フォックスの傷心 パペトゥーンからアパロイド達を追い出した時は丁度日没だった。半壊してしまった都市がオレンジ色に染まる。彩られる度に空虚さや寂しさが伝わってきた。 パペトゥーンから少し離れたとこにある、緑と茶が寂しく目立つ広々とした土地に、夕日を浴びているグレートフォックスがあった。 スターフォックスとスマブラ一行は、ペッピーに呼ばれ、至急グレートフォックスへ戻った。機内の会議室は多少狭く感じさせる空間だが、全員分の椅子が丁度あった。(カービィやピカチュウを除いて)マリオ達は席に着いた。カービィはフォックスの肩、ピカチュウはマリオの肩の上に乗っていた。ペッピーは皆の前に立ち、少しの間うつ向いていたが、漸く顔を上げた。 「皆、本当に良くやってくれた。将軍達やスターウルフも皆無事だ。お陰でパペトゥーンは救われたよ」 「いや、ペッピーのお陰でもあるよ」 マリオは微笑んだ。一部賛同してくれる人も、頷いたり微笑んだりした。ペッピーは彼等を見て、フッと一旦笑みを溢したが、直ぐに真剣な顔に戻る。 「だが、戦いが終わった後、何か変に思わなかったかな?」 「そう言えば……」 マリオは顎を擦った。 雑魚レベルや巨大なアパロイドはいたが、奴らを指導する者は、マリオ達が知る限り見当たらなかった。 「ワシは本拠地へ君達を案内したが、そこには既に指導者はいなかったのだよ」 「! や、やっぱり、そうだったんだな……」 机に腕を置き、マリオは下を向いては拳を強く握り締めた。隣に座っているフォックスはうつ向きながら、マリオの拳を悲しい目で見守った。 「俺が早く妨害装置を全部破壊してたら、きっとそいつを捕えられたに違いないな」 スネークは目を斜め下へ逸らし、腕を組みながら難しい顔をした。恐らく重い責任を感じているのだろう。 「ピカ……」 ピカチュウも耳を垂らして落ち込んでいた。 「スネークさん達が悪い訳ではありませんよ、あの状況では仕方ありません」 リンクは彼らに何とか言葉を掛けた。 「指導者はどこへ逃げたかは直ぐに分かったから、心配は要らん」 ペッピーは言った。 「奴らはタイタニアへ逃げ込んだのだ」 「タイタニア……あの禁断の惑星の?」 スリッピーは言った。ペッピーはそれに頷く。 「とっくの昔に生命は滅び、今は危険な生命体が住み着いている見捨てられた惑星だ。どうもその惑星から強く巨大なエネルギーを感じるんだ」 「邪悪なエネルギー……と言う訳だろうか」 マーシスは訊いた。ペッピーは躊躇いも無く首を縦に振った。 「恐らくアパロイドの親玉もそこにいるとワシは考える。ペパー将軍も同意してな。明日、タイタニアへ向けて出発しようと考える。グレートフォックスがそこまでもつか、今日中に見ておく必要があるからな」 「アパロイドのせいで大分いためつけられたからな」 ファルコは苛立って溜め息をついた。 「機械を見るなら、オイラに任せておきな!」 スリッピーはガッツポーズをしてウィンクをした。後にロボットのナウスが顔を出す。 「あっ、丁度良い。ナウスも手伝ってね、グレートフォックスのメンテナンス」 「了解シマシタ」 「なるべく早く頼むな」 ファルコは足と腕を組んだままスリッピー達に言った。 「あいつらの病気が悪化する前に、何としてでもアパロイド達を滅ぼさにゃならねえからな」 「……」 目を閉じて言うと、スマブラ達は黙り込んだ。全員、アパロイドに一部侵食されてしまった子リン達のことは、戦ってる間でも気にしていた。その時のペッピーの情報に寄れば、少しずつ病状は悪化しているそうだ。大切な仲間が苦しんでいるのはとても辛いこと。 そして、フォックス達の世界がアパロイドの手に完全に落ちるのも時間の問題。 一刻も早く、一秒でも早く、これらの事件を解決しなければならない。 全て助かる方法は一つ。アパロイドの主を破壊することだ。 なるべく早めに出発したいが、こうなった以上はやむを得なかった。 マリオはピカチュウを肩に乗せ、グレートフォックス内の通路を歩いていた。