タルミナの月








 スマブラのそれぞれのチームには、目的地までの距離が全く違い、中には半日も掛かったチームがいた。
 その為、全員がクロックタウンに戻ってこれた時は、クロックタウンには住人は一人もいなかった。月がもう目の前と言っても良い程に地上に近く、危険を察知した住人はクロックタウンから逃げてしまったのだ。マリオ達が初めて来た時はあんなに活気的で賑やかな町だったと言うのに、今はゴーストタウンとなっていた。
 月が地上に接近しているからか分からないが、止まない強い風がマリオ達を襲う。この日は最後の日の夜で、滅亡まで数時間しか無い。急がねば、マリオ達もあの月の餌食となり、タルミナは終わりを迎えるであろう。

「皆、揃った!?」

 風が強いので帽子を押さえながらマリオは声を上げた。
 出発前と同じ広場に戻って来ること、と、マリオはあの時に皆に言った。彼が見る限り、スマブラメンバーは全員いるっぽいと隊長は思った。

「ああ。皆揃っている」

 マーシスは自信満々で頷いた。それなら信用出来るな、とマリオはホッとした。
 その時、また大きな揺れが起こった。

「うわわわっと!」
「プリリリィ!」
「ピィチュ!」

 今回はいつに増して強い地震で、地面に足を付いているプリンとピチューは、危うく倒れそうになった。
 マリオは月を睨み上げる。
 とその時、時計塔の天辺に、何やら小さな影があるのにマリオは気付いた。

「あいつは……スタルキッドだ!」
「! トレイルもいるわ!」

 メタナイトとチャットは、それを見て素早く答えた。
 良く見れば、スタルキッドは天──否、月に手を掲げている。月を呼び寄せているのだろう。
 それを知ったマリオは、気持ちよりも体が先に動き、とっさに口を開いた。

「皆、行くぞ! 巨人達が来ることを祈って、そして、命を懸けて!」

 そして走り出し、後のスマブラも走り出した。走りを止めずに時計塔へ入り、階段を駆け上がってゆく。少し長い階段だが、スマブラはスタルキッド達に会う緊張からか、汗は流れるが、疲れと言う言葉は無かった。

「そおれっ!!」

 マリオは扉に向かって勢い良く蹴り飛ばした。
 遂に時計塔の最上階へたどり着き、更なる強風が襲う中、そこにはスタルキッドとトレイル、そして直ぐ目の前の、恐ろしい顔をしている月があった。

「スタルキッド!!」

 マリオは思い切り叫んだ。声が月に反響して僅かに木霊する。声を聞いたスタルキッドはこちらを向いた。

「いい加減やめるんだ! こんなことをして、一体何になるってんだよ!」
「……何だお前達。やっぱりオイラを止めに来れたんだ? 生意気な野郎達だぜ」

 スタルキッドは不気味な仮面を顔に付けたまま、空中で腕と足を組んだ。

「ね、姉ちゃん!」

 トレイルは前に恐る恐る出ようとするが、スタルキッドの手が前に出て来たので止められてしまう。

「トレイル!」

 チャットはその場で弟の名を叫んだ。

「……」

 スネークは、さっきから妖精姉弟とスタルキッドを交互に見ていた。
 フォックスは、そんな彼の様子にハッと気付いた。森にいた時と同じ感じがしたのは気のせいでは無いだろう。

「スネーク、またまた、どうしたんだ?」
「……妙なんだよなぁ」
「?」

 スネークの声はスマブラの一部にも聞こえたらしい。

「仲良しだったのだろう、お前達は。スタルキッドがあんなんなったのには、何かしら理由がある筈だ。頭の固い俺だってそう思えるが?」
「……私にも分からないわ……」
「チャット……」

