Hell Race








「何だありゃ! 岩が追い掛けてくる!?」

 ダイゴローは後ろを映し出したモニターを凝視していた。横へ転がる筈の岩がダイゴロー達を追尾している。おまけにかなりの大きさで、半径10メートルはある。

「チビ、つかまってろ!」

 ネスは言われた通りにし、気を引き締めた。目の前には急カーブが待っている。デジボーイとダイゴローはタイミングを合わせてマシンを急カーブさせた。ここを曲がれば、後ろの岩は目の前の岩壁に正面衝突する──筈だった。

「な、何ぃ!?」

 ダイゴローは目を丸くしてしまった。何と岩まで急カーブしてきたのである。

「どう見ても普通じゃない。何か仕込まれているに違いない!」
「ダイゴローくんの言う通りだね。特殊な力に寄って生み出された非科学的な能力だと分析が出てる」

 二人の話を聞いた後、ネスもモニターを見つめる。そしてあることに疑問を抱く。

(ザコ敵がいつの間にかこんな能力を身に付けたのか? いや、それにしては何か妙だな……)

 するとネスは上を開き、シルバーラットの上へ移動しようとした。

「バ、バカ! 早まった真似すんじゃねえ!」

 と、ダイゴローはネスの服の裾をとっさに掴んだ。ネスは動きを阻止してくるダイゴローに振り向くと、ニッと笑った。

「僕はこう見えても超能力戦士なんだ。だから、ここは僕に任せて」
「チビ?」
「ダイゴローくん、ここはネスくんに任せよう」

 デジボーイが言った。

「ネスくんは戦士として戦う素質は十分にある。だからネスくんに命を預けるなら、ボクは賛成だね」
「……分かったよ。デジボーイがそこまで言うなら、任せるっ」
「あれ? ダイゴローくん、ボクの言うことは信じないんじゃ無かったのかい?」
「うるせー! 大和魂は汚しちゃならねえって父ちゃんが言ってたんだ。オレはそれを守ろうとしてるだけだ!」
「言ってる意味が理解不能だね」

 やれやれと溜め息をつくデジボーイに怒るダイゴロー。まだ子供だと言うのに、それに危険真っ只中だと言うのに、構わず喧嘩しながら運転。世の中広いなと思い、そして二人のやりとりにネスは微笑んでいた。

「ねすさん、いきましょう」
「あ、うん!」

 どせいさんに言われ、ネスはシルバーラットの上に乗り、追い掛けてくる巨大岩を睨む。

「PKサンダーα!」

 ネスはこめかみに指をあて、電気の塊を発した。岩に当たると、電気はバシィッと大きな音を立てて岩を包んだ。

 ──!!
「っ?」

 何かが聞こえた瞬間、岩から何かが飛び出した。それは影でよく見えず、しかもほんの一瞬で次の岩へと移動したのだ。

(今のは一体……)
「!」

 デジボーイはコンピュータを見てあることに気付いた。そしてコズミックドルフィンを素早く操作し、バックさせた。

「おわ!」
「うわわ!?」

 後ろにあるシルバーラットに思い切りぶつかった。その反動でダイゴローとネスの体が大きく揺れる。ネスは危うく落ちるとこだった。
 その時、彼等の目の前を岩が通過した。

「な、何すんだよ、デジボーイ!」

 ダイゴローはカンカンになってデジボーイに怒る。だがデジボーイはやはり冷静だった。

「後ろばかり気にしてちゃいけないってことだよ、ダイゴローくん」
「くっそお! あ、大丈夫か、チビ!」
「う、うん、何とか……」
「ネスくんとダイゴローくんは後ろを頼むよ。前はボクに任せて」
「……年下に命令されたくないけど、仕方ねえ」

 ネスは次々と降ってくる岩達をPSIを駆使して破壊し続けた。ダイゴローはデジボーイの動きに合わせる。デジボーイは前を分析しながら進んでいった。
 この岩コースさえ抜ければクリア出来る。ネス達は命を懸けて戦い続けた。

