ダイヤモンドシティを救え!〜後編〜








「くらえ、僕の偽者!」

 マリオは拳に力を溜めながらデークに向かった。デークは口端を上げ、その場で拳に力を溜める。二人は同時にパンチを繰り出し、相撃ちして互い吹き飛んだ。二人は何とか床に足を着けた。

「くそっ、やっぱり力は互角か……」
「どうした、リーダー? 君の実力はそれだけじゃない筈だろ?」

 デークは腕を組み、見下す目線をした。彼を見たマリオは舌打ちした。

「僕は……最後まで諦めないっ!」
「ピカッチュ!」

 ピカチュウは走りながら頬から電流を流し、電撃を放った。
 クルヴィは余裕な笑みを浮かべ、電光石化で素早く回避した。そしてそのままピカチュウへ向かう。
 ピカチュウは目を丸くしてしまい、その隙にクルヴィの尻尾に頭部を叩き付かれた。

「ビッ!」

 蹲り、そしてまた尻尾で、今度は横へ吹っ飛ばされた。

「ピカァッ!」

 壁に激突し、床へ倒れ込んでしまった。
 衝撃を受けた壁から巻物がいくつかガラガラと落下する。

「ピカチュウ!」

 マリオはダメージを受けたピカチュウに振り向いた。

「よそ見するなっ!」
「!」

 マリオが顔を向けた瞬間、デークは組んだ拳でマリオの頭を上から殴り付ける。

「うぐっ!」

 休まず彼の胸ぐらを掴み、一回転して思い切り投げ飛ばした。

「わあっ!」

 マリオは作法棒が飾られている台座に激突してしまった。台座は壊れ、作法棒が彼の頭に当たって床に落ちた。

「ああっ! 作法棒に何しやがる!」

 ワリオは作法棒を見てあんぐりしてしまっている。マリオは顔だけ上げ、そんなワリオを冷たい目で見た。

「……少しは僕らの事も心配してくれよ……」

 ワリオはそれのせいでよそ見したが、後ろから攻めてきたサーシュンのパンチは確りと掴んでいた。

「フフ、隙は無いみたいだな」

 サーシュンはニヤリとして言った。ワリオは静かな怒りの顔を作って振り向く。

「このオレ様が……負ける訳ねえだろうが!!」

 ワリオはサーシュンの頬へ拳をめり込ませた。

「うごぉ!?」

 サーシュンは勢い余って床を何度もバウンドしたが、彼が浮いたとこでワリオは体当たりして更に遠くへブッ飛ばした。

「ワリオ、中々やるじゃん」

 マリオは微笑し、ずれた帽子を片手で直すと立ち上がった。ピカチュウもよろめきながら立ち上がる。

「スマッシュ戦士は、誰一人も負けてはならない。僕達の運命は、皆の運命なんだ!」
「ピッカチュー!」

 ピカチュウは低い声で返事をした。

「やられておきながらその台詞……格好付かないぜ?」
「ピカピ」

 デークはやれやれと首を振った。クルヴィはおかしそうに笑った。

「今すぐ、そんな事さえ言えない様にしてやる!」

 デークは高速でマリオに向かった。マリオは、キッと気合いを入れた。

「ハァ!」

 マリオはマントを振った。

「!?」

 デークはマントに触れると、気付けば後ろ向きで攻撃していた。マリオは、マントを振った事で相手を後ろへ半回転させたのである。

「アタタタタタタタ!!」

 マリオはこちらを向いたデークに向かって連続パンチをお見舞いした。パンチを終えると続いてマリオトルネードで相手をビシバシ攻撃する。

「くたばれぃ!」
「うわぁ!」

 最後は強烈なキックで、壁へ向かって蹴り飛ばした。

「ピイィカアアァ……!」

 ピカチュウは走って向かう。
 クルヴィは身体中に電気を溜め、狙いを定めると上から雷を落とした。

「ピカッ!」
「ピ!?」

 ピカチュウは、クルヴィの時の様に電光石化で一気に回避した。彼の直ぐ後ろに巨大な電流が落ちる。そして足払いをくらわせ、直ぐに体を掴む。
 掴みながら後ろへ回転し、スピードを利用して投げ飛ばした。

