ダイヤモンドシティを救え!〜前編〜








「たあっ!」

 ポポはハンマーを振り上げてジャンプし、それを振り下ろした。クアンはそれを跳んで避け、横からハンマーをくらわそうとしたが、見切ったポポはハンマーをそちらに向け、何とか防御した。
 そんな彼を、ザコ敵が後ろから攻撃しようとした。だが、振りかざした拳を誰かの足が止めた。その足は、クリケットのだ。

「汚い手を使うだなんて許せないな」

 クリケットは呟き、もう片足で敵の後頭部に一撃をくらわした。
 両足が浮いてる為に倒れそうになったとこを、手を地面に付ける事で抑え、そのまま後ろへ片足を突き出す。足の先が後ろの敵の顔へめり込んだ。

「さあ、どっからでも掛かって来い!」
「ほっ、はっ」

 マンティスは腕を袖の中で組みながら、両方から攻めて来たザコ敵達に向かって、一回回し蹴りをした。そこから衝撃派が放たれ、辺りの敵は吹き飛んだ。クリケットの師匠は、両腕を使うまでもない余裕があるみたいだ。

「えい!」

 ナナは片手を突き出してブリザードを放った。冷気ビームは、確りとエミーに向かっているが、エミーはハンマーを片手で回転させてバリアにした。それだけでは無く、弾かれたブリザードはそのままナナの元へ帰って来たのだ。

「キャアァ!」

 ナナは自分の冷気をくらい、地面にうつ伏せで叩き付けられた。

「っ……ケホッ! ケホ……ッ!」

 腹をぶつけ、ナナはそこを抑えながら咳き込んだ。
 エミーは口端を上げながらナナのとこへ素早く向かい、倒れているナナをハンマーで殴り飛ばした。

「かはっ!」

 ナナは木に体をぶつけた。

「ナナ!」

 ポポは、ダメージを受けたナナに迂濶に振り向いた。クアンはその隙に、ポポをハンマートルネードで吹っ飛ばす。

「わあ!」
「うわ!」

 ポポは、戦っているクリケットにぶつかり、クリケットも倒れてしまった。

「いてて……ポポくん、大丈夫か?」
「そ、そんな事より、ナナがっ……」

 ナナはエミーの攻撃を受け流すのが精一杯だ。エミーは休まず攻撃し続けている。
 クリケットは即彼女達の元へ向かう。ポポは直ぐに来たクアンのハンマー技を慌てて抑えた。

「ナナちゃん!」

 最後の一撃をくらわそうとしたエミーは、クリケットの声に止まり、振り向いた。クリケットの蹴りが跳んで来、エミーは慌ててその場を離れた。
 地面に着地し、最初は恐ろしい顔をしていたエミーだが、

