母の歌、そして皆の……








「ま、精々頑張ってくれよな。倒したってどの道、この世界から脱け出せる方法なんて、お前達には分かるまい! けーっけっけっけ!」

 笑い声を響かせながら、ポーキーは機体と共に姿を消した。

「行くぜ、ギーグ!」

 マリオは手を出すと、ファイアボールを連発した。フォックスはブラスターを連射し、ジェフは腕にはめたバズーカからビームを発射し、ネスら三人の超能力者は、PKファイアー、PKサンダー、PKフリーズと、それぞれのPSI技を最大限で繰り出し、それら六つの技は同時に出され、全てギーグに命中した。

「ダメージは確かに大きいけど……」
「ギーグの体力はあまりにも異常みたいだな。余裕に見える。自分達の攻撃力を最大で引き出しても、それは微々たるものみたいだな」

 眉間に皺を寄せるマリオの言葉に、フォックスはヘルメットに付いているモノクルでギーグの情報を出来るだけ調べた。

(! 情報が出ない!?)

 出るとすれば体力だけで、他のステータスは何故かハテナマークが並ぶだけで表示されないのだ。

 ──イタイ……イタ、イ……ヨ……。

 どこからか不気味なうめき声がした後、目の前のギーグの顔から、何やら光の衝撃波が一気に広がってきた。そして、周りから雷の嵐が降り注ぐ。

「おわ!」
「くっ!」

 マリオ達は腕で顔を覆うしか出来なかった。

「サイコシールドΣ!!」

 そこへポーラは両手を即座に広げ、両手から光を出し、マリオ達をドーム状の光で包んだ。お陰でギーグの雷地獄から何とか耐え抜いた。

「助かったよ、ポーラ」
「これ位、お安いごようよ」

 ネスが微笑むと、サイコシールドを解除したポーラはウィンクをして見せた。

 ──カ……エレ……。
「! おわあぁ!」

 再び鳥肌を立たせる声を聞いたと思えば、今度は強い衝撃派がマリオ達を襲った。マリオ達は思い切り吹き飛ばされ、体が地面を滑る。

「いててて……精神がいかれてる癖して何て技を使ってくれるんだか」

 少し打った後頭部を撫でながらマリオは立ち上がった。

(マントやリフレクターは使えない。ポーラは確か反射シールドが使えるみたいだけれど、恐らく限度があるな──やっぱり、アレをやるしかないのか?)
 ──ネス……サン……ネス、サ……ン……。
「宇宙の悪魔め、闇に還れ!」

 プーが先に飛び出し、続いてポーラ、ジェフ、ネスと言った順番で駆け出す。マリオとフォックスも彼等の後に続いた。

「ポーラ!」
「うん!」
「目には目をだ! PKサンダーΩ!!」

 プーとポーラは高い位置へ浮遊すると、両手の人差し指を自らの頭へ押し付け、そこから紫色の電撃を連発した。それらはギーグに大きなダメージを与えた。

 ──アーアー……ウーウーウー……。
「くらえ! ガイアビーム!!」

 ジェフは巨大なビームを発射した。それをくらうとギーグはひとたまりも無いらしく、更なるうめき声を上げる。

 ──アーアー……アー……クルシ……イ……キ、モ、チ、イ、イ。
「! 何だ?」

 ギーグのいつもの光の衝撃波が現れた。

「ジェフ!!」

 それを浴びたジェフは、何と倒れてしまったのだ。見た目は無傷なのに、急に動かなくなってしまった。慌ててマリオ達は駆け寄り、彼を見る。

「! 隊長、ジェフが……!」

 良く見ると、ジェフが透けているのが見えた。フォックスは目を凝らし、ハッとした。

「正か、魂が消え掛けて……!?」
「おやおや可哀想に」
「!」

 そこでギーグの前に現れたのは、機体に乗ったポーキー。

「その魂はやがて消えちまうか。ギーグの餌にしようと思っていたのに、凄く残念だな」
「!! てんめえええ!!」

 マリオは怒りに我を忘れ、力任せにジャンプすると、力を込めた拳を武器にポーキー(の機体)に殴り掛かる。ゴォンと言う金属音に近い音が鳴り響き、ポーキーの乗り物は大きく傾く。

