ダイヤモンドシティを救え!〜中編〜








「よーし、また忍者ごっこやろ!」

 カービィは手を合わせて目を閉じ、気合いの声を放った。煙がボワンと出ると忍者に変身した。

「にんぽう……」

 カットは走りながら、作った人差し指を、人差し指を作ったもう片手で握り、目を閉じた。

「ぶんしんのじゅつ!」

 すると、カットが五人になり、鬼に飛んで向かい、彼の周りを飛び回ってかくらんさせる。鬼は複数のカットに向かって金棒を振り回すが、当たったカットはすり抜けては消滅した。

「こっちだよ!」

 真上から本物のカットが刀を振り下ろし、鬼は金棒でそれを塞いだ。

「じゃあこっちは……」

 カービィは畳から一気にジャンプすると口を開いた。

「忍法、吸い込みの術ー!」

 カービィの開いた口の吸引力はブラックホール並で、凄い風が巻き起こる。カットは慌てて離れ、カービィは鬼の金棒を吸い込み飲み込んだ。すると、金棒がカービィの体から二本飛び出し、その一つをカービィは掴んだ。

「僕も金棒、頂きい!」

 そしてもう一本金棒を持つと鬼の前に来て、

「はい、返すねっ」

 と、ニッコリ笑顔で金棒を差し出した。鬼は頭を下げてそれを受け取り、見ていた後の人達全員ずっこけた。

「かえさないでカーくんがつかったらいいじゃないのー!」

 アナが焦って言うと、カービィは少し考えてから、

「……あ、確かに……」

 と、頭をポリポリ掻いた。
 カット、アナ、殿はカービィの返事を聞くと大きな溜め息をついた。

「カービィは相変わらずマイペースが過ぎるねー」

 鬼の肩に座っているリズは、笑いながら腕を組んだ。

「僕がこんなピンク丸と同じ血を持ってるだなんて信じられないよ」
「そう言うリズだってピンク丸じゃんっ」

 カービィは、金棒の先をリズに向けた。

「それに、僕は君と戦おうと思ってたの、リズ!」
「……ふーん?」

 リズは驚くどころか、嬉しそうだった。そして背中に手を回し、ソードを取り出した。

「僕も君と戦おうと思ってたんだ。いざ勝負!」
「古い使い回し台詞だねー」
「煩いよ!」

 カービィが呑気に言い放つと、リズはヤケになってカービィに斬り掛かった。カービィは金棒で押さえた後、二つの金属音がぶつかり合う。

「……あたちたちもふるいってこと!?」

 アナはガーンとショックを受けてしまうが、

「そんなことより、はやくあいつをちずめるわよ!」

 カットはアナの心を呼び戻した。
 カット&アナは刀を構えるとジャンプし、互いの足を組むと刀を前に体を前後へ回転させる。すると、刀の丸い大型カッターブーメランが出来上がった。