「ピカピイィ……!」

 まだまだと言い、ピカチュウは次の攻撃に掛かる。

「フン、中々の体力自慢を見せてくれるぜ」

 サーシュンは拳を構えながら言った。
 ワリオは握った拳を鳴らす。

「なめるなよ、オレ様だって戦士なんだからな。菓子を食う毎日じゃねえんだぜ!」

 ビシッと指を突き付けた。

「口だけは達者だな。オレ様も負けねえぜ。貴様を倒したら、次はマリオだ」

 サーシュンは、戦っているマリオをチラッと見た。

「あいつの力、かなりやるみたいだからな。すげえ興味あるんだ」

 ワリオもマリオを見た後、直ぐに走り出した。

「貴様と戦うのはオレ様だけで十分だろう!」
「フン、強がりを……後悔させてやるぜ!」

 二人は手を掴み合い、力比べを始める。体は僅かに震え、矢張り互角と言ったとこだ。

「……フフ、調子に乗るなよ」
「あ? わぁ!」

 サーシュンは、相手の手を掴んだまま後ろへ引いた。勢いで、ワリオは彼の後ろの床に叩き付けられる。

「くたばりやがれ!」

 サーシュンはでかい図体でも高々とジャンプし、ワリオの腹へドロップした。

「ぐぅふ!!」

 ワリオは大量の息を吐いた。

「ワリオ!」

 デークを吹き飛ばしたばかりのマリオは、ワリオを見てギョッとした。
 デークは床に手を付けて受け身を取り、直ぐにマリオへパンチをする。

「わあっと!」

 マリオは腕を組んで防御したが、衝撃で後ろへ飛び、うっかり尻餅をついた。

「いってててぇ……」

 涙を滲ませながら尻を擦る。

「どんなに戦っても中々決着が付かないっ……何とかならないかなぁ……」

 その時、ふと、横に何かがコツンと当たった。見てみると、それは作法棒だ。

(そう言えば確か、古代から伝わるアイテムって言ってたな……)

 マリオは少し興味を持ち、作法棒を拾った。そして目を綴じる。

(巻物に描いてあった絵を思い出すんだ)
「何寝てるんだ?」

 クスリと笑うデークは、ゆっくりと歩み寄る。
 マリオは目を暫し瞑っていたが、何かに閃いた様にパッと開眼した。デークは少し驚いて立ち止まった。

「行くぜ、デーク!」

 マリオはサッと立ち上がった。

「まだ戦える気力はあるみたいだな。もっと楽しませてよ」

 デークは手からファイアボールを生み出し、それを豪速球で放った。ファイアボールはマリオに当たると、煙と炎が吹き上がった。あった手応えにデークは微笑する。
 煙が消えていく。するとそこには、無傷のマリオがいた。

「なっ! 何ぃ!?」

 デークは見開いた。

「い、一体どうや……」

 どうやってを言い終える前に、彼の握っている物に目を凝らした。マリオが握っているのは作法棒で、マリオはそれを横にして前に突き出していた。
 ファイアボールから防御出来たと分かると、マリオは安堵の息を吐いた。
 そして改めてデークを睨み、作法棒で構え直す。

「お作法の一種『岡っ引き』。防御技の一つだ!」
「さっきから感じた不思議な力とは、これの事だったのか!」

 デークはそう言うとこちらへ向かう。マリオは、今度は作法棒を横のまま両手で握った。

「回転技『まわりゃんせ』!」

 と叫ぶと作法棒が光り、そこから竜巻が発生する。

「ぐあぁ!」

 デークは見事に吹き飛ばされた。

(使える!)