「うおぉっ!?」
「ちっ! 頑丈な乗り物だな……」

 マリオは舌打ちしながら着地した。

「ケ、ケケケ! ざまあないなっ。さっさと楽になりな!」
「そうは行くか!」

 ネスはマリオの隣へ来た。フォックスもマリオの側へ来る。

「でやあ!」
「は!」
「とう!」

 マリオはジャンプしてる際に、赤と紫に光るオーラを連れ、マリオにとって一番高い所で両手を前に突き出した。
 それを見たポーキーは機体と仲良くギョッと肩を上げ、顔色を悪くする。

「な、何だあれは!? 物凄いエネルギーを感じるんだけど!」
「マリオ!」

 フォックスは空中でマリオの前へ出た。

「おうっ! ネスも!」
「……うん、分かった!」

 ネスはマリオの考えていることを理解した。マリオは思い出した、オドルワと戦っていた頃を。そこで複数の技が一つになって生み出されたのは……。

「くらええ!!」
「ファイアフォックス!!」
「PKサンダー!!」

 ネスはマリオの後ろから、マリオはフォックスの後ろから最大の力を込めた技を大放出した。
 フォックスは巨大な炎の槍と化し、マリオ達の強力な技を連れてきた。更にネスのPKサンダーは、フォックスに触れることなく、そのまま彼と共にポーキーとギーグへと向かった。

「な! う、嘘おぉ!?」

 ポーキーは慌ててその場から機体と共に姿を消した。
 ファイアフォックスはマリオの技で火力をパワーアップさせ、ギーグに直撃する寸前、ネスの技とぶち当たった。そして大爆発が起き、全員の怒りを思い切りぶつけた。

 ──アアアアア……。
「よし、大分ダメージを与えたぞ!」

 フォックスはそう言いながら着地した。

 ──……。

 疲労を溜めてしまったマリオは、ネスに支えられながら奴を見上げた。果たしてやったのかどうか、他の人達も息を飲み込んで見守る。

 ──……ス……。
「!! ぃたっ!」
「! ネスっ!?」

 ネスの頭の中に、皹が入った衝撃が走り、ネスは思わず頭を抑え込んだ。

 ──ネス……ネス……ネス……ネス……ネス……。
「あ……あ……」
「ネスっ!? 駄目だネス! 確りしろ!」

 ギーグの目線が全て彼に集中しているとマリオ達は感じた。その分、ネスの精神が再び蝕まれようとしていた。

 ──ネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネスネス……。
「う、うあああ! ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 ネスが声を荒た瞬間、彼の体から電気の様なオーラが溢れだした。

「ぐあ!」

 マリオはバチィッと弾かれ、力はまだ回復していないから上手く着地が出来ずその場に倒れ込んでしまった。

「マリオ!」

 フォックスは彼へ駆け寄る。マリオは腕で何とか上半身を起こし、ネスを見る。フォックスもネスを見た。
 ポーラはネスの様子を見て、酷く驚いた。

「大変! ネスがギーグに精神を攻撃されてる!」
「このままじゃネスは、ジェフみたいに……!」
「させるか! っぅぐ!」
「マリオ!」

 マリオは立ち上がろうとしたが、さっきの切りふだで力を使い果たしてしまい、またひざまずいてしまった。

「くそ!」

 フォックスはブラスターを使い、ギーグへ連射する。ところが、ギーグはそちらの光弾に目を向けると、バリアで忽ち防御をしてしまった。

「な……」
「けけけっ。そろそろネタ切れってとこかな?」

 そこでポーキーが現れる。

「たった六人で力を合わせた位で、ギーグに敵うわきゃ無いだろう! けーっけっけっけ! じゃ、皆さんサヨーナラ!」

 ギーグのブラックホールがまた作り出され、マリオ達を吸い込もうとする。最早誰が攻撃しても無駄で、後に待つのは絶望のみ。
 立ち上がる力さえ無いマリオは、このまま終わってしまうかも知れない絶望に酷く悔やんだ。

(もう、何も効かないのか? 何をしても無駄なのか?)