 チャットは羽を折り畳む様に下げ、落ち込んでしまった。ナビィは彼女に心配そうに近付く。

「……今はそんなこと考えてる場合じゃないよ」

 マリオは言った。子リンも彼の隣に立ち、武器を構えた。

「今はあの月を止めなきゃならない。このままじゃタルミナが終わっちまうからな!」
「フン、お前達にあの月が止められる訳が無いだろう」

 スタルキッドは、ヒヒヒヒヒ! と、不気味な笑い声を上げた。

「そんな方法があるなら、止めてみやがれ!」

 指を上へ向かって差した。指先から紫の小さな光が放たれると、月が僅かな紫に一瞬だけ包まれた。すると、月の速度が上がったのだ。

「な!」
「ヒヒヒヒヒ! さあどうなるかなぁ?」
「! てんめえええぇぇ!!」

 マリオは後先考えずにダッシュした。子リンもマリオについてゆく。

「とお!」

 マリオは地面を蹴り上げ、スタルキッドに向かって拳を構えた。

「くらえ! ファイア掌底っ!!」

 拳に力を溜め、炎を作り上げた。そしてスタルキッドの体めがけ、炎の掌を突き出した。攻撃は見事スタルキッドに命中した。

「ぐぅ!」
「これでもくらって大人しくするんだ!」

 マリオが素早く離れたとこで、続いて子リンが下から氷の矢を放った。水色に光る矢は真っ直ぐな線を描き、これもスタルキッドへ命中した。

「ぐあぁ!」
「よし、効いてるぞ!」
「……なーんちゃって」
「!?」

 大分ダメージをくらったと思わせたスタルキッドは、直ぐにピンピンした状態に戻っていた。

「そんなバカな! 何故効かない!」
「ヒヒヒヒヒ! この仮面は何でも願いを叶えてくれるのさ」

 そう言うと、スタルキッドの被っている仮面が不気味な紫に光り出す。

「回復することも容易だ」
「くっそ……!」

 マリオは悔しそうに歯をくいしばった。

「さあ月よ、もっとこっちへ来い! 来い! 来いぃ!」

 スタルキッドは上へ両手を広げた。月はまた紫の光りに包まれ、更にスピードを上げた。

「うわぁ! もうダメだあ!」

 カービィは月を見て目を丸くして叫んだ。他のファンシーズも怯えてしまい、悲鳴を上げながら抱き合い、蹲ってしまった。
 そうしてる間も月はどんどん近付き、やがて炎を上げて来た。揺れも酷くなり、風も強さを増す。

「スタルキッド、やめて!」
「あ、チャット! ダメよ!」

 ナビィが止めるのも聞かず、チャットはスタルキッドへ猛スピードで向かった。

「トレイルを人質にして、更にタルミナを滅亡させようだなんて……こんなことして何が楽しいの!? いい加減にやめてよ!」
「煩い! このチビ妖精が!」
「キャア!」

 スタルキッドはチャットを手で思い切りはたいた。チャットは床へ叩き落とされ、光を僅かに残しながら動かなくなってしまった。

「姉ちゃん!!」
「チャット!!」

 2匹の妖精は叫んだ。気絶したチャットに、マリオ達は見開いた。
 マリオの怒りは頂点へ向かおうとしていた。

「スタルキッド! お前えぇ……!」
「何だ? 死ぬ前に何か一言でもあるなら聞いてやる」

 何とも感じていないスタルキッドに、マリオは顔をうつ向かせ、拳を益々震わせる。

「お前……何だと思ってるんだ……っ」

 そして顔を上げ、スタルキッドを睨み上げると思い切り叫んだ。

「友達を何だと思ってるんだあああああぁぁぁ!!」
「!」

 すると、スタルキッドの様子が一変した。マリオの言葉に体をビクッと反応させたのだ。

「?」

 いきなり変わったスタルキッドに、マリオ達はハテナを浮かべるしかなかった。
 その時、どこからか音らしきものが響いて来た。低い音を鳴らして木霊させる、悲しみの深い音──声が響き渡る。

「!!」

 その声に、スタルキッドは更に反応した、今度はさっきよりも大袈裟に。

「この声は……っ」

 子リンはキョロキョロさせた。

「う、うああぁ……」

 スタルキッドの様子が急激に変化していく。身を震わせながら頭を抱え、空中で蹲っていった。
 マリオは、最初にそんな彼に気付いた。

(スタルキッド?)
「うあぁ! うあああああああぁぁぁぁ!!」

 その時、四方の闇から四人の巨大な足が現れた。それはこちらへ来る程、影も次第に無くなり、形となって姿が見えて来る。
 マリオ達は初めて見た、巨人の姿を。褐色の肌で、老人に近く丸い黒目を持った顔をしていて、顔から長い手足が生えている。

「あ、あれが……俺達の見た巨人?」

 見開いているスマブラの一人のファルコは呟いた。

「どうやらそうみたいだ」

 フォックスは言った。
 月が、クロックタウンで一番高い時計塔に直撃しようとしていた。例の四人の人達は、クロックタウンの目の前で立ち止まると、ゆっくりと両手を上へと掲げた。手は月に触れ、今までに無い激しい揺れが起こる。そして、やがて揺れがおさまり、空間に静寂が訪れた。

