山の英雄 「ね、ねえ、フォックス……ファルコォ……」 「あ? 何だよ」 「どうした、カービィ?」 ファルコはそっけなく、フォックスはニコッと笑って、自分の肩にいるカービィに返事をした。一方、カービィは顔色を少し悪くし、声を震わせながら喋っていた。 「ぼぼ僕達、ききき北の門をくぐって来たけどさぁ……」 そこで言葉を濁すと、フォックスはうんと軽く頷く。そしてカービィは辺りを見回してから、思い切り声を上げた。 「こんなとこだって聞いてなかったよおぉぉ!?」 フォックス達が歩いている場所。そこは雪山だった。雪がチラチラと降っていて、とても綺麗な白銀の世界である。 だがただの雪山では無く、気温があまりにも低すぎるのである。恐らく普通の人がここへ足を踏み入れれば、アッと言う間にシャーベットになってしまうであろう。カービィも正にその一歩手前で、ガチガチと震え凍えていた。 「ケッ! これ位で寒がるとは、流石のテメェも修行が足りないんだな」 ファルコは思い切り鼻で笑った。 「俺はキタキツネだからな。こう言う環境は平気だ」 「うう、寒いよお……」 ファルコとフォックスは平気そうだが、カービィは小さな手を交差させ、カタカタと身をこわばらせていた。 フォックスはそんな彼を見て、あることを思い付くと自分の上着をサッと脱いだ。そして、カービィの丸い体をそれで包む。 「え? 良いの、フォックス?」 カービィは目をぱちくりさせ、自分の身を包んだ上着の裾をそっと掴みながらこちらを見つめる。フォックスはクスッと笑って頷いた。 「カービィがそこまで寒がるとは思わなかったけど、このままじゃ可哀想だからな。その上着、雪山を下りるまで貸してやるよ」 「本当に!? ありがとう、フォックス! 凄い温かーい!」 カービィは本当に嬉しそうに服をギュッと握り、フォックスも嬉しそうに微笑む。彼等を見ていたファルコは軽く溜め息をついていた。 「ふぅ、やれやれ。それにしても、一体どこまで歩いて行けば良いんだか」 フォックスは歩きながら口を開く。彼等が雪山の道を歩いて三十分。辺りは茶色いゴツゴツした岩が目立って来たが、一体どこへ行けば良いのか、彼等は訊くのをうっかり忘れてしまったのだ。 「ケッ! もしここじゃ無ければ、とんだくたびれもうけだな!」 ファルコは近くの茶色い岩を思い切り蹴って八つ当たりした。その時、その岩が急にムクッと起き上がる様に動き出した。 「ううわっ!?」 ファルコは驚き、うっかり尻餅をついた。 「大丈夫か、ファルコ!?」 「わーい! ざまあ!」 心配するフォックスとは逆にカービィはかなり嬉しそうだった。ファルコは尻を擦りながら、頭に怒りマークを浮かべていた。それは動き出した岩に対してか、罵声を浴びせたカービィに対してかどうかは分からないが。 その起き上がった茶色い岩は、どうやら背中の様で、こちらを向いたそれを見ると、栗の形をした顔につぶらな瞳を持つ生き物だった。 「あれ、登山家ゴロか? それにしては随分身軽な登山家ゴロね」 「い、岩が喋りやがった……!」 ファルコは座り込みながら目をパチクリさせていた。フォックスやカービィもポカンとしている。 「あ、オラ達怪しい者では無いゴロ。オラ達はゴロン族だゴロ」 「ゴロン族?」 ファルコは立ち上がり、フォックスもこちらへ来ながらオウム返しした。 「この山に住んでいて、岩を主食に生活してるんだゴロ」 「岩を食ってんのか!」 ファルコとカービィはあんぐりとしてしまい、フォックスも驚いた顔をしていた。 ゴロン族の男は、ゆっくりと辺りを見回しながら続きを話した。 「本当はこんなに雪は降らないし、気温も下がらないゴロ。お陰でオラの仲間達は、すっかり凍えてしまっているゴロ。