 マリオ達に勝利の希望が見えて来た。




 その頃、作法殿の上空にディバが現れた。ディバは腕を組み、浮遊しながら館を見下ろしている。

「何だか変な気分になっていたが、ここからその力が発生していた訳か……」

 不機嫌なディバは片手を掲げた。手から赤い光弾が輝く。手を横へ降り下ろすと、赤い光弾は作法殿内へ突入し、そしてディバは消えた。

「どうだっ!」
「くっ……」

 デークはマリオに押され気味である。マリオは、今度は左の腹あたりに作法棒をあて、構えながら走る。

「さあ、これでとどめだ! げだ……」
「ピッカァー!」

 突然ピカチュウが叫び、全員の動きが止まった。
 奥を見ると、何やら赤い光が向かって来た。その光は高熱を持ち、マリオ達は急いでそれを避けた。台座に命中すると、台座は凄い勢いで赤く燃え上がった。その炎はかなりのスピードで辺りを焼き尽す。

「な、何なんだ一体!?」

 突如起こった出来事にスマブラは混乱するばかりだ。

「……これはディバ隊長の技だな」

 デークは呟いた。

「ディバ隊長は、この館諸ともお前達を黒焦げにしようとしているのさ!」
「畜生! もう炎に囲まれちまってるじゃないか……!」

 ザコ敵軍団も全員逃げ出してしまった様だ。だが、精鋭部隊の彼等は逃げなかった。

「さっさと火葬にしてやる!」

 デークは木製のハンマーを構えるとマリオの目の前まで瞬間移動して来た。

「うっく!」

 マリオは作法棒をしまい、代わりにハンマーを取り出して応戦した。

(今は奴らを倒す事を優先にしよう)
「ピッカァ!」

 クルヴィは電光石化でピカチュウに襲い掛かる。ピカチュウは怯んだが、奴の動きを捉え、肉弾戦を始めた。

「オレ様が見付けた作法殿を燃やすんじゃねえ!」

 ワリオは連続パンチをしながら言った。サーシュンは腕を巧みに使って防御する。

「さっさと……」
「おわ!?」

 隙を狙ってワリオのジャケットを掴むと後ろを向いた。

「焼き豚になりな!」

 ワリオは投げ飛ばされ、炎の海に突っ込んでしまった。

「ワアアアァ!!」
「ワリオオォーッ!!」
「ピカピイィーッ!!」

 マリオとピカチュウは顔色を青ざめ、同時に叫んだ。




「しまった! 遅かったかっ!?」

 作法殿前で止まったタクシーから降りた三人だが、既に作法殿は炎に包まれていた。

「おーい、リンクさん達ぃ!」

 別の方向からファンシーズ、スネーク、そしてダイヤモンドシティの仲間達が集まって来た。作法殿が燃えている為、その煙が全員の目に入ったのだろう。

「皆さん! 大丈夫でしたか?」
「今のところ全員生きてる」

 スネークは言った。

「……マリオさん達は、あそこにいる筈ですよね」

 リンクは、燃えている作法殿を見つめて言った。

「あ! あれ見ろよ!」

 ナインボルトは作法殿の入り口前を指差した。そこには黄色いバイクが置いてあった。

「OH! あれはワリオのバイクじゃないかYO!」

 ジミーは焦りながら言った。

「ワリオさんのですって!?」

 リンクを始め、スマブラは酷く驚いた。

「それじゃあ、ワリオさんもあの中に……!」
「あんた達、知り合いだったのか」

 スネークが何気にそう言うと、スマブラと共に戦ったダイヤモンドシティの仲間達は全員頷いた。

「私達のかけがえの無い親友です!」

 ペニーは両拳を握って言った。

「くそ! ここまで熱風が来ては、中に入るのは困難です……!」

 クリケットは袖で顔を覆う。
 エイティーンボルトの頭に乗っているしゃぎぃは、もう一度ワリオのバイクを見ようとした。ところがしゃぎぃは目を丸くした。ワリオのバイクが、消えていたのである。

「?」

 他の者は気付いていないが、しゃぎぃだけはその場所を見ながら、ハテナを浮かべるしか出来なかった。




「てんめえぇぇー!! よくもワリオをおぉ!!」

 マリオは遂にマジ切れし、ハイスピードでサーシュンへ攻撃に掛かった。クローン達は彼を見ると、悪い意味で鳥肌が立った。
 サーシュンは慌てて避けると、マリオのハンマーが壁にめり込んだ。

「このやろおぉ!」

 マリオは即座にハンマーを持ち上げ、トルネードの如く体を回転させた。その迫力技にデークは口笛を鳴らした。

「わあ、手が付けられねえな」

 ピカチュウとクルヴィは、その光景に茫然としていた。
 先に我に帰ったのはピカチュウで、未だポカンとしているクルヴィの頭部に尻尾の一撃を食らわせた。

「ビッ……!」

 クルヴィは脳をやられたか、即気絶してしまった。だが、今のピカチュウは、そんな事はどうでも良かった。
 理性を失ってしまっているマリオを何とか止めなければならない。どうすれば良いか悩んだ。
 その時。