 色々と脳内を巡らせている時、

「なら、七人目からの力はどうなんだ?」

 少し遠くから、男性の低い声がマリオ達に聞こえた。動ける者だけ反射的にそちらを向いた。
 と同時に大きな光弾がそこから発射され、ギーグに見事直撃した。

 ──アーアー……。
「やはりな。六人に対してバリアを張ってはいるが」

 その男は、銃口から煙を出している武器をガチャリと下ろした。

「それ以上の力でも無いって訳だね」

 そして彼の隣にいる少年は腰に手を当て、呆れた息を軽く吐いた。

「スネーク!!」

 マリオとフォックスは声を上げた。

「隣にいるのは……ネス?」

 ポーラはハテナを浮かべ、疑問を抱く目で少年──ラフィットを見た。
 ラフィットはネス達の側まで走ると、手から光を出す。すると、ジェフやネスの透けていた体が、みるみる元へ戻っていった。
 意識が戻り、かなり楽になったネスは、フッと瞼を開き、ラフィットへ顔を向けた。驚くのは、無理も無い。だが助けてくれたと分かると、嬉しい気持ちでいっぱいだった。

「ラフィット……!」

 ラフィットはネスに微笑み、頷いた。

「隊長、奴は怯んでいる。今の内だ!」

 遠くにいるスネークが叫ぶと、マリオは、ニッと笑んだ。

「ああ。ポーラ!」
「! うんっ」

 ポーラは首を縦に振ると、スッと立ち上がり、マリオ達の前に出た。

「な、何をする気だ?」
 ──……。

 ポーキーは、相手が何をしてくるのか分からず、汗をダラダラと流しながら彼等を見る。ギーグも同様だった。

 ──どうか思い出して……ギーグ!

 ポーラは口を開くと、静かにメロディを奏で始めた。

「Take a melody……」

 それはクイーンマリーが遺した、ギーグへの子守唄である。
 ギーグへ歌声が届くと、ギーグの様子が少し変わる。渦巻いていたグロテスクな光景が少しずつ停止し始めたのである。

「な……こ、この歌は一体何だっ。何が起こってるんだっ!」

 ポーキーはギーグの様子に驚くばかりで、大分焦りを見せている。

 ──アーアーウー……ヤ……ナ……イ……。
「and sweet harmony……」
 ──ウ……タヲ……ヤメ……ナ……サ……!
「ギーグが、苦しんでいる……!」

 プーは驚きながら言った。

「Sing a melody of……」
 ──ウタヲヤメナサイ!!

 ギーグは急に衝撃波を放った。

「うわ!」
「キャア!」

 ポーラの歌は中断され、全員吹き飛んでしまった。

「正かギーグ、正気に戻ろうとしている?」

 ポーキーは怪訝な目でギーグを見つめた。

「皆、大丈夫かっ!」

 そこへスネークが駆け寄った。

「だ、大丈夫」

 マリオは言った。

「今の歌で、奴の力も大分弱まってるみたい。だから僕達は……」
「諦めないっ」

 プーは立ち上がり、今度は彼が歌い始めた。ギーグはまたもや固まり、唸り始める。

 ──ダ……マ……レ……!

 ギーグは今度は巨大な電撃を繰り出した。

「サイマグネット!」

 ネスとラフィットは二人でサイマグネットを試みた。大きなドーム状の光が彼等を包むと、ギーグの電撃を全て吸収した。

 ──………!
「ギーグ、悪い心は捨てて」

 ネスはサイマグネットを張りながら言い放つ。

「地球をまた征服しようとするなんて、そんなことをしたら、君のお母さんは絶対に悲しむよ!」
 ──……オ……カア……サ……ン……?
「クイーンマリー……いや、マリアだよ!」
 ──……!!

