Future Pilots 欠片がスマブラを導いた場所、そこは公園だった。真ん中には象徴する様な噴水が大きく構えてある。他にはベンチがあり、周りは豊かな木々が囲んでいて、鳥達の歌声が時折聴こえた。 更に奥を見渡すと、未来の大都会が待っていた。大きなビルが建ち並び、あるとこではビルの周りに線が描かれた様な道があり、そこを未来系の車が走っていた。 「フォックス達の世界と似てるね」 マリオは手を額にかざして見渡す。ピカチュウも、マリオと同じ仕草をとった。 「だけどこの世界は初めてだ。そうだよな、ファルコ」 「ああ。似た様な都市は飽きる程行ってたが、俺もここに来るのは初めてだ」 フォックスとファルコは顔を合わせて話した。 「と言う訳だ。こちらにも情報が全く入ってないから、手分けして聞き込みに行こう」 フォックスの意見にマリオは頷いた。 「それが一番だな」 スマブラは公園から出るとバラバラに解散した。 走る車を見ていると、車にはタイヤが付いておらず、浮遊して移動しているのが多い。中にはタイヤの付いてる少し古めのもあるが、タイヤ無しの方が十分速いスピードである。マリオとピカチュウはまずそれに驚く。 「タイヤが無いとか、一体どう言う仕組みなんだろ」 「ピカピー?」 暫くそれを見物していた一人と一匹。その時両者の腹の虫が小さく鳴り、気付いたマリオは自分の腹を見下ろし、軽く擦った。 「ちょっと小腹が空いて来たな。どっかに店とか無いかな」 「ピッ! ピカピ!」 ピカチュウが何かを発見したらしい。小さな手でマリオを向かせる。道路の向こうに、小さな喫茶店があったのだ。 「お。ジャストタイミング」 マリオはニッと笑むと、左右を確認してからササッと道路を渡り、早速喫茶店に入る。 扉を開けると、鈴の音がお洒落に鳴り響く。中には、皿を拭いているマスターと、緑の服に濃い青の短パンの短髪少年以外誰もいなかった。短髪少年は店の者らしく、モップで床を掃除していた。 「いらっしゃい!」 少年はマリオ達に気付くと、元気な声を出した。 「好きな席に着いて。マスターと話したかったら、カウンターでもOKだよ」 「あ、うん、ありがとう」 マリオはとりあえずカウンターの席に着くことにした。ピカチュウもマリオの頭から降り、カウンターテーブルの上に座る。 「いらっしゃいませ。何にしますか?」 皿を拭くマスターが言うと、マリオとピカチュウは、テーブルにあるメニューを眺める。 「えーっと、じゃあコーヒーと……」 「ピッカ?」 「ん? どうしたピカチュウ?」 ピカチュウがマスターの方向を見て不意に声を上げ、マリオは顔を上げた。そしてピカチュウの向いてるとこを見る。明らかに目線の先にはマスターしか映らない。 整えられた短い茶髪、確りした眉、マスターの服が妙に似合わない程の、見るからに逞しい体。そして、目あたりにある、小さな傷跡。マリオが脳内でそう思っていると、ある人物を描いた。 「あ、ああああっ!!」 そしてある人物を思い描いたマリオは、驚いた表情を乗せては彼に人差し指をつきつけた。その声にマスターはこちらを向くと、そこで初めてマリオ達の顔をちゃんと見たらしく、おまけに顔見知りなのか目を驚かせた。 「お前正か、キャブ!!」 「シイィ!」 マリオが名前を上げる正にその時、大きな片手が彼の口を抑え込み、その犯人のマスターは焦りながら口に人差し指を当てた。 「何やってんの、マスター?」 物音を聞いた少年がこちらを向いた。 「ああいや、何でもありません、クランク。掃除お疲れ様。休憩時間にしても良いですよ」 マスターは冷や汗を流しながらも平静を装った。 「分かったよ、マスター」 始めはハテナを浮かべていたクランクだが、頷くと、モップを片付けに行った。 そこでマスターは、気付けば窒息直前のマリオの口から手を離した。 「ぶはぁ! はぁ……はぁ……い、いきなり何するんだよっ」 と、マリオは小声で怒鳴る。 「お前、キャプテン・ファルコンだろ? 何やってんだよ、こんなとこで」 「ここではバート・レミングと呼んでください。私の正体がバレてしまいます」 そう言うマスター──バートに、マリオは眉根を寄せた。 「正体って、キャプテン・ファルコンって言う?」 「ええ、そうです。今の私は、隠れている身ですから」 何か訳有りなのかと思えば、マリオもバカでは無い。 彼は、エフゼロと言うレースの凄腕パイロット、そして、悪党を捕らえるプロの賞金稼ぎだ。身を隠す最もな理由は、恐らく後者だろう。 そして彼がここにいると言うことは、ここはエフゼロの世界だと分かった。 「ところで、なぜマリオさん達がこんなところへ来れたのですか? スマッシュ王国以外で会うのは、確か初めてでしたよね?」 話しながら、バートはマリオにコーヒーとティラミスを、ピカチュウにはオレンジジュースと、マシュマロを積めた小さな器を出した。 