 ──……。

 ネスにサンダーで驚かされたものが宿った、ある岩が動き出す。それは岩壁の上で移動し、彼等に追い付こうとする。

「ん!?」
「! どうした、デジボーイ!?」
「……コントロールされている岩があるね。真っ直ぐこちらに向かってくる」

 そして岩は、二つの岩の間に入ると、三つ共々転がってきた。ネスはPKサンダーを試みるが、さっきので免疫がついたのか、真ん中の岩はびくともしなかった。

「そんな!」
「こ、これじゃあどこにも逃げれねえ!」
「……」

 三人はこちらへ来る岩達を只見ていることしか出来なかった。




「貴様らの血を啜りたいと、このワイルドグースが唸るぜえ!」

 ピコのマシン──ワイルドグースは、スネークが外にいるのにも関わらずあちこち動き回っては相手のマシンにぶつかりまくってた。スネークはワイルドグースから離れないようにしながら手榴弾のレバーを口で引き抜き、斜め前へ投げた。そこで敵マシンが現れると、手榴弾の爆発で回転しながら前の建物へクラッシュした。
 彼等の戦いに、観戦者達の興奮はヒートアップする。

「スネークも大分レースに乗ってきたじゃねえか」
「勘違いはするなよ。俺達以外のマシンには敵が乗っていることを意識しているだけだ」
「……だが、スネークにやられたマシンもかなり悪あがきしているご様子だぜ」

 後ろを振り返れば、新しいマシンの他、ボロボロになっているマシンまで追い掛けてくる。

「既にコースは一周しているが、まだまだ終わりそうにねえな」
「オレのせいで、無関係なのにピコを巻き込んでしまったようだ」

 ピコはそう言ったスネークに振り向いた後、鼻で軽く笑った。

「情けは要らねえ。オレも戦場で戦った元軍人だ!」

 ピコはワイルドグースから顔を出し、後ろめがけて幾つかの爆弾を投げる。それらは各々のマシンに向かい、奴らを爆発に巻き込んだ。

「そら! そおら!」

 次々と爆弾を投げつけ、後ろは最早爆発の海だ。
 スネークは少し目を丸くしていたが、前を見ると、前方からも敵マシンが向かってくるのが目に入った。このままぶつかろうとしているらしい。

(リモコンミサイルや手榴弾では間に合わない。あれが無駄になっていなければ……)

 ピコは後ろに夢中になっている。ならば前は自分の役目だ。今度はスネークがパイロット席に移り、ハンドルを握る。

「オイオイ、ド素人がオレのマシンをぶっ壊す気か?」

 爆弾を投げた後にピコの黄色い目がこちらを向く。だが聞く耳持たずにワイルドグースを動かしているスネークにフッと笑い、後ろを再開した。
 前方のマシン達がこちらへやってくる。だがスネークはマシンではなく地面に神経を集中させていた。そして何かを見付けると即座にあるものを握った。
 前方に見えるのは、爆発に寄って地面から若干飛び出ているコンクリート。

「伏せろ、ピコ!!」

 スネークの声にピコは反射的に伏せた。
 ワイルドグースがそのコンクリートに乗り出した瞬間にスネークは起爆ボタンを押した。すると飛び出たコンクリートの前に設置されているC四爆弾が爆発した。ワイルドグースはその爆風に乗って高々とジャンプし、敵マシン達の上を通過していく。

「!?」
「……」

 そして敵マシンの一番後ろへ着地する前に、ピコはスネークからハンドルを奪い、それを思い切り後ろへ引いた。お陰で負担を最小限に抑えたままワイルドグースは着地に成功し、そのまま走っていった。

「う、うわあああああ!!」

 敵マシンは前から来るマシン達にぶつかり、その場で大爆発を起こした。
 ワイルドグースが二週目のラインを越えた瞬間、歓声がこれ以上に無い程に高まった。多少ボロボロになったワイルドグースはやっと止まり、二人のパイロット(?)が顔を出す。

「一周目で前を走っていたマシンの爆発に寄り、形となったコンクリートに爆弾を設置した訳か。素早い判断力と動体視力、そして運動能力を試された賭けだな」
「何台かが逆走しているのを見てな。予測しておいたんだ」

 歓声の嵐の中だが、二人は冷静に話をしていた。

「そしてピコが走行中にマシンの性能を教えてくれたお陰でもある。ブースト、空力性能はいまいちだが、ボディ性能はトップクラス。だから、C四の爆風でワイルドグースを飛ばす方法を考えたんだ」

