ダンスパーティの伝説 やがて日が暮れる頃。 オネットの高い丘の上から町を見下ろしている狼がいた。狼はねめ回す様にして見渡し、やがてそこから走り去った。 料理の用意が出来、スマブラ達はそれらを包む準備を始める。 (ん?) ファルコはふと顔を上げたが、少しすると、気のせいか? と首を傾げた後、作業に戻る。 「皆のお陰で大分早く作れたわ。ありがとう」 ネスの母は、心から嬉しそうな笑顔で言った。 「これ位おやしゅいご用でしゅ!」 バスケットを包んだ紙をリボンでキュッと結んだプリンはニコッと笑った。 「それに、良い経験になったしな」 フォックスは言った。 「それにしても、隊長達遅いな」 壁に背をつけて腕を組んでいるスネークは、横にある階段に振り向いた。 「俺が行こうか……って、あ、来た」 フォックスが階段へ向かおうとしたとこでマリオとネスが駆け降りてきた。 「わりい、遅くなっちゃって! 手伝うよ」 「もう殆んど終わっちゃったでしゅよっ」 「ピィチュウ……」 プリンは一寸風船の様に頬を膨らませ、ピチューは呆れた顔で耳を垂らしていた。 「あらら本当だ。皆、ご苦労様」 マリオは頭を掻いた。 「マリオ殿にネス殿もご苦労だったな。その倒れた子供の様子はどうだ」 マーシスはマリオ達を見て問う。マリオ達は密かにギクリとしてしまい、手伝っていた手を一瞬だけ止めてしまった。 「あーっと、熱を出しちゃったみたいで、今ネスの部屋で寝てもらってるから。ただの熱だから、暫く寝てればすぐに治るよ」 「そうか、それは大変だったな」 フッと微笑むと作業を進める。マリオ達は内心息を吐き、少量の嫌な汗を流しながら残りの作業をした。 マリオの言ったことは事実で、あの後のラフィットは熱を出してしまったのだ。精神的、肉体的疲労を今まで溜め込んでいたようで、あまり眠ってもいなかったようだ。 それでも眠りたくないと彼等に警戒しているラフィットだが、ネスのさいみんじゅつであっさりと眠りについてしまったのだ。 少しの間眠ってもらい、皆が出掛けた後で、ネスは彼を起こしに行き、なるべく変装させて彼もパーティへ連れていくと言う。マリオは最初は断わっていたが、後々、変装ならまあ良いかなと思い始め、許可をした。 ネスが部屋の扉をロックしてから、マリオ達は下へと降りていった。 「よし、これで良いかな」 最後にマリオが、包んだ料理をテーブルに置いた。 「じゃあトレーシー達を呼んでくるね」 ネスは階段を駆け上がっていった。 「トレーシー……ネスの妹か」 マリオは呟いた。まだ紹介されていないのでそれ位しか言えなかった。 少しすると、ドタドタと階段の音がうるさく響き、三人が降りてきた。 「もーお腹ペコペコだよお」 「まーて待て待て、もう少しの辛抱だから」 カービィはどさくさに紛れてテーブルの上にある物達に飛び付こうとしたが、フォックスの妨げてきた手にぶつかってしまい、床へポテッと落ちてしまった。 「トレーシー、挨拶して」 「初めまして、皆さん」 ネスの隣でニコリと笑う金髪の少女は、スカートの裾を軽く摘み、ダンス前の挨拶みたいなお辞儀をした。 「妹のトレーシーです。今バイトをしているのよっ。宜しくね。今日はパーティの日だから特別に休みを貰ったのっ」 「まだ幼いのに、働いているとは偉いな」 メタナイトは腕を組み、感心していた。 「宜しくでしゅ!」 「ピカッ!」 「ピピッチュ!」 ポケモンズは笑顔で手を上げ挨拶をした。 「キャー! カーくんも可愛いけど、あなた達も凄く可愛い! 宜しくね!」 トレーシーははしゃぎながら彼女達を見た。 