 彼女の名前を言うと、ギーグはまたもや反応した。

「love grows strong now……」
「マリアの子守唄を聴けば、きっと、こんな苦しみから脱け出せる。だから最後まで……」
 ──チキュウノ……ムシケラゴトキガ……ダマルガイイ!
「うぅあああぁ!」
「プー!」

 ギーグから衝撃波が再び発動されたが、その攻撃の正体が掴めない。その技は、プーに直撃した。瞬時の強い光にマリオ達は強く目を閉じる。そして光が消えると、何とプーはダイアモンドとなり、動けない状態となってしまった。

「プー! プー!!」

 ネス達は彼の体に触れるが、何もかもダイアモンドでキラキラしていた。

 ──コレイジョウギセイシャヲダシタクナケレバ、モウウタワヌコトデス!
「だとさ、弱虫の正義の味方さん方」

 ポーキーはニヤリと笑んだ。

「こうなれば、何としてでも奴を押さえ込まなければならないな」

 スネークはギーグを軽く睨んで言った。

「でもどうしたら良いんだっ」

 マリオは歯をくいしばる。折角勝利の希望が見えてきたのに、このままでは犠牲者が増えるだけだ。これ以上の犠牲者は増やしたくない。一体どうすれば……。

「!」

 ネスは何かに反応した。

「ネス? どうした」

 フォックスは彼に振り向いた。
 ネスは耳元に手を当て、意識を集中させている様に見えた。

「ネスは、誰かの声をキャッチしたみたいだよ」

 そう言ったのはラフィットである。

「……この声……」

 その声は、ネスの心に話し掛けていた。ネスも心で会話をする。それは(ここも含めた)現実世界では、僅か数秒のやりとりだった。
 そして話を終えたネスはパッと両手を広げ、一瞬だけ光を出した。

 ──みんな、聞いて!
(! ネスの声?)

 心に話しかけられているマリオ達は自分の胸を見下ろす。

 ──今、どせいさん達の世界の位置が分かった。皆で祈るんだっ。
(い、祈るって?)

 一体どう言う訳なのかマリオ達には分からず、ハテナを浮かべてしまう。

 ──私達の世界の皆に祈って貰うのよ。
(! ポーラ?)

 続いて彼女の声も、彼等の心へと響く。

 ──皆で祈って、全世界の人々から力を貸して貰うの。そうすれば、きっと……。
(ギーグを抑えられる訳なんだなっ?)
 ──恐らくこれが最後の手段。上手くいかなければおしまいよ。
(駄目元だっ。やってやるぜ!)
 ──オシャベリハココマデデス。

 彼らの心を読んだギーグが静かに言う。

 ──サア、イナクナリナサイ。

 ギーグの力が最大限まで溜め込まれる。それは巨大な黒い弾で、マリオ達など簡単に呑み込める程である。
 そしてそれはどんどん大きくなり、マリオ達は圧倒されてしまう。

「い、いくらなんでも大きすぎるよ!」

 ジェフは足をすくませていた。これでは間に合わない。

「ハァッ!!」

 すると、ラフィットが皆の前に出、巨大な光を放った。それはギーグに直撃し、くらったギーグはそれに寄る電気で身動きが取れなくなった。

 ──ナ、ナニ!?
「ラフィット! その技……!」

 ネスはクローンであるラフィットの技は分かりきっていて、そして今の技は何なのかも分かると酷く驚いた。

「皆、早く! この力が失うまでどれくらいか分からない。急いで!!」
「ラフィット……」

 ポーラは両手を一つにし、祈り始めた。

(私の声が聞こえたら、助けてください! 誰でも良い。私達の為に、祈ってください!)