 スネークは、自分が座っているワイルドグースのボディをコツコツと軽く叩く。ピコはそれを見ながら、ふむ、と顎を擦り、口元を緩めた。

「スネークはオレよりも、知識の引き出しがあるみたいだな」

 ニヤリとしているピコに対し、負けじとスネークも微笑み返す。

「言った筈だ、俺はこの時代の人間じゃないってな」




「そら、どうしたファルコ! そんなスピードじゃ追い付けねえぜ!」
「チィッ!」

 ガンガンぶつかってくるジビンダーやマイケルのマシン──ワイルドボア。ファルコが退こうとバックしても、加速してもしつこく攻めてくる。

(確かあのおかま、ババと言ったな)

 ファルコはモニターでババのマシンを軽く分析した。

「マシン名は『アイアンタイガー』。そしてエンジンはRF-2F-SD×2……初心者級のエンジンだが、悪くはないな。!! く!」

 後ろからガツンとぶつけられ、ファルコは前のめりになってしまう。だが何とか落ち着きつつハンドルを握る。

「そして操作性の高さは……」
「! ちっ」

 ファルコはアイアンタイガーを操作し、奴らとの間をとってやり過ごした。ジビンダーは舌打ちする。

「何とかなるが、あくまでもコイツはあのおかまに合わせてるからな。やっぱ初心者向けマシンは、俺には向いてねえ」
「何をブツブツ言ってるんだ?」
「!」

 気付けばファルコの隣にはジビンダーのワイルドボアがあった。もう一方に、マイケルのワイルドボアが現れる。そしてジビンダーは叫ぶ。

「今すぐ楽にしてやるぜ。さっさと地獄へ逝きな!」

 ガンガンと隣がぶつかって来、これではまるでピンボール扱いだ。おまけにボディも傷付き、へこみも目立って来た。

「くそっ。このままじゃペシャンコになるだけだ。あがいてでも抜け出さねえとな」
(それに……)

 攻撃を受けながら、ファルコはジビンダーをゆっくり睨む。

(俺が今ブッ飛ばしてえのは、あいつだっ!)
「うおりゃあっ!!」

 ファルコは声を上げるとマシンを左右に素早く動かし、相手を弾き返した。

「な、何ぃ!?」

 ジビンダーとマイケルは目を見開いた。

(今のは、連続ドリフトに寄って発生する禁忌の技『ドリドリ』。なぜド素人パイロットがあんな技を知ってるんだ!?)

 マイケルがそう思っている間にファルコは彼との通信を繋いだ。

「悪いがハゲ頭、てめぇの相手してる暇はもうねえ」
「んだと!?」

 突然の発言にマイケルはキレる。

「てめぇがいつこんな奴を雇ったか知らねえけどな。それともこいつが雇ったかも知んねえか──いや、んな事はどうだって良い。こいつはどうせ、これが終わったらてめぇらを消すのは間違いねえぜ」
「な、何を言ってやがんだ!」
「ちっ」

 マイケルの声には驚きも含まれている。他のメンバーも戸惑いの色に染まっていた。ファルコは周りの様子とジビンダーの反応に、ヘッと鼻で笑った。

「お前らもまだまだ若いんだ。早死にしたくは、ねえだろ!!」
「ぐぁ!」

 ファルコはアイアンタイガーで思い切りジビンダーのワイルドボアに体当たりした。ワイルドボアは横に大きくずれ、ガードビームとアイアンタイガーに挟まれる。

(初心者マシンにはきつい試練だが、耐えてくれよ)

 ファルコは相手を攻めながら、アイアンタイガーに心で話し掛ける。
 次第に、ジビンダーのワイルドボアが少しずつへこんでいく。

「チッ。そんなポンコツに潰されてたまるかよ!」
「うわっ!」

 ワイルドボアが急にスピンをし、アイアンタイガーにぶつかった。彼もこちらを潰すのに相当必死な様子だ。
 しかし、

(バカ! んな狭いとこでスピンかましたら……)

 相手は敵でも流石に心配してしまったファルコ。そう思った直後、彼の思った通りの、そして奴にとって思いも寄らない出来事が発生した。

「!!」

 狭い範囲でマシンを回転させてしまった為、自らのマシンにも負担を掛けてしまい、ガードビームに接触する。

「! しまっ……!」

 マシンのゲージが限界まで行き警告音が鳴るが、もう時は遅かった。ワイルドボアは大袈裟に揺れては跳ね、そしてガードビームに正面衝突すると回転しながらコースアウトした。