子リン達の眠る部屋の前まで来た時、そこの扉がガーッと開くと、中からリンクが現れた。 「あ。やあ、リンク」 「ピィカ」 「マリオさん、ピカチュウ」 「どう、子リン達の様子は?」 リンクは辛そうに目を閉じた。 「あの因子は、スピードは遅いですが、広がっていっているのは確かです」 「そっか……」 マリオは悔やみ、目線を逸らした。 「あの、俺、休んでおきます。このグレートフォックスには寝室もあるみたいなので」 「おう、分かった」 リンクは軽く頭を下げ、歩いていった。マリオ達はリンクがいなくなるまで見送り、そして扉を開いた。 部屋の中は明るいが、ベッドに横になっている彼等を見ると、暗い気持ちにならない訳にはいかなかった。 見ただけで浅い眠りだと分かり、子リン達は以前よりもとても辛そうな顔をしている。額からの脂汗が目立ち、息も荒い。埋め込まれている紫に光る因子は、パペトゥーンでの戦いに出掛ける前と比べてかなり目立っていた。 「子リン、プリン、ピチュー……」 マリオ達は順番に彼等を見て、そして子リンの片手を優しく持ち上げた。 「後少しの辛抱だからな。頑張ってくれよ」 「ピカ……」 静かに言ったが、彼等は眠ったままだった。 マリオ達の後ろの扉が開く。振り返ると、ファルコが入って来た。 「ファルコっ」 「あ! マリオ達、いたのか……」 目が合った時は最初は驚いたファルコだが、それは一瞬。直ぐに落ち着いた。 ファルコが来るとは失礼ながらも珍しいと思ったが、プリンを見て理解出来、マリオは密かに微笑んだ。その目に気付いたのか、ファルコはプイッと顔を反らした。 「勘違いはするなよ。俺は仲間達を思って来たんだからな」 「そっか。ごめんな」 「そういや、フォックスを見掛けないんだ。知らねえか?」 「え? グレートフォックスにいないのか?」 「ああ。だとすると、外出したとしか考えられないな」 「でも、一体どこへ行ったんだろう?」 ファルコは顎に指を当てて少し考えると、ピンと来たらしく、直ぐ指を離した。 「もしかしたら……」 「?」 闇色が夕焼けを上から染める。 大分染まり上がっている時、フォックスはパペトゥーンの都市内を歩んでいた。 崩れた建物達に、ひびの入った道路。ニュースに寄れば、被害者も多数出たらしい。久しぶりの故郷の惑星がこの様な姿になってしまったことが、フォックスの傷心に追い討ちをかけていた。 「……母さん? 俺だ、フォックスだ」 フォックスは、自分の母親に電話をかけていた。手柄を認めて欲しい訳では決して無く、母親の無事を確認したいだけであった。だが、彼女の声を最後に聞いたのが遠い昔に思えて、同時に懐かしさも抱いたことに偽りは無かった。 「元気そうで良かった。けど、避難が解除されるまでは絶対にその場から離れちゃダメだからな。それだけ伝えたかった。 それじゃ、切るから」 いつまでも話すとこちらが気まずくなりそうで、自分から電話を切った。ただ、電話の向こうから涙声で「気をつけて」と、切る直前に聞いた気がした。その言葉が、フォックスの心に熱く刻まれたのは確かだった。 都市と比べて少し殺風景な場所へ出た。都市から少し離れた場所。そこの向こうには、山が連なっていた。 そこは、沢山の人々が永久に眠り続ける場。沢山の墓が並べられている。フォックスはその真ん中の道を歩いていた。 一番奥に建てられている、一回り小さく、多少の苔が生えた墓石があった。そこにはジェームズ・マクラウドと言う名が刻まれている。フォックスは彼の墓の前に立ち止まり、悲しい目で見守った。 「フォックス」 後ろから呼ばれ、フォックスは顔だけをそちらへ向けた。そこには、マリオとピカチュウが笑顔で立っていた。 「二人とも……どうしてここが?」 「ファルコに教わったんだ、パペトゥーンへ来たら、一度はきっとここへ寄る筈だってね」 マリオはフォックスの隣に立ち、小さな墓を見る。 「……フォックスのお父さん?」 「ああ。