Darkness Truth 嘘だと誰もが信じたかった、C・ファルコンのたった一言が。自分達の仲間が、ギガ軍の手助けをしていただなんて。 しかし真実だと、それを知るパイロット達の目が語っているのに偽りは無い。ただ、その目には悲しみと共に満たされているのに、マリオ達は果たして気付いているのかどうかは定かでは無い。 「ドクターがクローンを? そんな正か……」 フォックスの目線は顔と一緒に下に降りていて、信じられないと、身の震えが言葉の代わりに示していた。心が裏切りに寄る悔しさに支配されぬ様、握り拳を必死に震わせ耐え抜こうとしている。 それに押し潰されまいと顔を上げているマリオは、C・ファルコンに向けている目線を変えない。その目には僅かな怒りも交えていた。 「確かまだマスターハンド王にも報告していなかったよな。クローン開発の根源は未だ解明されず。一ミリの情報でもキャッチしたら直ちに報告せよって仰っていた筈。それを今まで黙っていたのか、ファルコン」 次にリンクが一歩前に出、強い口調でC・ファルコン達に迫る。 「俺達の世界だけじゃなく、ファルコンさん達の世界も危機に陥っているんですよ。この状況は何が原因か、皆さん分かっているのですか!?」 「皆、待って!」 唐突に彼等の間に割り込んだのはネスだ。マリオ達に手を伸ばし、何とか抑えたいと行動していた。 「ネス……」 「今は隼のおじさん達の話を聞いてあげて。まだおじさん達、冒頭部分しか喋ってないよ? それに……」 この時のネスは、自分のクローンの一時の裏切りを思い出していた。あの時は、恐らく今のマリオ達の気持ちと一緒だった。 けど、どんなに悪に手を染めたとしても、本人に少しでも良心があれば、それは消滅すること無く、支配されること無く生き続ける。ネスはそう信じていた、今でも。 思わず込み上がりそうな気持ちを懸命に押さえ付けて話す。 「仲間がこんな事を『しちゃって』、辛くない、悲しまない仲間はいないよ。隊長達だって、仲間に裏切られたらそれを他の仲間に平気で話せる?」 「! それは……」 このままだとC・ファルコン達をまだ責めていたであろう。マリオ達はネスの言葉に目を覚ました。 仲間を思う気持ちが、いつの間にかこんなに浅はかになっていただなんて。 ギガに関係している事ばかり目が行っていたマリオ達は、ネスに返事する言葉が無かった。あると考えても見付かる筈が無い。 「わっ」 「ネス、もう良い」 頭に手を置かれたネスは肩を上げた。顔を上げた先にはこちらを見ているC・ファルコンがいて、微笑んでいた。ネスは悲しい瞳でC・ファルコンを見上げていたが、顔を戻すと元の場所へと戻った。 「気持ちがどうであれ、王に話さなかったことについての許しを乞うつもりは無い。否、話せなかったと言った方が良いな。それだけは何と言われようと変えるつもりは無い」 「ファルコン……」 「まあこうなった以上、話さない訳にはいかなくなったけどな」 ジェームズは眉間に皺を寄せた。 「順を追って話す。エフゼログランプリの大事故についての話は、確か全員聞いたな。スネークにも話していたと思うが」 「ああ、聞いたな」 此方を向いたC・ファルコンにスネークは返事をした。 「数年間エフゼログランプリが中止になった程の大惨事だったらしいな。確か、あんたも負傷して、特別病院まで運ばれたみたいだな」 「その通りだ。そこから全てが始まったと言っても過言では無い」 「……」 マリオ達は、C・ファルコン達の話を真剣に聞く決心をし、暫く口を開かないことにした。 「デスボーンが率いる組織、ダークミリオン。オレが入院している間に、オレの血液の一部をその一味が盗んだそうだ」 「その頃のスチュワートは、負傷したパイロット達の治療に当たっていた。