激戦の序曲








「ギガ軍全体が動き出した!?」

 妖精を通じてロイの話を聞いた途端、リンクは驚き、乗り出した。

「もしかしたら、既にそっちに向かっている可能性がある」

 ロイは急いでいる気持ちで警告をしていた。
 続いてマルスが言う。

「奴等のことだ。欠片を手に入れる為なら、そっちの街にも被害を及ぼすかも知れない」
「何やて!?」

 聞いていた二匹は声を上げた。リンクは聞いてたとは思わなかったので、彼等を見たが、直ぐに妖精を見、

「ありがとうございます。マリオさん達にも、再会次第急いで伝えます」

 リンクが話している間、林の道を走るタクシーの後ろから、何かがジャンプしながら向かって来ていた。それだけでは無く、木から木へ跳び、回り込む者までいる。タクシーがかなりのスピードで走っているのにも関わらず、その者達は機械の様に動き、タクシーを取り囲んだ。
 それに気付かないタクシーは走り続けている。
 木を越えていた者が、こちらへ向かってジャンプして来た。

「僕達も可能な限り、奴らの今後の動きも調べていくよ」
「はい、お願いしますっ」

 通信が切れ、妖精がリンクの帽子に戻った時だ。

「うわぁ! な、何や!?」

 上から何かがのしかかり、タクシーが大きく揺れた。そして、一瞬だけ電気が車全体に走った。
 ドリブルは急いでブレーキを掛けようと試みるが、ブレーキは空気を踏む様で掛からない。

「しもた! ブレーキが利かん!」
「何ですって!?」

 リンクは前の座席まで乗り出し、ブレーキを見た。

「ん? ブレーキは壊れとらん……?」

 スピッツもブレーキを見ながら言った。

「けど、さっき車が光った気がしたから、もしかすると……」
「……!」

 リンクは上を向き、横の扉を開けた。

「お、お客さん! 一体何を!」

 客に危険な事はさせられない二匹は慌てて後ろを見た。

「俺は大丈夫です。構わず走っててくださいっ」

 上を掴みながらリンクは言った。そして、上を掴んだ手を軸に体を後転させ、タクシーの上に乗り出した。
 タクシーの上には、輪郭以外顔のパーツが無い、紫の体をした奴がいた。向こうが僅かに透けて見え、中には真っ直ぐな線が入っている。

「こいつは……!」

 敵はこちらへ襲い掛かるが、リンクがサッとしゃがむと敵は上を通過した。リンクはタクシーに手を付け、下から敵を蹴り上げた。蹴られた敵はタクシーから飛び出し、地面を転がって行った。

「流石、本物の俺ですね」
「!」
「やっぱり、ここは俺の出番ですか」

 タクシーの横を別の車が通る。恐らく盗んだのだろう、車を運転しているのは、先程のとは別の紫の敵で、車の上に立っているのは、リンクのクローン──ミエールだ。

「ミエール……!」
「さあ、大人しく欠片をこっちへ寄越してくれたら、俺は貴方達を殺しません」

 左手に剣を握り、ミエールは目を細めると、右手を差し出した。

「この人達には手を出すな。殺すなら俺だけにしろ。ただし、勝てたらな」

 リンクは武器を構えた。

「お優しい剣士です事」

 ミエールは差し出した手を下ろした。

「けど、そこまで約束は守れませんね。欠片を手に入れる約束でいっぱいいっぱいなんですよ……んっ?」

 タクシーの側面がこちらへ向かい、相手の車に接触した。

「お客さん、あんさん強いでっか?」

 ドリブルは運転しながら言った。

「わてらの事は気にせんといてください。お客さんの力を信じてますわ」
「ド、ドリブルさん、スピッツさん……」
「……良い話ですね」

 ミエールが沁々と言った。

「けど残念。もっと感動シーンを拝みたいとこですが、これは直ぐに貴殿方の死の棺桶になりますからね」
「……やれるものならやってみろ」

 二人の勇者は、互いの剣を軽く交わらせた。




 ラグビー大会の決戦が終わり、歓声が上がる。
 その間にもマーシスは胸騒ぎを感じていたが、予感は的中していた。
 そして表彰式が終わろうとした時だった。
 今まで表彰式の様子を映していた、電光掲示板の画面が、急に真っ暗になったのだ。ドーム内の人々は、何があったのかとざわめき始めた。