「だあっちちちちいぃー!」

 炎の海から声が聞こえ、ピカチュウは振り向いた。
 何と全身を燃やしているワリオが飛び出してきたのだ。ワリオは走りながらマリオ達へ向かう。

「な、何だ!?」

 クローンズは、燃えているワリオに気付いてギョッとした。

「勝手に殺すな! 体当たりをくらえ!」

 ワリオは、そのままサーシュンとデークに突進した。

「ぐわあぁ!」
「うわああぁー!」

 サーシュンは壁に激突したが、デークは壁に足を何とか付けた。

「ったくしぶとい奴らだなあ」

 と、溜め息をついた後、辺りを見渡した。

「……そろそろヤバいな。また戦おうぜ、リーダーさんっ」

 そう言い残してその場から消えた。

「ピカピ……」

 クルヴィもよろめいて立ち上がり、シュッと消えた。

「うおおぉーっ!」

 マリオはまだ暴走状態であり、瀕死のサーシュンにとどめをさそうとした。

「ピッカアァー!」
「!」

 ピカチュウはマリオの背中に抱きついた。すると、マリオはビデオ停止の様にピタッと止まった。
 振り返ると、ギュッと抱き締めて目を瞑っているピカチュウがいた。体は震えていて、そこから必死の哀願を感じた。

「……ピカチュウ……?」

 マリオは、漸く自分を取り戻せた。
 ピカチュウを腕に抱く。ピカチュウは顔を上げると、涙を溢してマリオの胸へ顔を擦り寄せた。

「これが……貴様らの力……か……」

 サーシュンは倒れたまま紡いだ。

「だが、ギガ様にまでは……及ばねえ……な……」

 口端を上げた後力尽き、赤色の泡となって消滅した。

「全く、貴様はいつから化け物に覚醒した」

 ワリオは体で燃えている火を叩きながら消していった。

「ワリオ! 無事だったんだね!」
「忘れたのか? オレ様は火に触れるとパワーアップするんだよ。ま、今回はちょいとヤバかったがな」

 そんな話をしている内に、天井に僅かなヒビが入って来た。その音に気付いた二人と一匹は、周りの状況に今更気付いた。

「しまった! デークを逃したっ!」
「呑気な事言ってんな! 危ねえ!」

 ワリオはマリオに体をぶつけた。彼等がいたとこへ天井の瓦礫が崩れてきた。

「畜生! 閉じ込められたっ……」

 最早絶体絶命である。そこでマリオは閃いた。

「ワリオ、ピカチュウ、下がってて!」
「あ? 何をする気だ」
「ピィカ……?」

 マリオは前に出、懐から作法棒を取り出した。そして左の腰に当て、刀の様な構えを取った。精神を集中させる為に目を閉じる。

「お作法の技……『下段の構え』!」

 マリオは叫ぶと作法棒を引き抜き、下から切り上げた。暫くすると、瓦礫に線が入り、まるでモーセが海を割った様に一気に真っ二つになった。

「これで何とか突破口は開いたぞ!」
「アホ! この回廊は相当な距離がある。二つに割ったって意味がねえよ!」

 ワリオはマリオの目の前で怒鳴った。怒鳴られたマリオは顔を引かせた。

「諦めちゃ駄目だよ、ワリオ!」
「んなこと言われてもよお……」
「っ……ゲホ! ゴホ、ゴホ……ッ!」
「お、おい、マリオ!」

 煙も充満しはじめ、マリオは膝をつきながら咳き込んだ。
 ピカチュウは、何か手は無いか、急いで見回した。すると、あるものを発見した。

「ピカッチュ!」
「ん? どうした、鼠」

 多少の煙を吸い込んでしまい、息苦しそうにしているマリオの代わりにワリオが訊いた。ピカチュウは指を差した。指先にあるのは、何とワリオのバイクが後ろ向きで置かれていた。