「……か弱い女の子に手を出すなんて酷いわねぇ」

 のち、クスクスと苦笑して言った。クリケットのハートはその言葉に刺されてよろめくが、本人は何とか堪えて見せた。

「あ、相手が敵なら、お、女だろうと手加減はしないぞ!」

 クリケットはビシッと言った。

「何強気になってるのよ、可愛いわね」

 エミーはまだ笑いを止めなかった。女性に多少甘いクリケットはそれに戸惑ってしまう。

「惑わされるな、クリケットよ」
「!」

 多くの敵を倒した後、マンティスは言った。

「この戦いも修行の一つだ。己の力を信じよ。心を信じよ。ウィー拳はその為にあるのだ」

 それを聞いたクリケットはハッとした。

「ウィー拳……」
「クリケットくん、私を忘れちゃ嫌よ!」

 傷付きながらもナナは立ち上がり、クリケットに微笑んだ。
 そしてナナとは反対側の方から、ポポがスタッと現れた。

「そのウィー拳、是非とも見せて!」
「ポポくんっ……」

 クアンはエミーの隣に着地した。

「何をして来るのかは知らないけど」
 二人は背中を合わせた。

「この技から逃れる事は出来ないよ!」

 二人は回転し、特大ハンマートルネードを作り出した。トルネードは高速でこちらへ向かって来ている。

「ナナちゃん、ポポくん」

 クリケットは二人を交互に見た。

「何? クリケット!」
「二人で奴らと同じ技を出すんだ」
「え、どうして?」

 ナナは慌てて問う。

「実は新しいウィー拳を習得したばかりなんだけど、それを発揮させる為には、協力者がいないと駄目なんだ。しかも、息が合う人でないとっ」

 アイスクライマーは、互いの顔を見た。

「時間が無いっ。息がピッタリな二人に頼みたいっ」

 念を押した頼み方だが、アイスクライマーは顔を見合わせ、暫くすると頷いた。

「OK! 派手にやっちゃおう!」
「ラジャー!」

 アイスクライマーも、偽アイスクライマーと同じポーズを取った。そしてクリケットは彼等の頭に乗るが、彼は軽かった。

「いっくぞー!」
「ハンマートルネード!」

 アイスクライマーはハンマーを前へ突き出しながら回転を始めた。その上には、手と手を合わせて瞑想しているクリケット。
 二つのトルネードがぶつかりあう寸前、クリケットは目を開き、二人の回転を利用して素早く相手へ向かって足蹴りを繰り出した。それはもう一つの竜巻の如く。

「何だ!?」
「キャアァー!」

 クアン達に見事大ダメージを与えた。
 トルネードを解放したアイスクライマーは休む事なく、蹲ったクアン達へ反撃を開始した。
 ポポはエミーへ向かう。

「これは……ナナの分!」

 ポポはハンマーを振り上げ、くい打ち技を繰り出した。振り下ろされたハンマーは見事エミーの頭にヒット。

「ぐっ!」
「これはポポの分よ!」

 ナナはクアンへ向かって走り、ハンマーを下に向ける。そのまま後ろから前へ回転させ、足払いの様に下から攻撃をした。

「うわっ!」
「そして最後にぃ……!」

 アイスクライマーは共に走りながら、ハンマーを下へ構える。

「本物からの、本当の力を見せてやる!」
「本物からの、本当の力を見せてあげるわ!」
「はああぁっ! つらら割りいぃぃーっ!!」

 すると二人は同時に、相手を下から上へと、大打撃で吹っ飛ばしたのだ。

「うわあぁぁ!!」
「キャアアアァァ!!」

 二人の偽アイスクライマーは空高く舞い上がり、そして地面へ叩き付けられた。

「二人共、実は凄く強かったんだな」

 クリケットは驚きの眼差しをしていた。

「いや、クリケットも良くやったぞ」

 マンティスは髭を持ちながら言った。

「マスター……」
「もしやこれは、お作法を越えた融合技かも知れんな」
「……ありがとうございます!」

 クリケットは背筋を伸ばし、姿勢を正しくした。

「やったね、ナナ」
「うんっ!」

 二人は上げた片手同士を合わせた。

「……フ、フフフ……」
「!」

 倒れた二人を見ると、クアンは重傷を負いながらも、上半身は少しだけ起こしている。

「き、君達が……こんなとこで……油を売ってて……良いのかなっ……」
「!?」
「どう言う意味!」
「僕らを倒したとこで……何にもならないって事だ……ア、アイシクルマウンテンが、もう……ギガ様の手に、落ちてるかも知れないよ……」
「何だって!?」
「気付いてないかも知れないけど、既にギガ様は、本格的に動き出してる……下手すると、君達にとって、大切な何かが、消えちゃう、かも、よ……」

 クアンは力尽き、それきり動かなくなった。偽アイスクライマーは、次第に赤い泡となり、そのまま消滅した。
 クアンの話を聞いて、アイスクライマーは茫然としてしまった。

「……ポポくん、ナナちゃん……」

 クリケットの呼び掛けで、やっと二人は我に返った。

「私達の国が危ないだなんて……!」
「ナナ、どうしよう……っ」
「……」




「プリィ!」

 プリンは駆けながら丸くなり、ピンクのボール型になった。

「アンチマナーの方々には、これをプレゼントオォー!」

 ジミーは後ろからプリンボールを蹴り上げた。ボールは勢いあるスピードで飛んで行き、複数のザコ敵へ突っ込んだ。ボーリングの如く、見事にカコーンと言う効果音を発しながら相手らは吹っ飛んだ。
 プリンは、ポテッポテッと床をバウンドしながら元の姿に戻ったが、キックが効いてしまったのか、星をチカチカさせながら目を回していた。