「にんぽう、ひとがたしゅりけん!!」

 人型手裏剣はかなりのスピードで向かい、鬼の体に命中した。

「ガアァ!」
「やっ!」

 二人は即座に解放すると、カット、アナの順番で刀で連続攻撃をした。
 だが鬼が金棒を振って来て、アナの刀と当たる。

「きゃっ!」

 力に負け、アナは畳に叩き付けられた。

「アナ! きゃあ!」

 気を取られたカットは鬼のパンチに吹き飛ばされてしまった。

「えい! たあ!」

 カービィとリズは互い一歩も譲らず。相手に攻撃すればかわされ、相手が攻撃をしてくればかわすの繰り返しである。

「フフフ、互角とはね。いつまで続くかな?」

 リズはニヤニヤして言った。

「僕が君をブッ飛ばすまで! たあぁ!」

 カービィは金棒を横へ振るが、リズはしゃがみ、自らの体をペチャンコにしてそれを避けた。

「あらららら!」

 勢い余ったカービィは体をコマの様に回転してしまう。

「フフン、どう?」

 リズがしゃがみから立ち上がろうとした時、

「どぐふ!?」

 コマカービィの金棒に殴られ、壁にめり込む程に激突した。

「う、ぐっ……中々やるね……」
「……え、何が?」

 コマを終えたカービィは、いつの間にかダメージを受けているリズをポカンと見ていた。リズは構い無しに続けた。

「なら、こちらもそろそろ本気を出そう」

 リズは赤い鉢巻きを引っ張り出すと頭に巻いた。

「予め覚えておいたコピー技・ファイターリズ。覚悟しな!」

 リズは叫んだ直後、突然姿を消した。

「え! どこ!?」

 カービィは焦って顔をキョロキョロさせる。その時、カービィの頭がみね打ちをくらった。

「イッタアアアァァァーイ!!」

 刃の側では無かったものの、みね打ちはかなり痛い打撃技であり、カービィは堪らず跳び跳ねた。

「やったなあぁ!」

 涙目で睨み、鉢巻きを頭に巻いた。金棒を拾うと、ジャキィンと言う効果音が似合いそうな構え方をする。
 そしてカービィは姿を消し、リズも姿を消す。消える程のスピードと言う訳であり、見えない場所で衝撃派があちこち響く。