「! オレ様のバイクじゃねえか!」

 ワリオは慌ててバイクに触れた。そして跨り、エンジンを掛ける。ドルルン! とバイクは声を上げ、スタンバイ万端となる。

「よっしゃ、動かせるぜ! 流石オレ様の相棒!」

 ワリオはエンジンを掛けたままバイクを下りる。
 倒れた状態のマリオを起こし、肩に彼の腕を回して運んだ。ピカチュウはマリオの肩に飛び乗り、心配の眼差しで彼を見守った。
 彼を後ろへ乗せ、ワリオは前に乗ってハンドルを握り締めては回す。
 未だ目を閉じているマリオに呆れ、ワリオは軽く息を吐くと手を上げた。

「マリオ、いい加減起きやがれ!」

 と、叩き起こそうとした時、マリオはワリオの叩く手を容易にキャッチした。ゆっくりと顔を上げては目を開け、ニヤリと笑んだ。

「起きてるよ」
「……寝た振りしてたのか?」
「いや、最初は不味かったけどな」

 マリオは微笑すると、ワリオもニッと笑った。
 そうこうしている間にも炎は牙を剥き出している。

「いっくぜー!」

 ワリオは運転に気合いを込めた。

「ああ、お前のハンドル捌き、是非とも見せてくれ!」
「ピカッ!」

 マリオはワリオに捕まりながら、ピカチュウはマリオの肩の上で大きく返事をした。
 ワリオはバイクを走らせた。出口からは逆方向だが、直ぐにアクセルターンを決めた。そして再び走り出し、割れた瓦礫の道を通り抜ける。
 その直後、後ろから崩れて来る炎の瓦礫が、かなりのスピードでワリオ達を追い掛ける。ワリオは一瞬だけ後ろを向くと、ハンドルとアクセルを駆使し、更にスピードを上げた。瓦礫は彼のスピードに乗っているのか、どんどんスピードをアップしていった。

「ワリオ! もっと速く走れよ!」
「ピカァッ……!」
「だあ! 静かにしろ! 気が散る!」

 ワリオは、後ろの事よりも前方にかなり集中して走り抜けた。




「!」

 マーシスは何かを感じ、顔を上げた。

「マーシス?」
「……ギガ軍の気配が消えたっ」
「でも、今は素直に喜べないわ……っ」

 後にたどり着いたモナは涙を溢していた。

「館が……っ」

 リンクは顔色を悪くした。燃え盛る作法殿は、ミシミシと音を立てて少しずつ崩れてゆく。

「おい、館長さんを保護した」

 スネークは、館長を拘束している縄をほどきながら言った。館長は解放されると作法殿へ一歩歩み、膝を付いた。

「ああ、何と言う事でしょう。文明が燃えていく……」
「かんちょうさんっ! ワリオさんたちはしんぱいじゃないの!?」

 カットとアナは同じ声で館長を叱った。
 その時、クリケットはハッとし、作法殿の入り口を向いた。

「何か聞こえませんか?」
「……言われてみると、確かに何か聞こえるわな……」

 スピッツは耳を動かした。
 全員、崩れゆく館を見つめていると、段々エンジン音が響いてくるのが分かる。

「どおりゃああああぁぁ!!」

 ワリオ達の声と共に、完全に崩れ落ちる直前の館から、バイクが勢い良く飛び出した。それはかなりのハイジャンプで、地面へ激しい衝撃を受けながら着地すると暫くスリップした。

「のわあ!」

 修理されていない為にバイクのエンジンは矢張りいかれ、ワリオ達は見事に転倒してしまった。ピカチュウは、絶妙なタイミングでマリオの腹の上に乗っかり、何とか被害は免れた。

「おーいってえぇ……っ!」

 マリオは後頭部を手で押さえ付けながら涙を滲ませた。

「マリオさあん!」
「隊長!」
「わーい! ワリオしゃんにピカチュウもいるでしゅー!」
「ワリオ! 良かったあ!」

 スマブラ達はマリオ達のもとへ集まった。
 二人はまだ立たないまま、マリオはワリオに笑顔を見せた。

「ありがとう、ワリオ。礼を言うよ」
「……いやっ、バイクに作法棒が無かったら、確実にオレ様達は焼き豚になってたぜ」

 ワリオは前を見ながら言った。マリオやピカチュウも、確かにと目を伏せた。

(本当、どうしてバイクがあんなとこに……?)

