忘れられた歌 「えっ?」 「んっ?」 ネスとファルコは何かを感じ、食事を止めると同時に顔を上げた。 「! この感じは……」 マーシスも顔を上げた。 「ど、どうしたの、三人共」 マリオ達は見開いた表情で彼等を見た。 そして三人は同じ方へ顔を向けた。彼等の目線の先にあるのは、丘だった。 「お前は確か、緑の勇者かっ?」 スネークは狼リンクを凝視する。狼リンクは動揺せず、スネークを睨み付けている。ラフィットは驚いた顔をしていた。 唸り声を漏らしながら、狼リンクはスネークを鋭く睨み、攻撃の構えを取る。スネークは舌打ちし、麻酔銃を掴んでスタンバイする。 「……」 ラフィットは彼等を見ながら考えた。狼リンクは今はギガ軍の一員だ。その一員が今、スマブラの一人を倒そうとしている。無論、これは好都合だ。 しかし、今の気持ちは複雑だった。ここまで波長が合う人物に出会ったのは初めてだから。 この世界に来て、何もかも初めて出会ったことばかりで、教えられなかったことを教えられていく。それに寄り、ラフィットの心が、今、大きく揺れ動こうとしていた。 「グアァ!」 「くっ!」 スネークは横っ飛びをして狼リンクの攻撃を避けた。狼リンクは直ぐに体勢を立て直し、次の攻撃に移ろうとしている。 「そろそろ、良いタイミングになってきたな」 スネークはそう呟き、銃を構えた。そして狼リンクは大口を開いて飛び上がり、再びスネークに襲い掛かろうとした。 その時、スネークの前に何者かが現れた。そう、ラフィットである。 「ネス!」 「スネークは危ないから下がってて!」 狼リンクの標的が瞬時にして変わった。だが狼リンクは、構わずラフィットへ牙を剥く。 ラフィットは彼の攻撃を避け、人差し指で狼リンクの額に触れた。 この辺りの時が、一瞬だけ止まった。やがて狼リンクは脱力してゆき、その場へ倒れ込んだ。 スネークは銃を構えたままポカンとしていた。 ──暫く気絶して貰っただけだよ。 (? テレパシーか?) スネークの心へラフィットの言葉が話し掛ける。 ──そして、リンクの心を浄化した。これで、リンクの心は元通りになる筈だよ。 スネークはラフィットを見ていて、ラフィットも彼を見る。未だにポカンとしているスネークに対し、ラフィットはヘヘッと苦笑いをした。 そしてスネークはあることを思い出した。仲間を呼びに行くことである。彼の言うことが事実なら、それも知らせに行くべきだと思ったからだ。 「その狼が逃げない様に見張っておけ。良いな」 「わ、分かった」 スネークはそう言ってその場を一端去ろうとしたが、途中で足をピタリと止める。ラフィットはそんな彼を見て疑問に思った、なぜ早く行かないのだろうかと。 するとスネークはこちらを向き、口端をあげて、こう言った。 「逃げたかったら逃げても良いんだぞ……クローンさん」 「!?」 ラフィットはドキリとした。あれ程余裕な口調と言うことは、最初から気付いていたのか。なぜ今になるまで言わなかったのか。相手は敵の一員の筈なのに……。 「本物のネスなら、俺を名前では呼ばない。名前を呼ばれてから、何と無く思った。テレパシーで話したのも、お前の仲間にバレない様にする為。違うか?」 「……」 ラフィット達には分からないが、ネスの部屋でのマリオ達の会話を、スネークはスープを片手にこっそり聞いていたのだ。それで気付いた彼は、今の彼と話をしている内に、何かを感じたに違いない。 「この先どうするかは、お前に任せる。但し、その勇者にだけは手を出すな」 そしてスネークは去っていった。 敵にあんなことを言われたのは初めてだと、ラフィットは見開いていた。相手が敵なら、容赦しない、容赦するなって教わったのに。不思議と、彼からは殺気を感じない。 考えれば、今までの自分自身の行動も、今は驚いていた。そう、スネークと狼リンクを救ってしまったことである。 スネークの話に感情が揺れ動くだなんて。そしてそれで彼等の仲間を救い出してしまった。 クローンには良心は無い筈だ。絶対に無いんだ。なのに、どうして──。 向こうから沢山の人が来る気配がした。スネークが仲間と共にやって来たに違いない。ラフィットはその場から素早く離れ、近くの木の影に身をひそめた。 「リンク!」 