「……麿はここにいても危険な気がするのお……」

 殿は、部屋の隅っこで震えてしまっていた。

「カーくんもがんばってる。あたちたちもまけてはいられないよ!」
「そうだね、おねえちゃん!」

 二人はあちこち飛び回る。それはかなりのスピードで、鬼もあちこち顔を動かすが、中々目が追い付かない様だ。

「あたちたちのもうひとつのゆうごうわざ、おみせするわ!」

 カットとアナは刀を構えると背中を合わせた。桜の花びらを舞わせながら、息を揃え、回転を始めた。先程の技では無く、今度はあちこちに自転し、やがて白銀の球状になる。

「かたなべんてん!」
「ウガアアァーッ!」

 鬼は金棒を振り上げ、刀弁天は高速で掛かり、二つの技の力がぶつかり合う。

「いた! あーもう、金棒重いよお!」

 カービィは、金棒は重すぎて扱い難いらしい。

「潔く諦めるか、別の武器にするかにしたら如何?」

 リズは、ソードにカービィを映しながら言ったが、カービィは気合いの入った顔を作る。

「いや、これが良いっ!」
「それはイコール不利って意味だけど?」
「一々煩い! でやあ!」
「フン! 馬鹿め!」

 カービィとリズは何度も武器をぶつけ合う(時には拳をぶつけ合ったりした)。

「はあぁ!」

 カービィは床をバウンドし、下からリズへ金棒を振り上げた。しかし、リズは余裕にとそれを難無くかわす。

「どこを狙ってるんだ?」
「……そっちこそ」
「え?」

 見上げると、そこには金棒を振り上げたままのカービィがいた。

「何で避けちゃったのかなー!?」

 カービィは思い切り重い金棒を振り下ろし、見事リズの頭をかち割った。

「うごおおぉ!」

 リズは今度はペチャンコにされてしまい、星をチカチカさせながら気を失ってしまった。

「さっきのお・か・え・しっ」

 カービィは笑みを浮かべながら、金棒を肩(?)に掛けた。
 鬼の金棒と刀弁天が押し合う。金棒が少しだけ前に行く。

「はあぁーっ!」

 二人は声を上げた。すると、金棒にヒビが入り始める。

「ガァ!?」
「カット、アナ! 僕も手伝うよ!」

 カービィは金棒を捨ててハンマーを取り出した。刀弁天へ向かうと、野球のバッターな構えを見せる。

「とおりゃああぁ!」

 ハンマーを思い切り振ると、刀弁天は金棒を割り、鬼へ大ダメージを与えた。

「グアアアアァァッ!!」

 鬼は漸く倒れ、刀弁天をカットとアナは解放し、スタンと畳へ降り立った。

「あ、頭が……」

 リズは頭を押さえながら立ち上がる。

「……作戦を練り直そう……」

 現れたブラックワープスターに乗り、空へと消えていった。

「やったね!」
「カーくんがきょうりょくちてくれなかったら、まけてたかも」
「ううん! 二人共凄いよ! 今度教えてね!」

 カービィが目をキラキラさせると、カットとアナは頬を赤くした。
 そんな時、呻きながらも、またも起き上がろうとしている鬼に三人は気付く。鬼を睨みながら、再び気を引き締めようとしたその時だ。

「父ちゃん!」

 突如、別の方向から少年らしき声が響き、カービィ達はそのまま振り向いた。
 そこには、鬼と同じ赤い鬼の子供で、いつの間にか、殿の頭の上に乗っかって現れていた。
 カービィ達が唖然とする中、彼は周りの目も気に留めず、倒れたままの鬼へ向かって駆け、心配そうな目をしていた。

「父ちゃんのこと、許してあげて……本当は、優しい父ちゃんなんだよぉ……」

 鬼の前に立った鬼の子は、カービィ達を涙目で見、身を僅かに震わせながら哀願していた。
 カービィやカット達は暫く無言で顔を見合わせた後、微笑んで相手へ頷き、

「うん。解った。許してあげる」
「ほ、本当っ?」
「きっと、あのわるいやつにあやつられていたのよ。そいつがいなくなったいま、きっとしょうきにもどってるわよ」

 カットがそう言った後、大きな鬼が顔を上げる。一体何があったのかと言う様子で、辺りを見回していた。そんな彼に鬼の子がパァッと笑顔になると、父である鬼の巨大な腕に抱きついた。鬼は相変わらずの恐ろしい形相だが、鬼の子に向けられている目は優しげだと、カービィ達は見ていた。