「お、おい! 何だあれは!?」

 観客の中にいる一人の男が、空を指差した。
 ここから見える青空の端から現れるのは、黒い雲だ。それはまるで意思を持つ様な動きで、あっという間にドーム全体を覆い尽してしまった。そして、激しい雷が休まず鳴り出したのだ。
 それに恐怖を覚えたか、逃げ惑う観客と選手達。

「モナ、早く逃げよう!」
「うんっ」

 チアガールも急いで出口へ向かう。だが、モナは地面を蹴り損ね、転倒してしまった。

「いたっ!」
「モナ!」

 少しした後、渦巻く黒雲の中心から、誰かが体を回転させながら落ちて来る。その者は、モナの目の前で着地した。チアガール達は驚いて逃げてしまい、モナは腰を抜かしてしまって動けない。
 その者は無表情で、血の色を持つ瞳でモナを見下す。次第に口端を上げ、二本の剣を引き抜いた。
 座り込み、震えたまま動かないモナの首元に剣先を突き付けた。その刃は斬れ易く磨がれていて、少しでも触れれば紅い傷が出来そうだ。それを思うと、モナは顔色を青ざめ、息を呑んだ。

「……アイツはどこにいる」
「え……っ?」
(い、いきなり何?)

 そんな事言われても分かる訳が無い。すると男は続けた。

「白い剣士をお前は見た筈だ」
(白い剣士……)

 そう言えばここに来る前、白い服を着た剣士の様な男を見た気がした。けれど、急いでたからその人だったのかどうか把握が出来ない。

「しらばっくれるのか?」

 男は目に影を作り、更なる笑顔になる。
 応えようと思っても、喉元まで来ているのに、恐怖のあまり中々口に出せないのだ。

「早く応えた方が良いんじゃないのか? この剣は久しく血を吸ってないからな。唸ってるぜ」
「し、知らないわよ、そんな人!」

 心当たりは無くは無いが、ちゃんと見ていないのは確かなのだ。だからモナは正直に口を開いた。
 すると、男の笑顔が嘘の様に消えてしまった。それは先程よりも殺気を漂わせる顔付きで、モナはギョッとした。僅かに後退りをする。

「そこまで黙るとは、命知らずだな」

 すると二刀流を構え直し、バツを描く。

「死んで後悔させてやるぜ」

 男は作ったバツから剣を振り払った。モナは反らした顔を両腕で覆い、強く目を瞑った。
 切り裂かれる音がしたと同時、輝く鮮血が飛び散った。事を終えた男は笑んで顔を上げた。だが、目の前の光景に見開いた。
 モナをかばう様に抱き締めている者がいた。白い剣士──マーシスである。男が斬ったのは、マーシスの腕だ。彼の腕には傷が付いているが、少量の血が流れるだけで大した事は無い。

「大丈夫か、モナ殿」
「貴方は……やっぱりあの時の?」

 男は二人を見つめた。

「こうすれば来ると思ってたぜ、マーシスさん?」
「……私に何の用だ」

 マーシスは仮面を付けているが、殺気溢れる目線は彼に向けていた。

「ギガ精鋭部隊隊長ディバ」

 ディバは、フッと髪を振った。

「アイシクルマウンテンの時から、マリオ隊長よりも気にくわない奴がいると思ったからさ。今の内に片付けて置こうかと思っただけ」
「その為に、無実の少女を殺そうとしたのか」