「そろそろ行かないと、パーティに遅れちゃうわ。行きましょう、皆」 ネスの母は人差し指を上げながら、少し焦った口調で言った。全員返事をし、それぞれの料理を持つ。 「はーやっくご飯がたっべたーいな!」 家を出る時、フォックスの肩に乗っているカービィが変わった歌を歌っていた。 「プリン達も早く行こう!」 「プリ!」 駆け出すトレーシーを、小さな包みを持ったプリン達が追い掛ける。そして、やがて見えなくなってしまった。 「子供達は元気で良いな」 マーシスはクスッと笑った。 「でもネスは、さっきからあまり元気ないわね」 「そお?」 ネスの母は心配した表情で彼を見た。ネスは彼女を安心させようとニコッと笑う。 「……あ! いっけない、忘れ物してきちゃった!」 そして驚いた顔をして慌てて立ち止まった。 「忘れ物?」 フォックスとファルコは同時にそう言い、ネスに振り向いた。 「皆は先に行ってて、すぐ追い掛けるから」 ネスは手を上げると家へと戻って行った。 「じゃあ、行こっか」 マリオは荷物を担ぎ直し、フォックス達の横を通っていった。フォックス達は顔を見合わせ、軽く頷くと、彼等も先に行くことにした。 さいみんじゅつの効果が切れ、ラフィットは目を覚ました。ベッドから上半身を起こし、部屋を見渡す。 「そっか。確か僕……」 敵だと言われている者達に看病をしてくれた。その一言を呟いただけで全てを思い出した。 「ネス……」 ラフィットはふと、僕を生み出したオリジナルの名前を思い出した。性格はやはり彼と似ていたのに驚く。 只、どうしてこの世界に僕は生まれたのかが記憶にない。 オリジナルとクローンの微妙な違いは何点かある。その中の一つは記憶で、何よりも辛い欠点だった。それを考えると頭を痛め、ラフィットは辛そうな表情で頭を抱えた。 ベッドから立ち上がり、近くにある大きな窓を開いた。 ──僕が守ってあげるからっ。 彼の言葉が一瞬脳裏をよぎり、ピタリと止まってしまう。触れている窓をギュッと握り、無理にでも振り切ろうと、窓から外へと出ていった。 スマブラ達がツーソンに着いた頃は既に夜だった。 ツーソンは、オネットと殆んど変わらない風景で、活気に溢れた町だ。 ヌスット広場はとても広く、普段はフリーマーケットに使われることが多い。その名の通り、ヌスット広場は泥棒が良く出る場所で有名なので、パーティの際の何人かの警備員は欠かせなかった。 『第64回イーグルランド・ダンスパーティ』 と、ヌスット広場の入り口には既に、アーチ型の大きな看板が立てられている。人はかなりいて、参加者は皆色々なお菓子や料理を持ってきていた。 「わあ! ご馳走パーティだ!」 フォックスの肩にいるカービィは、ヨダレを垂らしながら目を輝かせていた。 「カービィ、ヨダレ拭いて」 フォックスはハンカチをカービィに渡した。 スマブラ達は、大きな白いテーブルに料理を置いた。 「手伝ってくれて本当にありがとう」 ネスの母は優しい笑顔で彼等に感謝した。マリオ達は、いえいえと首を横に振った。 「彼もどうやら到着した様だな」 メタナイトは入り口を向くとそう言った。マリオ達も彼に吊られて入り口を見ると、ゆっくりと入ってきたネスを見た。 「ネスっ!」 マリオとフォックスは彼へ向かって駆けていった。 ネスは落ち込みながら、こちらへ歩をゆっくりと進めている。 「その様子だと、忘れ物は見付からなかったのか?」 フォックスは言った。それにネスは落ち込みながら首を縦に振った。 「帰ったら俺も探すのを手伝うよ」 フォックスは優しく微笑み、ネスの肩に手を置いた。ネスは未だに顔を少し下にし、コクンと頷いた。 (正か……) マリオは嫌な予感を覚えた。 (隊長、どうしよう……ラフィットが部屋からいなくなっちゃった!) 三人が彼等へ向かう間に、ネスはテレパシーでマリオの心に話し掛けた。 (取り合えず悪い気配はしないけど、何かをやらかすって可能性は無いとは言えないよね?) マリオは少し厳しめに心で返事をした。ネスは更に落ち込む。 (そうだね……もとはと言えば僕の責任だし。今のところ、ラフィットが何かをやらかすって気配は無いから、暫く様子を見るね) (ああ。頼んだよ) 「このダンスパーティって、どうして行われてるんでしゅか?」 テーブルに立っているプリンは何気にそんな疑問を抱き、ネスの母に質問をした。ネスの母はその質問に快く答える。 「これはずっと昔の話で、既におとぎ話と呼ばれる様になっちゃったんだけど……私はこれは本当の話だと信じてるわ」 他のスマブラも彼女の話に興味津々で、彼女へ目線が集まる。 「昔ね、私の息子と同じ、PSIを持った少年がいたの。世界が宇宙人に寄って危ない目にあっているから、彼は旅立ったわ。急に動き出したオモチャや家具に襲われた妹達の為、と言う説もあるけどね」 「家族の為に旅立って、更に世界を救いに行くだなんてしゅごく良い話でしゅね」 プリンは感動で目をキラキラさせながら、ハンカチを後ろから取り出し(どこにそんなのがあったのかは分からないが)、自分の涙を拭いた。ピチューは悲しい目をしながら笑い、プリンの頭をなでなでした。 「それでね、一緒に旅をしている仲間の中には、女の子がいたの」 ネスの母はプリンを見た後、続けた。 「悪の親玉を倒しに行く為、最終決戦場へと続く急な山があるんだけど、山中にある小屋でね、その男の子と女の子がダンスを始めたのよ」 「ほう」 目を閉じながら聞いているファルコは、腕を組んだまま、少し口を開いた。 「ダンスが終わった後、二人は愛の告白をしたの。素敵な話でしょ?」 「いい話ですね」 マリオは鼻を軽くすすった。 「私のママが毎日の様に話していたわ。私がうんざりしいてもね」 ネスの母はクスクス笑った。 「そう、その話から、各地でダンスパーティが年に一回行われる様になったわけ。好きな人とラブラブになれると言われてるパーティで有名なのよ」 「なるほど、客が多い訳だ」 スネークは会場を見渡した。 「このダンスに参加すれば、素敵なお相手が、きっと見付かるわよ。勿論そのつもりで無い、普通にダンスが好きな人達も参加しているわ。皆で楽しんで来なさい」 ネスの母は、パチンとウィンクをした。 「ネスー!」 「おーいネスー!」 「?」 呼ばれたネスは入り口の方を振り返った。入り口から三人の子供達が駆けてきた。 金髪に赤いリボンを付け、ピンクの服を来た少女。 金色の短髪に眼鏡を掛けた少年。 そして、黒髪をアップで三編み系に束ねたカンフー風少年である。 「ポーラ! ジェフ! プー!」 ネスはパッと笑顔になって三人のとこへ行った。 スマブラの中にはポカンとしている者もいれば微笑んでいる者もいた。 「お友達でしゅかね?」 プリンは言った。 ネスは三人をこちらへ連れてきた。 「僕の友達を紹介するよ。左からポーラ、ジェフ、プーだ」 「皆さん、初めまして。ポーラと言います。私もネスと同じ超能力を持ってる人間よ」 「ジェフだ。初めまして。僕、機械には強い男だから、それに関することだったら何でも相談してっ」 「初めまして。俺はプー。ランマ王国と言う遠い国から来た。以後お見知りおきを」 三人はそれぞれの自己紹介をしてお辞儀をした。スマブラもそれぞれに頭を下げる。 