お陰で死者は一人も出なかったよ」 次にジェームズが口を開いた。 「彼はサイボーグやDNAの研究もしていてな、医者の実力の他にその技術力もお墨付きだった。そして、その情報を耳にしたダークミリオンに目をつけられた」 「それで、捕まっちゃったんだ?」 カービィはつい口を開いてしまった。ジェームズは彼をチラッと見た後、再び顔を戻す。 「これはドクターから聞いた話なんだけど、ドクターはダークミリオンの組織へ連れていかれ、ブラックシャドーに命令されたんだ。『この血液からDNAを摘出し、クローンを作り出せ』と」 次にリュウが口を開いた。 「最初はドクターも断っていたんだけど、その場合はファルコンを消すと、奴は言ったんだ」 「ファルコンは事故に巻き込まれたパイロットの中でもかなり危険な状態だったからな。その頃はまだ絶対安静だったんだ」 ジェームズが一度口を挟んだ。 「そしてドクターの手で完成されたのが、ブラッド・ファルコンだ」 「ドクターは、ダークミリオンの命令でクローンを作らされたと言うことか」 フォックスは考える仕草を取って呟いた。 はやとちりをしたマリオ達は、フォックスの言葉に寄り、反省していた。 「オレ達が助けに行ったのはその後だ」 ジェームズは言った。 「ダークミリオンの組織が存在する場所は、宇宙のアジトの様なもんだから、見付けるのに時間を費やしてしまったよ。おまけに居心地が悪くて、長時間いるのは大変だった」 「オレ達がそのアジトの侵入に成功した時は、スチュワートの実験クローンは既に完成していた。それを知らず──気付いていたとしても、それよりもオレ達はスチュワートを助けたい一心だった」 「だが完成した時から既に手遅れだった……!」 リュウは悔しそうに唇を噛み締めた。 「ドクターがクローンを作っている間に、ダークミリオンは彼の技術データを記録していたんだ」 「もしかすると、そのデータを……」 リンクが恐る恐る問う。C・ファルコン達は彼を見、C・ファルコンは首を縦に動かした。 「ギガ組織に送ったと言うのか?」 スネークはリンクが言いたかったことを代理して話した。C・ファルコン達は無言だったが、その反応こそが答えと言えよう。 「そんな、馬鹿な話があるかよ!」 とうとうマリオは怒鳴ってしまうが、本人は気にしなくなっていた。 他のスマブラもその話には驚いたに違いなく、黙っているのは最早限界だった。 「ギガ組織はスマッシュ王国にあるんだよ? その頃に違う世界へデータを送るなんて、不可能じゃないか!」 「いや、可能性は無くは無いな」 「えっ?」 マリオはメタナイトに振り向いた。メタナイトは彼に振り返り、言葉を放つ。 「欠片の力を使い、データを過去のギガへ送ると言う事だ。その頃の過去はまだ宝玉は壊れていなかったが、欠片が未来の世界にあればまた別だ」 「なるほどな。未来は宝玉がぶっ壊れて、欠片となっているって訳だ」 ファルコは溜め息を吐きながら、吐き捨てる様に言った。 「ダークミリオンのボスであるデスボーンは、未来から来たのだ」 次に口を開いたのは、フェニックスだった。 「クローンを作る技術があるのは、この時代にいるドクタースチュワートしかいない故に、この時代に赴いたのだろう。本来、特別警察以外が時空を行き来する事は犯罪で、厳しい処罰を受けることになる」 「だが相手はダークミリオンだ。悪いことなら何でもやるだろう」 真顔で語るフェニックスに、スネークは軽く苦笑した。 「宝玉が崩壊した未来を知っていると言うことは、その為に我々がこの世界へ来る未来も分かっていた。