ううう寒いゴロッ……」 ピュウ……と北風が流れただけで、ゴロン族の男は震えながら腕を擦った。 「じゃあ周りで寝てる、あの茶色い岩達もゴロン族なの?」 カービィは辺りの岩達を指差しながら訊いた。 「そうゴロ。でも皆眠ってないゴロよ。寒いあまり震えて動けないだけなんだゴロ」 「ふーん。ファルコの上着じゃ足りないね……」 「勝手なことほざくな。俺だって寒いの駄目なんだよっ」 ファルコはそう腕を組むが、カービィは、そんなファルコを思い切り睨んだ。 「寒いって、ファルコだって人のこと言えないじゃん! 何僕にばっかり文句言ってえ!」 「だが俺はお前程寒がりじゃないんだ。だから修行が足りないんだって言ったんだよっ」 「でもファルコも寒がりじゃん!」 「二人とも、話を聞け」 フォックスはゴロン族の男を見ながらボソッと呟くと、後ろ二名の口論がピタッと止んだ。ゴロン族の男はポカンとしてしまったが、フォックスは気にしないでと微笑んだ。 ファルコは腕を組んで横から耳を傾け、カービィも改まり、フォックスの肩にちょこんと乗った。 「つまり、この雪山に変化が現れたのは……」 「やっぱりあの……スタルキッドって子が?」 フォックスが呟き、次にカービィがそう言った。 「いや、オラ達は別の奴の仕業だと思ってるゴロ」 だがゴロン族の男がそれを否定した。 「他の奴?」 「ゴートって言う怪物が現れてから、雪山の様子が凄い変わったんだゴロ!」 「ゴートと言うのは……つまりは山羊って訳か」 ファルコは睨む様にこちらを見ながら言った。 「ただの山羊じゃない。もの凄いでかい暴れ山羊なんだゴロ!」 「ひえぇ……」 ゴロン族の男が手で大きなわっかを作ると、カービィはオーバーに怯えた。だが、ゴロン族の男は今度は胸を張っていた。 「けどオラ達の英雄が、今退治しに行っているところなんだゴロっ」 「英雄?」 フォックスも腕を組んだ。 「ダルマーニ三世だゴロよっ。あの人はゴロン族で一番力持ちで強いんだゴロ! オラ達の為に、ゴートを退治しに出掛けたんだゴロッ。だから、もうすぐこの雪山も元通りになるゴロッ」 フォックスはカービィに振り向くと、カービィは彼の気持ちを理解し、コクッと頷く。次にファルコに振り向くと、ファルコも頷いた。 「ゴロン、そのゴートって、どこにいるか分かるか?」 「え? 君達、もしかしてゴートとダルマーニ三世との戦いを見に行くゴロかっ?」 「そうじゃない。まあ、俺達も戦いの手伝いに行くんだよ」 「えぇ!」 行くことさえ驚くことだが、今の言葉にゴロン族の男は更に驚いた。 「言い忘れたが、俺達は登山家じゃない。戦士とでも言っておくかな」 ファルコはフッと微笑した。 「で、でも危険だゴロよっ。族長もダルマーニ三世を止めるくらいだゴロ!」 「なら尚更だ。英雄が危険な目に遭っていたらどうする」 「そ、それはぁ……」 ゴロン族の男はフォックスのその言葉に詰まった。フォックス達がそう言い出したのは、三人共、妙な胸騒ぎを抱いたからだ。もしかしたら、彼は……。 「……分かったゴロ。オラ行くの怖いゴロから、口だけで教えるゴロよ?」 ゴロン族の男はそう言うと、白い道の向こうを指差した。 「この道をずっと真っ直ぐに行くと、大きな洞窟があるゴロ。そこから先は確か、広い平原があって、そこでゴートが暴れ回っているゴロ」 「ほお、そうか」 ファルコは何と無く相槌を打った。 「サンキュー、ゴロン。族長さんに宜しくな」 カービィがバイバイするのを最後に、三人は洞窟へと向かった。 とにかく真っ直ぐと白い道を歩いていると、確かに洞窟が大きな口を開いて三人を迎えていた。 「……行くぞ」 フォックスは静かに言い、そして三人は洞窟へ入っていった。 茶色い岩を円状に彫られた感じが続いている。