「間も無く、ダンスパーティを開催致します」 それとほぼ同時、アナウンスの声が辺りに響き渡った。 「開催記念オープニングダンスに、トンズラブラザーズをお招きしました。どうぞ!」 トンズラブラザーズと呼ばれた、黒いスーツに黒いハット、黒いサングラスを掛けた男が二人現れた。少し離れたの場所では楽器を持っている者が複数おり(因みに彼等も二人と同じ服装)、その演奏に合わせ、例の二人は華麗なるダンスを披露していた。周りからは応援の声と、ブラボーと言わんばかりの口笛が響き渡っていた。 「トンズラブラザーズ、イーグルランドでは有名なんだよっ」 「そうなんだ」 張り切って見ているネスは、後ろのマリオとフォックスに振り向いて軽く説明をした。 「はあ、はあ、はあ」 歩き疲れたラフィットは、膝に手を付き、肩で軽く息をしていた。まだ少し病の名残があるからだろう。スマブラ達が余裕でも、今のラフィットはツーソンにたどり着いてこの状態である。 「……ん?」 ふと、ツーソンの中で一段と光る場所があった。ある広場──ヌスット広場からだ。人が沢山いると見る。 ラフィットはその広場のすぐ近くの丘にいて、それらの風景に目を細めた。 「あれは……一体なんなんだろう」 楽しそうな雰囲気にラフィットは興味が沸いてきていた。どうやら皆でダンスをしている様だ。男と女が手を繋ぎ合い、華麗な動きをしている者もいれば、ゆっくりと回っている者もいた。 参加してみたいなとは思っているが、 「!」 スマブラがそこにいるのも分かった。彼等に見付かったら攻撃されてしまうかも知れない。目の色を変えて行こうとも思ったが、ネスもいる。仕方がないとその場に座り、楽しそうなダンスパーティを眺めることにした。 「プリン、お前軽すぎるなぁ」 「しょうがないじゃないでしゅかっ」 プリンはファルコと踊っているが、彼と手を繋いでも、体がかなり軽い彼女は、彼に自由がままに動かされるしか無かった。事前に色々なダンスを考えていたプリンだが、それは無意味に終わった。 「こうで良いのか」 「そうですよ。良いです、その調子」 あまりダンスをやったことのないスネークは、お相手の女性にフォローして貰いながらダンスをしていた。何でこんな色々な動きが分かるのかと、スネークは疑問に感じていたりした。 「? 何だ、あの輪」 マリオはダンス中、向こうで円になっている女性達を見た。 「メタナイトさん、次は私と踊ってください!」 「マーシスさん、一緒に踊りましょう!」 「駄目よ私が先よ!」 彼等はダンスがかなり上手く、見た目もイケメンなので、一緒にダンスをした女性は皆、良い意味で失神寸前だった。次のダンス候補が殺到し、二人はやれやれと見合わせていた。 「──ん?」 ネスはダンス中、何かを感じた。 「? ネス、どうしたの?」 一緒に踊っているポーラはネスに見開いた。 「あ、ううん。次のステップをうっかり忘れるとこだった」 「そんなこと。テレパシーで私と合わせれば良いのに」 「僕には自分流のダンスがあるんだよ。僕に合わせて」 「──うん、分かった」 ポーラはダンスをしながら、頬を染めた顔を反らし、嬉しそうに微笑んで返事をした。ネスはそれに気付いているのか分からないが、優しい微笑みを見せていた。 「あの二人、中々良い感じね」 カービィがあちこちの料理をあさっているのと、それを止めようとしているピチューを背に、ネスの母は微笑ましく彼等を見守っていた。 何曲もの曲が流れた後、ハーフタイム──長い休憩時間がやってきた。正確には晩御飯の時間と言って良い。参加者が持ってきた菓子や料理は、この時間に食べるのだ。 