八つのばしょ








「い……っ!」
「! ポーラ、どうしたの?」

 戦っている最中、ポーラは何かを強く感じ、目をギュッと瞑りながら痛そうに頭を抱えた。ピストル式のレーザービームを片手にジェフは彼女のもとへ行く。
 暫くするとポーラは、軽く息を荒くしながら、頭から手をそっと離した。そして慌ててジェフに言う。

「ジェフ、大変よっ。8人の大宇宙人が既にあちこちにいるみたい!」
「ええ!?」
「今から皆にテレパシーでそれを伝えるから、ジェフ、援護お願い出来る?」
「う、うん。頑張るよ!」

 ジェフはピストルを両手で握り、辺りを見張る。その間にポーラは意識を集中させ、PSIを発動させた。




 フォックスを囲んでいた敵は、今は全員倒れていた。真ん中にはブラスターを構えているフォックスがいる。
 彼は肩で酷く息をしているが、まだ周辺の警戒は怠っていない。
 ネスを見失ってしまい、今から改めて探そうとした時、またもや走ろうとした足を止めてしまった。心に誰かからの声が聞こえてきたのである。

 ──みんな、私の話を聞いてっ。
(この声は確か──ポーラか?)

 フォックスは心で呟いた。
 ジェフが見張りをする間、ポーラは自分の胸に両手で触れ、静かに目を閉じながら、皆の心に話し掛けている。テレパシーを送っている間は、彼女は口を閉じていた。

 ──ついさっき、私の心に色々な人達の心の叫びが飛込んできたの。場所は全部で8ヵ所。そこで大宇宙人が暴れまわってるみたいなの。
「なんだと!」
「……!」

 ツーソンにいるメタナイトとプーは驚いた。
 ツーソンチームも更に分かれ、メタナイトとプー、ピカチュウとピチュー、そしてカービィとプリンに分かれていた。

「やっぱり……俺にも一瞬だけ感じたんだ、人々の悲鳴を」
「プーもか。私も嫌な予感はしていた」
 ──私が分かる範囲で場所を言うわね。オネット、ハッピーハッピー村、サターンバレー、ウィンターズ、フォーサイド、ランマ王国、グミ族の村、そして地底大陸よ。恐らく一刻の猶予も無いかも知れない。これからみんなの為にPSIを最大限で試みるから、みんな各々行く場所を念じて。念を受け止めたら、私きっと、みんなを各地へ送れるからっ。
 ──ポーラ、無茶はするな。俺も手伝うよっ。
 ──プー! ありがとう……っ。

 目を瞑っているポーラの顔が僅かに動く。

「プー、ランマ王国は、確かそなたの国……だったな」

 プーがポーラにテレパシーで話し掛けたとこで、メタナイトは彼の今の言葉で思い出した。プーは彼に振り向く。

「メタナイト、俺達が行くべき場所……来てくれるか?」
「勿論だ」

 メタナイトはマントで己を包み、返事をした。

「スネーク、既にボス達があちこちにいるみたいだ」
「そうだな。隊長、俺達はどこへ行く?」
「うーん……」
「隊長なら、一ヶ所じゃ物足りないんじゃないのか?」

 スネークはフッと笑みを溢していた。マリオは彼に目を細め、そして目線をずらすと腕を組んだ。

「確かに他のスマブラが誰もいない場所へ行くべきだね」
「それを念じれるのか?」
「スネークも手伝って。これから行く場所の名前を念じれば、きっとあの子達のテレポートは成功するよ」
「非科学的な力はあまり認めたくないがな。ま、一々言うのも面倒だ。取り合えず力になろう」
 ──みんな、準備は良い?
 ──じゃあ、いくぞっ。

 ポーラとプーはテレポートを試みた。スマブラは光に包まれ、各地の場所へテレポートしていった。プーとポーラも同様、共にその場から姿を消した。
 だがテレポートをしていない人物がいた。
 オネットにはフォックスが残っていた。フォックスはテレポートせず、ここにも大宇宙人がいるらしいので念じなかった。勿論、理由はそれだけではない。

(ネス……どうか無事でいてくれ……!)