故に、我々を妨げる為に、ダークミリオンと言う組織を築いたのかも知れないな」 メタナイトは言った。 「納得したくねえが、そん時までのギガ組織の技術はスマッシュ王国より乏しかったから、クローンが出来たと聞いて、何かがおかしいと思ったんだ」 ファルコは苛立ちの口調で言った。 「未来では、ギガ軍にクローンはいない筈だった。でもそんな未来は、ダークミリオンに寄って変えられてしまったんだな……」 マリオは言った。 「欠片の存在を知っているのはどうして?」 カービィの言葉に、メタナイトがこたえる。 「恐らく歴史を調べたのだろう。我々の世界に関する歴史には全て空間神のことも関わっているからな。本来なら、その本がある世界では、上層部の者達しか管理出来ないものなのだが……」 「その通り。奴等は未来から歴史書と欠片を持ち出したのだ。その組織を探す為に、私は未来から来たのだ、時空警察として」 フェニックスは、自分の胸に拳を当てた。 「じゃあ、この世界に落ちた欠片と、その歴史書は、ダークミリオンの親玉が持ってるって事なんだね!?」 ネスは声を上げた。 「ほう。しかし、中々面倒なことしているな」 スネークの何気に呟いた言葉が、マリオ達に何かを気付かせた。 「そうだよ。何でダークミリオンは態々そんな事をするんだ? クローンの情報を、態々ギガ軍に提供して……」 「……こう言う可能性はあるぞ」 「えっ?」 そう言ったのはマーシスだった。 「ついさっき分かったことだが、この世界は、マリオ殿達の空間と別の空間の狭間にあると分かったのだ」 「な、何だそりゃ!?」 「そのまんまだ、マリオ」 同じく存じていたらしい、メタナイトは冷静にマリオに返事をしていた。そしてマーシスは再び口を開く。 「宇宙には数多くある世界達を囲む空間が無数にある。この世界はその中の二つの空間の境になっているのだ」 「何と無く理解したぜ」 ファルコは言った。 「奴らは、俺達の世界を乗っとるだけじゃねえってことか」 「俺達の世界がある空間だけじゃなく、もう一つの空間も支配するつもりなんですね」 「ああ。その時に、奴はギガの者達と交渉でもしたのだろう」 リンクは真剣な目をし、メタナイトは目を伏せて言った。 「これ程欲がでかい悪者は初めて聞いたよ」 フォックスは驚きながらも、怒りの気持ちはあった。 「ギガにも俺達と同じ、別世界の仲間がいるんだな」 そう言ったスネークにマーシスは振り向く。 「そなたのいるとこも、危険でないとは限らんぞ」 「分かってる」 スネークは手を軽く上げ、言葉を返した。 「ダークミリオンの為にクローンを作った時点で、スチュワートは何やら重い責任を感じてたんだ」 ジェームズは静かに叫ぶように呟く。まるで、怒りと悲しみが混ざった声色だ。 「そうなの?」 カービィは哀れんだ目でジェームズを見つめる。 「彼にはプライドもあるからな。最初は自害も考えてた」 「じ、自殺!?」 マリオ達は見開いた。 「だがそれでは逃げてると思って、オレ達と共にブラックシャドー達と戦う決意をしたんだ」 「そうだったんだ」 拳を作ったC・ファルコンにフォックスは返事をした。 「だが、またあっさり捕まったな」 うっかり発言をしたスネークにネスは叱咤した。 「蛇のおじちゃん!」 「おっと、口が滑った」 「でも、本当にドクタースチュワートは捕まってしまったのでしょうか」 リンクがそう言った後、マリオの腕の中にいるピカチュウの耳が動いた。 「ピカチュウっ?」 マリオはピカチュウが意識を取り戻したのに気付き、軽く揺さぶる。マリオの声に全員彼等を見た。 ピカチュウは更に耳を動かしてから瞼を痙攣させ、そっと開いていった。 