カービィに寄っていくつか料理は無くなってしまったが、ピチューに途中で抑え付けられたお陰で大事にまでは到らなかった。 椅子は無い為、全員立ちっぱなしの状態だが、そっちの方が料理を取りやすい。全員に紙の小皿が配られ、料理を掴むハサミで全員料理や菓子を取り、小皿へ乗せていった。 「ポーラとはたまに会うけど、ジェフとプーも来てくれるだなんて思わなかったよ」 料理を頬張ったネスは、隣にいる二人に話し掛けた。 「実はトニー達も来てるんだよ」 ジェフはニッと笑いを見せた。 「僕達が暮らしている所以外へ行ってみたいって言ってたからね。良い機会だし、ダンスパーティにも参加しようって呼び掛けたんだ」 「ジェフー! こんなとこにいたんだね!」 茶髪に黒いハットを被り、ジェフと同じ服装を着た少年が小皿を片手にやって来た。ネスがスペースを空けてやると、彼はそこへ入り込んだ。 「どこに行ってたのか、探しちゃったよ」 「ごめん、トニー」 「プー、ランマ王国って遠いんでしょ? 疲れなかった?」 ネスは少し距離を置いているプーに少し大きな声で話し掛けた。プーは彼に振り向き、全然と首を振った。 「俺のことなら大丈夫。テレポートを使えば直ぐに着くからさ」 「あ、そっか」 今気付いたネスは笑いながら軽く頭を掻いた。 「ネスは本当分かりやすい子だなぁ」 マリオは彼等の様子を、料理を食べながら見ていた。隣にいるフォックスも同じく彼等を見ていた。 「あんなに楽しそうなネスを見たの、久しぶりな気がする」 「俺もだな」 マリオはフォックスに振り向いた。 「スマブラ王国にいる間、ネスはファンシーズと楽しそうに遊んでいても、微妙に不安な一面を見せていたからな、戦士として。故郷に帰ってきて、安心しきってるんだろ」 「気持ちは分かるね。でも、今の僕達は『戦士』としてここにいるから、不安はあるよ」 軽く溜め息をついたマリオにフォックスは微笑した。 「あ、空っぽになっちゃった」 ネスは空になった皿を凝視した。どせいさんと一緒に食べているので、直ぐに無くなるのである。 「まだ食べ足りないや。料理取ってくるね」 「ぽえーん。わたしもいきまーす」 どせいさんが肩に飛び乗った後、ネスは皆に軽く手を振ってから、小皿を片手に向こうへ行った。 「? スネークしゃん、どこに行くんでしゅか?」 スネークは小皿の上の料理を空にし、折り曲げた小皿を、側に置いてあるゴミ箱に捨てるとテーブルを離れようとする。そんな彼を、まだ食事中のプリンは見上げた。 「ちょっと踊り疲れた。静かな場所で休憩してくる」 慣れないダンスのお陰でスネークは疲れを少し溜めている様だ。その場から去り、向こうへ歩いていってしまった。 「しょう言えば女性に色々とおしょわってましたね。大変でしゅ」 そう言っても、プリンはクスッと笑っていた。 「まだ時間はあるな。皆の料理、どんどん食べようなっ」 「うん!」 マリオが言うと、カービィは片手をピシッと上げた。 「カービィは程々に頼むよ」 「はーい」 少し嫌そうな顔だが、渋々頷いた。 「……」 ふとマーシスは、プラスチックのフォークを止め、下ろした。 「マーシス、如何した」 隣で食事をしているメタナイトはマーシスの様子に気付いた。 「……いや、何でもない。また悪い癖だな」 小さく違和感のある気配にまで敏感で、思わず警戒してしまうのは自分の悪い癖だと思っていた。色んなとこから人が来ているのだから、そんな気配を感じて当然のこと。そう自分の心の中で首を左右に振り、食事を再開した。 「いい匂いだなぁ」 丘に座り、ダンスパーティを眺めているラフィット。