「……」

 初めは酷い揺れで顔や頭を腕で覆っていたスマブラ。マリオが最初に自分の腕をそっと離していった。
 見上げると、巨大な月がこちらを見下ろしている。が、これ以上こちらへ来る気配は無い。四人の巨人達が手で抑えているからだ。

「……月が……止まった……?」

 マリオは呟いてから立ち上がった。

「やったー! 止まったでしゅう!」
「ピィチュウ!」
「ピカッピー!」
「わーい! わーい!」

 ファンシーズは喜びのあまり飛び回ってはしゃいでいた。
 大人達も一先ず安心し、ホッと息を吐いた。
 いつの間にかスタルキッドは床へ平伏している。
 解放されたと見たトレイルは、姉の元へ向かった。

「姉ちゃん! 確りして!」

 ナビィはチャットの様子を見てからトレイルに振り向いた。

「大丈夫よ、トレイル。気を失ってるだけで傷は大したこと無いわ」
「ほ、本当?」

 自信を持って頷いたナビィにトレイルは安心した溜め息をついた。
 それからも、ナビィと一緒にチャットを見守っていた。
 マリオは、蹲ったまま震えているスタルキッドへ歩み寄る。子リンも武器をしまうと彼の後をついていった。

「何でこんなことをしたの?」

 彼の前で膝を付き、多少厳しめに且つそっと問掛けた。子リンも膝を付き、スタルキッドの返事を待つ。
 スタルキッドは黙っていたが、やがて顔を上げ、口を開いた。

「オイラ、寂しかったんだよぉ……」
「寂しかった?」
「オイラ、あの巨人とは友達なんだ。ずっと一緒にいたかった。だけどある日、急に離れ離れになっちゃって、寂しかったんだよ……」
 ──その時、オイラはこの仮面と出会った。




 それは、随分前に遡った。
 霧闇に包まれた樹海をさ迷うスタルキッドがいた。彼は酷い悲しみに暮れていて、泣きじゃくりながらトボトボと歩いている。友達に見捨てられ、寂しい思いを胸にしていたのだ。
 そんなある日、スタルキッドは、大きな樹の真ん中にある紫の光を見た。

(あれは一体何だ?)

 疑問に思うが期待もあり、歩を速めた。
 近くまでくると、その紫の光は仮面だと言うことが分かった。何とも不気味な形や顔をしているが、スタルキッドにとってそれはかなり落ち着かせた。
 ジッと見ていると、その仮面がフワリと動き出した。スタルキッドが少し驚いてる間に、それは彼の目の前まで来た。

(そう言えば、誰かがこんなことを話していたな)
 ──この世には、何でも望みを叶えてくれると言う、強い魔力を込めた魔法の仮面がある。

 少しずつ近付いて来る仮面を、恐れもせずスタルキッドは手に持った。すると、仮面から紫の光が無くなり、只の仮面となった。
 表情を無くしていたスタルキッドだが、次第に笑みを浮かべた。

「この仮面があれば、何でも望みが叶う。この仮面さえあれば……」

 スタルキッドは仮面を装着し、喜びのあまり、あちこち跳び回った。




「だからその仮面の力で、巨人達を閉じ込めて?」

 子リンは言った。スタルキッドは黙り込んでいたが、否定はしていないので、その通りだと思える。

「あいつらがいなくて、オイラ凄く辛かった。いつもチャットやトレイルが励ましてくれていたけど、それでも、オイラは……」

 スタルキッドの言葉に巨人は悲しい目でスタルキッドを見つめていた。

「そう落ち込まないで、スタルキッド」

 そこへ、ナビィがスタルキッドの側まで飛んで来た。泣いていたスタルキッドは顔を上げた。

「君は、誰……?」
「私はナビィ。別世界から来た妖精よ。
 スタルキッド、寂しいからって他人を傷付けることは良くないわ。貴方の悲しみが増えるだけで、何にも満たされないわよ」
「そ、そんなの……」