時折コウモリがバサバサと飛び回る中、小さな足音を立てて彼等は歩を進めて行く。 「……ん?」 フォックスが急にピタッと立ち止まった。 「フォックス、どうしたの?」 「……外の匂いがするな」 「外? あ、確かゴロン族の人が言ってた……」 「いよいよ山羊の怪物くんとご対面って訳か」 ファルコはブラスターを取り出し、ジャキッと構えた。カービィも、フォックスに借りた上着をギュッと握り、気を引き締めた。 「行くぞ!」 フォックスは気合いを入れ、地面を思い切り蹴ってダッシュする。ファルコも続いて走る。駆けていると、やがて光が見えてきた。彼等が走れば走る程、それは大きくなる。 そして洞窟を抜けると、山の端にある広い場所へ出た。広場の先には、空と並ぶ山々が見え、ここから落ちれば一貫の終わりだ。 「ひええ、凄いところに出たね!」 カービィはギョッとし、辺りを見回した。 「ゴロンが言っていたのはここか?」 「ああ。多分な」 二人は歩き出し、広場の真ん中へ向かう。その間、フォックスの肩にいるカービィが顔をキョロキョロさせていた。何やら不安な顔へと変わり行き、焦ってフォックスに言った。 「フォックス、何かおかしくない?」 「え、何がだ?」 フォックスは足を止めずに返事をした。 「ここにゴートがいるなら──ゴロン族が言ってた英雄さんはどこにいるの?」 その一言を聞いた瞬間に立ち止まった。 「言われてみればどこにもいないぞ? 確かダルマーニ三世、だったな」 「ダルマーニ三世がいない? ま、正かそれは……!」 「! フォックス、カービィ、危ない!!」 ファルコは叫ぶと同時、彼等を力強く押し、自分も急いで離れた。彼等がいたとこには、いつの間にか大きくなる影があり、そして間も無く、ドーンと音を立てて地面を震わせながら、何者かが現れた。 その巨体は、見た目は山羊の様な姿だが、顔は人間に近く、かなりの不気味さをかもし出していた。 「ほう、また殺されたい者共が現れたか。その勇気は認めよう」 「!?」 低い静かなその声から出た言葉に三人はハッとした。全員同じ考えをしていたのだ。代表してフォックスが尋ねた。 「ゴート、ダルマーニはどうした!」 彼の問いに、ゴートがクククと喉を鳴らした。 「ダルマーニ三世か。彼の力は中々だった。だが、私の敵では無いわ」 「何だって!?」 フォックス達が酷く驚く間でも、ゴートは身構え、足で地面を蹴りながら言った。 「貴様らもあの英雄のとこへ連れてってやろう。誇りに思うが良い」 「ケッ! てめぇに負けることだなんて、誇りにも思いたくねえ!」 ファルコはそう吐き捨てた。 「ならばとっとと地獄へ落ちるが良い!」 ゴートは叫ぶと、一気に突進して来た。巨体に似合わずスピードはかなりあり、フォックス達はその場から焦って離れるのが精一杯だった。 「くそっ! 避けるのがやっとか!」 フォックスは立ち上がりながら言った。 「なら、避けないで攻撃しちゃえ!」 カービィはペロンッと舌を出しながら懐から攻撃用カッターを取り出し、そしてジャンプした。 「カービィ!」 フォックスが止めるのも聞かずに高々と飛び、走って来るゴートの目の前まで降りてきた。カービィはカッターに水色の力を溜め、そして攻撃力を上げる為にもう一度、今度はカッターを両手で構えながら高く跳び上がった。 「は! えぇい!!」 着地したと同時カッターを地面へ叩き付けると、切味の良いギロチン衝撃派が放たれた。走って来るゴートに向かって真っ直ぐに向かうが、ゴートは顔を下へ突き出すと、呆気無くカッタービームを弾き飛ばした。 「ええ! うわぁ!」 突進して来たゴートに、今度はカービィが吹っ飛ばされた。 「カービィ!」 フォックスは飛んで来たカービィをナイスキャッチした。 