マリオとフォックスは直ぐ様駆け寄り、マリオは、気を失っている狼リンクの脈をはかり始めた。 「さっきの妙な気配は、やっぱりここからだったんだね」 と、ネスは言った。 「どお、マリオ?」 フォックスは緊張しながら問うた。はかり終えたマリオはフォックスに笑顔を見せた。 「大丈夫、気絶してるだけだよ」 「良かった……」 「ねえリンクは、元に戻ったの? 僕達のこと、思い出してくれるかなっ?」 「ピッカ……ピカッチュウ?」 マリオとフォックスの、それぞれの肩に乗っているファンシーズは、心配そうな口調でマリオに聞く。マリオは少し難しい顔を暫くしていたが、彼等へ顔を上げると微笑んだ。 「きっと皆のこと、思い出してくれる筈だよ」 タルミナにいる時、ギガ軍の味方になっていた彼だが、マリオの言葉に動揺したのと、子リンを手助けしてくれたのは事実。今なら、きっと分かってくれる筈だと、マリオは固く信じていた。 ネスは一端安心して息を吐くと、顔を上げ、ある木を見つめる。 ──ラフィット、蛇のおじちゃんから、こっそり聞いたよ。 「!」 木の影に身をひそめているラフィットは、彼の心の声にドキリとした。 ──心配してたけど、勇者のお兄ちゃんを助けてくれて、本当に嬉しかったよ。 ──僕は別に……。 ラフィットもテレパシーを使い、ネスの心に話し掛ける。 ──ラフィット、皆が行ったら、僕んちにまた来て。 ──……。 ──僕、言ったよね? 守ってあげるって。だから、怖がる必要は無いよ。良かったら、僕と一緒に行くかい? ──いや、一人で大丈夫だよ。 ──分かった。待ってるからね。 嬉しそうな声色にラフィットの胸が締め付けられる。それは何故かは、未だに理解出来なかった。 とにもかくにも、ラフィットはネスの家へ後々寄るつもりはあった。 「ネス、もうパーティ抜けるの?」 ポーラは残念そうな顔でネスに話し掛けた。ネスの友達も一緒に来ていたのである。ネスはうろたえながらも、縦に頭を振った。 「うん、仲間の様子を見なきゃならないから」 「……そうよね、仕方ないわよね」 ポーラはうつ向き、ジェフやプーも少し落ち込んでいた。 「ねえ、今度は皆で遊ばない? 久しぶりなんだし」 ネスは元気づけようと、明るい声で彼女達にそう言った。 「明日辺りとかさ、隊長達もいるんだし、きっと楽しいよっ」 そう言うと、ポーラ達にやっと笑顔が戻ってきた。 「良いわね、それ。皆でどこか遊びに行きましょうっ」 「うんっ。隊長達も良い?」 ネスは、狼リンクを抱え上げようとしているマリオを中心に皆に呼び掛けた。返事は皆イエスだ。 「良いよ。まだ知らない町とかあるんだし、色々案内してよ」 「よし、決まりっ」 マリオが言うと、ネスはガッツを作った。 そしてポーラ達と別れ、スマブラ達は狼リンクを抱え、ネスの家へと戻っていった。 ネスの家にて、狼リンクはトレーシーの部屋まで運ばれた。トレーシーは最初は驚いていたものの、その狼に対して段々と愛着がわいた様だ。ベッドに寝かせてくれる様頼むと、快くOKしてくれた。 「はい、ぬれタオル」 「サンキュー」 それだけではなく、マリオ達の手伝いもしてくれた。水の入った小さな洗面器を、タオルを入れて持ってきてくれたのだ。 マリオはトレーシーから折り畳まれた濡れたタオルを受け取り、眠っている狼リンクの顔を拭いてあげる。 「大変だったんだね、お兄ちゃん」 トレーシーは辛そうに狼リンクを見ながら、隣に座っているネスに話し掛けた。 「でも、戻ってきてくれて何よりだよ」 逆にネスは微笑んでいた。 「これでギガ軍の怒りを買わないと良いのだが」 壁に背をつけているマーシスは腕を組んでそう呟く。そんなことを言う彼だが、口端は僅かに吊り上がっていた。 マリオも同じ気持ちだろう。ニッと笑んでいる。 「その時は、その時だよ」 マリオ達が狼リンクの看病を続けていると、狼リンクはパチッと目を覚ました。そして素早く身を起こすが、その後の動きがかなり鈍い。 「リ、リンク!?」 マリオ達は驚いて彼を見る。何が起こっているのか理解出来ないのだ。 「グウゥ……ガウウ!!」 狼リンクは息を荒らしながら首を激しく振ったりしてその場で暴れている。 そして体が光り出したのだ。狼リンクは光のシルエットになると、シルエットは形を変えてゆく。