「ああ、その事なんだけど、実はこう言う訳で……」 「……そう言う事情だったのですか」 「だからキャプ……じゃなかった、バート、良かったら力になってくれないか?」 「……その様な事態になってしまっては、このまま放っておく訳にはいきませんね。良いでしょう、力になります」 「バートならそう言ってくれるって信じてたよ」 「ピッカ!」 マリオがウィンクし、ピカチュウがマシュマロを持つ手を掲げて喜ぶと、バートは微笑み頷いた。 「何か思ったんだけど、ファルコンが敬語使うとかすんごい違和感だよな、ピカチュウ」 「ピィ……」 ピカチュウはマシュマロを口に付けたまま耳を垂らした。バートはそれを聞いて乾いた笑いを浮かべる。 「ハハッ。マスターの時は、この口が自然となってしまいましたよ」 それにマリオはうーんと考えた後、 「──ま、敬語も悪くないかもな。何か紳士で格好良いし」 「ピカ!」 「それ程でもありませんよ」 とそこへ扉の鈴の音が響いた。今度の客は若い男性の二人である。 「いらっしゃい、リュウさん、ジャックさん」 マリオ達は彼等に振り向いてからバートを見て、 「常連さん?」 「ええ。彼等もエフゼロパイロットなんです」 「マスター、いつもの」 「かしこまりました」 男性二人は、マリオの隣に腰を掛けては早速注文をした。相手が常連だからか、バートは直ぐに対応し、ササッとコーヒーを準備した。 二人の男性の内の一人は金のパンクで、黄色い稲妻がトレードマークの青い服を着ている。そしてもう一人は、赤に近い茶の短髪で、赤い服に青いジャケットを着ていた。 「あれ? この辺じゃ見掛けない顔だな」 赤茶の男が先にこちらを向いた。 マリオ達はそこで自己紹介をする。 「僕、マリオって言うんだ。こっちはピカチュウ。宜しくな」 「ピッカーチュー」 「俺はリュウ。リュウ・スザクだ」 赤茶髪の男──リュウは親指を自分に向けた。 「俺はアイドル歌手のジャック・レビン! サインは後にしてくれよ」 金のパンクの男はそう言った。 「ところでリュウもエフゼロパイロットなんだってな」 「ああ。日々のトレーニングは怠ってないぜ」 「って無視すんな!」 無視して話すマリオ達にジャックは思い切り突っ込んだ。 「マリオさん、ジャックさんもかなりの腕前パイロットなんですよ」 バートはコーヒーをリュウ達の前に置きながら言った。 「え、そうなの? 僕はてっきりお調子者アイドルなのかと」 マリオは目を皮肉る様に細め、冷ややかにジャックを見る。 「失敬な奴だな。こう見えても俺、リュウと一緒に毎日トレーニングしてるんだぜ?」 「え? さっきアイドル歌手って言ってたじゃん。そっちの方はどうしたの?」 「それは前のスターさ。今はエフゼロのスターな訳よ。だけどその為だけに走る訳じゃねえ。最終的にはリュウと同じ、チャンピオンが目標なんだからな?」 と、ジャックは得意気に話した。マリオは結局そこんとこは懲りてないんだなと、だけどその自信に、自然と顔がにやけていた。 「だけど、今の俺の本来の目標はそれじゃない」 リュウは作った握り拳に誓って言う。 「いつか、キャプテン・ファルコンに勝つ!」 「ほお、あの伝説のパイロットですか」 バートは皿を拭きながら言った。マリオはそんな彼をチラッと見る。 「ああ。いくらレース中に一位を取っても、最後の最後で、俺はいつもあいつに越されるんだ。次こそ、俺は奴には負けない! ファルコンを倒したら、最初にマスターに報告するよ」 「……楽しみにしています、リュウさん」 バートとマリオの目が合うと、こっそり微笑みあった。ピカチュウも声を出し、ワクワク感を表現していた。 都内を歩くフォックスは、近くにいる人を呼び止め、情報を聞くことにした。しかし欠片の情報は一つも入ってこず、フォックスは軽く溜め息をついてしまう。 ただ殆どの人からはその代わり、ここら辺に来るなら、なるべく複数で歩いた方が良いと言われる。なんでも、エフゼロレースを観戦する為に遠くから来た人を狙う不良や暴走族がうようよしているとか。 フォックスにその心配は無用なのだが、それで初めて知ったのは、ここはキャプテン・ファルコンのいる世界だと言うこと。 「そう言えば、この世界のマシンて確か……」 スマッシュ王国で、C・ファルコンがこの世界のことを教えてくれた時、何か引っ掛かっていたことが、漸く解決された。それはマシンのことである。時速マッハを越える程速く走れるのには何か理由があると思っていたが、この世界で初めてそれを目にした瞬間、それが解決され、スッキリした気分だった。 タイヤの無いマシンには特別なシステムが搭載されており、反重力──つまり無重力状態で走ることが出来る為、レース用に改造されれば、音速並のスピードを出すことが出来るのだ。 しかしその情報だけではまだ役に立たないに等しい。