 酷い胸騒ぎがする。ネスに何か遭ったのかも知れないと。フォックスは走り出し、大宇宙人とネスを探すことになった。




 ラフィットの突き付けている指先は、PKファイアーを出したばかりで未だに煙を上げていた。
 彼の技をくらってしまったネスは地面に倒れている。彼の服は多少焦げ、煙が上がっている。

「ラ、ラフィッ……ト……?」

 ネスは震えながら体を起こし、驚いた表情を乗せて彼を見る。ラフィットは曇った顔をしていたが、やがて──赤い目が良く似合う、悪魔の様な微笑みを浮かべたのである。

「君って本当馬鹿だよね。クローンには良心は無いってこと、忘れちゃったの?」

 クスクス笑いながらネスを見下す。

「ラフィット……!」

 ネスは素早く起き上がり、目の前の自分のクローンを睨んだ。今まで仲良くやっていたのに、守ってあげるって決めたのに。だがいきなり裏切られたことに、ネスの顔色は真っ青になる。

「ラフィット、どうしてっ?」
「どうして? それはこっちの台詞だよ。親しくして、優しくして……正直かんに触るんだ、そんなこと言われると」

 ラフィットの言葉の一つ一つにはトゲが付いていて、容赦なくネスの心を突き刺す。

「さて、任務遂行といきますか」

 ラフィットは手を上に上げ、そこから緑色の光を出し、膨張させる。ネスは焦り、身を引かせる。逃げようと思っても、ダメージを受けた余韻と裏切られたことのショックで、動きが鈍くなってしまっていた。

「じゃあね、ネス。敵を信じていた自分を呪うんだな」

 その時、足元に赤い光線が放たれた。ラフィットはハッとしてPSI技を引っ込める。
 そこに現れたのは、ブラスターを構えたフォックスだった。

「狐のお兄ちゃん……っ」
「ネス、大丈夫か?」
「う、うん」

 フォックスはブラスターを奴に向けたまま彼に振り向き、心配そうに問う。ネスは落ち込みながらも首を縦に小さく振った。

「……どうやら命拾いしたみたいだね」

 ラフィットは手を下ろして超能力を解除した。

「どうして君のお友達がそんな有り様になったか、直接聞いてみることだね。じゃっ」
「まっ、待て!」

 ラフィットは足にPSIを込めると浮遊していく。フォックスはブラスターを撃つが、ラフィットの防御技サイマグネットであっさりと防がれた。
 そしてラフィットは森の向こうへ姿を消した。

「くそっ」

 フォックスは軽く舌打ちをしてブラスターをしまった。
 そして横を向くと、さっきからネスはうつ向いたまま顔を上げない。その表情には悲しい気持ちが表れているのは、相手がうつ向いてても分かった。

「ネス、さっきのクローンが言ってたことって、何だったんだ?」

 ラフィットの最後に言っていたことが気になるフォックス。ネスには分かっているのか。

「……」

 中々言い出せずにいた彼だが、顔をゆっくり上げ、フォックスを見上げると説明を始めた。

「そうか……」

 フォックスは溜め息をついた。彼の気持ちは、相変わらず成長出来ていないと分かる。でも、

「ネス、これで分かっただろ? 相手が見た目どんな姿であろうと、敵は敵なんだ。ましてやギガ軍は俺達の宿敵なんだ。改心される奴なんていないんだよ」
「そうだけど……ご免なさいっ」

 何かを言い返そうてしているネスだが、結局は言い返せず、謝罪の返事だけ。フォックスはネスを多少冷ややかな目で見ていたが、膝をつくと、小さな体を強く抱き締めた。

「ネス、無事で良かった……本当に良かったっ」
「お兄ちゃん……」

 仲間を失う悲しみはフォックスには辛かった。スターフォックスのリーダーとしてそれを露にするのは堪えて来たが、やはり気持ちは変わらないのだ。

「行こうか、ネス」

 体を離し、立ち上がる。

「ポーラ達のテレパシーを、ネスはキャッチできたか?」
「……ううん。多分、ラフィットが妨害していたんだと思う」

 ネスが首を横に振りながら言うと、フォックスは、そうかと呟いた。

「実はオネットには親玉の一人がいるみたいなんだ」
「親玉っ? 宇宙人の?」
「ああ。そいつを見付け、倒さなきゃならない。ネス、とりあえず今は奴を探そうっ」
「うんっ」