「三人共良くやったぞ」

 殿は拍手をした。

「お礼に、またご馳走してやらなければならないのお」
「本当に!? わーい!」

 カービィはさっきよりも嬉しそうに飛び跳ねていた。二人は不安になって殿に駆け寄る。

「との、よ、よいのですか?」
「このままでは、おちろのしょくりょうが……」
「なに、構わぬ。皆を救ってくれたのじゃから、これ位お安いごようじゃ」

 殿が笑うと、カットとアナははしゃぐカービィを見ながら、困り顔で微笑んだ。




 スネークは銃を片手に横っ飛びをすると、ギリギリで化け物の頭突き攻撃をかわした。

「くっ! これまでの敵よりかなり質悪いな」

 横からツルが飛んで来てスネークは焦ってしゃがんだが、ツルの先はアシュリー達にも向かっていた。スネークはとっさに銃を撃つとツルを貫通し、動きが止まった。

「大丈夫か、お嬢さん」
「……」

 アシュリーは、動かなくなったツルを只見つめていた。

「スネーク、あんな化け物にどう立ち向かうつもりなんや!」

 レッドは慌てていた。

「もうわてらも手に負えんで!」
「やってみなきゃ分からないだろう。どんな最強な戦車であろうと、弱点は必ずあるんだからな」

 そう言うとスネークは駆け出した。

「オ、オイ! スネーク!」
「……レッド、構わないわ……」

 アシュリーはポツリと呟いた。

「……私達じゃ止められないなら、あの人に任せなさい……」
「……アシュリーがそう言うのなら……」

 スネークが走ると後ろから無数のツルが追う。スネークは急ブレーキをし、今度は武器を銃からスティンガーに切り換えた。

「うお!」

 ツルに足を取られて倒れてしまった。

「くっ、力強い……っ!」

 片手で抑えるが、ツルは中々ほどけない。その間に、頭部が牙を剥いて襲って来た。
 スネークは座ったままスティンガーを構え、弾を放った。

「ギャアアァーッ!」

 近距離だったのでかなりのダメージを受けた頭部は、天井に頭をぶつけてでも暴れまわっていた。足からツルがほどけ、スネークはそこからダッシュする。

「矢張り弱点はあったな」

 と、懐から手榴弾を取り出した時だった。
 まだ動けるツルがこちらへ向かうと、スネークの手から手榴弾を弾き飛ばした。

「! しまった……!」

 同時に素早い動きでスネークの体に絡み付き、上へと持ち上げた。

「っ……このまま締め殺すつもりかっ……!」

 思ったよりも強く締め付け、おまけにスネークは身動きが取りづらい状態になってしまった。スティンガーを持つ腕もツルに巻き付かれ、麻痺してしまった腕からスティンガーが床へ落ちる。

「あかん、このままだとやられてまうわ!」

 レッドは頬を抑える。

「どうしよう、アシュリー……って、アシュリー?」

 さっきまで端っこに座っていた筈のアシュリーが、忽然といなくなっていた。レッドは顔をキョロキョロさせるが、辺りにもいなかった。その時、後ろから誰かに掴まれた。

「ぎゃああ!」

 頭部はスネークに近付き、少し開く口から唸り、涎を流していた。それでもスネークは少しも怯えず、化け物の顔を睨むばかりだ。

「……俺を食べても腹壊すだけだと思うが?」

 逃げたい本能からでは無く、素直に言う。
 化け物はその時、一本のツルをある所へと動かした。奴が持って来たのは、壁に飾ってあった斧だ。流石のスネークも、それには僅かながらも見開いてしまった。

「……これは、少し不味いかもな……」

 ゆっくりと振り上げる斧を凝視しながら、スネークは息を飲み込んだ。そして斧は振り下ろされ、スネークは目を瞑った。ドンッと、何かが切れる音が響き、斧は回転しながら床へ深々と刺さった。
 しかし、スネークの体には、何の変化も無い感覚がした。では一体何が切れたのか。スネークは瞼を開いた。
 切れたのは、化け物が斧を持っていたツルだった。

「グギャアァ……ッ!」

 断面から青い液体が吹き出す。
 化け物の後ろに人影があった。そこに浮遊しているのは、箒に乗りながら杖を前に突き出しているアシュリーだった。
 化け物は彼女に振り向き、喰らおうとしたが、アシュリーがもう一度杖を振ると、何かの衝撃派をくらったらしく、後ろへ半回転した。

(そう言えば、彼女は魔法使いだって、言ってたっけか……)

 スネークは一部始終を見ながら思った。
 ツルが緩み、床へ落下する。体を屈めながら着地すると、腕を抑えながらゆっくりと立ち上がった。

「大丈夫かいな、スネークっ」

 アシュリーがスネークの前に降り立ち、箒から戻ったレッドはそう言った。

「ああ。お陰で助かった」

 スネークは今度こそちゃんと立ち上がり、床に転がる手榴弾を拾った。

「これで反撃が出来るな」

 手榴弾を上に繰り返し軽く投げながら、未だにヨロヨロしている化け物を睨む。

「グルルル……」

 化け物はスネーク達を見付けると目を光らせた。スネークも奴を見ながら、手榴弾の安全ピンを歯で挟んで引き抜いた。

「グアアァーッ!」

 涎混じりの牙を剥き、スネーク達に口を開いて襲い掛かった。レッドは慌てて逃げるが、アシュリーは見開いたまま見ていた。

「お前は……これでも食っていろ!」

 スネークは思い切り手榴弾を投げ付けた。それは化け物の口内にジャストで入り、化け物は驚きながらそれを飲み込んでしまった。暫く時が過ぎると、化け物の口から爆発音が響いた。