それに、C・ファルコンの行方も分からなければ、意味が無いのだ。 (まずはファルコンを探してみるかな) そう思って暫く歩いていると、後ろからマシンの大袈裟なエンジン音がけたたましく鳴っているのに耳を動かす。 瞬時に強い殺気を感じるとその場をジャンプした。フォックスのいた所に、マシンが二、三台高速で突っ込んできた。それらは目の前の大きな店に激突し、通行人のざわめきや悲鳴が響いた。 突っ込んだマシン達は、懲りずにフォックスの方へ方向転換しようとする。 「奴ら、俺を狙ってるんだな?」 ここから逃げようと考えるが、その間に被害者が出るのはゴメンだ。俺だってマシンみたいな化け物と戦ったことがあるんだから、奴らを相手にしても戦法はある。 マシンがこちらを向き、フワリと浮いてはこちらへ来ようと、その場でブーストを使おうとしている。フォックスは身構え、懐のブラスターを握りスタンバイする。 その時、彼の横で別のマシンが止まった。そのマシンは、全面的に黄色だ。 そしてそこから一人のパイロットが現れた。彼もまた黄色いパイロットスーツで、茶髪の40代くらいの男だ。彼はマシンから顔を出すと、液体の入った小さな瓶を、マシン達に向かって投げた。地面に当たると、そこから広範囲に渡って濃い白煙が吹き出した。 「うわ! 何だこりゃ! 真っ白で見えねえ!」 マシンの運転手らしき若い男性の声が煙の中から聞こえる。 フォックスはポカンとしていたが、 「早く私のマシンに乗りなさい」 と、黄色い男が言ってきたので、少し警戒しながらも素早くそのマシンへ乗った。マシンは背中を向けると、たった三秒でその場から姿を消した。 マシンは丘の上で止まり、フォックス達はマシンから降りた。 「怪我は無いかね?」 「あ、はい、大丈夫です。助けてくれてありがとうございます」 「お礼は構わないさ、ああ言う不良絡みとは、日常茶飯事だからな」 「俺、フォックス・マクラウドです。貴方は?」 「私はロバート・スチュワートだ。皆からはドクター・スチュワートと呼ばれているがね」 二人は自己紹介しながら握手した。 「仲間から話は聞いてます。何でも、過去のエフゼログランプリで大規模な事故が発生した時、スチュワートと言う医者のパイロットが負傷者の治療にあたったとか。敵味方関係無く……」 その仲間とは、言うまでもなくキャプテン・ファルコンのことで、大怪我した彼もスチュワートには世話になったと言う。 「エフゼロレーサーは皆ライバルであり、兄弟だからな。それに、医者として、当然のことをしたまでだよ」 スチュワートは丘の上から都会の景色を眺めながらそう言った後、顔をこちらへ向けた。 「ところで君、フォックス・マクラウドと言ったね?」 「え? あ、はい、そうですけど……」 「ふむ……」 その後は暫し黙って、フォックスの容姿や服装を、細い目で見る。フォックスは、何をジロジロと見ているのだろうと、不思議でならなかった。 「……君はこの世界とは異なる──所謂、異次元の世界から来た。違うかね?」 「! な、何故それを?」 「やはりそうか」 スチュワートはそう呟いたきり、フォックスの質問に答えること無くマシンへ向かう。フォックスは何も答えてくれない彼にハテナを浮かべるしかなかった。 マシンを動かした時、スチュワートはフォックスを見る。 「良かったら私の研究所まで来ないかね? 君に会わせたい者がいる」 「お、俺に会わせたい人?」 初対面で自己紹介したばかりの俺に、何故スチュワートは? 益々疑問を抱くことになった。 「まあとにかく、私のマシンに乗りなさい。研究所は都会から離れてるから、不良なんか来ない」 と、スチュワートはフッと口端を上げる。 ──そんなこと言われたって……。 ──でも、俺と会わせたい人って、一体誰なんだろう? そこはかなり気になるな。 フォックスはさっきと同じ警戒心を胸に、スチュワートのマシンへ乗った。スチュワートは小さなモニターを見ながら、小さなキーボードに指を走らせた。 青い手袋を付けた指が異常な速さでキーボードを駆け巡り、小さなホログラムが目の前に表示される。 それをびんぞこ眼鏡が見つめていた。 「ふむふむ、超能力PSIの達人。宇宙人と戦った経験あり。好きな食べ物はハンバーグ。飼い犬の名はチビっと」 「すっごーい! まだ名前しか言ってないのに! デジボーイってもしかして超能力者!?」 さっきとは別の場所の国立公園で、ネスは彼に目をキラキラと輝かせていた。 デジボーイと呼ばれた、青と白のコスチュームを着た茶髪の少年は、人差し指で眼鏡を上げた。 「ボクとこのコンピュータは一心同体だからね。超能力者と言われれば、間違ってはいないね」 「凄いなぁ。ねえねえ、もっと色んなデータを見せてよ!」 「ボクの許す範囲内で君にデータを公開すると、何千ものデータを見せる結果になるけど良いかい?」 