それは段々人へと変わり、完全体になると、その光りは消えていった。 狼から元に戻ったリンクはベッドへ倒れ込んだ。 「リンクっ! 確りしろ!」 「うっ……」 部屋にいる者達はリンクのもとへ集まり、フォックスは彼の体を軽く揺さぶる。一時再び気絶していたリンクだが、フォックス達に呼び掛けられると、そっと瞼を開いていった。そして体を起こし、彼等を見る。 「あれ? 皆さん、一体どうしたんです?」 「リンク……!」 「リンクが元に戻った……!」 「やったー!」 マリオ達は大喜びだが、本人は何があったのかとポカンとしている。 そこでマーシスが歩み寄り、リンクに事情を説明した。リンクは理解するとうつ向く。 「そうだったんですか。俺、皆に迷惑を……」 「リンク」 横から声が聞こえ、振り向くと、笑顔の大親友と目が合った。 「お帰り、リンク。待ってたんだよ」 「フォックス……」 彼の笑顔で、混乱していた心が大分落ち着き、リンクは、やっと微笑みを作ってくれた。その笑顔を覚えていてくれて、マリオ達も自然と頬を緩めた。 「早速皆に知らせてくるよっ」 ネスは嬉しさの余り跳ねながら立ち上がり、直ぐに部屋を後にした。そして廊下を歩いていると、ハッとして立ち止まる。暫し止まっていたが、意味深に微笑を浮かべると歩き出した。 「えっ、リンクが!?」 「ホントでしゅか!?」 「ピッカ!?」 「ピッチュ!?」 ネスの知らせに最初に声を出したのはファンシーズだった。皆目を輝かせている。ネスも嬉しさで笑顔を絶やさず、頭を縦に振った。 「それは何よりだ」 メタナイトは少し驚いて言った。 「狼のまんまだと、偉い迷惑だしな」 「いや、もう迷惑ではない」 メタナイトはそう言ったファルコに振り向いた。 「自分の意思で人間に戻れたのならば、リンクはもう、己の闇の力を制御出来た筈だ」 「闇の力……狼の力を借りた勇者って訳だな」 腕を組んで椅子に座っているスネークが言った。メタナイトは彼を見て続ける。 「空間神が闇の力をリンクに与えたのならば、リンクの闇の力も今後必要になると言うことだろう」 「……じゃあまた部屋に戻るね」 ネスは階段を駆け上がっていった。だが彼が行く部屋はトレーシーの部屋ではなく、自分の部屋だった。 ガチャッと扉を開けると、少し奥で窓の外を眺めている少年がいた。その姿は、ネスそのものである。 「ラフィット」 後ろから話し掛けると、ラフィットはゆっくりとこちらを向いた。相変わらず無表情で疑いの眼をしている。だがネスは気にせず、笑顔で話す。 「来てくれるって、分かってたよ」 「別に好きで来てる訳じゃない。君が強制的に連れてくるから」 「え? そんな、強制には言ってないと思うけど」 「とにかく、僕はまだ、君達を疑ってるんだからね」 「分かったよ」 真面目な返事じゃないネスにラフィットはカチンと来た。 「あ!」 何かを言い返そうと口を開こうとしたが、その前にネスは彼の横を通っていった。そして窓の外を眺め始める。 ラフィットは、一体何事かと、戸惑いながら彼の背中を見る。 「今流れ星が見えたよ!」 「流れ星?」 「ラフィットも来て見なよ。また流れ星が見れるかも知れない。凄い綺麗なんだよ」 ラフィットはハテナを浮かべていたが、ネスにそこまで言われたので、何と無くだが足を動かす。ネスが横へずれると、ラフィットは彼の隣に立ち、窓の外を見てみる。 夜空に目を凝らしていると、やがて黒色の空間に光の線が流れる様に現れた。ラフィットはそれにはかなり驚き、ネスはそんな彼に驚いたが、クスッと笑った。 「ホラ、今のが流れ星って言うんだよ」 「あれが、流れ星って言うんだ」 ラフィットは驚いた後でドキドキしてしまった様子だが、ネスの話は聞いている。そんなラフィットの反応に、流石のネスも眉間に皺を寄せていた。 「ラフィットは流れ星見たことないの?」 「記憶にはあるけれど、この目で見たことはない」 「そうなんだ……」 やはりこんなクローンも存在しているんだなと、ネスの目がフッと悲しい色に染まる。だけど、それならばとまた優しく笑んだ。 「なら、もっと色々教えてあげるっ」 「え?」 「記憶ばっか頼っても、そればかりじゃ苦しむだけだよ。