 マーシスは立ち上がった。

「本気で殺ろうと考えれば、馬鹿が庇うって予想したんだ。予想的中ってか?」

 ひねくれた笑顔で、ディバはマーシスの顔を覗いた。
 マーシスは剣を引き抜き、そのまま切り掛かろうとしたが、ディバは、おっとと言いながら剣で応戦した。

「マーシスさんっ」

 腰が治ったモナは立ち上がった。

「モナ殿、逃げるんだ!」

 ディバを睨みながらマーシスは叫んだ。その声に圧されたモナは肩を上げ、その場を走り去った。

「その腕でどこまでもつかな!」

 互い剣を弾き返し、体制を立て直す。
 マーシスは腕をズキッと痛ませたが、気にしない事にした。




 ダイヤモンド・アカデミーと言う高いビル。ペニーの良く使う研究室にて。

「ジャーン! これが研究成果でーす!」

 ペニーは最新作のミニバイクをメタナイトに見せた。先程と同じミニバイクに見える。

「先程のミニバイクでは無いのか?」
「違いますっ」

 ペニーは自信満々の笑顔で言った。

「これは空を飛べるんですよ!」
「そ、空っ?」
「そうなんです! これが成功すれば、きっと大評判……」
「危ない!」

 メタナイトは熱弁するペニーを押した。彼等がいた場所に何か光の線が走り、ミニバイクが真っ二つになってしまった。

「キャア! 私の研究成果があ!」

 ペニーはミニバイクの事しか頭に無いらしい。

「どこにいる。姿を現せ」

 メタナイトは彼女そっちのけで叫んだ。
 すると窓が割れ、紫の敵が次々と入って来た。敵はメタナイト達を取り囲む。

「な、何なのよこいつら!」
「ギガ軍か」
「その通り」

 メタナイト達の前に現れた黒いマント。マントがはためくと同時、もう一人のメタナイトが現れた。だが唯一違うのは、目が赤いと言う事だ。

「えっ? メタナイトさんが二人? これは一体……」

 ペニーは眼鏡の縁を持ち、レンズを光らせる。

「そなたは……フビルか!」
「いかにも」

 フビルは、ギャラクシアを構えた。

「そなたとは一対一で決着をつけたいと思っていた。いざ、勝負っ」
「……良いだろう」

 メタナイトもギャラクシアを引き抜いた。

「キャ!」

 後ろから短い悲鳴が聞こえた。メタナイトが見たのは、ペニーと人型ロボットが、互いに堅くて長い部品を交わらせていたとこだ。

「ペニー、大丈夫か!」
「な、何でっ? 私の作品が襲ってくるだなんてっ……」

 メタナイトは彼女を助けに行こうとしたが、足元を雷の魔法が走る。

「ギガ軍に不可能は無いのだ」

 フビルの一言に、メタナイトはハッと気付く。

「彼女の研究は中々優秀みたいだな。正に我がギガ軍のメカニックにふさわしい」

 それを聞いたペニーは、攻撃を防ぎながらフビルに目を向けると、舌を出してあっかんべーをした。

「誰が貴方達に協力なんかするもんですか!」

 フビルは、フッと笑った。

「そうか。なら、ここで己のロボットにやられるが良い」
「そうはさせんっ」

 メタナイトはフビルに剣を振った。フビルは飛び、攻撃をかわす。

「先ずはそなたに勝ち、彼女を助けるっ」
「……私に勝てたらの話か。それまでに、その少女がやられなければ良いのだがな」
「メタナイトさんっ、私に構わず、やっちゃってください!」

 ペニーは力任せでロボットを突き飛ばすと、そう言った。

「……分かった。この戦いが終わるまで、耐えていてくれ」

 そして、二人のメタナイトの戦いが始まる。




「何だYO、君達。君達みたいな専属ダンサーをぼくは知らないYO!」

 ダンスホールにはジミー、プリン、ピチューがいるのだが、途中からギガ軍が乱入して来たのである。紫な彼等は、アッと言う間に増え、彼等を囲む。

「こいつら……ダンサーでも何でも無いでしゅよ!」

 プリンは怒りながら言った。ピチューも頬から電気をパチパチと放つ。

「何だって? 部外者だったら容赦しないYO」

 ジミーはカンフーなポーズを取った。
 ギガ軍隊隊員も攻撃体勢に入り、三人に襲い掛かった。

「プリッ!」

 プリンは一人の敵にビシバシとビンタし、短い足で相手の頬を蹴り飛ばした。後ろから襲って来る敵の殺気を感じるととっさに高く浮遊し、キックのドリルをお見舞いしてから壁に向けてハリセンで吹っ飛ばした。たかがハリセンでもプリンが持てば威力はあり、相手は壁へめり込んだ。