「そ、そこまで見せなくても良いよ」 流石に日が暮れるだろうし、ネスもスマッシュ戦士としてやらねばならないことがある。それに、仮に全部見せてと言えば、どせいさんに叱られるだろう。 「あ、こんな所にいやがった!」 コンピュータに夢中になっているデジボーイとネスのとこに下駄の音が響いた。その音と彼の声に、ネス達は顔を上げた。 そこにいるのは、一寸時代を感じさせる多少ボロい服に、少し大きな刀を背負い、片頬に十字の傷がある少年だった。 「おいそこの赤帽!」 「は、はい!」 少年は指をビシッとつきつけ声を上げたので、ネスは驚き、反射的に気を付けをして返事した。 少年は背中から刀を引き抜き、ネスの顔ギリギリまでつきつけた。 「ここはオレの縄張りだ。お前みたいな見るからによわっちい奴が入り込むと、危険だぜ?」 「ぼ、僕は弱くなんか……!」 「問答無用!」 「ひいー」 ネスは肩を上げ、目を強く瞑り恐れおののいた。 「やれやれ、いつからダイゴローくんは、この国立公園の特別所有権を持つ様になったんだい?」 デジボーイはコンピュータをいじりながら言った。 「な、何だと!?」 「ま、君みたいなおちびさんには、所有権のしょの字も分からないだろうけどね、一生」 「バッ!! バカにすんじゃねーぞ!」 ダイゴローの刀の先がデジボーイへ向けられる。 「忘れてはいないだろうな? 今度はエフゼログランプリで勝負だからな!」 「このボクに勝てるとでも思っているのかな? 何度勝負したって、このコンピュータの前では負けも当然なんだよ」 「今に見てろよ、電気頭! 思いも寄らない走りを見せてやるからな!」 (エフゼログランプリ?) ネスは、ダイゴローの言葉に何かが引っ掛かった。エフゼロやグランプリのことはデジボーイから聞いている。そしてネスはそれは大人達のレースだと思い込んでいたが故、ダイゴローの言っていることは冗談か、それとも本気なのかと、思わず目を見張る。 「ねえ、デジボーイ。彼の言ってることって……」 正かね、と信じて彼に迷わず尋ねると、デジボーイがこちらを向いた際に眼鏡のレンズが一瞬キラリと光って見えた。そして次に見たのは、彼の真顔だ。 「君はエフゼロの話をちゃんと聞いていなかったみたいだね。エフゼロのレースは、特別プランが発表されない限りは、基本的に法律が無いんだ」 「法律が無い、ってことは?」 ネスは改めて聞こうと真剣になる。 デジボーイは少し下がった眼鏡をクイッと上げた。 「エフゼロは速さを競うだけでは無く、生死を競うこともある。つまり、相手のマシンを破壊したって、誰も責任は取らないんだよ」 「それは、パイロットが死んじゃっても?」 「お前何にも知らないんだなー」 両手を頭に回しているダイゴローが呆れて呟く。 「あのレースには極悪人も何人か参加してるんだ。大人から子供まで、とにかく命を捨てる覚悟のある奴は、みーんな参加自由なんだぜ?」 と、眉を上げてニヤリと笑む彼にネスは声を上げる。 「そ、そのレースには子供も参加して良いの!?」 「ついでに言っておくけど」 デジボーイは言った。 「ボク達は既に何回もレースに参加しているんだよ」 「そ、そうなんだ……っ」 ネスは驚いたまま納得したので、まるで興奮しながら喋っている風になった。それを聞いたダイゴローは、 「よし、じゃあ新米の為に、今日は特別にオレのトレーニング場を見せてやる!」 と、自分の張った胸をドンと叩いた。 「え。僕レーサーになるつもりは……」 ネスはそう言おうとするが、ダイゴローは話を一切聞かず勝手に進ませる。 「心配するな。弱虫なお前も直ぐに強くしてやるぞ。有り難く思え!」 「だ、だから僕は弱虫なんかじゃ……」 そう言うが、ネスの声は小さいので、ダイゴローの耳には全く入らなかった。 「じゃあオレのマシンに乗りな。ついでにデジボーイにも見せてやるぜ」 「ボクより弱い君のトレーニング場なんか見たって仕方ないけど、折角だから見に行ってあげるよ」 デジボーイはホログラムを消しながら肩をすくめた。 ネスはどうしようも無いかもと諦めた。 「今から赤帽は俺の子分だからな! 分かったか!」 「う、うん、分かった。それじゃあ僕も行くよ、おちびくん」 「オレはおちびくんじゃねえ! ダイゴローだ!」 「わ、分かったよ」 スネークは裏通路を歩いていた。そこには道端で深い眠りにつく浮浪者や、座りながら酒を片手に談笑する団体。彼等の周りにはゴミが散らかっていた。他にもナイフの手入れや、壁のマークにそれを的当てしているならずものの連中もいた。たまに奴らはこちらにチラッと目線を向けるが、あまり気にしてない様だ。 「こんなとこに来ても無意味か」 スネークはここに手掛かりがあるかもと踏んだが、どうやら無駄足だった。聞き込んだって、誰もそれについては興味なさそうである。