「聞こえた!」
「プリンにも聞こえたでしゅ!」

 ファルコとプリンは顔を上げた。

「みなさん、ねすさんたちのために、いのるのです。ねすさんたちのいのりにこたえたとき、そのちからははっきされるのです」
「ネス……フォックス……隊長……皆……」

 カービィは手を合わせ、目をキュッと閉じた。

「フォックス、戻って来なかったら、只じゃおかねえぞ」
「フォックス……!」

 ファルコとリンクも天井を仰ぎながら祈りを始めた。

「スネーク殿……」

 マーシスも上を見ながら祈る。

「ネス、ポーラ、ジェフ、プー……」
「お兄ちゃん……」

 ネスの母とトレーシーも手を合わせ、強く祈り始めた。そしてネスの母は、ある人物も思い浮かべていた。

(あなた、世界のどこかで、ネス達の声が聞こえたら、どうか助けてください。お願い……)

 スマブラ達は祈り続ける。彼等だけでは無く、オネットやツーソン、ハッピーハッピー村、フォーサイド、グミ族の村の人々、サターンバレーのどせいさん達、ランマ王国の女性達。その他の街や国の人々が、たった数人の戦士達の為に祈り続けた。世界が平和になる様に。戦士達が闇に勝つ様に。
 そしてとある町中。
 帰宅しようとホテルから出たばかりの、大きなトランクを片手にした大きな男性は、ネスの母の声を聞いた気がして歩くのを止めた。胸騒ぎを覚えた男は夜空を仰ぎ、ネス達の為に静かに祈り始めた。



 ──!!
「な、この光は……!?」

 ポーキーは、ギーグの空間のあちこちから小さな光の光線が無数でこちらへ集まるのを見た。それらが一つになると、ギーグのと同じ位の巨大な光弾となり、それはギーグの闇の弾を掻き消した。そして更に光がギーグの全体を覆い、身動きを止めることに成功した。

 ──ナンダト。コレガ、ムシケラドモカラウマレタヒカリダトイウノカ……!
「ネス、早く……!」

 抑えられたと言えど油断出来ないと、ラフィットは技をそのままに、辛そうな表情をしながら後ろのネスに言った。ネスは頷き、ラフィットの側までいくと、口を開き、歌い始めた。

(力を貸して、マリア……!)
「Take a melody, simple as can be
 Give it some words and sweet harmonies……」
 ──!!

 ギーグは何かに驚いていた。それは歌だけではなく、

 ──マ……リ……ア……?

 歌っているネスの側にボウッと現れた美しき女性。マリアの姿そのものだ。マリアは悲しく温かな瞳でギーグを包もうとする。ギーグは身動きが取れないまま、マリアを見つめ続けた。ネスの歌う歌も、次第に心地好くなりだす。そしてマリアも、美しい音色を奏で始める。

「Take a melody, simple as can be
 Give it some words and sweet harmonies
 Raise your voices all day long now love grows strong now
 Sing a melody of love oh love.」

 ──コンナ……ウタニ……わたしが……。
 ──ギーグ、目を覚ますんだ。そうすれば、きっと……。

 ネスは何度も同じメロディを繰り返した。歌う程、ギーグの空間が歪んでいく。
 マリオ達は祈り、ネスは歌い続けた、マリアと共に。

 ──わたしは、マダ、じょうかされなイ……モウ、オソい……。
 ──ギーグ、自分に負けちゃ駄目だ! 自分に勝たなきゃ、マリアがまた悲しむよ!
 ──……ネス……。

 ギーグがネスの名前を呼ぶと、ネスは歌うのを止め、ハッと見上げた。彼が歌を止めたと同時に、マリアも消えていった。

 ──ニ……ゲ……ロ……。

 突然、空間が大きく歪み出した。そして周りが闇に呑み込まれる感覚を、マリオ達も抱く。

「いけない、空間が消滅するわっ。このままじゃ私達も……」
「お、俺は、あえて逃げる様な行動を取る! どっかの時空にでもいってプランを練り直すつもりさ! じゃあね!!」

 ポーキーは慌てながらそう言うとどこかへ消えていってしまった。

「皆!」
「プー! 元に戻ったのね!?」

 異状から回復したプーは立ち上がった。だが、今の状況ではそんなに喜べなかった。
 そしてプーは声を上げる。

「今からテレポートを使う! 俺に掴まれ!」
「テレポートと言ったって、どこへ逃げるつもりだ?」

 スネークは肩をすくめた。プーはそれに少し黙ってしまった。

「皆、逃げて」
「え?」

 そう言ったのは、ラフィットだ。ラフィットは両腕を広げ、体から更なる光を解き放つ。さっきより空間の捻れが緩やかになった。

「僕がここをなるべく押さえ付ける! 祈る時に君達の仲間の場所をキャッチ出来たなら、間違い無くテレポートで地球へ戻れる筈だ。だから、早くここから逃げて!」
「ラフィット!? 何言ってるんだよ! ラフィットも一緒に逃げようよ!」