「ジ、ジミーしゃん、目眩がするでしゅ……」
「おっと、ごめんYO!」

 ジミーは、自分のアフロをポンッと叩いた。
 ザコ敵はピチューへパンチを仕掛けるが、ピチューは跳んで避けたので、空振りした。そしてその腕に触れ、電気ショックをお見舞いした。

「ピチュウゥー!」
「グアァ!」

 ピチューは自分が感電しない為に一瞬だけ放電したが、相手はかなり効いた様だ。
 敵は倒れ、ピチューは振り返ってはジャンプする。彼がいた場所に、スポットライトの機械がぶつけられた。凄まじい音を立てて破壊される。

「ノー! ダンスホールが滅茶苦茶になるYO!」

 ジミーは頭(と言うよりアフロ)を抱えた。
 そして、ザコ敵軍を怒りながら睨む。その睨みの迫力さに、ザコ敵軍はビビり出した。

「ダンス魂を一から教えてやるYOー!」

 ジミーは華麗に宙を舞い、手を上へ広げながら両足キックをくらわせた。ザコ敵の頭にクリーンヒットし、相手は倒れ込んだ。
 ジミーは休まず、床に両手を付けた。それを軸に足を上げ、横へ回転させる。ドカドカと敵に当たりまくり、調子が良くなって来たジミーは、アフロを床に付けて回転しだした。
 見事に多くの敵を倒したジミーに、プリン達は驚愕した。いや、そうでは無く、

「ジミーしゃん、ある意味しゅごい技を繰り出してたでしゅ……」

 プリンはアフロ技の事に口を開けたままになっていた。

「ピチュピチューッ」

 ピチューは、彼の技はクールだったのか、はしゃいでいた。

「休憩時間は早いぜ! まだまだ敵さんはおいでなすってるYO!」

 ジミーの言う通り、まだまだ敵の数は多い。プリンとピチューは頷き、各々の敵グループへ向かった。
 ジミーは相変わらずノリノリで戦っているが、うっかり後ろに隙を作ってしまった所為で、後ろから背中に蹴りを入れられた。

「アーウチ!」
「ジミーしゃん!」

 後ろから蹴られたジミーは、一気に床をスライディングしていった。

「何するでしゅかあ!」

 プリンの異様な怒りを買ってしまった様で、攻撃したザコ敵はプリンにボコボコの刑を受けてしまった。

「プリン、ボクはノープロブレムだから心配は要らないYO!」

 蹴られた拍子で落としたアフロをはたき、全身タイツで覆われた頭にアフロをはめながらそう言った。

「本当でしゅか? 良かったでしゅ」

 相手のアフロにちょっと目を丸くしたが、無事だと聞いてプリンは心底ホッとしていた。

「ピチュー!」
「あ、ピチュー! 分かってましゅよ。この調子で皆を吹っ飛ばすでしゅっ」
「久々に良いトレーニングになるYO」




「こんな狭いとこじゃ不利だ。外へ出よう!」
「ぼくちんも同じ事考えてた! 行くぞ、皆!」
「分かってるばい!」
「早く出ようっ」

 二人(しゃぎぃはエイティーンボルトの腕の中にいる為)は走り、ナインボルトはスケートボードでゲームセンターから抜け出た。矢張り狙いは子リン達だ。ザコ敵達もゲームセンターを出て来る。

「ゲームと変わらない。バトルは常に頭をフル回転させなきゃならないな」

 外へ出ると、ザコ敵達が街を襲撃していた。最早街は壊滅の危機である。

「うーくそっ! ダイヤモンドシティが……!」

 ナインボルトは、襲撃されている街並みを眺めて悔やんだ。

「おっと!」

 ザコ敵は回し蹴りをして来たが、子リンは上半身を後ろへ引っ込むとギリギリ回避出来た。そしてしゃがみ、腹に向かって横切りをお見舞いした。

「グオアァ……!」

 やられたザコ敵は煙と化してどんどん消えていく。

「ホラァどうした! こっち来い!」

 ナインボルトは、スケートボードを走らせてザコ敵を追わせる。逃げている様でも、ナインボルトは挑発しまくっている。

「よっ」

 突然スケートボードを半回転させ、ぶつかり合おうとする彼にザコ敵は慌てて止まろうとしたが、時既に遅し。ジャンプしたナインボルトのスケートボード技を顔へ諸に受けてしまった。