「グオオオォォー……!!」

 化け物の頭部はあっと言う間に破裂し、軈て砂となり、風化した。

「ス、スッゲー!!」

 物陰に隠れていたレッドは、歓喜の声を上げてスネークへ飛んで行く。

「あんさん、生身の人間なんやろ!? あんな恐ろしい怪物をやっつけてくれるとは……」
「待て。喜ぶのはまだ早い」
「?」

 相変わらず真剣な表情をするスネークだが、レッドはそれが理解出来ない。スネークは、風が入って来る壁の穴の向こうを見つめている。
 床に落としたスティンガーを拾い上げ、両手で担ぐと直ぐにミサイルを発射した。スティンガーには追尾機能も付いていて、ミサイルは穴の外に出ると思い切り方向転換した。そして……、

「ウワアアァ!」
「ギャアアア!」

 複数の男の悲鳴が爆発音と共に聞こえた。
 スネークはスティンガーを下ろす。

「化け物を動かした元凶を退治した」
「や、やっぱりぃ……誰かさんの仕業やったんやな……」

 唖然と穴の外を見るレッドをよそに、スネークはアシュリーにふと振り返った。

「! アシュリー、怪我をしているじゃないか!」
「何やて!?」

 良く見ると、アシュリーは左腕を抑えていた。掴んでいる右手から僅かな血が流れている。

「さっきの化け物にやられていたんだな……」

 スネークは彼女の前で膝を付き、彼女の左腕の袖を上に上げて怪我を見る。包帯を取り出し、そこに巻いた。

「大した怪我じゃなくて何よりだ」
「……」

 アシュリーは、無言でスネークを見ていた。

「なあ、スネーク」

 治療した様子を見た後、レッドは口を開いた。

「何だ」
「最初に会った時は、あんさん、冷たそうな奴思うてたけど、実は案外優しかったんやな」

 スネークはそれを聞いて、考え込んだ。

「……助けてくれた者がいなければ、俺はあの時終わっていた……借りは返す」
「格好付けんでええ。素直になればええんねや」

 肩をポンポン叩くレッドを見る。スネークは黙っていたが、そのまま立ち上がった。

「ところでレッド、ここら辺りに欠片とか落ちて無かったか?」
「欠片?」
「虹色に光る小さな宝石みたいなものなんだが……」

 レッドは腕を組んだ。

「いや、見掛けんかったで」
「そうか……」

 スネークは目を伏せた。

「……」

 さっきからアシュリーは、無言のままスネークを見ている。

「どないんした、アシュリー? さっきから黙り込んで」
「……」

 すると、漸くアシュリーは一言だけ呟いた。

「……貴方を調合したら……私、凄い魔法使いになれそう……」
「……」
「……」

 レッドはポカンとしているが、スネークは口端を上げた。

「言ったろう、俺を食べても腹壊すだけだってな」

 それを聞いてしょんぼりしたアシュリーに、レッドとスネークは顔を見合わせると吹き出した。




 人工芝の上で、激しい攻防戦が繰り広げられていた。
 マーシスとディバは剣と体術を何度もぶつけ合い、たまに衝撃派が放たれて芝を踏み付けながら後退りをした。

「いい加減僕にやられなよ!」

 ディバは二刀流を舞わせながら言った。マーシスも剣を構え直すが、腕の傷がズキッとうずく。
 ディバはその隙を狙うかの様に、空中で回転しながら素早くマーシスへ向かった。マーシスは剣を縦に振ると物凄い風を巻き起こし、ディバを吹き飛ばした。

「ぐぅあ!」

 ディバは叫ぶが、バック宙しながら着地した。ゆっくりと顔を上げ、下から睨み上げる。その顔は、段々狂気に溢れた笑顔と化す。

「っ?」

 その時、マーシスは別の気配を感じた。入口にとっさに振り向くと、逃げたと思っていたモナが戻って来ていたのだ。

「モナ殿! 何故戻って来た!」
「だって、マーシスさんが心配だから!」
「そんな事を言っている場合では無い! 早くここから逃げるんだ!」
「貴方も逃げて! 大丈夫、ここはもう包囲されてるから」
「何だとっ?」