宝玉と言う言葉に食い付くとも予想され、余計な面倒に巻き込まれるのもゴメンである。 漸く人がいない場所に出たが、先程よりも更なる殺気を抱いた。それを感じたスネークはとっさに銃を取り出し、上空に向かって撃ち上げた。すると、上から降ってきたナイフと相殺した。撃たれた弾みでナイフはクルクルと上へ回転していき、持ち主の手に戻る。 「何の真似だ」 スネークはそのままの体勢で問う。 ナイフを持った影は、廃墟となった小さなビルの上から飛び下り、スネークの目の前に立つ。それを見たスネークは、銃を彼に向けた。 「気にするな、ほんのご挨拶をしただけだ」 そいつは黄色の鋭い目付きをした大きな亀人間だ。肌は黄緑で、オレンジに近い茶色の甲羅を背負い、二本足で確り立っていた。 彼の今の言葉に、スネークは呆れた吐息を漏らす。 「もし俺じゃなければ、死体にご挨拶するとこだったんだな」 「俺は依頼を受けない限り、武器は人に向けねえ」 「なら、俺を殺せと誰かの依頼を受けた訳か」 「それは違う」 少し見開いたスネークに、亀人間は鋭い口をニヤリとさせる。 「お前は僅かだが、俺と同じ血の匂いがしたからな」 「……俺を殺し屋と一緒にするな」 今のスネークの声には怒りが入っていた。 「殺し屋じゃ無いのか。残念だ。もしそうだったらパートナーにしてやるのに」 そう言った亀人間はジャンプし、スネークの弾丸を避けた。そしてそのままさっきのビルの上に着地した。 「俺の名はピコ。名前は許した相手にしか教えねえから覚えておけ」 「……ソリッド・スネークだ」 スネークは目だけを彼に向けた。 「蛇(スネーク)……か。覚えておこう」 ピコはそう言い残して去っていった。スネークは、彼が消えたその場所を暫く見ていた。 「オレ達の道の邪魔をするとは良い度胸じゃねえか!」 「ああ? 信号無視してるてめえらが悪いんだろーが!」 都内のスクランブル交差点で、様々なマシンや人々が混雑している。原因は、その交差点の真ん中での彼等の揉め事だ。 ファルコは普通にそこを歩いてたのだが、急に現れた数台の暴走マシンにひかれるところだった。それを避ける為に、一台目のそのマシンを踏み台にしたのである。それに怒ったマシンの持ち主が現れ、今に到る。 その男は一般人より一回り巨体の黒人スキンヘッドで、サングラスを掛けている。周りで見ている一般人の話に寄ると、どうやら彼は暴走族のヘッドのようで、名前はマイケル・チェーンと言う。 「ほう、このオレに指図するのか。ぶっ殺して便器にぶち込んだろかオラア!!」 でかい声で言い放つマイケルだが、相手も元宇宙暴走族のヘッドだ。これくらいでビビることはない。 「ヘッ。そんな風に怖がらせるなら、他の奴らに言うんだな」 ファルコはニヤリと笑みながら辺りをねめ回す。睨まれた一般人達はヒッと恐れる。 「オレに恐れないのか……気に入った」 マイケルはニヤッと歯を見せて腕を組んだ。 「ミュートシティのハイウェイで、デスマッチレース開始と行くぜ!!」 「うおおおおお!!」 マイケルが拳を掲げて叫ぶと、子分達も拳を掲げ声を上げる。 (ハイウェイ?) ファルコは見開く。 「オレ達を怒らせるとどうなるか、思い知らせてやるぜ」 マイケルはさっきからにやけているが、さっきよりもイヤらしい笑みだった。 ファルコはさっきの言葉を思い出し、面倒事かと思うと溜め息を漏らし、マイケル達が即場所を決める間にその場を去ろうと歩き出した。 「おいテメェ、どこに行く気だ」 後ろから指を差されるが、ファルコは歩きながら、顔だけを横に向け、手をヒラヒラさせる。 「面倒事は嫌いなんだよ。俺には今やるべきことがあるしな。今度会った時にその挑戦を受ける。楽しみは後に取って置いた方が良い」 そう言ってここから消えようとするが、マイケルの次の言葉に思わず立ち止まった。 「ハッ! てめぇ逃げるのか? とんだ腰抜だったんだなぁ」 「……ああ?」 ファルコはゆっくりと振り返り、目を細めて睨み付けた。 「口だけは達者で、結局オレとは戦いたくないんだな。よーく分かったぜ」 ファルコはそれを聞いて、少しずつ怒りを込み上げていた。マイケルはそれを知ってか知らずか、フッと口端を上げる。 「戦いたくなけりゃ良いのよ? まだ若いのに死にたくないわよね? 分かるわぁ」 おかまっぽい口調で言うと、周りの仲間達はヒヒヒとイヤらしい笑いを浮かべていた。 「二度とオレ達に迷惑掛けんじゃねーぞ、弱虫。同類のお仲間さんにも言っておくんだな」 そう吐き捨てたマイケルは自分のマシンへ戻ろうと歩き出した。 「おい一寸待て。今のは聞き捨てならねえ」 ファルコは怒りを冷静に抑えながら彼等に指を差した。マイケル達は立ち止まり、一斉に振り向く。周りの一般人達もまたざわめき始めた。 「腰抜とか弱虫とか、俺が立ち去ろうとすれば好き放題言いやがって。