「ピカチュウ、確りしろっ」 「ピィカ……」 そしてマリオの顔を見ると、ハッと目を開き、何かを喋り出した。 「ピカ! ピカカピ!」 「え、な、どうした?」 「ピカッチュウ!」 その様子を見ていたプリンは彼等に近寄り、ピカチュウの声を聞いた。 「! スチュワートしゃんが攻撃されたのは確かみたいでしゅっ」 「やっぱり、ダークミリオンの仕業なのかっ?」 「ピカピ! ピカッ!」 「分からないでしゅが、角の生えた黒いマシンが追い掛けて来て、思い切り体当たりしてきたみたいでしゅ。そして何度も体当たりを食らって、ピカチュウも応戦したんでしゅが、スチュワートしゃんのマシンは軈て爆発して、ピカチュウも爆発に巻き込まれて、そっからは何も覚えてないみたいでしゅ」 「黒い角の生えたマシン、そしてそこまで追い込む奴は、やはりダークミリオンの幹部──ブラックシャドーしかいない」 C・ファルコンは言った。 「ん?」 マリオはピカチュウの耳をジッと見た。彼の耳に、小さなチップのようなものが取り付けられていた。 それを外し、小さなボタンを押してみると、どうやらそれはホログラムメッセージの様で、文字が浮かび上がった。マリオはその文字を目で辿ると、酷く驚いた。 「皆、やっぱりスチュワートは拐われたんだ。これを見てっ」 「……『ロバート・スチュワートはダークミリオンが預かった。助けたければ、指定した場所へ来い』」 C・ファルコンがそれを読み終えると、次に地図が表示される。 「こんな場所、初めて見るぞ」 ジェームズは地図を睨む。 「奴はドクターを再び捕えて何をしようと……」 リンクが顎に指を軽く当て、そう疑問を抱くと、ジェームズが答えた。 「考えられるのは一つ。抹殺だ」 「な、何だって!?」 マリオ達は驚いて見開いた。そんな彼等を見るが、ジェームズは続ける。 「スチュワートがクローンを作ったあの時、用無しと情報漏れさせない為の口封じとして、ブラックシャドーは彼を消そうとしたんだ」 「そこへファルコン達が助けに来た」 スネークが言うと、ジェームズは頷いた。 「じゃあ早く行かないと!」 「ああ、そのつもりだ。全員乗せる為にC・ファルコンフライヤーを呼ぼう。他のマシンは先にワープゲートへ向かってくれ」 「分かった」 ジェームズとリュウの返事を聞いた後、C・ファルコンは腕に取り付けられている腕輪型の機械を操作し始めた。 「そう言えばファルコンさん達は、ドクタースチュワートを助けたい一心だったって、言ってましたね」 リンクが微笑むと、C・ファルコンもフッと笑みを浮かべ、一言放った。 「エフゼロレーサーは皆ライバルであり、兄弟だからな」 そう言った後、真っ直ぐに自分のマシンへ向かって歩いていった。 フォックスはハッとした。今の言葉を、前にも聞いた覚えがあるのだ。 きっとエフゼロパイロットは、自分達の心にその言葉を刻み込んでいるんだ。 「ブラックシャドー達もエフゼロパイロットだが、オレ達はそれは認めない」 フォックスの考えている事を読んだのかどうかは分からないが、C・ファルコンが見ているのはフォックスだった。フォックスは少し驚いた後、彼を真っ直ぐに見ながら頷いた。 「分かってるさ。俺達で、奴らの野望を打ち砕かなきゃならないからな」 「そうだ……そろそろ来るぞ」 C・ファルコンが上を向いた直後、空中で巨大な電流が現れ、それは軈て形となって現れた。まるで巨大な鳥の形をしたマシンで、C・ファルコンと同じブルーの色だ。 「うわぁ! 格好良い!」 カービィはそのマシンに見惚れ、その場ではしゃいでいた。 「これに乗れるなんて凄い感激だよお!」 「カービィ、遊びに行く訳では無いんだからな」 「分かってるよお」 注意するメタナイトにカービィは頬を膨らました。 