アンドルフの野望を打ち砕く為、最期まで戦った男だ。俺は今でも、彼を尊敬してる」 「そうか……」 マリオはフォックスをチラッと見た。フォックスは墓をずっと見つめていたが、その時は優しい笑顔になっていた。フォックスが父について話す時はいつもと違い、表情がキラキラしていた。ジェームズをそれ程に尊敬している証拠である。 フォックスもジェームズに憧れてこの仕事へ入ったと聞く。そしてジェームズを葬ったアンドルフを倒し、ライラットを救った。 それでも、彼の中のジェームズの存在は大きいまま変わらないと、今の彼を見ても分かる。 だが今は、少しだけ悲しみも混じっている様にも見えた。まるで何かに傷付いた感じだ。 「どうしたの?」 「……つら……」 「え?」 「あいつら、どうしても許せない……っ」 フォックスは歯をくいしばり、体が僅かに震えている。マリオは戸惑いながらピカチュウと顔を見合わせた。 「一体何があった? 僕達に話してよ」 「ピカッチュ」 マリオは眉間に皺を寄せ、フォックスに詰め寄る。ピカチュウも怒った顔で頷いた。フォックスは彼等に振り向いてから、少しうつ向き、口を開いて話した。アンドルフが復活したこと、そして、ガフィがジェームズを装ったことを全て伝えた。 話し終えた時、マリオもうつ向き、ギュッと拳を握った。ピカチュウはさっきよりも悲しい気持ちになっていた。 「正かそんなことになっていただなんて……くそっ! ギガ軍の野郎!」 「……分からないだろう……」 「……え?」 予想外な台詞にマリオはキョトンとした。フォックスは墓を見ながらもう一度言った。 「父を利用された時の俺の気持ちなんか、分かる筈ないだろう?」 「フ、フォックス……?」 「あの時、俺は酷く傷付いた。とても辛かった。ギガ軍は、どんな汚い手を使ってでも俺達を消そうとしているのは分かってる。けど今回は……流石に酷いダメージを受けたよ……」 今にも涙が出るか出ないか、彼の緑の瞳が煌めいていた。声も微かに震えていて、だがそれを押さえるかの様に声を上げた。 「自らの親を知らないお前達なんかに、俺の気持ちなんか分かって堪るかっ! 大切な、大切な存在に傷を付けられた俺の傷心なんか……!」 「ピカッ……!」 「ああ、僕には分からないな」 マリオは腕を組んできっぱりと言い放った。フォックスは耳を動かし、見開いて振り向いた。ピカチュウも驚いてマリオを見る。 マリオはフォックスを睨んだ。 「どうせ僕は本当の親の顔を知らずに育ったんだ。フォックスの気持ちなんか分かりたくもないよ」 「マリオっ……!」 フォックスの怒りが少しずつ沸いてきているのはマリオにも分かる。だがマリオは構わず続けた。 「その悲しみを一人で背負って、ずっと前にアンドルフを倒しに行った訳か? ハッ! 呆れて溜め息も出ないな!」 「マリオ! 黙って置けば……お前えぇ!!」 怒りを爆発させたフォックスは速攻パンチを仕掛けて来た。ピカチュウは慌ててそこから避難し、マリオは素早くそれを避けるが、横から来たフォックスにマリオは横っ腹を蹴られる。 「ぐっ!」 一瞬唸ったが、フォックスの足を両手で掴んだ。 「!?」 「とああぁ!!」 マリオは横へ思い切り半回転するとフォックスを投げ飛ばした。フォックスは暫し焦ったが、タイミングを見計らって何とか着地した。 地面を力一杯蹴り飛ばし、マリオに向かってダッシュする。マリオも隙を伺って両拳を構える。そして、二人の攻防がぶつかり合おうとした時だ。 「ピカアァ!」 声がした瞬間、二人は技をぶつけ合う寸前でピタッと止まった。ピカチュウが二人の間に立ち、フォックスを睨みながら両手を広げていた。フォックスはポカンとしていたが、マリオは大人しく拳を下ろした。 ピカチュウはその後、マリオの肩の上に戻った。 マリオはフォックスを細目で見つめ、フォックスはハッと我に帰った。 「言葉は慎重に選びなよ。さっきの台詞、かなり痛かったぞ」 「あ……っ」 フォックスはまだ唖然としていた。