いや、それはまだ許す。俺の仲間達まで侮辱しやがったのを、俺は許さねえ! 良いぜ、その挑戦、受けて立ってやる!」 「……フフン、そう来なくっちゃなぁ」 マイケルは振り返るとニヤリと笑った。つられて彼の仲間達も改めて笑う。 「ハーイ、そこの鳥さーん」 その時、ファルコの後ろからオカマの声が聞こえた。ファルコが目を丸くして振り返ると、紫系の服を着たグラサン男がこちらへ歩いてきた。笑っている時は、肌が黒いからか、見せる歯がより一層白く光って見えた。 「貴方の熱い魂、私にも伝わったわ。キュンキュンしちゃった!」 「な、何だテメエは……」 ファルコは青筋を作って一歩退いてしまった。 「おい、ババ、正か余計なことするんじゃないだろうな」 マイケルが不機嫌そうに言うと、ババと呼ばれたオカマ口調の男は腰に手を当てた。 「マシンを持ってない子にレースを挑んだって何の意味もないじゃない。ったく、単純にも程があるわよ」 そしてババはファルコに笑顔を向けた。 「良かったら私のマシンを貸してあげるわ。メンテナンス終わったばかりだし、性能もバッチリよっ」 と、親指と人差し指で輪を作る。そんな彼にファルコは、ハァと言うしか無かったが、 (確かにマシンは持ってなかったな。仕方ねえか) と思うと、 「ああ、分かった。暫く借りるぜ」 と言うしか無かった。 「私のマシンはとっても良い子だから、可愛がってあげてねー」 ババはパチンと指を鳴らし、ウィンクした。彼のマシンとはどんなものだろうかと不安なファルコであった。 「それで、ここに?」 「そうよ。もう王宮生活に飽々しちゃったから、刺激的な都会で有名なこのミュートシティに遊びに来たって訳」 とある小さなレストランにて、リンクは、上に束ねた長い髪を二本に分けた女性と共にお茶を交わしていた。 彼女の名はプリンシア・ラモード。アラビア系を連想させるピンクの服を着、頭にはハート型のサングラスを掛けている。そして彼女はデザート王国の王女であるが、彼女が今話していた理由に加え、エフゼロレースをこの目で見たいが為に王国を脱け出したと言う。 「でも国の人達は心配してるんじゃないんですか?」 「いいのいいの、エフゼロを観戦したらこっそり帰るから、心配要らないわ」 プリンシアは紅茶を上品に飲む前に言った。 「そう言う問題じゃ……」 「何か貴女、どことなくゼルダ姫を思い出させるわね」 リンクの帽子から妖精のナビィが現れた。 「ゼルダ姫とはどなたのこと?」 プリンシアはカップを口に付けたままナビィを目で見上げた。 「彼女も城下町で遊びたいからって城から脱け出したのよ。お姫様って、似たところがあるのね」 「……そのゼルダと言う方とは話が合いそうね」 クスッと微笑み、空になったカップを小皿に置いた。 「いつもいつもあーだこーだ言われて、自由な時間なんて無かった。私だって遊びたい時だってあるわよ。それの何がいけないのっ」 「……確かにそうですね」 こう言う年頃の姫君は、世界をもっと知りたい年頃なのだろう。ゼルダも小さい頃はそうだった。 「ねえ、確か貴方リンクって言ったわよね?」 プリンシアはテーブルに手を付き、身を少しずつ乗り出した。 「ああ、はいそうですが」 「剣士……なのよね」 「ええ」 彼女の質問にリンクが何度も頷くと、プリンシアはニッと微笑を浮かべた。 「貴方、私の護衛をしなさい」 「え……ええ!?」 急な命令口調にリンクは戸惑う。序でにナビィも驚いていた。 「私が無事じゃない格好で戻ったら皆煩いから、貴方に守って貰いたいの。勿論、ただでとは言わないわ」 「いや、でも俺、他にやるべきことが……」 「私がそのゼルダと言う人だったらどうするの?」 「それとこれとは話が別ですっ」 そう言い張ったリンクに、プリンシアは軽いショックを受けたようで、次第に目を潤わせる。それを見たリンクは、泣かせるような言動をしてしまったかとハッとした。目線を周りに向ければ、客達の視線を痛い程感じてしまっているのに気付く。 「そのゼルダというお方は、よっぽど大切な人なのね」 「あ、えーと、その……」 「私だってか弱い姫なのに、酷すぎるわっ!」 プリンシアは白いハンカチを取り出すと、口を押さえながらワッと泣き出してしまった。周りの視線が更に集まり、中にはこちらを睨みながらヒソヒソ話している人達まで出ている。 リンクは益々焦りを見せ、どちらもどうしたら良いか必死で考えた。 「リンク、今は諦めた方が良いわ。でないと、いつまで経っても泣き止まないわよ、きっと」 ナビィは諦めたか、そんな言葉をリンクに放つ。 悩み中だったリンクはそう言われると、落ち込みながら溜め息を思い切り吐き、 「分かりました、護衛しましょう」 と、遂に言ってしまった。 やるべきことが他にもあるのだが、この騒ぎをしずめるにはこうするしかなかった。 