分からない、思い出せないこととかあったらさ、何でも話してご覧よ」 「ネス……」 「ぽえーん」 今までどこに行っていたのか分からないどせいさんが突如跳ねながら現れ、ネスの肩へと飛び乗る。 「わたしにもなんでもきいてください。いーるぐについてならなんでもしってるです」 「……」 ラフィットはどう返事をすれば良いのか分からなかった。感謝の言葉くらいは言いたいのだが、それも分からない。そう思うと、次第にうつ向いてしまった。 「ど、どうしたのっ?」 「──感謝の言葉は、どうやって言えば良いの?」 「そう言うこと。あのね、感謝する時はね? 『ありがとう』って、言うんだよ」 「……あり……が……とう……?」 「そうそう! ありがとうって言うとね、感謝される人は喜ぶんだよっ」 「そうなんだ」 別に喜んで貰おうとか考えてはいない。只、取り合えず感謝位はしておきたかった。 「ありがとう、ネス。えっと……どせいさん」 ネスはへへっと照れ臭く笑い、頭を掻いた。どせいさんも嬉しいと言う表現か、ネスの肩をぴょんぴょんと跳ねていた。 またキラリと光った気がし、三人は窓の外をまた眺め始める。 「……Take a merody……」 「ん?」 突然何かをくちずさんだ気がしたラフィットにネスとどせいさんは振り向いた。 「ラフィット、今の歌、何?」 初めて聞いたネスはラフィットに目を丸くした。だがラフィットはこちらを見ず、首を横に何度も振る。 「分かんない。ネスは知らないの?」 「聞いたことある様な無い様な……」 「僕は何故か知ってる。こんな歌を覚えて何になる。でも、流れ星を見たら、気付けば口が勝手に動いてた」 「ふーん」 ネスはラフィットの歌い出しを頭の中でリピートした。何だか温かな気持ちになった気がする。そう思うと、更にその歌が気になり出した。 「ラフィット、最後まで歌ってみてよ」 「え……」 「僕はラフィットの知らないことなら何でも教えるけど、ラフィットも僕の知らないこと、色々教えてよ。良いでしょ?」 「教えてって、只の歌だよ?」 「良いよ、それでも。僕が聞きたいって言ってるんだから、教えて?」 「また強制じゃん」 「そんなつもりは……」 自覚していないんだなとラフィットは軽く息を吐いた後、仕方ないと、歌う為に口を開いた。 良心の無いクローンとしては何とも感じないのだが、ネス達にとっては優しい気持ちに溢れさせる歌だった。母親の様な温もりが、心を包む様な、とても素敵なメロディだ。目を閉じているラフィットの口から奏でられる歌が、家中に響き渡る。 “Take a melody , Simple as can be Give some words and sweet harmonies Raise your voices all day long now love glow strong now Sing a melody of Love oh love.” 「ピィカ」 一階にいるプリン達は天井を見ながら耳を傾ける。 「……」 スネークは目を閉じながらそれを聞き、心の中で呟く。 (俺には心地悪い歌だな……) 「俺、夢を見たんです」 「夢?」 その頃、トレーシーの部屋にて、リンクは語り出した。 「あの時、いきなり気を失ったと思いきや、黄昏の世界にいたんです。そこには誰もいなくて、一人さ迷ってました。そんな時、マリオさんの声を聞いたんです」 「僕の?」 「インパさんの言葉を思い出して! って。その時世界が歪んで、夢の中なのにまた気を失った感覚がして。そして気が付いたら、このベッドの中に」 「じゃあ、リンクには狼の記憶が無いって訳か」 「だが元に戻ったのならば話は別だ」 マーシスは言った。 「リンク殿に戻れたのならば、狼としての記憶も抑えられる。空間神の力を信じれば、仲間の為の力にもなるだろう」 「それじゃあ、もう自分の力で狼にもなれると言うことに」 マリオが振り向いて問うと、マーシスは頷いた。 「あの時のリンク殿は、神の力を制御しきれなかった者の姿と言えよう」 「まだ、修行が足りませんね。もっともっと強くなります」 リンクは拳を作り、決心した。 「その歌、小さい頃に聞いたかも。良く覚えてないけど……」 歌い終えたラフィットにネスは言った。 