「ピィチュ!」

 ピチューは身体中に電流を流しながらドリルをお見舞いさせた。相手は電気を浴びて麻痺してしまう。その隙にピチューは相手に雷を撃ち込んでやった。それは近くの敵も巻き込む。

「お二人さん、中々やるじゃないかYO」

 ジミーは感心していた。そんな彼を後ろから襲う敵がいた。だがジミーはしゃがんでそれを避け、掛け声を上げてアッパーをくらわした。敵は仰向けに倒れ、星をチカチカさせていた。

「そう言うジミーしゃんも強いでしゅねっ」
「ピチュ!」

 プリンとピチューは笑って言った。

「運動は、得意中の得意なのさ」

 と、ジミーは肩をすくめた。

「さあ、派手に踊り尽すYO!」
「了解でしゅっ」
「ピチュッ」




「あ、エイティーンボルトじゃないか!」

 ゲームセンターには、ナインボルトよりも長身な男が手を振っていた。彼の腕には四角い黄色の生き物がいる。

「紹介するよ。エイティーンボルトに、ぼくちんのペットのしゃぎいだ」

 ナインボルトは子リンに言った。エイティーンボルトはお辞儀をする。

「俺はリンク。皆からは子リンって呼ばれてるんだ」
「子リンか。宜しくね」

 子リンとエイティーンボルトは握手をした。

「チビリンで良いよ」

 ナインボルトが横から言った。子リンは握手をしたままカチンと来る。

「コラ、ナインボルト!」
「よろしゅーな」
「わ、しゃぎいって喋るんだ」

 いきなり喋ったしゃぎいに子リンは驚き、二人は笑った。
 その時、大音量のBGMの中、ガラスの激しく割れる音が響き渡った。

「何だ!?」
「キャー! 助けてー!」

 客が突如外へと逃げ出していた。

「お前の声にビビったんじゃね?」
「んな訳無いよ!」

 適当に発言する呑気なナインボルトに子リンは突っ込んだ。

(この殺気……正か!)

 割れた方からギガ軍が現れ、いきなり子リン達に飛び掛かった。

「危ない! 伏せて!」

 子リンは盾と剣を構えてジャンプし、敵を切り裂いた。敵は悲鳴を上げ、そのまま煙と共に消滅した。

「うおっ! チビリン、すげえな! それ本物?」

 ナインボルトは彼の剣を見て目を輝かせていた。

「ああ、本物だ」

 子リンは自慢げに剣を見せた。
 そうしてる間にも次々と敵が現れる。

「リアルゲームでもおっぱじめるつもりだな? 上等だ!」

 ナインボルトはペロッと舌を出し、スケボーを準備する。

「エイティーンボルト、しゃぎいも行くぞ!」
「わ、分かったよっ」
「……いいよ」

 二人(?)は少し躊躇ったが、彼が言うのならと頷いた。




「あ、クリケットー」

 ある広場に来ていたアイスクライマーは、偶然クリケット達を見付けた。
 彼等の声に気付いたクリケットとマンティスは立ち止まり、振り向いた。

「やあ、ナナちゃんにポポくん。また会ったね」

 クリケットは笑顔で言った。
 走ってきたアイスクライマーは、彼等の前で立ち止まると、ハアハア息を荒らす。

「あのね、クリケット君」

 ナナは肩で息をしながら顔を上げた。クリケットは、何だろうかと首を傾げた。

「わ、私達、あの……クリケット君に謝りた……」
「見い付けた」

 ナナと同じ声が別の方向から聞こえた。彼等はどこからかと辺りを見回す。
 側にある木がガサガサと揺れ、木の葉から二つの黒い影が飛び出す。彼等の前に、スタッと降り、ハンマーを構えた。