 作法棒を眺めた後、ふと作法殿を見た。作法殿は既に真っ黒の炭となり、火も自然消滅していった。
 その館に、いくつかの丸い影があった。遠くだから見えにくいが、色が皆カラフルなのは分かった。それらの影を見たマリオは、どこかで見覚えがある様に感じた。

(……!)

 ハッと思い出した時は、その影達は消えていた。マリオは微笑みを浮かべる。周りの者は、彼は何も無いとこに笑っているので、どうしたんだと思っていたが、本人は気にしなかった。

(サンキュー、スプランクス様っ)

 こっそりとマリオは、消えて行った守り神へウインクをした。

「……お?」

 ワリオは自分のバイクを見ると、バイクのマフラー辺りに、キラリと光る何かを見付けた。虹色に輝く小さな欠片である。

「何だ、これは?」

 と、ワリオがその欠片を取り出した時だ。

「ワア!」
「ワリオッ?」

 彼の短い声にマリオ達は振り向いた。ワリオの握っている欠片から光が溢れだし、ワリオの中へ吸い込まれていった。

「神の宝玉の欠片か」

 メタナイトは冷静に呟いた。

「なななな何が起こったのだ! いい一体今のはっ!?」

 ワリオは自分の身に何が起こったのか分からず、動揺しまくっていた。

「てかワリオしゃんも神に選ばれてたんでしゅか……」

 プリンは目を細めた。

「ピィチュー……」
「意外ですね……」
「正かあの傲慢なワリオがなあ……」

 ワリオ以外のスマブラは、ジトッとした目で彼を見ていた。

「な、何なのだあ!」

 訳も分からず冷たい目線を浴びるワリオは、欠片を持つ拳をブンブン振り回していた。




 夕方で、太陽も後少しで姿を消す頃。
 丘の上で、スマブラやダイヤモンドシティの仲間達が交流をしていた。ワリオも、マーシスらから話を聞いて、漸く欠片の秘密を理解出来た。

「あーあー、バイクがこんなになっちゃって……後でおじいちゃんとこに持っていきますね」
「おう、頼んだぜ! オレ様の素晴らしいバイクを直せるのは、Dr.クライゴアしかいないからな!」

 ペニーがバイクを調べながらそう言うと、ワリオは腕を組みながら言った。

「へぇ。ジミーしゃんはワリオしゃんの幼馴染なんでしゅか」
「そうだYO。ワリオは傲慢なとこは昔から変わっていないんだけど、意外と頼れるとこもあるのさ」
「意外とは何だ、ジミー! オレ様はワリオカンパニーの社長だぞ! 頼りにならない訳がないのだ!」

 大分離れた距離で話してるのにも関わらず、彼らの話は聞こえていたらしく、その場からフンガーと怒るワリオ。

「……そこが傲慢なんだYO」

 ワリオを見ながらやれやれと肩を竦めるジミーに、プリン達は苦笑を零した。

「でもそこが、おじさまの素敵なところでもあるけどね」

 彼らと一緒に話をしているモナ。彼女はワリオのことがタイプらしく、ワリオを見つめながらそう言った。

「ほえー。ゲームで見た事ある人達ばかりだなぁ」

 ナインボルトは、スマブラのメンバー達を、目に手をかざして見ていた。

「ゲームで、って、どう言うこと?」

 子リンはそんな彼を見て言った。

「ん? ぼくちん色々なゲームをやってるから、それに出て来るキャラクターに皆そっくりなんだよ。例えば、こう言うのとかにもな!」

 そう言って取り出したのは、灰色の携帯ゲーム機だ。

「これはゲームボーイって言うんだ。色々なソフトを差し込んで遊ぶんだ。凄い面白いんだぜ!」
「へぇー……俺にもちょっとやらせてくれない?」
「いいよ!」

 ナインボルトは嬉しそうな笑顔で子リンに手渡した。そして子リンは楽しみを胸に、ゲームボーイの画面を覗いてみた。

「……あ、あれ?」
「どうした? 早速つんだか?」
「画面が見えないんだ。音も何も聴こえないし……」

 えっ? とナインボルトは少し目を丸くし、子リンが見ている画面を見てみた。

「あれー? おっかしーなー。電源は入れてある筈だぞ?」
「故障しとるんじゃなか?」

 エイティーンボルトも、考えながら画面を覗き込んだ。

「ぼくちんが最近遊んだ時は、全然調子悪く無かったんだけどなー……」
「も、もしかして俺、壊しちゃった!? だとしたらゴメン……」
「いやいや、良いよ。もう大分古いしなー! それに、また修理に出せば良いし!」