 と、ネスはラフィットへ近付こうとしたが、ラフィットのこの大技は攻防能力もあり、バチィッと音を立ててネスは弾き飛ばされた。

「うぁっ!」
「!」

 ラフィットはハッとネスを振り向いたが、直ぐに顔を戻した。

「ネス、早く行こう! 間に合わなくなっちゃう!」

 ポーラはネスの肩に手を置いて来させようとするが、ネスは首を何度も横に振った。

「いや……嫌だ! ラフィット! 僕達と脱出しよう! 今度こそ友達になれると思ったのに! ギガ軍から解放出来るって、思ってたのに!」
「ネス……」

 マリオは目を細めた。スネークも黙って彼等を見ていた。
 ラフィットは再びこちらを向くと、やんわりと口端を上げた。

「ネス達がいてくれたから、僕はここまでしてあげられたんだよ。それから、この力は油断したら、もう限界を越えているギーグにあっと言う間に飲み込まれる。どの道無理なんだよ。それに、思ったんだ、これはギガ様を裏切った罰だって。裏切りの罪は大きいから、裏切られた痛みは大きいから。この掟は、解放されても破る訳にはいかないんだよ」
「悪いことでも掟は守る訳なの? そんなの納得いかないよっ!」
「ネス」

 腕を強く掴まれ、ネスは肩を上げると振り向いた。フォックスは、辛そうな色をした目でネスを見つめていた。ネスは彼の目を見、これ以上の言葉を放つことはしなかった。

「スネーク」

 ラフィットは彼の名を呼ぶが、スネークは返事をせずに彼を見ていた。

「スネークもいなかったら、僕、ここにはいなかったと思う。まだギガ軍にいたかも知れない。死ぬ前にこれだけは、言っておいたから」
「俺がいつ死ぬことを許した」

 ラフィットは少し驚き、スネークに振り向いた。

「俺は兵器だろうと、弱点はある。それを埋める存在がいなくなると、いつそこを付け狙う奴が現れるか分からないからな。どうしても死ぬと言うなら、俺の手で死んで貰うからな」

 ラフィットはそう言う彼をジッと見た後、力なく微笑んだ。

「ネス! 急げ!」

 プーに掴まっていないのはネスとフォックスだけだ。ジェフは未だにぐったりしている為、マリオが背負っている。
 ネスは未だに嫌がるが、しまいにはフォックスに抱えられることになる。

「ネス! ラフィットの気持ちを無駄にするな!」
「やだぁ!! ラフィット! ラフィット!!」
「ネス……」

 ラフィットの赤い目は優しい色を持ち、ネスを見る。
 あの頃が思い出される。感謝の言葉を伝えるにはどうしたらいいかを聞いた時……。
 涙を流すネスを見つめ、そして一言呟いた。

 ──ありがとう。

「ラフィットオオオオオオオオォォ!!」

 軈てプーのテレポートが発動され、ラフィットを除いて全員がその場から消えた。
 丁度のタイミングで、ギーグはテレビが壊れたかの様なノイズを何度も発した後、プツンと音を立て、真っ暗闇へ消滅したのだった。




 赤い霧が晴れてゆき、それらが消えたのを確認してから、スマブラ達はマリオ達を探しに外に出た。
 空からフワフワと降りてくるスピリッツ。それらは自分達の体を目指して浮遊していく。
 ジェフ達の体へスピリットが入り込むと、彼等は目を覚ました。