マリオはふうっと溜め息をつく。 「フォックスの言う通り、僕はコウノトリに運ばれてきたから、本当の親の顔なんて解らない。だけど、大切な人を傷つけられた気持ちは痛い程分かる……今でもそんな状況なんだから……凄く辛いんだよ……」 「! 子リン、プリン……ピチュー……」 フォックスは反射的に呟いた。 ピカチュウは涙が出そうになっている自分の目を擦った。マリオはそれを見、ピカチュウの頭を優しく撫でる。 「どんな事情があっても、仲間が苦しんでいるのを放っておける訳がないよ。独りで苦しむなよ、フォックス……僕達……仲間じゃないかっ」 「マリオ……」 フォックスは、ゆっくりと下を向いた。 マリオは、あっと思い、焦って頭を掻いた。 「……さっきは言い過ぎたよ……あんなこと、言っちゃって……」 「マリオ……仲間がいると言う意味を、改めて思い知ったよ。こっちこそ、言い過ぎちゃって、本当に悪かった」 「……お互い様ってとこかな?」 「そうだな」 マリオは罰が悪い笑顔で腰に片手を当てた。フォックスも、悲しい色を持って微笑んだ。そして、二人は手を握り合った。 「マリオ、ピカチュウ。絶対に、アンドルフ達の野望を打ち砕こうっ」 「ピッカピー」 「その時死んだら、承知しないからなっ」 マリオは口端を上げながら、彼の手を力一杯手放した。フォックスは目を丸くしたが、握られた手に触れながら表情を和らげた。 「分かってるよっ」 「皆ー!」 タッタッタッと足音が近付いて来る。見ると、クリスタルが手を振りながらこちらへ駆けて来ていた。 「そろそろ暗くなって来たから、グレートフォックスに戻りましょう?」 マリオ達が空を見上げると、気付けば既に太陽は沈みきり、オレンジ色の空も、後少しで夜の色に全て覆われる所だった。 「もうこんな時間だったんだな」 「そろそろ、戻ろうか」 「……あら! 貴方達、怪我してるじゃない!」 クリスタルは驚きながらマリオ達を眺め回していた。彼女に言われ、彼等も自分の服を眺める。確かに服は汚れており、怪我も目立っていた。 「あら。正かこんなに汚れていたのか。気付かなかったよ」 「喧嘩でもしたの? もー! どうやってそこまで、しかも墓地内で喧嘩出来るの!?」 クリスタルはカンカンになってマリオ達を叱った。 マリオ達は反論が出来ず、只絞んでいくしか出来なかった。 クリスタルは軽く息を吐いて腕を組んだ。 「早くても明日出発なんだからね? 戦いに参加出来なかったら元も子も無いわよ?」 「ご、ごめんなさい……」 彼等はしょんぼりしながら謝罪した。 「……じゃ、早く戻りましょう」 反省を見たクリスタルは、腕を組みながら吹き出した。 マリオ達はポカンと見ていた。 「早くこっから出ないと……出るわよ、この墓地」 クリスタルはパチンとウィンクした。正かと彼等は苦笑したが、 「ピ、ピカ……ッ?」 ピカチュウは、彼女の言葉を信じてしまったのか、すっかり怯えてしまっていた。マリオ達はそれは予想外に思い、呆気に取られてしまった。 「うふふ。冗談だから大丈夫よ、ピカチュウ」 クリスタルはピカチュウの頭をなでなでし、マリオの肩から抱きかかえた。ピカチュウは少しは落ち着いたものの、まだ多少震えてはいるみたいだ。それにマリオは、ほんの少しだけ気になった。 「さ、行きましょ」 彼女は踵をかえして歩いていった。それに続き、マリオ達も歩を進めていった。 「父さん、俺の成長、いつまでも見ていてくれ」 フォックスは、ジェームズの墓を少しの間見てから歩き去った。 墓地を出る前にマリオは足を止めた。ふと何かの気配を感じ、サッと墓地の方を振り返った。 ジェームズの墓を、墓地を取り囲む白くて小さな策の向こうから、静かに見守っている者がいた。暗くて影に覆われてるその者は、マリオの視界では中々見辛かった。フォックスと同じ容姿をしている気がしたが、僅かに欠けた片耳が、唯一異なっている部分だった。 彼はこちらを見た後、静かにその場を離れていった。 