 スタルキッドは涙を拭い、ナビィを睨み付けた。

「そんなの、何だって言うんだ! オイラの気持ち、お前に分かるもんかよ! 友達と離れていく悲しみなんて!」
「分かるわよ!」

 スタルキッドと同じ位の音量でナビィは言い返した。スタルキッドはそれに驚き顔を引かせる。

「ずっと一緒だった人と別れなきゃならない悲しみは誰にだってあるわよ。私達だってそうなんだから」
「ナビィ……」

 マリオはナビィに目を細めた。

「巨人達を見なさい。凄く辛い目をしているじゃない。今、スタルキッドが何をしてしまったのか、その気持ちも痛い程伝わって来るわ」
「……」

 スタルキッドは周りの巨人達を見た。巨人は悲しそうな声を出しながら彼を見つめていた。

「ほら。巨人達も『どうか許して欲しい』って言ってるわよ」

 と、明るい声でナビィは言った。
 スタルキッドはうつ向き、体を震わせた。

「……オイラこそゴメンよ……」

 涙を堪えながらの声が、巨人達へ小さく届く。マリオ達は微笑ましく見守った。
 そんな時、一体何が起こったのかは誰にも知るよしが無かった。スタルキッドの体から赤い鮮血が吹き出た等と。

 ──!?

 マリオ達の時が一瞬だけ止まった。止まっている間にも、スタルキッドの血は吹き出ていて、彼はそのまま床へ倒れ込んでしまった。

「スタルキッド!!」

 子リンとナビィ、そしてトレイルは、悲鳴にも似た叫びを上げた。
 スマブラも彼の身に何があったのかが分からなかった。いきなり彼が体を切り裂かれただなんて、誰が予想出来たろう。それは、勘が鋭いファルコやスネークさえ気付かなかった。

「……何だ? い、一体、スタルキッドに、何が?」

 マリオは驚くばかりで他の感情が上手く出なかった。

「ご苦労だったね、皆さん」

 空中から声がし、スマブラ達は見上げた。空中にいるのは、赤い血を吸った二本の長ナイフを握っている若者だ。

「ディバ!?」

 マリオは名前を叫び、マーシスは彼だと分かると剣を握る。

「感動の場面に水を差して悪いね。でもこっちも命令なんだし? 止むを得ないんだよね」

 それでも反省の色を全く見せておらず、ディバは口端を上げながら、赤いナイフを肩に掛けた。マリオは、また怒りを露にしようとしていた。

「なぜスタルキッドを斬った!」
「──簡単なこと。その仮面を頂く為だよ」

 ディバは剣先を、スタルキッドの付けている仮面に向けた。マリオは、子リン達に抱き起こされたスタルキッドを見た。

「その仮面には何でも願いが叶う力を秘めているとはねえ。これはたまげた」

 ディバはニヤニヤと、欲に飢えた笑みを見せてくる。思わずマリオは鳥肌を立たせてしまう。

「それに、欠片もあの仮面が持ってると言うしね。どの道奪わなきゃならない」
「な、何だって!?」
「お前達なんかに欠片は渡さない!」

 マリオは驚きの表情を乗せ、子リンは武器を構えディバを睨み上げた。

「ヒヒッ。なら、どっちがあの仮面に先に手を出せるか、勝負と行こっか?──出て来い、お前ら!」

 ディバは手を横に払った。そこから血が数滴現れ、床へ滴る。その血から赤い液かグニャグニャと現れ、やがて形になっていった。それは、スマブラのクローンへと変わっていったのだ。

「! 俺のクローンが……!」

 子リンの前へ、赤い目を持った自分が現れた。子リンのクローンは笑みを浮かべた。

「初めまして、リンクさん。君のクローンのフォウだ」
「……正か、もう一人の俺と会うことになるなんてな」

 2人は同時に同じ武器の構え方をした。
 他のクローンも同じ相手の前に現れ、周りはザコ敵軍団に囲まれてしまった。

「くっそ! ナビィ、チャットとトレイル、そしてスタルキッドを頼む」
「え? キャ!」

 ナビィに何かをマリオは投げ、ナビィは慌ててそれをキャッチした。それは、赤い液体の入った瓶だ。

「これは……赤いクスリ?」
「コタケさん達に貰ったんだ。それさえあれば、スタルキッド達も元気になるよな?」

 マリオは真剣な眼差しを向けてきた。それにナビィは頷いた。

「うん! このクスリなら、きっとチャット達を助けられるわ!」
「会話中申し訳ないが」

 マリオのクローン──デークは帽子を被った頭を掻いた。

「早くしてくれないかな? ちょっと苛々してるんだけど」
「……それは悪いね」

 マリオは口端を上げ、拳をゆっくりと構えた。

「こっちも苛々してるんだよ、お前達を早くぶっ飛ばしたくてな!」

 他の敵軍とスマブラも激闘を繰り広げる。

「くっ!」

 フォックスとファルコは、ガフィとジビンダーとブラスターの撃ち合いをしている。

「ガフィ! リンクはどうした!」

 ブラスターを撃ち放ったフォックスに、笑んでいるガフィは攻撃をかわしながら答えた。

「さあね。他のクローンに訊いたらどうだ?」
「くそ! しらばっくれやがって!」




「さあ、スタルキッドにチャット、これを飲んで……」

 ナビィは赤いクスリを持ち、スタルキッド達へ近付く。
 しかし彼女の目の前に光る刃が現れ、ナビィは驚いて止まった。トレイルもビビってしまい、二人の妖精は、恐る恐る剣の持ち主を見上げた。そこに立っているのは、月をバックにしているディバだった。