それを聞いたプリンシアはピタリと泣くのをやめ、パッとハンカチを離すとキラキラと目を輝かせた。 「決まりね! 感謝するわ!」 それを見たリンクの目が少し冷たくなる。 「……嘘泣きですか?」 「ミュートシティは常に危険が付きまとう都会としても知られてるから、一人じゃ不安だったのよ。良かった、貴方がそう言ってくれて。暫くの間、宜しくねっ」 プリンシアは小首を傾げ、パチンと星を飛ばしてウィンクした。 リンクとナビィは顔を見合わせると、ハァ、と深い息を吐きながら、またもや頭を垂らしてしまった。 「ミュートシティってホント広いねー!」 「科学が随分と発達しているな」 カービィとメタナイトは、軽く浮遊しながら都内を移動していた。徒歩よりこちらを選んだのには理由があり、彼等の身長は実は約二十センチしかなく、人混みの中を歩くのは明らかに危険だからである。 短い手を上下させながら飛んでいるカービィは、前方であるものを見掛けた。 「メタナイト、あれ」 翼を使って飛んでいるメタナイトは頷く。彼もカービィと同じものを見たようだ。 そしてカービィの手を掴むと、飛行スピードを上げて移動していった。 ある場所で、パトカーの集まりがあった。それらはある銀行に向けられている。 「近付くんじゃねえ! でねえとこの女をぶっ殺すぞ!!」 「キャアアアァ!!」 その建物の前で、男が女性の首に腕を回して抑えながらナイフを突き付けていた。どうやら銀行強盗のようだ。 パトカーの側で銃を向けている警官達。その中で唯一の女性がいた。彼女は、軽くウェーブした茶色い長髪を持つ。 「彼はかなり興奮しているわ。刺激しないで。タイミングを狙うのよ」 「はっ」 その時、男の横から風が吹いてきた。それはなぜか男にしか吹いてない。そしてそれは、男のナイフを難無く飛ばした。 「な、何だ!?」 男が驚いている間、今度は彼の前で光の線が引かれた。すると、男の服が下着一枚を残して切り裂かれてしまった。 「な、何だとう!?」 男の腕が緩むと、女性は彼から逃れた。 「今よ!」 婦警は黄色に光る小さな輪を取り出し、彼に向かって投げた。それは男に当たると巨大化し、男を輪で捕えることに成功した。 「く、くそお!」 「取り抑えろ!」 警官達が一斉に動き出した。 それを見守る婦警のもとへ、二体の丸い生物が近付く。ピンク丸は、ナイフを彼女に差し出した。 「はい、これ」 「ご協力感謝します」 婦警は優しく微笑み、袋を差し出す。カービィはそれにナイフをポンッと放った。 「貴方にも感謝してるわ」 「……私のギャラクシアが見えたのか?」 メタナイトは、目に見えぬ程の速さで男を切った。その技は誰にも見えない筈だったのだが、彼女には見えていたようだ。 「動体視力を鍛えるのも、エフゼロで勝つ秘訣だと思うの」 婦警は、悪戯っぽい笑みをしながらウィンクした。 「お姉さんはエフゼロのパイロットなの?」 カービィが聞くと、婦警は頷いた。 「私はジョディ、ジョディ・サマーよ。貴方達は? どこから来たの?」 「僕カービィ! 宜しくね!」 「私はメタナイト。我々はポップスターという星にあるプププランドから来たのだ」 「……プププランド……」 それを聞いたジョディは、何気に静かに呟いた。 「どうしたの、ジョディ?」 「……そう、貴方達、スマッシュ戦士なのね」 「え! 何で分かったの!?」 カービィだけでなく、メタナイトも少し驚いていた。ジョディはクスリと笑った後、 「よくスマッシュ戦士や王国について話す子が、銀河連邦にいたのよ。でも独立したから、今頃宇宙を駆け回ってるでしょうね。本当、あの子が連邦にいた頃が懐かしいわ。運動神経も男性より半端なかったし、連邦には欠かせない人材だったわ」 カービィとメタナイトは、一端顔を見合わせ、そして戻した。 「もしやその者も、我々の仲間であると?」 「そうね」 「ねえねえ、何て名前?」 「その子の名前は──サムス・アランよ」 「!」 「!」 二人は益々驚いた。エフゼロのある世界と言うからC・ファルコンもいるのは分かっていたが、正かこの世界で彼女の名前を聞くとは前代未聞である。 「カービィ、メタナイト」 「……あ、な、何、ジョディ?」 驚いていた二人は、彼女の声で我に帰った。気付けば、ジョディはパトカーに乗る前だった。 「もしサムスに会ったら、頑張りなさい、と伝えておいてくれるかしら?」 「……うん! 伝えとくよっ」 カービィはニコッと笑いながら小さな手を振った。ジョディも微笑んだ後、パトカーに乗り込み、パトカー達は走り去っていった。 「さて、早く欠片情報を集めないとね!」 「そうだな」 二人もそこから飛んでいった。 「ふう、疲れたでしゅね。一寸休憩するでしゅっ」 「ピィッチュー」 プリンとピチューは港に来るとそこで一休みをした。 そしてプリンは、砂浜のある場所へふと目を向けた。 「……ん?」 