「……」 マリオは、その者が夜の闇に紛れて行くまで、彼を見守り続けていた。 「マリオ? どうした」 「え? あ、ああごめん。直ぐ行く」 それでもまた少し墓地を見てから、やっとクリスタル達を早足で追って行った。 タイタニアの大地は、気温に逆らえない惑星だ。夏の場合は炎色に染まる空と砂漠に。冬の場合は山は氷と化し、季節が完全に変わるまで雪が降り続く。古代生物の寿命が短いのも納得がいく。 だが、その気温に適応することが出来る基地がある。それは、パペトゥーンでのあの基地と全く同じ構成だ。 だが唯一違うのは内部で、最奥の研究室には他のカプセルより遥かに巨大なものがあった。 今ここにいるのはアンドルフだけで、彼は一人で『アパロイドマザー』復活の研究をしていた。 「どうなんだ、アンドルフ?」 今のとこの結果の書類を見ているアンドルフの後ろの扉がガーッと開く。入って来たのは、ガフィとディバ、そしてラフィットである。 「まだ完全体にまでは到っていないな」 彼等が横へ来てもアンドルフはアパロイドマザーを見ていた。 大量の泡に紛れて影しか見えないが、それだけでもどれ程巨大で如何に狂暴なのかが分かる。広々とした室内でも、このアパロイドマザーの大きさは大半を埋め尽している。 ラフィットは手をアパロイドマザーへ掲げ、そっと目を閉じた。それからおよそ五秒後に手を下ろし、瞼を開いた。 「……まだ、深い眠りについてるみたい」 と、呟く。ディバは、ハンッと鼻で笑った。 「スマブラがこの惑星へいつ来るか分からないってのに、アパロイドのママを蘇らせるのに時間が掛かるとはなっ」 「本物の俺達に倒されたから、相当な支障があるな」 真剣な顔をしているガフィは腕を組んでアパロイドマザーを見上げる。 「何。その時の為の備えもあるから、心配は要らん」 アンドルフは目線を変えずにニヤリと笑んだ。 「……」 ラフィットは彼にゆっくりと振り向いた。彼はアパロイドマザーに目を向けたまままだ笑んでいる。ラフィットはジッとアンドルフを見つめると、顔色が一時変わった。 「えっ?」 「? どうした、ラフィット」 うっかり声を漏らしたラフィットにガフィが振り向く。ラフィットは軽く焦って口に手を当てる。そしてガフィに作り笑顔を見せた。 「ううん、何でもないよ」 「ふーん……」 ガフィは興味無さげに頷き、扉へ向かう。 「今日は、俺がトレーニングだったな」 歩みながら後ろの彼等に言った。 ディバ振り向くと、ニヤッと笑い、ガフィへ返事をした。 「死なない程度に頑張れよ」 「……」 扉前に立ち止まり、ガフィは顔だけディバに向けた。 「俺はフォックスを殺すまでは誰にも殺されないさ」 そして扉を開き、出ていった。 「……結局自分の相手は自分自身なんだな」 ディバは扉を見ながら言った。 「僕自身の相手がいないことに、少し残念かもな……ただ……」 言葉を濁し、ディバは再発した頭痛に、頭を手で軽く抑えた。その痛みは直ぐにおさまり、手を離す。 「それはまだ先のことなんだろうなと、睨んでる」 「……それは以前から繋がりがあるとでも言うのか?」 アンドルフは漸くこちらを見た。他人事の様に笑い、嫌味を晒す。だが慣れているディバは少しも動揺しておらず、代わりに顔を反らした。 「んなの知らねえよ。それより、さっさと復活させろよな」 マントを翻し、扉へ向かう。ラフィットも慌ててディバを追い掛けていった。 アンドルフはフッと笑い、アパロイドマザーを見上げた。 「まだまだ深い眠りについているが良い。フフフ……」 ニヤニヤと笑いながら、カプセルの硝子に手を添えた。聞こえたのかどうか分からないが、アパロイドマザーは未だに目を閉じたまま動くことは無かった。 パペトゥーンはすっかり夜になってしまったが、マリオ達はグレートフォックスまで戻って来れた。クリスタル、ピカチュウ、そしてフォックスはグレートフォックス内へ入る。 