「ちっくしょう! 覚えてやがれ!」

 空中を舞うワイルドボアからジビンダーは脱出し、どこかへ消え去っていった。

(自分から負けた癖に何言ってやがる)

 ファルコは呆れ、肩で息を吐いていた。そしてポカンとしているワイルドボア達に振り向く。

「ま、とりあえず助っ人は倒したぜ。勝負を続けようか?」
「え? あ……その……」
「もう勝負は決まってるわよー! 負け惜しみは無しねー!」

 誰かの声を聞くが、この不気味なおかま口調と鳥肌が立つ声色は誰も忘れないだろう。そしてその者を乗せたマシンが二人のマシンの間に現れた。その中の者は顔を出すと、どこにしまっていたのか、大きなチェッカーフラッグを大きく振っていた。

「鳥さん、コングラッチュレイショーン! 一番後ろから観戦してたわよ。私もうメラメラよ!」
「あ、ああ、サンキュー」

 ファルコはババの熱い眼差しを避ける様に顔を思い切り反らした。
 アイアンタイガーの状態のことについて思い出すが、彼を見ずに話す。

「すまねえ、ババ。お前の愛機をこんなにしちまって」
「私の目を見ずに喋ってるなんて、相当な恥ずかしがり屋さんなのねっ」
「そーじゃねえ!」

 ファルコは目を三角にし、怒りの形相でババを睨んだ。ババはそんな彼をよそにマシンを見る。

「──気にすることは無いわ。エンジンに異状が無ければ、修理して貰うだけでちょちょいのちょいで直るわよ」
「そ、そうか」

 ファルコとの会話を終えると、ババは今度はマイケルに振り向いた。

「マイケル? アナタが一人でここを走ってるだなんて、珍しいわね」
「はあ? 何言ってやが……」

 いつの間にか、マイケルの後ろには部下が一人もいないのに気付く。

「お、おいお前ら! どこ行くんだああぁ!」

 マイケルはワイルドボアをUターンさせ、その場から走り去っていった。ババは彼の後ろ姿に手をヒラヒラと振った。

「そういやあババ、俺の勝負の時にマシンを貸してくれたよな」
「そうよ? アナタのアッツーイ魂に心を奪われて……」
「それだけで、エフゼロパイロット未経験な俺に貸してくれたのか?」
「……」

 彼がマシンを貸してくれた理由は他にある筈だ。じゃなけりゃ、マシンを扱ったことの無い奴に自分のマシンを貸すことなんか出来ないだろう。意味の深い目をしてファルコはババを見つめた。ババは何故か口を開かなくなっていたが、少し経つと、クスッと微笑した。

「野生の勘って奴よ」
「は?」

 ババはファルコを見ながら自分の胸に軽く手を置いた。

「私ね、緑ばっかの惑星で育ったの。だから野生の勘は人一倍優れているし、運動神経も抜群で、それでエフゼロの人にスカウトされてここへ来たのよ」
「そうなのか」
「そんな私がどうして鳥さんにマシンを貸したか──私の友達を助けて欲しかったからよ」

 ファルコは目を丸くした。

「ババの──あのマイケルか?」

 ババは前を見て運転しながら再び口を開いた。

「まーね。マイケルに新人さんが来たと聞いて、アナタとの揉め事中にこっそり来てみたのよ。残念ながらそこにはいなかったんだけどね、代わりに凄く嫌な予感がしたわ。本来なら私が何とかしたかったんだけど、マイケルは私なんて相手にしないでしょうしね。アナタと喧嘩することしか考えてなかったし、だから、アナタに託すしか無かったの」
「嫌な予感、か」
「お友達と言うより、マイケルもエフゼロパイロットだからね。皆ライバルであり、兄弟だから、部外者が何かしようと思ったら、絶対に許せないのよ」

 ババは単なるオカマ口調の気持ち悪い奴だと思っていたが、エフゼロに対する情の熱さはあるとファルコは見抜いた上、意外に思った。

「それに、アナタならマシンを操れるって信じれたしね」
「こんなキレやすい俺をよく信じれたな」
「これも野生の勘って奴ね。ウフフッ」

 ファルコは軽く息を吐き、マシンの分析を付けたままのモニターをふと見た。

「……!?」

 今まで気付かなかった文字を読んだ時、ファルコは思わず見開き、前を気にせずそれに釘付けだった。その様子にババも軽く驚く。

「あら、どうしたのかしら?」
(そうか、だから俺は、このマシンを扱えた訳か……)