「ああ! お前達はぁ!」

 ポポは見開いて指を差した。彼等の、クローンが現れたのだ。

「覚えててくれてたのね」

 ナナのクローン、エミーは嬉しそうに笑った。

「久々にまた遊べるとはね」

 ポポのクローン、クアンは言った。
 クアンが指を鳴らすと、あちこちの茂みからギガ軍が次々と現れる。

「マスター、こいつらは……?」

 クリケットは汗を一筋流した。

「ワシも修行の間、彼等に出会った事は無いな」

 マンティスは袖に腕を隠しながら言った。

「クリケットよ、修行の成果を見せる時だ」
「ハイッ!」

 クリケットは頷き、ビシッと構えた。序でにマンティスも同じポーズをする。続いてアイスクライマーもハンマーを構えた。

「貴方達に王様の宝物は渡さないわ!」

 ナナは言った。

「フン、小娘が。大人しく降参すれば良いものを!」
「ならあんただって小娘よ!」
「ナ、ナナ、落ち着いてよ」

 ポポは焦ってナナをなだめた。

「ナナちゃん、ポポくん、俺達も戦うよ」
「クリケット……」

 クリケットの頷きに、アイスクライマーも了解した。




「ふう、お腹一杯ー」

 ダイヤモンド城で沢山ご馳走になったカービィは、膨らんだ腹をポンポン叩く。城の食糧が危うく底をつくとこだった。殿、カット、アナは目を真ん丸にしてしまう。

「こ、こんなにたべちゃうなんて、おもわなかった……」

 カットは口を軽く押さえた。

「ご馳走様ー。また食べに来るねー」

 カービィは爪楊枝を口にくわえながら笑顔で手を振った。

(またきたら、こんどこそあぶない……)

 三人は同時に思った。
 そしてカービィが襖に手を掛けようとした時だ。
 城が突然揺れ出した。

「キャ! な、何っ?」
「じ、地震っ?」

 だが、地震にしては揺れがリズミカルになっている。何者かがこちらへ寄って来たのだ。四人は警戒するが、いつ攻撃を仕掛けて来るか判断が難しい。
 その時、カービィ、カット、アナは何かを感じた。

「との!」

 カットとアナは殿をかばい、カービィはカッターを装備すると天井に向かって飛んだ。天井が崩れ、巨大な黒い棍棒が顔を出した。カービィはカッターでそれを何とか抑えた。
 力のぶつかりあいだが、カービィは何とか押し返す事が出来た。

「こ、これは一体……」

 二人のくのいちに守られている殿は、今のを見てあわわと怯えていた。
 天井が崩れて空が見えた時だ。巨大な赤鬼の顔が現れ、こちらを覗き込んでいるのだ。

「で、でかい……っ」

 流石のカービィも息を飲んだ。

「やあ、久しぶりだねー」

 赤鬼の肩から、ひょこっと現れた者がいた。カービィと同じ形をしているが、目が赤い。
 カービィは驚いてしまう。

「あ、君は……っ」
「そう、僕は……」
「誰だっけ?」

 真剣な顔をしながらも思い切り呆けをかましたカービィに、カービィのクローンは危うく赤鬼から滑り落ちるとこだった。

「リズだ! 何忘れてんだよ!」

 リズは手をパタパタさせて言った。

「あのこ、カーくんのしりあい?」

 アナは問うが、カービィは、うーん……と考えてしまう。だが、頭上の電球を光らせた。

「僕のクローンだ!」
「やっと思い出したか!」

 苛々していたリズは遂に怒鳴る。

「うー、僕を忘れてただなんて許せない! 赤鬼、やってしまえ!」

 リズが言うと、赤鬼は呆れつつも棍棒を振り上げた。

「もうヤケになっちゃってるよ」

 カービィは呑気になりながらカッターを構えた。振り下ろされる棍棒を抑えようと思ったが、先にカットとアナが前に出、刀で棍棒を抑えた。

「二人共、危ないよ!」

 意外な場面にカービィは慌てたが、二人はこちらを向くと笑んだ。

「とのをまもるのが、あたちたちのしめいだからっ!」
「いっしょにたたかうよ、カーくん」
「二人共……分かった。一緒に奴らを倒そう」
「僕を怒らせた事を後悔させてやる!」