ラフィットの足は体育座り状態で、膝に肘を付け、両手の平で頬を包んでいる。 料理の匂いは彼にも漂っていて、ラフィットは鼻を動かし、その匂いをかぐ。 「あんなの初めてだ。輝く光が、あんなに綺麗だったなんてなぁ」 温かみと言う言葉を初めて感じ始めたラフィットがダンスパーティをずっと眺めていると、 「ネス?」 「っ?」 ラフィットは肩を上げた。ネスと呼ばれた為にとっさに目の色を彼の様な黒色に変え、気配を感じた後ろへ振り返った。そこには、少し目を丸くしているスネークが立っていた。 「あ、えーと確か貴方は……」 「スネークだ。さっきまで会場にいなかったか? ネスもここで休息か?」 「うん、まあ、そんなとこかな」 ラフィットはうっかり苦笑いをした後、慌てて前へ向き直った。スネークは少し首を傾げるが、暫く彼を見た後、彼もラフィットの隣で腰を下ろした。 「中々帰ってこないと、隊長らや母親が心配するんじゃないのか?」 スネークは口端を上げてラフィットを見る。ラフィットは何のことか最初は理解出来なかったが、母親の存在は何故か記憶にあり、おまけにスネークの言葉を考え、答えを放つ。 「一寸休憩したら直ぐ行くから」 「そうか」 そこで一端会話が途切れ、二人はダンスパーティの会場を見渡した。 オレンジや黄色に優しく光る会場。それはまるで家族の様な温かみがある。ラフィットはネスのクローンだが、そんな気持ちは生まれて初めて抱いていた。 「ネスの家族を見て、何と無く思った」 語り始めたスネークにラフィットは振り向いた。 「家族と言うのはこう言うことかってな。ま、それでも、俺にはあまり理解出来ないがな」 「? それってどう言う……?」 上半身を少し捻ってでも問うラフィット。スネークは目だけをラフィットに向けた後、顔も彼に向けた。 「俺がどんな風に生まれたか、教えてやろうか? いや、超能力者なら、テレパシーで一発だろうな」 「そんなことはしない。教えてよ、スネーク」 ラフィットは、何故かスネークと共感しかけているのに気付き始めた。こんなにも人物が違うと言うのに、波長が合う感覚がした。 スネークはニヤッと笑うと、会場へ目線を向き直し、口を開いた。 「──えっ?」 数十秒後、それを聞き終えたラフィットは固まった。 彼の口から出た、スネークの過去。それは子供でも分かりやすい様に短い文でまとめられていた。だから、ラフィットには十分それが伝わっていた。 「意外だろ? だから、あんたらの様な家族を持つ者の気持ちを理解しようとしても、中々出来ない。逆に苦しいんだ、そう言うのを分かろうとすると」 「……」 黙り込むラフィットを見てスネークはフッと笑み、その場から立ち上がる。 「折角のダンスパーティデーだと言うのに、無駄なことを言って悪かった。そろそろ戻るか、ネス」 「ま、待って」 「?」 ラフィットはスネークを呼び止めていた。立ち去ろうとしたスネークは目を丸くして彼を見る。 そこでラフィットはハッとした。何故彼を呼び止めたか、理解出来なかったのた。このまま一人にしないで欲しいと言う気持ちから出た行動なのかも知れない。 「う、ううん、何でもない。僕は後で行くから」 「……ああ、分かった」 と、スネークは体の向きを変えた。 ──! ──!! スネークとラフィットは強い殺気を感じとり、その場から素早く離れた。さっきまで彼等がいた場所の間に出てきた影が大きくなり、一匹の獣がそこに着地した。 「! お前は……!」 「グルルル……」 低い唸りを上げながらスネークを睨んでいるのは、狼の姿にされているリンクだった。 ──to be continued── |