マリオも続いて中に入ろうとしたが、横から小さくも機械音が聞こえ、思わず足を止めた。コンピュータのボタンが何回も押されている音がし、気になったマリオはそちらへと足を向けた。歩いていくと、初めは暗くて良く分からなかったのだが、母艦の側にしゃがむ影と、側に立つ影が見えてきた。 「よしっ。ここも異常は無いよ、ナウス」 「了解シマシタ」 彼等は、グレートフォックスのメンテナンスをしているスリッピーとナウスだ。あちらこちらいじったのか、顔や服が汚れている。マリオは彼等に気付かれない程度に離れた場所からスリッピー達を見守っていたが、何かを思い付き、早速母艦内へ入った。 疲れが溜ってきたスリッピーが額を袖で拭いながら溜め息をつくと、彼の目の前にコーヒーカップが差し出された。湯気を伝ってコーヒーの良い香りがした。持ち主はマリオだ。 「お疲れ様。たまには休んだら?」 「ああ。サンキュー、マリオ」 スリッピーはカップを受け取ると立ち上がり、コーヒーをすすった。 「ナウスも休みなよ。ロボットはロボットでも、疲れくらいは溜るだろう?」 「了解シマシタ。私モ少シ休ミマショウ」 マリオも自分のコーヒーを飲んだ。 「お墓参りに行ってきたの、フォックス?」 スリッピーは両手でカップを包みながら尋ねた。マリオはカップを口に付けたまま目線を彼に向け、コクリと首を縦に振った。 「誰にも知らせてなかったんだな」 口からカップを離す。スリッピーはそれを見た後、瞼を伏せた。 「フォックスってさ、あまりリーダーに自信を持ってないんだよね」 「そうなのか?」 「オイラ達はリーダーらしいなと思ってるんだけど、父さんみたいになるにはまだまだだって。でもそれも……」 「彼の成長の一つなのだ」 別の場所から声がした。ペッピーがこちらへ歩んでくる。 「ペッピーっ……そう言えばペッピーは、ジェームズの戦友だったね」 「ワシはジェームズのこともフォックスのことも良く知っておる。ワシには分かるんだ。フォックスも段々、親父さんに似てきた」 「……たまにカチンと来ること言うがな」 ペッピーに続いてファルコが現れた。 「正直最初はあんま頼りなかったがな、今のあいつは半ば認めてやるよ」 「元宇宙暴走族ヘッドとしてかな?」 マリオは笑って腕を組んだ。ファルコは静かに吹き出した。 「昔の俺っぽく毎回毎回無茶してるがな、俺はあいつがいなけりゃ動かねえと決めている」 「オイラも、フォックスがいたから、ライラット系が救われたんだって、今でもそう思ってるんだ!」 スリッピーは目立ちたい位に手を高々と上げた。 「それにフォックスは、仲間思いの良いリーダーだ」 ペッピーは何度も頷いた。マリオは彼等を見て、自然と笑みを綻ばせていた。 「……いや、皆がいてくれたお陰だよ」 いつからそこにいたのか、気付けばフォックスがそこにいた。今の彼は、若干気まずい様子が伺われる。 「フォックス……」 「俺がここまで来れたのも、ファルコ、スリッピー、ペッピー、クリスタル、ナウス……そして、皆がいてくれたからなんだよ。本当に感謝している」 「ヘッ。格好付けやがって。馬鹿野郎が」 ファルコは肩をすくめ、ポケットに両手を突っ込み、立ち退こうとした。だがフォックスの横で立ち止まると静かに囁いた。 「フォックスにまだ足りないのは、経験だけだ」 そしてグレートフォックスへ戻る。 「確かにそうかも知れない」 マリオは考え込みながら呟いた。フォックスは口を閉じたまま少し見開き、彼を見た。 「前に僕が子リン達のことで自分を責めていた時、フォックスに言われた言葉を今でも覚えてるよ。自分だけを責めるなって。でもさっきのあれは結局言葉だけじゃないかって、流石に腹が立っちゃった。だから、うっかり暴言に近い言葉をぶつけちゃったんだよな、僕」 マリオは自分の後頭部をコツンと叩いて反省した。 「マリオ、フォックスと何があったんだい?」 スリッピーは半分焦りと興味でマリオに問うた。 「あ、別に気にしないで良いよ」 マリオは愛想笑いで返した。