 リズは叫んだが、三人は余裕の表情だ。

「その怒りがどれ位か、是非とも教えてよ!?」




「……」

 先程の薬を飲んだアシュリーは、用意しておいた植木鉢をジーッと見つめる。植木鉢には、双葉が植えられていた。スネークも後ろから、腕を組んでその様子を見る。
 中々実行しないなと思った時、気付けばアシュリーがこちらを見ていた。

「……見ないで」
「さっきは見ても良いって言ってたじゃないか」
「見たら、貴方も材料にするわよ」
「……可愛らしいお嬢さんだな」

 少しも怖がらず、寧ろ笑んでいるスネークに、アシュリーはグッと何かを堪え、仕方ないわねと、これ以上言わずに前を向いた。
 赤い杖を植木鉢に向けて構え、黒髪を一瞬だけ鏡の様に光らせる。すると、杖の先の宝石から電流が放たれ、植木鉢へ直撃した。
 暫く静まりかえっていたが、軈て双葉が引っ込んだ。そして、小さな植物の怪物が植木鉢を割って顔を出した。植物の怪物は段々大きくなり、遂には幾重もの天井を突き破る。
 赤い杖はレッドに戻る。それはレッドの意思で、植物の怪物に対する恐怖のあまり、アシュリーの影に隠れてしまった。一方のスネークは、ポカンと見上げている。
 ついには、アシュリーの家が植物の怪物の所有物になる程になってしまった。それでも常に冷静に見上げているアシュリー。何かが不満なのか、親指の爪を噛んでいる。

「どうした?」
「……こんな筈じゃない……」
「違うのか……ん?」

 スネークは殺気を感じた。窓の外を見ると、紫の人物が通った気がした。
 植物の怪物はこちらを見下ろした。そして雄叫びを上げると、こちらへ襲い掛かって来たのだ。レッドは慌てて逃げるが、アシュリーは見開いたまま動かない。スネークはアシュリーを抱き締めて転がった。植物の怪物の顔は床へ突っ込んだ。