「これでもくらえ!」

 しゃぎぃがエイティーンボルトの上で叫び、エイティーンボルトは長身と力を利用してザコ敵達を次々と片付けて行った。

「と言うか、しゃぎぃも戦って欲しいとよ……」

 頭上で盛り上がるしゃぎぃにエイティーンボルトは溜め息をついた。

「戦うのを見てる方がええねん」

 しゃぎぃはキッパリと言い放った。

「くそ、どんどん出てくるなっ……!」

 子リンは舌打ちした。外へ出た所為か、敵はどんどん増えている。
 子リンを数人の敵が囲み、一気に襲い掛かる。子リンは剣にパワーを溜めた後、

「回転斬りー!」

 コマの様に体を一回転させながら斬り付けた。見事に周りのザコ敵達は煙と化した。

「ぼくちんにしちゃあ、スリル満点で楽しめるよっ」

 子リンの隣でスケートボードを急ブレーキさせたナインボルトはそう言った。子リンは呆れているが、笑みながら溜め息をついた。

「チビリンも真剣に戦ってないでさ、ゲームだと思って楽しもうよ。でないと人生楽しめないよ?」
「……そうか?」

 ハテナを浮かべて考え込む子リンに、ナインボルトは彼の肩に手を置いた。

「子供の内だ。逸そ楽しんじゃおうぜ!」
「……いや、駄目だ」

 その返事にナインボルトは見開き、手を離した。

「これは、俺達の住む世界の運命がかかった戦いなんだ。それをゲームだなんて、軽い気持ちで思ってはいけない」

 子リンはナインボルトに振り向いた。

「ナインボルト達の住むこの街だって危ないんだ。大好きな場所が失われたら、悲しいだろ?」
「……」

 ナインボルトはうつ向いた。

「ナインボルト?」
「どうしたの?」

 エイティーンボルトとしゃぎぃもこちらへ寄って来た。
 ナインボルトは、手をギュッと握り締めると、顔を上げた。

「だよなー。悪かったよ、チビリン。これは只のゲームじゃないもんな」
「ああ、この街を救う為に戦うんだぞ!」
「間違ってたっ。大好きな街や友達が消えたら、ぼくちんすげえ寂しいもん!」
「ナインボルト……」

 呟いたエイティーンボルト達に、ナインボルトはくるりと体を向けた。

「さ、敵共を懲らしめるぞー!」
「! お、おー!」
「おー」

 四人は拳を掲げた。

(でも、やっぱりチビリンって呼ぶのやめて欲しいな……)

 密かに思う子リンだった。




「私の作品よ、静まりなさいっ」

 ペニーは、ゆっくり歩いて来るロボットやミニバイク達を、一本の巨大ドライバーを両手に次々と叩いてスクラップにした。

(まるでボツられた作品の怨念ね……)

 ペニーはそう考えると、ちょっと怖くなった。

「ヌンッ!」

 二本のギャラクシアが、ガキィンと交される。剣が交わる度に火花が散り、互い一歩も譲らない。
 剣を弾き、衝撃に吹き飛ばされそうになったが、床に、引きずりながらでも何とか足を付けれた。

(流石はクローンだ。全てが私自身……)

 メタナイトは構え直す。フビルも同じポーズを取った。
 こうもりの翼を生やし、剣と剣がぶつかり合う。幾等やってもキリが無いが、少しでも休めば命取りだ。
 相手が突きを繰り出して来る。メタナイトは飛んで避け、後ろへ回り込んだ。フビルがこちらを振り返ったとこを斬り掛かり、再び剣が交わる。