「皆、乗れっ。行くぞ!」 「おう!」 ファルコンフライヤーに乗るマリオ達は張り切っていた。 「オレ達もついていく。今回の任務は、未来を変えようとする罪人を捕えることなんだ」 そう言うフェニックスにC・ファルコンは振り向いた後、 「フェニックスとキュースリーも、ジェームズ達を追ってワープゲートに行っててくれ」 「了解した」 フェニックスはニッと微笑み、そしてキュースリーと共にマシンに向かった。 いよいよこの世界での最後の戦いが始まる。ファルコンフライヤーが走る中、スマブラは全員、仲間達の言葉を思い出していた。 ──君の力は一つの世界を救える力を秘めてる。その力を上手く使ってね。 珍しく微笑んでたデジボーイ。 ──チビ……じゃない、ネスか。でももしレース以外で死んだら、一生チビ呼ばわりするからな! 強気で指をつきつけてきたダイゴロー。 ──あいつに会ったら伝えておいてくれ、オレの狙う賞金首は渡さねえ! てな。 刀の扱いが凄い、刀のおじちゃん。 (またいつか会いたいな、皆にっ) 「ぽえーん」 ネスのリュックに入っているどせいさんが顔を出すと、ネスは笑顔を見せた。 ──小さな店を経営してるんだ。相棒であるおめえなら、いつでも安くしとくぜ。 (俺は相棒じゃないって、何度言えば……) スネークはピコの言葉がいまいち納得いかなかったが、その店が気になるから立ち寄るかどうかは考えていた。 ──頑張ってねっ。そのシステム、アナタ達の世界にもあったのね。やっぱり、私は間違って無かったわねっ。 (へっ。おかまの野生の勘は、伊達じゃなかったな) エフゼロマシンには、Gディフユーザーシステムが搭載されていた事が分かった。ここでも使われているとは思いも寄らなかったが、フォックスの父との面影がある者も見ると、不思議さも薄れていった。 ──あなたで良ければ、デザート王国の王子になって貰いたかったんだけどな。 (すみません、プリンシア姫。俺は一つの国だけでなく、皆の世界を守る為の存在なんです) リンクは前を見ながら、あの時の彼女の言葉を思い出していた。 ──必ず奴らの計画を阻止するのよ。あなた達ならきっと出来るわ。 (その言葉を信じて戦うよ、ジョディ!) (そして『彼女』に会ったら、必ず伝える) カービィとメタナイトは、真っ直ぐに前を向いていた。 ──本当の力が発揮されなくても、今でもマーシスは十分な力を持ってるんだな。その力、決して忘れないで貰いたいんだな。 (ザ・スカル殿……) マーシスは、彼の言ったことを未だ理解出来ずにいた。自分の真の力とは一体何なのか、自身に問うても、答えは見付からない。 いつか分かる時が来るのかもしれない。外せられない仮面の下には、きっとその真実が封印されている。それが解放された時、皆と共にまた戦うことは可能なのだろうか。皆と共に悪を討ちに行くことは、出来るのか? 「マーシス?」 自分の世界に浸っていたマーシスの耳に聞き慣れた声が入り込む。現実へと意識が自然と向き直り、マーシスは慌てて隣を見た。 昔からの戦友がこちらを向いているのに今気付いた。 「如何した、マーシス。今日のそなた、やけに静かだな」 「分かった! 何か食べ物に当たったんだ!」 彼の奥からひょこっと顔を出したピンク丸が、目立とうと手を上下にパタパタと動かしながら、思い付きの言葉を放った。メタナイトに対する言い訳を考えていたマーシスだが、そんな風にボケを見せるカービィに心が和み、クスッと笑った。 「そうだな。そのお陰で、体の調子が少しおかしい」 「そうなのっ? じゃあ目的地に到着するまで休んだ方が良いよ!」 