「大丈夫か、カービィ」 「うーん、やっぱりフォックスの上着着てると動きづらいなぁ」 カービィが未だはおってるフォックスの上着を両手で整えるのに、フォックスはガクッと頭を下げた。 「だったら脱げば良いじゃないかっ」 「無理だよー。シャーベットにする気!?」 「そうは言ってないよ……」 フォックスはこれ以上は言わなかった。 ゴートはファルコに向かって走り出し、ファルコは高々とジャンプして避ける。 「チッ! この暴れ牛がっ……!」 そしてタイミングを見計らうとゴートの背中に飛び乗った。 「ごおぉ……!?」 「いい加減、大人しくしろ!」 ファルコは懐に取り付けてある八角形の白い装置を握った。すると、ファルコの身を水色の光が包み込む。それは電撃も放ち、ゴートに電気を浴びせた。 「グオオォ!」 「ううわっ!」 ゴートが大暴れをすると、ファルコは思い切り吹き飛ばされた。そしてファルコは崖を飛び出した。 「ファルコ!」 ファルコは吹き飛ばされながら舌打ちした直後、落ちる前に一瞬だけ止まった。そして気合い溜めをすると、体から炎が溢れ出す。 「ファイヤー!」 そう叫ぶと、炎と共にファルコは崖へ飛んで行った。この技はエネルギーが直ぐに消耗し、一定距離までしか行けないが、ファルコが崖に辿り付く十分な距離だった。炎が尽きると、ファルコは動揺せずに無事崖へと戻って来れた。 「くそ! アブねえなぁ……!」 立ち上がる時のファルコは下から睨み上げた。 「くらえ!」 フォックスはブラスターを取り出し、光線を撃ち放った。光線はゴートの体に当たり、相手は怯む。 「ぐう……ぐおお!」 ゴートはフォックスへ向かって走り出したと同時、頭を振り下ろし、角で地面を思い切り叩き付けた。そこから衝撃派が地割れと共に放たれ、フォックスを襲った。 「うわ! 畜生め!」 フォックスは腕で顔を覆い、何とか攻撃をかわす。そして即座にブラスターをもう一度使った。再びゴートに命中する。 「グアアァ!」 「はぁ、はぁ……どうだっ!」 「……フフフ、中々面白い連中が来たものだ」 表情を変えないゴートはクスリと笑った。 「ならば、もっと楽しませて貰うか」 そう言った後、ゴートは何故か洞窟内へ入って行った。 「あ! てめぇ、逃げるのか!」 キレたファルコは思い切り洞窟を睨んだ。 「ファルコ、カービィ、行くぞ!」 そして三人はまた洞窟へ入っていった。 中は相変わらず一本道──と思ったら大間違いだ。行った時とは大分違い、さっきよりも広くなり、いくつかの大きな穴が彼等を待ち構えていた。フォックス達はそれに気付くと、分かれ道の中心で立ち止まった。 「何だこりゃっ? いつの間に迷路になった!?」 ファルコは焦ってキョロキョロさせる。 「……」 フォックスはジッとし、耳を動かした。彼は、三人の中で一番聴覚が良いのだ。 目を閉じて辺りの音を聞いていると、ある違和感を覚えた。 「! 二人共気を付けろっ……来るぞっ」 「え?」 不安を抱いたままのカービィはフォックスに振り向いた。 暫くすると、地鳴りが段々大きくなって来るのを、三人は全身で感じ取った。 「な、何か来るよ!?」 「フォックス、どっから来る」 「……!」 フォックスが分かった時は直ぐに目の前まで奴が来ているのに気付く。そしてファルコの体を強く押しながら叫んだ。 「右からだ!」 右の洞穴から、かなりのスピードでゴートが横切った。彼等は危うくゴートに踏み潰されるところだった。そして奴は真っ直ぐに左の洞穴へと入った。 回避したフォックス達は素早く立ち上がる。 「ったく、うざってえ特攻野郎だ!」 「! フォックス、上!」 ふと上を向いたカービィだが、そこに何かがあると気付くと慌てて彼等を上へ向かせた。鍾乳洞の鋭いツララ達がガタガタと揺れている。