「くそ、奴らかっ!」
「……」

 アシュリーはポカンとしながら、スネークを見上げていた。

「オイ、奴らって何や?」

 レッドが飛んで来た。

「きっとあの植物に何かが仕込まれたんだ」
「何でそう言えるんや! アシュリーの失敗作かも知れな……」

 レッドは喋りながらふと彼女を見ると、言葉を止めた。アシュリーが恐ろしい形相を作り、髪型を白く染めながら、睨み上げて来たからである。

「か、堪忍して、アシュリー!」

 レッドは、今度はスネークの影に隠れた。

「さて、奴を止めなくちゃな」

 スネークはアシュリー達を部屋の隅へ避難させると、武器を取り出した。植物の怪物は唸りながら涎を垂らしている。

「……」

 アシュリーは白兎の縫いぐるみを抱き締めながら、スネークを見つめていた。




「ここだ。作法殿!」
「作法殿……ここがお前の聖域なのか?」
「ピッカァ?」

 古代の中国な建物みたいなとこへ、マリオとピカチュウは連れてこられた。

「ま、正式に言えばオレ様の館じゃ無いんだがな」
「じゃあオレのって言うなよっ!」
「チャー……」

 期待外れしたのか、ピカチュウは耳を垂らしてガッカリしていた。

「気にするな! 今からお前らだけにお宝を見せてやるからな!」
「はあ、お宝ねえ」

 二人と一匹はバイクから下り、作法殿内へと入っていった。

「ようこそ、ワリオさん」

 黄緑のスーツを着た犬が現れた。

「よお、ジョー館長。久しぶりだが、全然変わってないなあ!」
「ワリオさんは、最近ファッションに凝っている様ですな」

 二人が笑い合う中、マリオは辺りを見渡す。すると、展示台の影に何かがいたのに気付く。それは、何だか丸っぽく見えた。

「なあワリオ、あれは?」
「あ? 何がだ」

 マリオはワリオの肩を叩いてその方を向かせたが、そこにはもう何もなかった。

「誰もいないぞ?」
「あれ? 変だなぁ」
「……それは恐らくスプランクスでしょう」

 ジョー館長は不意に口を開いた。

「ス、スプ……何?」
「スプランクスです。この作法殿の守り神と言われているのですよ」
「へえ、守り神かあ」
「たまに館内をうろついてますが、危険な生き物なので近寄らないでください」
「あ、ああ」

 マリオとピカチュウは、スプランクスの影があった場所を見ていた。

「さあ、館内をご案内しましょう。こちらへどうぞ」

 ジョー館長はマリオ達を奥へと案内した。




 作法殿の前には、ギガ軍と精鋭部隊の一部がいた。

「ここには不思議な力が秘められているみたいだな。デーク、お前はどう思う」

 サーシュンは、デークと言う男に訊いた。

「それは、行ってみないと分からないと思うけど?」

 デークはサーシュンを見ながら言った。それもそうだなと、サーシュンはニヤッと笑んだ。

「ここから気を感じるな。奴らもいるって訳か……この日を楽しみにしていたぜ」

 サーシュンは舌なめずりをしながら拳を鳴らした。




「これがお作法のアイテムです」
「何だこれ……リモコン?」
「ピカ?」

 マリオ達が見たものは、白くて細いリモコンみたいな機械である。
 それは、赤い台の上に乗せられていて、最も大切に保管されている様に見えた。

「古代から伝わる伝説のアイテムです。壁には、お作法の説明が書かれている巻物を飾っていますよ。
 では、私は仕事が残っておりますので、どうぞごゆっくり」

 ジョー館長は歩き去った。
 壁を見れば、巻物には文字と、絵が描かれていた。そんなのを見ても、マリオ達にはさっぱりである。

「これがオレ様の言ったお宝だ。よーく拝んどけよ」

 ワリオは偉そうに鼻を鳴らすが、そんな事言われても……と、マリオとピカチュウは顔を見合わせた。
 そんな時、館内が暗くなった。暗くなっても、若干視界は良かった。

「あれ? 停電?」
「! ピカピー!」

 ピカチュウが叫んだ。ピカチュウが差した方を見ると、向こうから紫の人物達がジャンプしながらこちらへ来る。あっと言う間に囲まれてしまった。

「ギガ軍……!」

 マリオは静かに叫び、ピカチュウは頬に電流を流す。

「こんなとこにも来やがったか」

 ワリオは、呑気に頭に手を回した。

「よお」

 紫の軍人達の一部に道が作られ、二人と一匹が歩いて来た。

「……てめえは……オレ様のクローンか?」
「ピィカァ……!」
「館長さんならさっき捕えたぜ。
 お、そう言えば自己紹介はまだだったな。オレ様の名はサーシュンだ。因みにこいつはクルヴィ」
「ピカ」

 目が赤いワリオのクローンであるサーシュンと、デークの肩に乗っているピカチュウのクローンであるクルヴィは笑んだ。

「そしてこいつが……」
「! 僕の、クローン?」

 マリオはギョッとした。
 マリオのクローンがいたのである。

「初めまして。デークって言うんだ。宜しくね」

 デークは胸に手を当て、お辞儀をした。

「お前達が欠片を持ってるって事位、分かってるんだ。大人しくこちらへ寄越すんだ」

 デークは手を差し延べた。

「……盗れるものなら盗ってみるんだな」
「ピカッチュ」
「オレ様のクローンなら、さっさと帰ってトイレにでも引き込もっておけっ」

 二人と一匹は渡す気はさらさら無い。

「命知らずだな」
「それはどっちかな。いくぜ、ワリオ、ピカチュウ!」
「ピカァ!」
「ま、仕方ねえな」

 スマッシュブラザーズとギガ軍との戦いが、遂に幕を開けた。










 ──to be continued──