「そうさせて貰うとするかな」 二人の楽し気なやりとりを交互に見ていたメタナイトだが、軽く溜め息をつくと、下を向きながらマーシスに言う。 「マーシス、カービィと遊びに付き合う必要は無い……」 メタナイトは呆れるばかりで、それのお陰か、先程の質問はどうでも良くなったらしく、撤回された。 (彼等の様な仲間達なら、いつまでも共にいたいものだな) マーシスの願いが本当になる事を自ら望んだ。 「何の話してるの?」 マリオは気になったらしくこちらへ顔を向けた。メタナイトに説教を受けるカービィを横に、マーシスは笑みをやめないまま、首を左右に小さく振る。 「いや、緊張をほぐそうと、楽しい話を交わしていただけだ」 「へえ、マーシスでも緊張するんだ?」 皮肉では無く、本当に意外に思ったらしく、マリオは目を丸くしていた。嘘偽りは無いと、マーシスは首を縦に一度動かした。 「ディバと戦う時は特に、な」 「そうなんだ」 「誰でも戦う前の緊張はするもんだ」 一人壁に背中を付け、腕を組んでいるスネークが口を開いた。 「生死をかけた戦いに緊張さえしない者は、機械人間くらいだ」 「機械人間……か」 マリオは彼を見て呟いた。 それは余程の悪人に当てはまる言葉だろう。 底知れない欲望に唯々飢え、数々の犠牲を払っても結局自分のことしか考えていない。自分が利用するものは全て使い捨てに過ぎない。それが例え、仲間達との信頼関係を築き上げてきたとしてもだ。 そんな悪心しか抱かない者と、これからスマブラは戦いに行くのだ。そんな奴らに、自分達の世界を自由にはさせない。野放しになど、絶対に出来ない。 「そろそろワープゲートだ」 前を向いているC・ファルコンは、マシンを操縦しながら皆に呼び掛ける。 「皆は先にそこへ来ている筈」 「オッケーだ」 彼の隣に立つマリオも前へと顔の向きを戻した。 C・ファルコンの言うワープゲートは、他の星へ移動できるシステムになっている。ゲート自体はマシンが一台分入る程の幅で、普通は自分達のマシンにもその機能はある。だが、新しいルートを記録する為には、公道の一部に設置されている公式ワープゲートを使わなければならないのだ(このゲートは、マシン用より一回り大きい)。ゲートをくぐる間、自分達のマシンに搭載されているワープシステムに記録しなければ、そこへ向かうことは不可能なのである。 公道を走っていると、数台のマシンが止まっていた。ジェームズ達のマシンである。 「あそこでしゅか?」 そこを見ながらプリンはC・ファルコンに聞く。 「そうだ」 C・ファルコンが答えた直後にファルコンフライヤーは止まった。 「ジェームズ、聞こえるか?」 前方へ話し掛けるとそこに画面が表示され、ジェームズの姿が映し出された。 「聞こえてる」 「ゲートの方は無事か?」 「ああ、傷一つ無い。正常に動いてるよ」 一先ずスマブラはホッとした。ゲートまで破壊されてしまっては、そこへ向かいたくても無理なのだ。 そしてジェームズの画面が半分縮小されては横に移動すると、隣にリュウを映した画面が表れた。 「今、ダークミリオンの言っていた場所へ行き先を合わせきた。いつでも準備完了だっ」 「ご苦労だったな、リュウ」 「ダークミリオンを捕える為なら、これ位お安いごようだっ」 リュウはガッツをして見せた。 「行くぞ!」 C・ファルコンの声を合図に、五台のマシンはワープゲートへ向けてダッシュした。 一台一台がワープゲートへ突入していく。マシンが通る度、ワープゲートは波紋を広げながら、彼等を未知なる星へと誘う。 そしてくぐれば直ぐにその場へ到着した。 辺りには、見上げてしまう程に高い岩壁があり、目の前には、岩と骨で構成された巨大な扉が立ちはだかる。