「そんな奴助けて何になるんだ? あの月でこの世界を壊そうとしてたんだぞ?」

 無駄なことはやめとこうぜ、と、イヤらしい笑みを見せてくる。怯えているトレイルとは逆に、ナビィはキッと体を張ってディバを睨む。
 そして言い返そうとしたが、それより先にトレイルが前へ出たのだ。

「トレイル! 駄目よ、危ないわ! 退がりなさい!」

 ナビィに叱られても聞く耳持たず、トレイルは身を震わせながらも、見下ろして来るディバを見る。

「た、確かにスタルキッドのしたことは悪いことだけれど、でも、友達だから……助けたい気持ちはあるっ。それに……スタルキッドだって反省しているから……もうこんな真似はしない筈だよ!」

 強気な口調で、ナビィの代わりに言い返した。ディバは少し見開いたが直ぐに細め、頷いて感心した仕草をした。

「……フーン? まあ、僕が言ってもあれだけどね。世界が死ぬとこだったんだ。死ぬ位の詫びは必要なんじゃないの?」
「そ、それは……」

 トレイルは羽を垂らし、うつ向いてしまう。

「トレイル! 惑わされちゃダメ!」

 ナビィは声を上げ、トレイルの前へ来た。

「友達を助けるなら、もっと確りしなさい!」
「ナビィさん……」
「ナビィ殿!」

 マーシスの声を聞き、ディバは上へ長ナイフを掲げた。上から剣に寄る光の波動が降下し、彼のナイフに当たる。ディバは顔を少し歪ませてその攻撃を払った。
 彼とナビィ達の間にマーシスが上から現れる。

「マーシス!」
「ナビィ殿、ここは危険だ。なるべく安全な場所へワープさせよう。彼等は頼んだぞ」
「うん! 死なないでね、マーシス」

 マーシスは手を彼女に向け、紫に光る魔法を出した。ナビィ達は紫の光に包まれ、その場から姿を消した。

「やれやれ」

 ディバは不機嫌な表情をしてマーシスを冷ややかに睨んだ。

「こうなるんだったら、さっさとあいつらを八つ裂きにしておくべきだったなぁ。君みたいな奴が来たら面倒だし」
「安心しろ。貴様の好む地獄へ連れてってやる。有り難く思うことだ」
「フン!」

 ディバは高速で向かい、マーシスは素早く剣を構え、彼の攻撃を弾いた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラあ!」

 マリオはデークと激しい肉弾戦を行っていた。どちらも一歩も譲らず、拳を連続で打ち合っていた。

「せいやっ!」
「ぐっ……!」

 デークは隙を見抜き、マリオの横っ腹へ思い切り蹴りを入れた。諸にくらったマリオは顔が激痛した形に染まっていた。

「ぶごはっ!」

 更にパンチをくらい、マリオは吹っ飛ばされた。そのまま壁に背中を激突させ、座り込む。

「ぃいったたたた……」

 一番に打った頭をマリオは涙目で抑える。
 そして瞼を開いて直ぐにジャンプした。ジャンプしたマリオの下にファイアボールが通り、壁にぶっかって小爆発を起こした。

「とぉりゃあぁ!」
「!?」

 マリオは体を横に高速で回転しながらデークを攻撃した。デークは顔を腕で覆うが、マリオトルネードの方が威力が高い。呆気なく弾き飛ばした。

「うわああ!」

 今度はデークが吹き飛ばされたが、床に足をついて急ブレーキをした。

「くうぅっ! 中々鍛え上げてるんだなぁ」

 デークは態と震えて言った。その行動からしてかなり余裕たっぷりと見て取れる。マリオはそれに少し苛立った。

「こっちの台詞でもあるね。中々やるじゃん」
「それはどーも!」

 最後の文字を強調させた直後にマリオの目の前へデークが現れる。

「!」

 マリオは、デークのパンチを掌で受け流し、こちらからは蹴りを入れるが、デークは腕で彼の足技を抑える。

「おんどりゃあ!」
「!」

 デークは、彼がマントで浮いているのにハッと気付くと、逆からの蹴りをもう片腕で受け止めた。

(今だ!)
「そおれっ!!」
「ごはぁっ!」

 マリオは、両手が塞がったデークへ思い切り頭突きをかました。ゴチン! と痛々しい音がなり、デークは仰向けに倒れてしまう。マリオは頭突きをした反動で体を後ろに回して着地した。