「ならこの歌も、ネスの記憶の一部と言うことだね」 「ぽえーん」 ネスの肩に乗っているどせいさんがピョンピョン跳ねた。まるで、思い出しましたと言わんばかりの行動だ。 「おもいだしました」 「思い出したって、何が?」 「そのうたは、せかいせいふくをたくらんでいたうちゅうじん──ぎーぐへささげたうたです」 「何だって!?」 ネスはうっかり声を上げてしまい、慌てて口を抑えた。隣の部屋に聞こえたら誰かが来るかも知れないと焦る。一応、スマブラの敵がネスの隣にいる訳であって。 「あれ? ネスは隣の部屋にいる様ですね」 リンクはそちらの方向を見て呟いた。 「きっとどせいさんと会話でもしてるんだよ、肩に乗ってたろ?」 マリオは少し慌てながらも、頭に浮かんだことを直ぐに言い放った。彼の話に皆納得した様で、マリオは胸を撫で下ろした。 「どせいさん、ギーグに捧げたこの歌って一体……」 「このせかいをすくったしょうねんのせんぞ──じょーじとまりあは、あるときうちゅうじんにさらわれました。そして、ぎーぐのこもりやくをめいじられたのです。ぎーぐは、さきほどらふぃっとさんがうたったこもりうたをきいてそだちました」 「ギーグは、地球人の手に寄って育てられたってことなんだね……」 「そしてあるひ、じょーじだけが、PSIのでーたをてに、ちきゅうにもどってきました。そして、そのちからのけんきゅうをはじめたといいます。そのPSIはぎーぐをはじめ、うちゅうじんのもつふしぎなちからのことをさします」 「え。マリアはどうしたの?」 「……くわしいことはわたしにもわかりかねますが、ただはっきりしていることは、えいえんにちきゅうへもどることはなかった──とのことです」 ネスは、自分の掌をゆっくりと見下ろした。 「PSIは、ギーグの力が元だったんだ……」 「じょーじは、いせいじんへのたいこうとして、そのちからをもちかえったといいます。 そしてなんじゅうねんかたったあと、ぎーぐをりーだーに、うちゅうじんたちはちきゅうへらいしゅうしました。そこで、じょーじとまりあのしそんとそのなかまたちは、ぎーぐがちいさいころにきいた、このこもりうたをうたったのです。するとぎーぐはちからをうしない、おとなしくなったといいます」 「そうだったんだね」 ネスとラフィットはポカンとしてしまっていた。 「ダンスの伝説は聞いたけど、この歌も、伝説の歌だったんだね」 「このうたは、ひとのこころをかえるちからがこめられているといいます。いまでもかたりつがれています」 「きっとママが歌ってくれていたんだ。何と無く印象に残ってたから、今でも何と無く覚えているけど、ちゃんと覚えてはいないなぁ」 ネスはハハッと笑って頬を軽くひっかいた。 「僕はちゃんと覚えてるみたい」 ラフィットは呟いた。 「だから、ネスもきっと、ちゃんと思い出すよ」 「……うんっ。頑張って思い出してみせるよ」 そして二人の少年とどせいさんは、流れ星の雨を眺めていた。 オネットの高い丘には、ギガ部隊がいた。 「強い殺気を感じるな」 ジビンダーはガフィと共に夜空の流星群を見上げていた。 「何か来るって訳かな?」 笑みを浮かべながら、ディバは軽く剣の手入れをしている。 「ディバにとっては楽しい時間になるだろうな」 ジビンダーはディバに振り向くと、フッと笑みを溢した。するとディバは、当然だろと言いながら剣をしまった。 「僕は楽しければなんでもやりたがる愚か者だからね。あの狼は結局逃がしたし」 「……!」 彼の側に立っているミエールは肩を上げた。ディバは彼をチラリと見た後、軽く吹き出してから立ち上がった。 「ま、んなことより、楽しい時間は無駄にしては駄目だよ?」 「今回は形ではないな」 フビルは言った。 「精神世界にしか存在しない様な奇妙な生き物だ。この世界の英雄に倒され、それから暫くして、何の前触れもなく狂い始めたみたいだ」 「ゾッとする話だ。益々楽しくなってきた」 ディバはヒヒッと高い声で笑い、二本の剣をもう一度引き抜いた。 「平和で平凡過ぎるこの世界に、一寸した刺激を与えてやるか。果たしてどうなるかな」 何かの予兆とも知らず、ネス達は綺麗と連呼しながら、降り注ぐ流れ星達を見ていた。 ──to be continued── |