C・ファルコン達のマシンがその前で止まると、扉は重々しい音を立てて少しずつ開いていった。隙間からは、目が潰れてしまうのでは無いかと言える程に強い光が差し込み、C・ファルコン達の視覚を刺激する。そのせいで、彼等は手で自分の目を覆っていた。次第に光が薄れてゆき、目の前の光景がC・ファルコン達の目に映り始めた。 まるで二つの骨の縄の間を土で固めた様なレースが続き、レース外は、真っ黄色に輝く溶岩が溜め込まれていた。溶岩からは、時折黄色い炎が軽く噴出されている。 「不気味なとこでしゅね」 「ピチュ……」 プリンは身震いしてからピチューと両手を握り合った。 「……」 C・ファルコンは前を暫く見つめた後、無言でファルコンフライヤーから降りようと歩き出した。マリオ達は急にどうしたんだと思ったが、マリオも降りることにした。そして次々と降りてゆくと、他のパイロットもマシンから降りていることが分かった。 そこには鋭い角を付けた黒い系を纏った男と、隣で膝を付いているスチュワートがいた。 「スチュワート!」 「ドクター!」 ジェームズとリュウの声で本人であると悟ったらしく、ハッと気が付いた感覚でスチュワートは顔を上げた。 「ジェームズ! リュウ! ファルコン! マリオ達も無事だったか!」 「ドクター、今直ぐ助けるからなっ」 フォックスは自信に満ちた目で、真っ直ぐに彼を見て声を上げた。 そこで黒い男が一歩前に出、片手を軽く上げた。するとスチュワートの目の前を、硝子みたいな見えない壁が光に反射した。そして黒い男──ブラックシャドーは、ニヤリと悪魔の笑みを浮かべた。 「スチュワートを助けたければ、我輩達を倒してからにして貰おうか」 「言われなくともそのつもりだ。だがスチュワートだけでなく、オレ達の世界を、お前達と言う危機から救ってみせるっ」 C・ファルコンが指をつきつける。ブラックシャドーがそれを見ると、くっくっと喉を鳴らした。 「それは、この世界だけでは無いと言う解釈で良いのかな?」 「! やっぱりお前達は……」 マリオはブラックシャドーを睨んだ。ブラックシャドーは改めて笑むと、夢見る者の如く、天を仰ぎ、両腕を広げた。 「そう、お前達の世界も我々が支配してやるのだ。そして、もう一つの未知なる世界達も全て闇で支配し、全てを我々ダークミリオンの前で平伏させる。それが我々の野望!」 「正に悪の為に生まれてきましたって感じだなっ」 そう言うファルコだが、面白くないとでも言う様な、物凄く不機嫌な顔をしているのは見ていても分かる。大袈裟な吐き捨てだとは誰一人思わない。ここまで欲に飢えた者達は初めて見たからだ。だがブラックシャドーは、そう言われても唯々嬉しそうだった。逆に褒め言葉として受け取ったらしい。 「悪の為に……か。フフフ、心地好い響きだ」 「おや? 全員生きてたんだ。しぶといねえ」 「この声は……!」 よく見ると、ブラックシャドーの後ろにもう一人の影が、僅かだが見えた。さっきまでは、ブラックシャドーとスチュワート以外の気配は感じなかったのに、あの影が現れた時から全員の背中を氷のような冷たさが走った。 影の者がブラックシャドーの後ろから一歩踏み出すと光を受けては直ぐにその影はなくなり、その者はこちらを向くとニコリと笑った。 「流石はスマッシュブラザーズ。そこいらの超人よりも簡単には死なないね」 「やっぱり、ダークミリオンとギガ軍はぐるだったのかっ」 フォックスは二人を睨んで言った。 目の前で二人が隣同士立っているのが何よりの証拠だ。C・ファルコン達の世界にいる者と、毎回戦ってきている者。どちらも極悪人で、どちらも半端ない企みを考えているのだ。 「どこまでも我々を邪魔扱いするようだな」 マーシスはディバを思い切り睨む。