「ふぅっ。流石に僕のクローンでも、頭までは鍛えて無かったんじゃないの?」

 目を細め、ニヤニヤと笑いながら、横から自分の頭をトントン叩く。

「く! 何て……奴だ……っ……!」

 デークは額に赤い跡を残しながらよろめいて立ち上がった。

「……」
(? 何だ?)

 マリオは眉をひそめた。彼の様子が、少しおかしいのだ。立ったまま静かになり、動こうともしない。

「僕がこのまま負けっぱなしでいると思うなよ?」

 デークは影の中、口端を吊り上げた。マリオはいつもの彼じゃないと悟り、気を引き締める。

「マリオに負けて何もしてない僕だと思うな。これはクローンの中でも僕にしかまだ与えられていない技だ。とくと見るが良いさ!」

 するとデークは、構えた拳に力を込めていく。マリオは息を飲んだ。デークは拳から炎を噴き出させ、更に彼の体がオーラに包まれる。

(あのオーラ、どこかで……)

 マリオは、そう思った直後にピンと来た。彼は何と、スマブラの一部が持つ、神の切りふだの時と同じオーラを出しているのだ。スマブラが虹色ならば、彼のオーラは赤黒い闇の色を溢れ出させている。

「!」

 その邪悪な気を感じたマーシスは、ディバの剣を弾き飛ばした直後にマリオを見た。

「マリオ殿! その技をまともにくらってはいかん!」

 彼の大声にマリオはハッとした。

「くらえ!!」

 デークはパワーを溜めた両手を前へ突き出した。彼の両手から紫色の巨大な炎が吹き出、マリオへ向かう。

「くっ!」

 マリオは横へダッシュして回避をしようとした。相手の炎技はあまりにも凄まじく、範囲も広い。

「うわぁ!」

 小さな部分の炎だが、それさえもマリオはダメージをかなり受けてしまった。煙を上げながら倒れてしまう。

「な、な、何あれ!?」

 カービィは目を大きくし、小さな手で大技を指差す。

「よそ見すると、危険だよっ!」
「! わぁっと!」

 リズがハンマーを横へ振り、カービィはギリギリのとこでしゃがんで避けた。

「一体、いつの間にそんな技を……!」

 フラフラと立ち上がり、マリオはデークを睨んで問う。あの大技はどう見ても、マリオの神の切りふだと極似していた。デークは手から上がる煙をフッと一息で消し飛ばした。

「僕がなぜこんな大技をって? そりゃあ僕にしか与えられない、神の技だからね」
「お前みたいな奴が、神の技をだって!?」

 マリオはまたもや目を丸くしてしまう。
 そう言えば思い出した。空間神の宝玉の欠片の一つは、ギガ軍の手にあると言うことを。しかしクローンである彼が何故空間神に選ばれたのだ。考えただけでおかしいとも思った。
 デークは笑みを浮かべ、口を開いた。

「忘れたの? 僕は君のクローンなんだよ?」
「!」

 クローンだからってそこまで一緒だと言うのか……それに、神の切りふだを出しても体力を温存しているだなんて、一体何故だ!




「……」

 時計搭の下からはラフィットが見上げていた。テレパシーを使い、彼等の体力回復を担当している。
 彼の横へ何者かの影が現れ、ラフィットはハッとして横を振り向く。影の正体はミエールで、時計搭の上を見上げていた。そしてフッと笑うと、ラフィットを見下ろした。

「毎回ご苦労だな、回復係くん」
「……」

 取り合えずとそう言った後、もう一度上を見た。

「そろそろこいつを活躍させないとな。お前はここから見物してると良い」

 ミエールは誰かを連れ、そこから時計搭の上へ瞬間移動した。

「……」

 ラフィットは相変わらず無言だが、ミエールについていった者の心をつい読み、少し疑問を抱く顔をした。

(……ミエール兄ちゃんだけの問題だから良いよね)

 だが、ラフィットは他人の問題だと自分に納得し、回復係としての役目を再開させた。










 ──to be continued──