 フォックス達はオネットの町へUターンしていった。




「キャアア!」
「ば、化け物だあぁ!」

 カービィとプリンは、ハッピーハッピー村へテレポートしてきた。到着すると辺りが騒がしいのが直ぐに解った。

「大変でしゅ! きっとどこかに親玉がいるんでしゅ!」

 プリンは額に短い手を当て、キョロキョロと見回した。カービィは周りの騒がしさにキョロキョロしていた。

「貴女達も早く逃げた方が良いわ!」

 村人の女性が悲鳴に似た叫びで彼女達に警告してくる。

「村人しゃん、この村には化け物がひしょんでるんでしゅか?」
「そうなのよっ。もう、どうすれば良いのか……キャー! 来たわぁ!」

 ふと振り向いた女性は叫びながら逃げていった。
 プリン達は前を見ると、洞窟の中から大きな土の盛り上がりが見えた。その盛り上がりはどんどんこちらへ近付いてくる、しかもハイスピードで。まるで地中に巨大生物が潜んでいる様だ。
 そしてすぐ近くまできて、二人のピンク丸は素早くジャンプした。それとほぼ同時に土の盛り上がりの最先端が、巨大な土爆弾を発生させた。

「な、何でしゅ!?」
「危なかったぁ……!」
「ぐおおぉん!」

 土の中から現れたのは、巨大モグラである。巨大モグラは、赤く鋭い目付きで、地面に着地したプリン達を睨む。

「気持ち悪い目だなぁー」
「あいつがハッピーハッピー村を滅茶苦茶にしてるんでしゅね? ゆるしぇましぇん!」

 プリンはザッと前に出た。カービィも彼女に習い、ハンマーを取り出すとザッと前に出た。
 巨大モグラは彼女達を睨みながら鋭い爪を光らせた。高く振り上げると、月の明かりでキラリと光った。




 ファルコとリンクはサターンバレーへ到着した。

「? こいつら……」
「確か、ネスの肩にも乗っていた……どせいさんですね」

 高い崖に囲まれている小さな場所。生えている草は黄色い。
 そこはどせいさんが沢山住んでいて、どうやらどせいさんの生息地の様だ。

「ぽえーん」

 一匹のどせいさんが現れ、ファルコ達の前で跳ねる。

「あそこのどうくつです」
「あ?」
「何がだい?」

 二人は問おうとしたが、後ろにはいつの間にかどせいさんが沢山おり、彼等の背中をどんどん押していった。そして気付けば洞窟の前に二人は立っていた。

「このどうくつのおく、わたしたちをいじめるかいぶつ」

 彼等の近くにまだいるどせいさんがぴょんぴょん跳ねながら言った。

「ファルコさん、きっと、宇宙人の親玉が……」

 リンクが洞窟の奥を睨みながら言うと、ファルコも頷いた、しかも笑みながら。

「俺のこの武者震いが何よりの証拠だ。行くぜ!」

 ファルコはダッシュしていき、リンクも後に続いて走り、二人は洞窟の奥へと入っていった。




 ウィンターズはとにかく寒い場所だ。雪が良く積もり、ほぼ毎日白銀の世界である。だけどそこで育ってきたジェフには平気である。ポーラも何とか平気だった。

「そう言えば、私のテレパシー、もしかしたらネスには届いていないかも知れない」

 ジェフはそんな彼女に振り向いた。ポーラは悲しい目を浮かべていた。
 ポーラのテレパシーをネスがキャッチしなかったのは何かしら理由がある筈だ。こんな状況でその様な事態──時間が無くてテレポートを行ってしまったが、今や後悔している。

「ポーラ、ネスのことなら、きっと大丈夫だよ」

 ジェフは彼女の肩に優しく手を置いた。

「僕には分かる……いや、分かると言うよりかは、信じてるって言った方が正しいかな。僕は信じてる、ネスは大丈夫だって」
「ジェフ……」

 それはテレパシーでもない。超能力者でなくても使える、祈りと言う力である。不安がっていたポーラは、ジェフの言葉に安心した。

「私も祈るわ。それでネスの力になれるのなら」
「うんっ」

 その時、ポーラとジェフの前に大きなキノコが突如あらわれた。二人はビックリしてそちらに向くと、そこにいるのは、妙に干からびている巨大キノコだった。巨大キノコは動き出し、こちらを睨んでくる。