仮面を付けているが故、周りから見てもその目は伺えないが、声の色からして、彼の感情は簡単に読み取れた。 ディバはマーシスを見る度に苛立つが、今回はクスリと微笑を溢す。 「君達が諦めてくれりゃあ、こちらからも手出しはしないんだけどねぇ」 「分かってて言っているのか?」 マリオは怒りの表情を乗せ、一歩踏み出した。 「そんなこと考えてる人は、一人もいないってことをな!」 彼等を睨むスマブラと仲間達。彼等の目は一歩も退かない、本物の目をしていた。 「ま、本当に退場されても面白くないけどね」 ディバは目を閉じ、余裕たっぷりな笑顔を作る。 「折角の舞台なんだ。役者は揃っていないと始まらない。そう、死のレースと言うタイトルの舞台のね!」 彼等の後ろで溶岩の炎が噴き上がる。先程とは違い、活発になっている。まるでディバの言葉を合図に舞台が開幕した様だ。 するとブラックシャドーはジャンプし、マリオ達の後ろへ降りる。マリオ達は背中はだけは見せまいと、彼がジャンプした瞬間にそれを感じとり、彼が着地する直前に素早く振り返った。 彼の側には、いつの間にかブラックブルの姿があった。ブラックシャドーはそこに乗り込む。 「我輩とエフゼロで勝負しろ。何人で挑んでも構わない。死ぬ覚悟があるならな!」 「くっ! オレ達をバカにしやがって……!」 悔やんだ表情を浮かべるリュウは拳を強く握り締める。 「……ここは俺に任せてくれ」 「ジェームズっ」 皆の目線を受けながらジェームズは一歩前に出た。 「ファルコン達は、まだ戦う相手がいる筈だろ。ここで死んだら、もう誰も俺達の世界を救えなくなる。だから、ブラックシャドーは俺が潰すっ」 ブラックシャドーはほんの一瞬だけ笑みを消した。 「意外な者がお相手と来たか。まあ良い」 「……」 ジェームズは一端彼を見た後、リトルワイバーンに向けて歩む。 「……待ってくれ、ジェームズ!」 彼の歩を止めたのはフォックスだ。ジェームズの他、今度の目線は彼へと向けられた。だがフォックスは気にせず、ジェームズだけを真っ直ぐに見た。 「俺も同行させて貰うよっ」 「! フォックス?」 「ジェームズには家族がいるだろ? 父であるジェームズが死んでしまったら、誰が家族を幸せにしてやれるんだよ」 フォックスは目線を下ろした。 「出来れば代わりたいけど、あのマシンはジェームズのだから、きっとジェームズしか操縦出来ない。なら、トラップの時は俺に引き受けさせてくれ……父さんは俺を助けてくれた……だから、今度は俺が父さん──ジェームズを助けるっ」 「……ああ、分かった。確り頼むぜ」 今まで真顔でフォックスの話を聞いていたジェームズだが、返事としては笑顔と、そして立てた親指を見せた。フォックスは感謝の気持ちとして笑顔を作った。 「何人挑んでも同じことだ」 ブラックシャドーは前を向いて言う。 「直ぐにあの世へ行きたくば、さっさと始めよう」 「言われなくても。だけどあの世へ行くのは、お前の方だからなっ」 フォックスはブラックシャドーに指を差した。 いよいよブラックシャドーとのレースが始まる。 「フォックス……」 カービィはその場でハラハラしていた。リンクやファルコも同じくである。 「大丈夫、勝てるよ、絶対に!」 マリオ達はそう信じていた。 「因みに言うけど、スマブラが負けたら、お前達はマグマに落ちちゃうからね」 マリオ達は驚いてディバを見る。ディバは、実に楽しみなイヤらしい笑顔を見せていた。 「いくぜ、フォックス」 「ああ! ジェームズも頼むよ」 そして次の溶岩が巨大噴出したのを合図にレースはスタートした。 ──to be continued── |