 モナの後ろから沢山の警察が現れ、ディバ達を取り囲んでいった。ディバは何だとでも言う様に丸くした目で周りを見た。それに対し、マーシスは半分焦りを見せていた。

「警察です。大人しく武器を下ろしなさいっ」

 警察の一人が拡声器を通じて声を上げた。それはディバに言っている様だ。
 だが、ディバは周りを見るだけで軽く溜め息をついていた。

「警察が来たから、もう大丈夫よっ」

 モナは安心した笑顔でマーシスに言った。

(……愚かな真似を……!)

 マーシスは悔やむ様に静かに呟いた。

「マーシスさんに同意だ」

 その声が聞こえたらしく、ディバはクスッと笑った。

「こんな僕より、泥棒を捕えてた方が長生き出来たのにねぇ」
「! 皆、逃げるんだ!! こいつは尋常じゃない!」

 ディバの強い殺気に気付いたマーシスは顔を青ざめて周りに警告するが、彼等は当然聞き入れなかった。

「奴を逮捕しろ!」

 警察はディバに向かって駆け出した。ディバは只、やれやれと溜め息をついていた。
 ある一人が取り抑えようとした時、ディバはそのままの体勢だったが、警察の体に一つの光る横線が入った。そして、彼はその場に倒れてしまった。
 それを見た警察達は止まり、モナは両手で口を抑えた。

「そんなっ……!」
「ほーら、言わんこっちゃない」

 ディバは、剣にいつの間にか付着している血をペロッと舐めた。

「ヒヒ、やっぱり血は美味いな……久々に沢山の血を吸える……」

 いきなりの低い呟きに警察達は身を退かせる。
 ディバは二本の剣をバツ印に構え、目だけで彼等をねめ回しながらその場から消えた。そして一人の目の前に現れる。
 だが、二人の間にマーシスが現れ、正に今振ろうとしたディバの剣を長剣で抑えた。ディバは苛立って舌打ちする。

「そうはさせぬ!」
「邪魔するなよ、マーシス……お前とはもう戦ってないだろうが!」

 ディバは左手を後ろへ引っ込めると赤黒い光弾を作り出した。そしてパワーを溜めたとこでマーシスの胸に直撃させた。

「がはぁっ……!!」

 マーシスは吐血しながら吹き飛び、周りの警察も同時に吹き飛んでしまった。

「マーシスさん!」

 驚嘆したモナは叫んだ。
 ディバは高くジャンプし、剣を下に構えてマーシスへ向かう。マーシスは地面に手を付けると後転して回避した。

「さっきの技はかなり効いたみたいだな」

 回避はしたものの、膝を付いてしまったマーシスへディバが歩み寄る。その時、横から短い鉄の棒が飛んで来て、ディバは反射的に棒を切った。

「これ以上皆を傷付けないでっ!」

 モナは怒りを露にして言った。
 ディバは目を細めた。

「ほほう? 勇敢な女の子だ。余程早く人生を終わらせたいみたいだな」
「私の事は良いから、もうやめてっ」

 マーシスはダメージを受けた胸を押さえながら、モナを見つめてしまっていた。
 ディバは目を少し丸くしたが、クスッと目を細めた。

「ああ、良いよ? 但し、簡単には殺さない。ジワジワと苦しめながら殺してやる……」
「馬鹿者!! 逃げるんだ、モナ殿!」

 だがモナはそこから動こうとしなかった。足がすくんで動けないのだ。その間にも、ディバは血みどろの剣をギラリと光らせた。

「行くぜ、お嬢さん……」
「そうはさせん!」
「!?」

 どこからか声がした。ディバ達は顔を動かす。すると、入口から青い光線がこちらへ向かい、ディバの剣とぶつかった。すると、光が消えて誰かが浮かび上がる。
 ディバと交戦しているのは、メタナイトだ。