 ファルコは、少しだけ微笑を零した。それを見ていたババはハテナを浮かべていた。




 崖の上から岩が高速で転がってくる。三人は逃げ場を失い、それらを見ていることしか出来なかった。
 しかしその時である。
 時間が止まった感覚の世界の中、三つの岩に横線の光が走った。岩がその線を境に左右にずれ、そして粉々に砕け散ったのである。

「な、何だあ?」

 ネスとどせいさんは目が飛び出す程に驚いていた。

「あの横切り……もしかすると……」

 ダイゴローは呟いた。

「やっぱり、ボクの計算は間違っていなかったね」

 デジボーイは眼鏡をクイッと上げた。

「赤帽の坊主! 今の内だ!」

 どこかからか声がする。それは子供ではなく大人の方で、しかもかなり深い。ネスはハッとし、真ん中の砕けた岩に向かってPKサンダーを発した。

「はあ!」

 バシィッと言う音が響き、岩が電流に包まれる。

 ──!!

 そこから飛び出したのは──赤い液体である。分散されていたものが集まり、大きくなった。そして気味悪い程にうごめきながら空へと消えていった。
 ザコ敵達も焦りながらそこからいなくなった。

(何だろ、あれ)

 ネスは赤い液体が消えていった方向をずっと見ていた。

(でも、あの殺気は前にも感じた様な……)
「大丈夫か、坊主!」
「え? う、うん!」

 さっきの声が聞こえ、ネスは振り返る。そこには、ピンク色に黄色い炎模様のエフゼロマシンが走っていた。

「あぁ!!」

 と、ダイゴローがそのマシンを見て突然声を荒げた。ネスは肩を上げ、落ちないようにと席に戻った。
 マシンに乗っているのは、体格がでかく、丸いサングラスを掛けている男だ。そしてダイゴローと同じ服を着ており、腰に刀を携えている。

(もしかしてあの人が……)

 とネスが予想してみると、

「父ちゃん!!」
(やっぱりね)

 と、ダイゴローが声を出したので、予想が的中したネスはこっそり微笑した。

「よお、随分難易度のあるトレーニングに挑んだな」

 ダイゴローの父──サムライゴローは軽く手を上げた。
 三つのマシンがやっと止まり、パイロット達はマシンから降りた。
 そして降りて早々、サムライゴローはダイゴローの頭にゲンコツを送った。

「いって!」

 ダイゴローは涙目で目を瞑り、叩かれた頭を両手で押さえ付けた。

「ったく、勝手に父ちゃんのトレーニング場を使うんじゃねえ! 万が一落ちたり、ペシャンコになったりしたらどうするんだ!」
「ご、ごめんよ父ちゃん」

 腕を組む父と頭を抱えて謝る子供。一昔の親子に思い、ネスは軽く吹き出した。

「何だ、いつもなら『うるせえ、デブ!』とか言って反抗してくるのに、今日は珍しく素直だな」

 と、サムライゴローは笑いながら言った。それを聞いたダイゴローは肩を上げる。
 デジボーイはネスにだけ、その理由をこっそり話した。

「ダイゴローくんは本当に死ぬんじゃないかってビビってたんだよ」
「そ、そうなんだ」
「今まで格好付けてた言葉は、皆父親のうけうりって訳だね」

 ネスは敢えてテレパシーは控えていたのだが、デジボーイが言ってしまったのでどこか力が抜けてしまった。
 そしてデジボーイはコンピュータをいじりながら密かにこう言う。

「サムライゴローさんもダイゴローくんも、これくらいのトレーニングを毎日すれば、グランプリでも上位にいくと思うんだけどね」
「デ、デジボーイ……!」
「何か言ったか!?」
「いや、何でもないよ?」
「……」

 サムライゴローは子供三人のやりとりを見ながらフッと笑う。

(子供にはまだまだ強くなって貰わなきゃな。いつか、あのにっくきキャプテン・ファルコンを倒せるように。その時まで、オレさまはファイアスティングレイで奴と戦うぜ)

 そして自分のマシン──ファイアスティングレイに振り向いた。




 三つのレースは一端解決した。次の地獄のレースは──。










 ──to be continued──