「こ、ここは……」
「私達、戻ってきたのね」
「う、うーん……」
「ジェフ、確りしてっ」

 崖から落ちていった筈のマリオ達は、崖の上で倒れていた。そこにもスピリット達が現れ、彼等の体内へ静かに戻っていった。

「あれ、ここって……僕達、崖から落ちたんじゃ……」

 マリオはくらくらする頭を抑えながら起き上がった。

「……そうだ。クイーンマリーが助けてくれたんだったな」

 フォックスも起き上がった。

「……」

 ネスは静かに瞼を開き、ゆっくりと体を起こした。

「ネス、良かった。ネスも無事戻ってこれたんだな」

 マリオ達は安堵の息を吐いた。しかし、今のネスはあまり嬉しくない様だ。素直に喜べないと言った方が良いかも知れない。彼の気持ちは分かりきってしまい、マリオとフォックスは顔を見合わせた。

「くっ……」
「あ、スネークもやっと戻ってきたんだな!」
「……」
「スネーク?」

 スネークは起き上がると辺りを見回していた。そして暫くすると、

「……ラフィットの姿が見えないな」
「! そういえば……」

 スネークの言葉に、ラフィットの気配が消えていたことに気付く。魂が消えると同時に体も消えると言うことなのだろうか。それとも、仲間が持ち去っていったのだろうか?
 いずれにせよ、助けてくれたラフィットの事を思うと、マリオ達は黙り込むしか無かった。

「何で……」
「ネス?」

 地面に手をつけて落ち込んでいるネスにフォックスが優しく名前を呼ぶ。彼等の声に、マリオ達は顔を向けた。

「何で僕、誰も守れないんだろう。ラフィットを守るって誓ったのに、結局守れなかった」
「ネス、ラフィットは君に守られたんだよ。だから、ネス達を助けに来てくれたんだ」

 フォックスはネスの肩に手を置いてそう言うが、ネスは彼から振り切る勢いで体を動かし、涙目でこちらを睨み付けた。

「そんなの理由にならないよ! 僕は、彼にも生きてもらいたかった! だから、最後まで守りたかった!」
「ネス……」

 ネスは再び体勢を崩すと、涙をボロボロ流し始めた。

「逆に守られちゃって、僕はまだ弱いってことなんだよ!」
「ネス……」
「僕は弱いままなんだ。いくら特訓を積み重ねても、心まで強くなれないんだ!」
「ネス!」
「こんな僕は戦士なんかじゃない! 僕もあの世界で、ラフィットと一緒に死んじゃえば良かった!!」

 ──パンッ!!
 その直後、何かが弾かれる様な、痛々しい音が木霊した。マリオとスネークはその音に目を見張る。
 見開いたままのネスはこれ以上喋らなくなった。そして彼の目の前には、フォックスの合掌があった。フォックスは合わせた手から音を出し、ネスを静めたのである。

「良いか、ネス」
「……」
「ラフィットは、ネスのクローンなんだ。弱気なとこもあって、誰よりも強いPSIを使いこなせる。そして、優しいんだ」
「……」
「ネスがラフィットを守りたいと誓ったと言うことはだ、彼も同じ気持ちだったって訳だ。ラフィットは守るべき人である君の為に、最後まで戦い抜いた。彼が助けてくれた気持ちを無駄にしちゃいけない。だから、ネス、救われた命は大事にするんだ。そしてこれからは誰の為に戦うのか、良く考えるんだ」
「これからの、僕?」

 真顔だったフォックスの表情が、次第に優しい微笑みとなる。

「ラフィットだけじゃなく、守るべき人々は他にもいるだろ?」

 守るべき人々……。
 そこでスマブラ、ネスの仲間三人、そして、ネスの母と妹が、マリオ達のもとへ漸く姿を現した。

「それに……ラフィットはまだ死んだとは限らない」
「……!」
「きっと、別の世界へ行ったんだと思う。またいつか会えるさ。信じよう」

 ネスは涙をまた一筋作り、少しうつ向くが、ゆっくりと頷いた。

「そうだよね……いつまでも泣いてたら、彼も悲しむかも」

 腕で目を擦り、表情を凛々しくさせた。

「皆の為に、もっともっと強くなるよ! ママ、トレーシー、オネットの皆──この世界の為に、ギガ軍と戦うっ」

 フォックスも頷くと、彼の頭をそっと撫でた。
 そこで、空から何か光が一つ降り、ネスの側へ舞い落ちた。それは宝玉の欠片だ。ネスがそれを拾うと、欠片から優しい光が放たれ、彼の体内へ吸い込まれていった。ネスは、その欠片をギュッと握る。