「メタナイト!」

 マーシスは立ち上がった。

「君は確か……マーシスのお友達?」

 ディバは赤い目を細め、メタナイトを睨んだ。

「戦友の気を感じてな。援護しに来た」
「……どうやらかなり重傷を負ってるみたいだけどね」

 と、メタナイトのボロボロになっている翼を眺めた。

「そんな状態で僕と戦うとでも?」
「俺もいますよ」
「!」

 メタナイトの後から現れたのは、リンクだ。疲労から大分回復し、リンクはメタナイトについて行っていたのだ。

「……僕はまるでいじめられっ子だな」

 ディバは面白おかしく笑い、その場から浮遊した。

「ふふん、まあ良いさ。リーダーさんさえ死ねば、この世界の支配もそう難しくなくなる筈だ」
「支配だと!?」

 メタナイトは叫んだ。

「欠片を奪う為に来ただけでは無いのかっ!」
「そんな事ばっかしてたら折角の時間が勿体無いじゃんか? ま、詳しい話は誰かさんに聞くんだね。じゃ、ア・バ・ヨ!」

 ディバはニヤッと笑うと飛んで行ってしまった。

「マーシス、無事かっ」
「ああ。胸を痛めていたが、もう平気だ」
「……メタナイト、マーシスさん……すみません……」

 突如リンクが謝罪した。

「如何した」

 メタナイトは言った。リンクはうつ向き、口を開いた。

「皆さんに早く伝えるべきでした。実は奴ら……」
「いかん!」

 マーシスは、ディバの飛んで行った方向を眺めながら声を上げた。

「マリオ殿達の気を感じる場所に奴は向かおうとしているっ」
「何!?」
「!」

 メタナイトとリンクはマーシスを見た。

「直ちに向かおう。このままではマリオ殿達が危ないっ」
「ああ、分かった! リンク、その話は行きながら聞こう」
「はいっ」

 三人はさっき入って来た入口へ向かおうとしたが、入口から突然黄色いタクシーが現れ、彼等の目の前で止まった。因みに見た目はかなりボロボロになっている。

「皆さん、これに乗ってください!」
「ドリブルさん! スピッツさん!」

 窓からヒョッコリと顔を出したのは、ドリブルとスピッツだ。彼等を見たリンクは嬉しそうだった。

「リンク、あのタクシーの者とは?」
「はい、さっき知り合ったばかりなんです。ミエールとの戦いで、車があんな姿になってしまいましたが……」

 リンクは目を伏せた。それを聞いた二人は驚いたが、直ぐに冷静を取り戻した。

「皆、無事で何よりだ」
「大丈夫や、まだタクシーはちゃんと動くで」

 スピッツは笑って言った。

「さ、早く乗っておくんなまし!」
「ありがとうございます」
「かたじけない」

 メタナイトとリンクはタクシーへ向かうが、マーシスはその前にモナの近くまで行った。彼女の目線に合わせ、膝を付く。

「モナ殿、己の命は大切にしろ。一度無くすとそれは二度と見付からない。そなたが死んで、悲しむ者も沢山出るだろう」

 モナは目を反らしていたが、やっとマーシスを見た。

「……確かに、そうだよね……ご免なさいっ!」

 モナは涙目で頭を下げた。マーシスは優しく微笑んで頷いた。

「幸運を祈ってます、マーシスさん!」

 警察達の代表は、敬礼して声を発した。その後に全員敬礼する。
 マーシスは彼等を見た後、悲しそうに頭を下げた。

「すまない、私が止めるのが遅かった余りに……」
「悲しいのは、我々も一緒です」
「それに、幸い、まだ彼は息をしています」

 その声にマーシスは顔を上げた。

「我々も全力を尽し、軍団共を取り抑えます。お互い頑張りましょうっ」
「! ああ」

 マーシスは口端を上げ、その場を走り去っていった。




 残るは、マリオ達のいる作法殿だけとなった。










 ──to be continued──