そして改めて軽く咳払いをし、 「自分の言葉に責任を持つんだよ、フォックス。それさえ出来れば、立派なスターフォックスのリーダー、そして、スマッシュブラザーズのサブ・リーダーだよ」 「後者がなーんか少し挑発的だった気がしたけど、まあ良いか」 「スマブラのリーダーの座は渡さないからなっ」 「あっ。言いやがったな、マリオ!」 「何だ、やるのかっ?」 マリオは口端を上げ、拳を構えた。フォックスも、ムッと顔をしかめると、サッと拳を構える。 「ああ、上等だ。どっちが強いか、今ここで白黒ハッキリさせようぜっ!」 「望むところだ。かかって来いや!」 「ち、ちょっと二人共ー……」 マリオとフォックスがバトルを開始して暫くすると、クリスタルが慌てた様子で登場した。そして彼等を見て、最早止めても無駄かと潔く諦め、腕を組むと、やれやれと首を横に軽く振った。 「もお。明日は大事な戦いだって言うのに……」 「自由にさせてやれ」 「! ペッピー……」 ペッピーは微笑し、そう言った。スリッピーも、グーを作って二人を応援している。 「へえ? 中々やるじゃん」 一旦離れたマリオは目を細め、ニヤッと笑う。 「まだまだバトルは終わってないぞ、マリオ!」 真顔でフォックスは、ビシッと指を突き付けた。 「誰が終わりだと言った! ファイア掌底をくらえ!」 マリオは走りながら拳をグッと握り締めると、拳から炎が噴き上がる。フォックスはその場を動かず、懐のある装置を握る。 「そーれ!」 マリオのパンチがフォックスに当たるか当たらないかの距離まで来た時だ。 「リフレクター!」 「!」 フォックスは装置を操作すると、彼の身全体を包み込むガラスの様なバリアが発生した。リフレクターとは、技をカウンターする技である。マリオはそれに弾き飛ばされたが、難無く着地した。 「オイオイ、それは卑怯だよ」 「マリオだってマント使ってるじゃないかっ」 フォックスは地面を蹴り、マリオに向かって走る。マリオも笑顔を作って走り出した。 「ああもお! 見てられないわっ」 クリスタルはハラハラしている。彼女を見ているペッピーとスリッピーは、密かに苦笑していた。 「でも……ホント楽しそうね」 未だに呆れているクリスタルだが、彼女にも次第に笑みが浮かんできた。 マリオとフォックスは汗を流しながら、仲間としての熱い闘いを続けていた。 翌日の明朝頃。 ほぼ破壊された都市なのにも関わらず、何匹かの小鳥のさえずりが響き渡った。 そして、静かな空間を破る大きな音が上がった。グレートフォックスのエンジンが全開された音である。 母艦内のブリッジには、スターフォックスとスマブラが集まっていた。皆確り、目を覚ましていて、戦う気は満々だ。 「グレートフォックス、発進!」 一番前に座っているフォックスは張り切って叫んだ。母艦は地面から浮かび上がり、次第にスピードを上げていく。そして大気圏を越え、宇宙へやってきた。 「これからワープゲートを使ってタイタニアへ向かう」 「ワープ?」 フォックスの肩に座っているカービィは首を傾げた。フォックスはカービィに微笑む。 「ほら、あのゲートを通るんだよ」 スリッピーはある場所を指差した。宇宙空間の中に、巨大な円を描いた黄緑に輝くゲートが見える。グレートフォックスでも簡単に飲み込める程の大きさだ。 「うわぁ! でかあぁい!」 マリオは額に手をかざして見開いていた。 「ワープか。俺達の世界では有り得ない技術だ」 と、スネークは鼻で笑う。 「あのゲートをくぐれば……いよいよなんですね……」 リンクは息を飲んだ。 「よしっ。皆、準備は良いな?」 フォックスは周りを見回し、そして、前方のワープゲートを睨む。 「ワープ!!」 円の中に光るゲートレンズが現れる。グレートフォックスがそこを通ろうとすると、レンズは水の様に波紋を広げながら母艦を飲み込んでゆく。そして、母艦はワープゲートの向こうへとワープしていった。 ──to be continued── |