「……なるほど」

 フビルは呟いた。

「紳士だな、私の背中を斬らんとは」
「私は正々堂々と戦う。相手が極悪であろうとな」
「……私がそなた自身だと思っては、大間違いだぞ」

 すると、フビルは姿を消した。メタナイトは油断した。気付いた時は、後ろからコウモリの翼を貫かれていた。

「っ……!!」

 メタナイトは、翼から走る激痛に怯んだ。

「両方の方がよろしいかな?」

 メタナイトは抵抗しようとしたが、フビルはもう片方の翼をギャラクシアで切り裂いた。

「っ! ぐぁあ!」
「メタナイトさん!」

 ペニーは、ロボットを殴り倒した時にメタナイトの叫びが聞こえたのに驚いた。見れば、メタナイトの翼がボロボロになっている。

「私は正統な剣士では無いのだ。これ位も容易にしてしまう」
「汚い真似をしてくれるわね……!」

 曲がった事を嫌うペニーは発言した。フビルは彼女を見て、フッと笑った。

「ペニー、私は大丈夫だ……」

 メタナイトはよろめきながら立ち上がった。

「メタナイトさんっ」
「翼を無くしただけだ。心配は要らない……」
「……翼を無くした事でハンデが付いた」

 フビルは翼を広げ、飛び上がる。

「あ、卑怯ですよ!」

 ペニーはフビルを指差した。

「卑怯な手を使ってでも、私はギガ様の為に尽す」
「思ったことを撤回するか。やはり、そなたは私自身では無いな」

 メタナイトは翼を引っ込めて言った。それに対し、フビルは赤い目を光らせると、

「私がそなた自身……そう思っていると命を落とす。立派な判断だ」
「洗脳されたクローンにどうと言われる筋合いは無いっ!」

 メタナイトはジャンプし、フビルと剣術を競う。フビルは飛行しているので有利なのだが、メタナイトは机を台にして斬り掛かる。

「やっと全部倒した……メタナイトさんに余計な心配をさせちゃったわ」

 ペニーは息を荒らしながら、スクラップになった機械達を眺めた。
 そして、苦戦しているメタナイトを見る。

「このままじゃメタナイトさんがやられちゃうわ! どうしよう……」

 ペニーが悩むと横からザコ敵が襲って来るが、ペニーは考えながらドライバーを突き出し、敵を見事に撃沈させた。
 そうしている間にペニーはある事を思い付いた。

「そうだわ!」
「メタナイトよ、そろそろ力尽きそうか?」

 翼のダメージがかなり応えたのだろう。メタナイトは剣を机に自分で落としてしまい、息を荒げていた。
 フビルは彼の前へ降り、剣を突き付ける。

「さあ、そろそろ終りにしようか」
「くっ……!」

 メタナイトの体力は限界に近付いていた。このまま彼のなすがままにされてしまうのか。死を覚悟した時だった。
 ペニーの声と共に、フビルが横へ吹っ飛んだ。

「えぇぇい!」
「グアァ!!」

 かなりの衝撃を喰らったフビルは壁へ激突した。
 メタナイトは彼女を見ると、驚いた。ペニーは、空飛ぶミニバイクに乗っていたのだ。

「ペニー、それは確か壊された筈では?」

 だがメタナイトは冷静に問うた。

「こんな時の為に予備のミニバイクを作っておいたんです。凄いでしょ?」

 ペニーは眼鏡を光らせた。

(どんな時だ)

 メタナイトは、彼女は予知能力でも持ってるのか疑わしくなった。
 それよりも、良い物を用意してくれたに思った。

「ペニーよ、それを貸してく……」
「どうぞどうぞ! 全然構いません!」

 メタナイトが言い終える前にペニーは許可をした。余程嬉しそうだが、それは実験台が現れた喜びか。取り合えずもメタナイトはそれを借りた。

「くっ……何と運の良い」

 フビルはフラフラと立ち上がったが、ギャラクシアを持つ力はまだある様だ。

「その運もどこまで続くかっ!」

 フビルは翼を広げて飛び立った。メタナイトは片手でミニバイクを操作し、彼に向かって行く。
 始めの時と同じ状態に戻り、交わる剣から火花が何度も飛び散った。

(……そなたは私自身で無いと言うのなら……)

 メタナイトは心で呟いた。

「今は私自身を無くしてしまおうっ!」

 ミニバイクにある瞬間移動ボタンを押す。すると、ミニバイクはメタナイト共々その場から消えた。

「! 何っ!?」

 今度はフビルが油断する番になった。そしてメタナイトが現れた場所は、フビルの直ぐ後ろだ。

「!」
「ハァッ!」

 メタナイトは、瞬時にして彼の翼を切り落とした。

「ウオアアアァァッ……!!」

 フビルは叫びながら床へ落ちた。
 メタナイトはミニバイクから飛び下り、即座に彼の前で剣の線を描いた。フビルに背中を向け、ギャラクシアをゆっくりとおさめる。
 キンッと音を立てた瞬間、フビルの面に縦線が入り、面だけが割れてしまった。