 焦る子リンだが、ナインボルトは苦笑しながらゲームボーイをポケットにしまった。

「……」

 その後の子リンは、ゲームボーイを覗いた時を思い出していた。
 実は最初から画面が消えていた訳じゃなかった。どう言う訳か、プレイしようとしたその時、誰かが直接話し掛けてきた様な……それを聴こうとした瞬間に、ゲーム画面がおかしくなったのである。

(一体、何だったんだろう。まるで、誰かが助けを求めていた様な……)

 暫く黙り込んでいたが、もうあの声を聴けないかも知れない。まるで誰かが、妨害をしてきた様な気がしたのだ。
 このことは後でマリオに話して置こうと、子リンは心の中で頷いた。
 そんな風に交流する中、耳にした情報に寄れば、ダイヤモンドシティで何とか攻撃を免れたホテルがあるらしい。スマブラは、今日はそこに泊まる事となった。

「そっか……ギガ軍が遂に本格的に動き出したか……」

 リンクから話を聞いたマリオは腕を組んだ。そう、リンクが話していたのは、ロイ達から聞いた話である。

「ですからこの先、更に気を引き締めないといけませんね」
「うん、そうだね。通りで、今回はいつに増して激戦だって思ってたぁ」

 マリオは顔だけを動かし、他の人達と楽しく会話をしているスマブラを見る。

「下手したら、一人でも仲間を失っていたのかも分からなかった。そんな事、絶対にさせないっ」

 キリッと真剣な表情になり、軽く首を左右に振った。リンクは、そうですねと頷いた。

「隊長、そろそろ暗くなって来た」

 スネークがこちらへ来た。後ろには、プリンがワクワクからか笑顔で跳ねている。

「早くホテルに行くでしゅ。どんなとこかワクワクするでしゅっ」
「ヘイ! スマブラは特別にタダで泊まらせてくれるってさ!」

 携帯電話を握っているジミーはスマブラに向けて親指を立てた。

「本当か? やったぜ!」

 マリオはガッツポーズをした後、すぐにリーダーっぽい顔になる。

「ついでに言うけど、明日は出発だからな」
「えー? まだここにいたいよぉ」

 カービィはマリオの頭の上に座りながらブーイングした。

「駄目だよ。先を急がなきゃならないからね」
「ちぇー」

 カービィはすねてしまい、マリオはクスッと笑った。
 大分暗くなって来た為、全員丘を降りてゆく。

「マリオさんっ」

 クリケットはマリオの隣まで駆けて行った。

「何?」
「……良かったら、その作法棒、俺に貸してくれませんか?」

 クリケットは、マリオの持っている作法棒を見る。マリオもそれを見た後、クリケットに差し出した。

「え……本当に良いんですか?」

 正か本当にくれるとは思わなかったクリケットは目を丸くした。

「良いよ、自由に使っても。この世界の文明の宝なんだろう? だったらそう易々と持っていけないよ」

 自嘲した笑みを浮かべるマリオに、クリケットはマンティスを見ると、マンティスは頷いた。そしてクリケットは笑顔になり、マリオに頭を下げた。

「ありがとうございます!」

 その後、アイスクライマーはクリケットを呼び止めた。

「クリケット!」
「ん? 何?」

 クリケットは立ち止まると振り向いた。ポポとナナは顔を見合わせた後、彼を見てはペコッと頭を下げた。

「あの時はゴメンね」
「……えっ? 何が?」

 クリケットはすっかり忘れてしまった様だが、それでもアイスクライマーは微笑んだ。

「気にしないでっ」

 そう言い残し、走って行った。クリケットは首を傾げていたが、まあ良いかと、再び歩き出した。










 ──to be continued──