しかもそれらはかなり大きなサイズだ。少なくともフォックス達よりはでかい。 状況を理解したフォックス達は反射的にダッシュした。彼等がいたとこの地面に巨大なツララが突き刺さる。彼等が走れば後ろにツララが降ってくる。とにかく彼等は、体力が続く限り走り続けた。 「成程な。ここは奴の家って訳か」 「真正面から来たら終わりかも知れないな、横に穴が無い限り」 「無かったらゴートに轢かれちゃうってことっ?」 カービィが尋ねると、フォックスは躊躇いも無く頷いた。その返事にカービィはまた驚く。だが、そこで良いことをピンと思い付いた。 「フォックス、耳をすましててっ」 「え? どう言うことだ、カービィ?」 「良いからっ。奴がどっから来るのか聞いてて!」 「あ、ああ。分かったっ」 フォックスは走りながら耳を凝らした。カービィは、フォックスの上着をギュッと握りながらチャンスを待っていた。 そしてまた地鳴りが激しくなって来る。フォックスはとっさに声を上げた。 「正面だ! 向こうから来る!」 「くそっ! 絶妙なタイミングだな!」 横に洞穴が無い今、逃げ道は一つしか無い。フォックスとファルコは急ブレーキをし、今来た道を走り出す。 しかしその時、カービィは彼等とは反対側へ向かって飛んで行ってしまったのだ。 「カービィ!?」 二人は慌てて立ち止まり、ゴートへ向かうカービィを見た。 「あのバカ! 死にてえのかよ!」 何とかカービィを助けに行こうともう一度反対方向へと走る。 だがカービィは止まらず、キリッと凛々しい表情をする。そして、ゴートにぶつかる直前が来た。 カービィは着ていたフォックスの上着を脱ぎ、両手でバサッと広げた。そして、ゴートに接触ギリギリのとこで上着を手放し、カービィは球状の体を使ってゴートの体の上を転がった。 「うわわわわああ!」 かなりの速さで上を転がることは流石に予想外だったらしく、カービィは目を回しながら地面へポテッと倒れた。 「カービィ!」 「! おい、フォックス! あれを見ろ!」 「え?」 ファルコは指差した先にあるのは、ゴートの顔がフォックスの上着に掛かっているとこだ。 「な! ま、前が見えん……っ!」 ゴートはそれを取ろうと必死で首を振るが、中々上着は取れない。そうしている内にゴートは岩に足を取られ、思い切り転倒した。 「わあ!」 ここにいては危ないと悟ったフォックスとファルコはその場から逃げ出す。そして、やっとゴートのスライディングが終わった。それに二人は振り返ると、倒れているゴートが目の前にいた。 「ぐぬぬ……お、おのれえぇ……!」 「! ファルコ、チャンスだ!」 やっと気付いたフォックスは直ぐにファルコを呼び、ジャンプした。 「……そう言うことか。中々、やってくれるな!」 ファルコはニッと笑い、フォックスと同じくジャンプした。高くまで跳んだ後、二人は共に体から炎のパワーを発揮した。 「カービィの努力は無駄にしない!」 「俺達の必殺技、体で確りと拝んで置きな!」 「くらえゴート! ファイアフォーックス!!」 「ファイアバード!!」 二人は炎の砲丸となり、大砲から撃ち放たれた様に直線を描く。二人の炎が合わさり、更に巨大な炎の砲丸となった。 ゴートの顔からフォックスの上着が落ちたが、ゴートは彼等の技に驚く。 「な、な、何だとおぉっ!?」 「うおおおおぉぉっ!!」 そして炎の弾はゴートの体に見事命中した。そのパワーは凄まじく、ゴートの体を全て包み込み、奴は悲鳴を上げた。 「グアアアアァァァァ……!!」 フォックスとファルコは奴の後ろへ膝を付きながら着地した。炎に包まれたゴートは、その場で消滅した。亡骸として残った顔は仮面となり、地面へポトッと落ちた。 「やれやれ。厄介な相手だったな」 ファルコは腕を組んで、ゴートの仮面を見た。 