「うわぁ! わ、私の顔が……!」

 素顔が出てしまいそうなとこでフビルは慌ててマントで自分の顔を覆った。

「おのれ……覚えていろ!」

 フビルは捨て台詞を吐くと、切られた翼と割れた仮面を拾って消え去った。

「わわ! フ、フビル様!」
「我々を置いてかないでくださいぃー!」

 ザコ敵軍団も急いで退却した。

「やったー! ダイヤモンド・アカデミーを守ったわ!」

 ペニーはピョンピョン跳ねて喜んだ。メタナイトは、フウッと息を吐いた。

「初めて敵の背中を狙ってしまった。私もまだまだだな」
「……そう言えば……」

 ペニーは顎に人差し指を当てて何かを考える。

「フビルっていう人の仮面の下、気になりますね。何か可愛いく見えた気が……」
「……」

 メタナイトは嫌な予感を覚えた。フビルと同じく仮面を付けているからである。彼女を恐る恐る見上げると、ペニーは口端を吊り上げながら目線を向けてきた。

「で、では私はこれにて失礼する!」

 危機を察知したメタナイトは研究室を飛び出す。

「あ、まだ何も言ってないですよ!」

 ペニーは頬を膨らますが、顔にはハッキリと書かれていたりする。

「先程のミニバイク、礼を言うぞ」

 メタナイトはその言葉を最後にダイヤモンド・アカデミーを後にした。
 ペニーは、フワフワ浮いているミニバイクを見上げ、研究成功の証にガッツポーズをした。




「ハッ! てやぁっ!」

 二台の車の上で、リンクとミエールは戦いを繰り広げていた。

「力比べは誰にも負けないっ」

 ミエールは交じっている剣に力を込め、彼を押し出した。

「うわっ!」

 吹っ飛ばされたリンクは危うく落ちそうになったが、ドリブル達の巧みな運転のこなしで、タクシーの上に容易に着地出来た。

「流石は、ドリブルさん達ですねっ」

 リンクは下を向いて言った。

「リンクはんは、あいつとの戦いに集中したってくださいっ」

 スピッツは窓から顔を出した。

「……それは無理と言うものですよ」

 言ったのはリンクでは無くミエールだ。ミエールは苦笑しながら呟いた。
 ミエールを乗せた車が急速でこちらへ向かい、一気にぶつかると直ぐに離れる。

「わっ!」
「わぁっと!」

 反動の所為でリンクは前へ落ちるとこを勢い任せにジャンプし、ミエール達の車にうっかり飛び乗ってしまった。
 ミエールは剣を振るが、リンクは車から跳び、味方の車に着地した。

「まだまだ!」

 リンクとミエールは前へジャンプし、剣をガキィンと交してから相手の車に足を付ける。
 リンクは弓を構えて矢を放つが、ミエールは盾でそれを回避し、ミエールも同じ様に矢を放った。リンクも彼と同じ、盾を前へ向けて矢を防いだ、と思った。

「!」

 何と盾は一片に氷付けになってしまった。一気に重みが掛かり、腕を滑って道路へ落ちてしまった。アスファルトに当たった途端、氷と共に粉々になってしまった。

「し、しまった!」
「これで貴方の防御力はダウンです」

 ミエールは勝ち気になって赤い目を細めた。
 彼の持つ矢の先は水色に光っていた。彼は氷の矢を放ったのである。

(くそ! 魔法の矢は装備していなかった……)

 リンクは歯をくいしばる。
 しかし、そうこうしている内にも、ミエールがこちらの車へ飛び乗ると、斬り掛かって来た。リンクは剣で何とか技を抑える。ミエールは容赦なく連続攻撃をして来て、リンクは剣だけで技を受け流すのが精一杯だ。