「これは、あの子からの贈り物だって、信じてる」
「ネス……」

 ネスはスクッと立ち上がり、マリオ達のとこへ向かった。フォックスも少ししてから立ち上がり、ネスの後ろをついていく。

「隊長、僕も連れてって」
「……良いのか、ママやトレーシー達は……」
「まだ、完全な平和じゃないんだよね? 欠片を全て集めて、今度こそギガ軍を倒さなきゃならない。それが達成するまで、僕はオネットに帰らない」
「……分かった」

 そこへ、ネスの母とトレーシーが彼のもとへ行く。

「ネス、本当に強くなったわね。私は我が子を誇りに思うわ。パパが帰ってきたら、言っておいてあげる。だから、安心して旅に出なさい」
「ママ……」
「但し、ホームシックにはならない様にね。きっと、この世界じゃない世界へ行くことになるんでしょ? 寂しくなったら、貴方の沢山の仲間達に甘えること。良いわね?」
「そ、そんな恥ずかしいこと無理だよっ」

 そんなやりとりに、スマブラ達は苦笑した。

「お兄ちゃん!」
「トレーシー……行って来るよ。バイト頑張ってね」
「……うん! お兄ちゃんも頑張ってね!」

 寂しい気持ちを押し隠し、トレーシーはニコッと笑った。

「ぽえーん」
「どせいさん!」

 いきなり現れたどせいさんは、バウンドを利用して一気にジャンプして来ると、ネスの肩に飛び乗った。

「わたしもいきます。もっといろんなせかいをみてみたいのです」
「流石、さすらいの旅人だね」

 マリオはクッと喉を鳴らした。

「どせいさんもいてくれると心強い」
「? どう言うことだ、メタナイト?」
「マリオ達は知らなかっただろうが、彼は我々に、ギーグを止める方法を教えてくれたのだ。最後の手段と言っていたが、彼がいなければ、ギーグを止められず、マリオ達も救えなかっただろう」
「そうだったんだ」

 ネスは感心するとどせいさんに微笑んだ。

「ありがとう、どせいさん」
「……わたしにできるさいだいのちからは、これくらいです」

 どせいさんは表情が分からないが、感情表現か、ネスの肩の上で小さくジャンプした。

「ネス!」
「ポーラ! ジェフ! プー!」

 ネスの仲間三人は、一緒に彼の前へと現れた。

「ネス、元気でな。必ず帰ってこいよ」
「帰ってきたら、色々な発明品を見せるから」
「ネス……」

 最後に、ポーラが一歩前に足を動かし、ネスの手を両手でギュッと握った。

「絶対帰ってきてね。私、待ってるから」
「……う、うん」

 ネスの頬が少し熱くなった。それに釣られ、ポーラも頬を染める。

「じゃあそろそろ良いかな、おふたりさん?」

 マリオが態とらしく横から割り込んでみると、二人は慌てて離れた。

「今は一刻を争うからな。次の世界へ行かねばならん」

 マーシスも言った。

「う、うん、分かってるよっ」

 ネスは欠片を片手にマリオに近付いた。マリオの持つ大きな欠片とネスの持つ小さな欠片が光輝き、一つに合わさった。

「……」

 スネークはラフィットのいた方向を向き、あまり納得いかない様な顔になる。だが乗り遅れてはならないなと、マリオ達に振り向いた。

「じゃあみんな、行って来るよ!」
「ネス、またねー!」

 マリオ達を欠片の光が包み、やがてその世界から消え、次の世界へと向かった。




「……」

 丘の上にはディバが立っており、平和に戻った景色を眺める。

「……居心地、悪くなったな。だけど、例のものの実験を試す時が来た……」

 そして、彼もその場から消え去った。後ろにいた部隊や軍団も、後を追う様に消えていった。










 ──to be continued──