピッツや。運転席にいるのは、わしの後輩のドリブルはん」 「今後もどうか、ダイヤモンド・タクシーをご贔屓に」 運転席に座りながら、ブルドッグのドリブルは、帽子を軽く上げて会釈をした。リンクも吊られ、頭を下げた。 そして客席に乗り込むと、猫のスピッツは扉を閉め、ドリブルの隣に座った。 「行きまっせ。確り捕まっておくんなまし!」 (え、確り捕まれ?) リンクがどう言う意味だと目をパチクリさせた時だ。 「わあっ!」 タクシーは急に走り出し、それはかなりのスピードで駆け抜けて行った。リンクは勢い余って、シートに背中をぶつけた。 急な曲がり角は、タイヤが悲鳴を上げてでも確りと曲がり切るが、リンクは危うく頭をどこかにぶつけてしまいそうである。それでもぶつからないのは、計算なのか偶然なのか。 「わての運転はスリルがあるって評判なんですわ」 ドリブルは笑いながら言った。 それもそうだろうなと、リンクはハハッと微笑した。 そんな時だ。 リンクの帽子の中から、柔らかく光るものが現れた。羽が四枚付いている、連絡用の妖精である。 「ロイ達か?」 リンクは妖精を見て呟いた。 「リンク、大変なんだ!」 妖精からロイの声が聞こえた。 ダイヤモンドシティから離れたとこにある丘の天辺には、ディバが立っていた。殺気立たせる目で街を眺める。 「次の欠片の場所はここか」 「既に、スマッシュブラザーズが欠片の調査をしているとのご報告があります」 ディバの隣にミエールが立ち、報告する。ディバは、ニッとにやけた。 「またあの虫けら共と戦えるとは光栄だ……そろそろ本気で掛かるか」 と、背中に装備してある二本の長ナイフを引き抜いた。 「どんな手を使っても構わない。邪魔をする者は全て消せ」 「了解」 ミエールは後ろを向き、後ろに向けた片手を前へ振り下ろした。丘の向こうには、全てが紫で出来た体をした軍隊員が数多くいて、ミエールの合図に、全員あちこちへジャンプして消えて行った。 「さあ、地獄のパーティの始まりだ」 ディバはナイフを一舐めして呟いた。 ──to be continued── |