「これで終りだ。死ねえ、リンク!!」

 すると車が横へ動き、タクシーにぶつかる。

「うぅっく!」

 ドリブルはハンドルを限界まで切るが、タクシーは中々スリップが止まらない。

「うわわっ……!」

 リンクは道路へ落ちそうで焦って腕を振る。だが、ミエールが突きをして来たとこでリンクはそちらに気を取られ、刃は彼の頬を傷付けた。リンクはその時、車体から足を離してしまった。

「わあぁ!」
「リンクはん!」

 スピッツは最後の手段と言わんばかりに、ドリブル側にあるスイッチを押し、窓が開きっぱなしのタクシーのドアを開けた。リンクはとっさにそれに捕まり、トランク側に飛び乗った。

「あ、危なかった……っ」

 ヒヤヒヤしたリンクは胸を擦った。

「これが本物の俺の実力……悲しいですね」

 ミエールは言った。

「そんなんで良く仲間を守ってきたものですね。守られる仲間はどれだけ貧弱なのでしょうか?」
「っ!」

 リンクはミエールを睨んだ。

「リンクを殺したら、他の軍の援護に向かいましょう。直ぐに奴らを血祭りに出来そうですからね」

 ミエールは苦笑し、次第に笑い上げた。
 リンクは、笑い声を聞きながら拳を握り締め、うつ向いた。仲間を侮辱する者。リンクは、その者は許せなかった。

「……ミエール……」
「? 死ぬ前に何か言いたい事でも?」
「俺の……俺の大切な友達に対して、その様な事を言う奴を、俺は決して容赦しないっ……」

 リンクはゆっくりと立ち上がる。
 ミエールは余裕な表情をした。

「何をするのか分かりませんが、これでとどめだ!!」

 ミエールはリンクへ斬り掛かる。ドリブル達はもう駄目だと思い込んだ。
 リンクはマスターソードを目の前に構え、瞼をそっと綴じた。

 ──トライフォースの神々よ……。

 祈りを始めると、リンクの左手の甲にトライフォースのマークが光り出す。

 ──総ての次元を統一する、次元空間の神よ……。

 そして、彼以外の時間が、次第に遅くなっていく。

「俺に力を!!」

 マスターソードが輝き、それを天に掲げた。マスターソードが強く白い光を一瞬だけ放った。すると、何とリンク以外の時が止まったのだ。様々な色が失ってグレースケール状態になり、風も止まり、物凄く静まり返っている。
 そしてミエールだけを、黄金に輝くトライフォースが挟み込んでいる。まるでトライフォースが、ターゲットはこいつだと言っている様だ。リンクは直ぐにそこへ向かい、マスターソードでミエールの体を攻撃に掛かった。傷は付いていないが、リンクはそれでも剣を振る。
 攻撃を止めて味方の車の上に戻り、再び目を綴じた。次第にモノクロの世界が色付き、時は再び動き始めた。

「……んっ?」

 ミエールは、気付けば元の車の上に戻っていた。そして、違和感がある体を眺めた。

「! ウアアアアァァッ!!」

 その時、ミエールの体が一気に切り裂かれた。

「ミエール様!」

 車を運転しているザコ敵と、ドリブル&スピッツは驚きを隠せなかった。ミエールが、いつの間にか大ダメージを受けているだなんて。

「バ、バカな……っ」

 ミエールはひざまづき、特に痛手を負った肩を抑えた。

「序でに、盾と魔法の矢も貰っておきましたよ」

 リンクは、ミエールから盾と魔法の矢を奪い取っていた。正に形勢逆転。

「くっ……また、戦いましょう……」

 車のドアが開かれ、ミエールは華麗な動きで車内へ入り、車はUターンして走り去っていった。
 同時にブレーキが元に戻り、やっとタクシーは止まった。

「リンクはん、今のは何やったんすか!?」
「わし、良く見えんかったで……っ」

 まだ気が動転している二匹は慌てて言った。
 だが、リンクは応えない。酷く疲労を溜め、ゼエゼエ息を荒らしているからだ。

「……リンクはん、大丈夫でっか?」
「……は、はい。大丈夫……です……」

 汗に濡れた額を手の甲で拭った後、
(これが……宝玉の欠片の……力……)

マークが出ていた左手の甲を暫く見つめていた。










 ──to be continued──