「お、おおきい……」

 ポーラは一歩下がり、声を震わす。

「怯んじゃ駄目だ、怯んじゃ!」

 ジェフも少し驚いたが、キリッとし、ピストルを取り出した。ポーラも彼を見て、一歩前に戻ると指を突き付け、小さな光を出した。




「な、なんだ、ここ?」

 そこへ着いた時のマリオの第一声だった。
 現在の時刻は夜だと言うことは分かる。だが、街の建物も床も、何もかも黒に染まっていた。ただ、明かりや線だけは色とりどりな蛍光を放っていた。

「裏ワールドみたいだな、何か……」
「ここは夜のラスベガスか?」

 二人は何気に自分達の世界を思い出していた。
 そして歩いている住人が話し掛けてくる。

「ようこそ。ここはムーンサイドだよ」
「え、ムーンサイド? フォーサイドじゃないのか?」
「何を言ってるんですか。ムーンサイドですよ。ようこそ、こそようっ」
「え」
「この街では『はい』は『いいえ』、『いいえ』は『はい』。常識マナーだよ」

 そう言うと住人は去っていった。

「こんないかれた街に大宇宙人がいる訳か?」

 あまりついていけないスネークは肩をすくめていた。

「分からないけど、とりあえず歩いてってみよう」

 マリオは歩き出し、スネークも後に続いた。




「ああ、プー王子! ご無事で何よりです!」
「王子! お怪我はありませんかっ?」
「今日も素敵ですわ、プー王子!」

 メタナイトとプーは、雲の上に浮かぶ空島──ランマ王国に来た。
 中国風の服を着た女性達はプーを見るとキャーキャー騒いでいた。メタナイトは少し驚いていたが、プーは平気だった。きっとこう言うのは慣れているのだろう。

「メタナイト、殺気は空から感じる」

 女性達の言葉を流し、メタナイトに言った。メタナイトも周りは気にしない様に決めた。

「空から……か」
「メタナイトは確か空を飛べるんだよね? 俺もPSIで一定時間なら空中戦は出来る」
「分かった。もしその力が尽きたのなら、私の翼に乗れ」
「わかった」

 メタナイトは翼を生やし、地面を蹴り上げた。

「プー王子も行かれるのですか?」
「どうかお気を付けて……」

 女性達は騒ぐだけではなく、彼の心配もしてくれていた。プーにもそれは分かっていることで、彼は微笑むと頷いた。
 そして足にPSIを発動させ、フワリと浮かぶと、メタナイトと共に空へ向かった。




 ピカチュウとピチューはグミ族の村へきた。
 ここは広々とした洞窟で、そこには緑色をしたニ頭身の生き物が住んでいる。

「ピカァ……」
「ピチュウ……」

 ピカチュウとピチューはグミ族の村を眺めていると、グミ族の一人がこちらへ歩いて来た。

「ピッカ!」
「ピチュ!」

 二匹は短い片手をピシッと上げて挨拶をした。

「……」

 だが相手は無言で彼等を見た後、立ち去ってしまった。
 良く見ればこの村の者は皆は無言。二匹はポカンとしていたが、どうしてなんだと耳を垂らし、しょんぼりしてしまった。

「皆、大宇宙人が来たショックで言葉を無くしてしまったのだ」

 そこへ唯一、ジェントルマン風の立派な黒髭と黒い角を生やしたグミ族の人が現れた。彼が恐らく族長だろう。

「もしや君達は神の使いかね?」
「ピ?」
「ならば是非とも地下へ逃げた大宇宙人を退治して欲しい。引き受けてくれるかね?」

 二匹は顔を見合わせた後、首を縦に振った。

「おおそうか。やはり君達は神の使いと見た。この穴から逃げていったのだ。頼んだぞ」

 族長は近くにある大きな穴を差し示した。
 二匹は黒い穴の中を覗いた後、コクンと頷き合い、その中へ飛込んでいった。




 各々の場所で、各々の戦い、各々の短いドラマが始まる。










 ──to be continued──