「! カービィっ」 フォックスは倒れているカービィのもとへ走り、ファルコは仮面を拾いに歩く。カービィはまだ気を失っていて、フォックスは彼を両手で抱き上げ、軽く揺さぶる。 「カービィ、カービィっ」 「……うーん……」 小さな声は返事をしたが、目はまだ覚めない様だった。 「何だこりゃ?」 ファルコは首を傾げながらそれを拾い上げた。ゴートの顔がそのまま仮面になっていて、気味が悪いと感じた。 その時、仮面から鈍い光が放たれた。 「んっ?」 その仮面はファルコの手から浮かぶと、先程の崖を目指して飛んで行った。 「あ、待て!」 「ファルコ、どうした?」 フォックスが振り向いた時は、ファルコは仮面を追おうと走り出した。フォックスは何だと思いながら後を追った。 仮面は崖を通り、空へと消えて行った。ファルコ達は崖のギリギリの所で立ち止まった。 空へと消えた仮面から光が放たれ、空を覆う。そして、霧の中から巨大な影が現れた。その体は雲の上を突き抜け、足しか見えなかった。 「何だあれは……」 ファルコは言葉を失ってポカンとしていた。フォックスも口が開きっぱなしだった。 「……もしかして、あれが四人の人達の一人か?」 フォックスは呟いた。 その巨人は足をこちらへ向けると、まるで風を流す様な深い声を放つ。それを聞いたフォックスは傷付いた顔になった。 「……何て悲しそうな声なんだ……」 そして巨人は、何かを歌いながら霧の向こうへ消えた。 「う、うーん……」 フォックスの腕の中にいるカービィの体が小さく反応した。フォックスはハッと気付き、見下ろす。ファルコもそちらを見た。 「カービィ、確りしろ!」 「ん……フォックス、ファルコ……」 カービィは目を少しずつ開いていき、視界がフォックスをとらえた。フォックスは安堵の笑みを浮かべた。 「良かった、やっと気が付いたんだな」 「フォックス、ゴートは?」 「ああ、倒したよ」 「倒したんだっ。やったね!」 「カービィがいなかったら、俺達はきっとやられてた。命がけでゴートを目隠ししたから、俺達はあいつを倒せたんだ。サンキューな、カービィ」 「え、う、うん……」 カービィは頬を赤くし、照れながら頭をかいた。 その頃は雪はやみ、分厚い雲も薄くなって行って、気温も暖かくなってきた。 「でも、フォックスの上着が無かったら僕もどうしたら良いのか分からなかったよ。ありがとうね、フォックスっ」 「……ああ」 「なら、俺はとんだ足手まといって奴かな」 ファルコは彼等に気付かせる位に肩を思い切りすくめた。フォックス達はハッと振り向いたが、ファルコは腕を組んで背中を見せていた。二人は顔を見合わせ、クスッと笑った。 「ファルコも色々と俺達を助けてくれたじゃないか。ファルコもいなかったら、俺達はゴートにやられていたんだぞ?」 「今回のファルコは意外と格好良かったねー」 カービィは悪戯っぽい笑顔をしてみせる。ファルコは彼等をチラリと見たが、フンッと鼻を鳴らすとまた前を向いた。 「これでゴロン族も平和に暮らせるだろう」 雪も大分溶け、草花が顔を出す。 そして、フォックスは今度は空に向かって言った。 「ダルマーニ、聞こえてるか? お前の仇、俺達が取ったからなっ」 カービィとファルコも空を見上げ、フォックスと同じ気持ちになった。 「じゃあフォックス達、クロックタウンに戻ろう!」 「ああ、そうだなっ」 フォックス達は、洞窟へ歩いて行った。 彼等の後ろ姿を、空中から見守っている人物がいた。ゴロン族な姿で、その中でも一番強そうに見えた。 その男は微笑むと、静かに呟いた。 「ありがとうゴロ、勇敢な戦士達よ。これで、永遠の眠りにつけるゴロ」 その姿は、風と共に消えていった。 ──to be continued── |