砂浜を歩く人影があった。それは妙な形をしている、白いロボットである。顔をキョロキョロさせながら歩いているとすると、 「誰かを探してるんでしゅかね?」 「ピィ?」 プリンの目線に気付いたピチューもロボットを見る。少し興味を持った二匹は目を合わせて頷くと、一目散でロボットのもとへ行った。 「こんなところで何してるんでしゅか?」 「ピピッチュ!」 するとロボットは立ち止まり、機械音を出しながらプリン達に振り向いた。 「アル人ヲ探シテルノデスガ、見付カラナイノデス」 「ある人でしゅか」 「ピーチュウ?」 「白イマントヲ着テ、白イへるめっとヲ被ッタ男性ナノデスガ、見掛ケマセンデシタカ?」 その質問に、プリン達は顔を横に振った。 「見掛けなかったでしゅね。プリン達、ここに来たばかりでしゅし。白い仮面なら心当たりあるんでしゅが……」 「ソウデシタカ。ゴ協力アリガトウゴザイマシタ」 ロボットは頭を下げ、また歩き出した。 プリンはピチューを見る。ピチューはプリンを見ると頷いた。プリンも無言で返事をした後、ロボットを追い掛けた。 「プリン達も一緒に探してあげましゅ」 「ピッチュウ!」 「エ、ヨロシイノデスカ?」 「一人で探すのは大変でしゅし、なら複数で探した方が早いでしゅよ?」 「……アリガトウゴザイマス、感謝シマス」 「プリンって言いましゅ。こっちはピチューでしゅ」 「ピチュウ!」 プリンに紹介されたピチューは、満面の笑顔で手を上げた。 「ボクハQQQ(キュースリー)ト言イマス。今後モ宜シクオ願イシマス」 キュースリーは機械音を立てながら頭を下げた。 「あの長いパイプは何なのだろうか」 マーシスが見上げた先には、とてつもなく長い、巨大なパイプがあった。そのパイプは途中で半分になっていたり、欠けている部分もあった。 「ただのパイプではないみたいだな」 「あれはハーフパイプと言うんだな」 後ろから声がし、マーシスは振り向いた。そこには、赤い服を着た骸骨が立っていた。 「あれもエフゼロレースの一つなんだな。だが、お前が見てるあれは只のバーチャル映像で、本物は別の場所にあるんだな」 「──そなたは?」 「オレの名はザ・スカル。地獄からよみがえった男なんだな」 「地獄と言うのは?」 「それよりオレは名乗ったんだな。お前も名乗る義務があるんだな」 「……これは失礼。私はマーシス・シンサーだ」 マーシスは胸に手を当て、軽く頭を下げた。 「礼儀正しい挨拶をする者は久々に見たな」 ザ・スカルは口の骨を動かして笑った。 「オレの肉体は既に失っているが、二百年経ったこの時代に黒魔術でよみがえったんだな。伝説の熱い走りを拝めるお前は、ラッキーだな」 「確かにそなたからは邪悪な気配を僅かに感じる。だが殺気は感じられん。その代わりに、偉大な力を秘めているようだ」 「お前は分かってるんだな……そう言うお前も、何やら力を感じるな」 「私の力?」 「もしかしたら世界を変える力を持ってるかも知れないな。それにお前はまだ気付いてないんだな」 マーシスはハテナを浮かべた。彼の言いたいことが分からない。自分がまだ気付いていない力? 「どうだな、マーシス。オレとレースしないか?」 「! 私がそなたと?」 「お前の力なら、マシンなど簡単に操縦出来る筈なんだな」 ザ・スカルはマーシスに指を差した。だがマシンを操ったことが一度も無いマーシスは、いきなりそんなことを言われても戸惑うばかりだ。 「オレは新しいマシンを使うが、マーシスはオレの元パートナーに乗るが良いんだな。心配要らないんだな、自分の力を信じるんだな」 「……」 日が暮れる頃、巨大な夕日をバックに、高層ビルの屋上から都会を見下ろす軍団がいた。 「ここのどこかにいる奴が、クローンの先駆けとなった者……」 ミエールは言った。 「その本人は気付いてないみたいだが、そのクローンを作った者が、境界線を無視して情報を送ったみたいだな」 隣のガフィは言った。 「そう言えばディバ隊長がいないけど、どこ行ったの?」 と、リズはキョロキョロと辺りを見回す。 「あいつならあそこだろ?」 腕を組んでいるジビンダーは見上げて言う。 「ギガが世話になった、彼奴んとこ」 宇宙のどこかにある大要塞。それは赤い星雲にあった。 「お前とは初対面だな。クローンの調子はどうだ」 黒い角を付けた黒い仮面に黒いマントを纏う黒い男は、大きな椅子から立ち上がる。 黒い男の前で軽くお辞儀をしている男が顔を上げた。 「まだあちこち欠点があるけど、後は経験さえ積めば、オリジナルより更に強くなるかと」 「そいつは楽しみだ」 黒い男は立ち上がり、手を掲げる。 「そろそろ祭りを始めるか。先ずは血祭りをな」 その男の不気味な笑いは、要塞中に広がった。彼の前にいる男──ディバも静かに口端を上げていた。 ──to be continued── |