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呼び掛け スマブラがホテルに辿り着いた時は既に夜になっていた。空は快晴であり、輝く満月と無数の星が闇夜を明るく照らしていた。 襲撃を受けたダイヤモンドシティだが、傷はそれ程深くは無い。酷くても少数のビルが崩れた程度だ。怪我人は多いが、皆軽傷で済んでいた。と、ダイヤモンドシティの状況情報がテレビで放送されていた。 ホテルの部屋内でリンクは、烏龍茶の入った小さなボトルを片手に、ベッドに座りながらそのテレビを観ていた。 ホテルの室内は広々とした洋室で、かなり豪華である。今のとこのスマブラの人数でも余裕で入る程の広さだ。 何台か置かれているベッドもふかふかで、眠るには最適な心地好さだ。 更にこのホテルには、ダイヤモンドシティの名物温泉もあり、スマブラは今までの疲れを存分に癒した。先に上がったのはリンクで、パジャマの代わりにもなる白いバスローブを身に纏い、途中の自動販売機で烏龍茶を買って部屋に戻った(序でに言うと、リンクの世界に機械は無いので、自動販売機の使い方はマリオに教わった)。 そして、今ここにいるのは彼一人である。 「被害はあまり大きくなかったみたいだな」 リンクは笑みを綻ばせ、ホッと小さく息を吐いた。そして、小さなボトルに口を付けようとした。 ──ざ……よ……。 「!?」 一瞬だけ誰かの声が聞こえ、リンクは反射的にボトルを下げると、サッと首を振って辺りを睨み回した。 だが、音はテレビ以外何も聞こえず、リンクは首を少し傾げた。たった今誰かに呼ばれた気がしたのだが……。 外の誰かが? と、リンクはベッドから降り、部屋の扉を開いた。だが、左右交互に見ても誰もいなかった。 「……幻聴かな。疲れがまだ溜ってるのかも知れない……きっと気のせいだ」 リンクはそう信じると深い溜め息をついた。扉を閉め、サイドデスクにボトルを置き、さっさと寝ようとベッドに潜り込もうとした。 ──……めざ……よ……しゃ……。 「!」 リンクはピタッと止まった。矢張り、誰かに呼ばれている気配が強くする。二度もこの様な事が起これば最早気のせいでは済まされない。 「……誰だ?」 マーシスはギガ軍の気配はしないと言っていたので、少なくともダイヤモンドシティにギガ軍はいない筈……だと思うのだが。 ベッドの側に置いてあるマスターソードに手を掛けながらねめ回し、リンクは呟く。 その時、目の前の視界を強い光が襲った。リンクは反らした顔を手で覆い、潰されそうな程の光から逃れようと強く目を瞑った。だが、光は一瞬の内に消え、リンクはフッと顔を上げた。 リンクが見たのは、いつも通りのホテルの部屋なのだが、見た目が大きく変わっていた。明かりはついているのか分からない。明るいのは確かなのだが、それは黄色い闇……黄昏の風景だった。重い空気が漂い、部屋内の物が闇色に染まっていた。 「な、何だこれ……!」 リンクは驚きと恐怖が入り交じり、ゾクッと鳥肌を立たせた。 「リンク」 (! 正か……) 部屋内には誰もいないが、声だけは聞こえている。しかし、誰の声かは分からない。まるで加工されている様にも感じた。 「俺をこの世界へ連れて来たのは、お前か?」 リンクは動かす目線を休めないまま、見えない相手に語り掛けた。 「貴方に俺が見える筈がありません。俺は今、遠くから貴方の心に話し掛けているのですから」 クスクス笑う声も胸に響き、リンクは恐怖を覚えた。 「リンク、貴方の心には闇の力が存在します」 「! 闇の力だって?」 いきなりの言葉に、リンクは驚きを隠せなかった。 「あの時、リンクが欠片から力を得たのと同時、空間神は貴方の心に眠る闇の力を解放しました」 知らなかった。自分は、闇の力を持っていただなんて……。 「さあ、目覚めなさい、リンク。覚醒さえすれば、闇の世界は貴方を味方してくれるでしょう。光を闇へ還すのです!」 最後の大きな声にリンクは激しい頭痛に見舞わされた。超音波な高い音が聴覚を貫く。頭が割れそうだが、リンクは抱えるのが精一杯だった。 「さあ、目覚めよ、勇者よ」 「や、やめ……」 「さあ勇者よ!」 「やめてくれ……俺は……っ!」 鼓動が高く脈打ち、リンクの体が僅かな変貌を見せ始めた。リンクはそれを拒否りたく、限界になった。 「さあぁ!!」 「やめろおおおおお!!」 「リンク!!」 「っ……えっ……?」 気が付くと、リンクの耳にはテレビの音が流れ込んでいた。黄昏の闇も消え、いつもの風景に戻った。 リンクを闇から連れ戻したのは、リンクと同じく白いバスローブを着ているマリオだった。マリオは酷く驚いた顔をしたまま、リンクの肩を強く握っていた。 「……リンク、大丈夫か?」 「あ……え……?」 脳が上手く働いておらず、リンクは変な返事をしてしまった。 周りを見ると、他のスマブラも部屋にいた。ファンシーズはワイワイ騒いでいて、大人達は彼等を叱っている。 「さっきから酷くうなされていたぞ」 マリオの隣で腕を組み、ベッドに腰を掛けているスネークは言った。 マリオは心配になり、放心しているリンクの額に手をそっと当てた。 「……熱は無いみたいだけど、かなり疲れた顔してるな」 「すみません……」 リンクは目を斜め下へ逸らして謝罪した。マリオは、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。 「明日出発って言ったけど、もう少し休むか?」 「えっ? あ、いいえ! それでは皆さんに迷惑掛けますから!」 リンクは顔を上げ、慌てて首を振った。 「大丈夫ですよ、今から寝れば、きっと翌日には疲れが取れますから」 そして笑顔を見せると、すぐにベッドへ入った。それでもマリオ達はリンクを見ていたが、暫くしてそこから離れた。 「煩い子供達をなるべく捕える。安心して寝な」 立ち上がったスネークはリンクに笑みを浮かべた。リンクも微笑みを返し、コクリと頷いた。 そして体を横にし、枕に顔を半分隠した。 (そう言えば確か……) リンクは思い出した。ハイラルで会った、買い取り屋の男の、あの言葉だ。 ──光の力だけで無く、闇の力──即ち、破壊の力を得る事を許されます。 (俺には、破壊の力を持っていると言うのか) その力が発揮させる時、一体自分はどうなってしまうのだろう。下手すると、スマブラや無関係の人々を傷付けてしまうのではないか。闇の力なんて扱ったことのないリンクは、それだけがとても不安だった。 それに、スマッシュ王国にいた頃に見た夢が、無理矢理記憶の底から掘り返された。スマブラを己の手で殺してしまったと言う、とても恐ろしい悪夢。思い出すだけで寒気がした。 ……どうか、あれが只の夢でありますように。 そう胸で強く願いながら、リンクは瞼を閉じた。 マーシスは、リンクの側に置かれているテレビの電源を切った。 「……」 その後はそこからまだ離れず、眠るリンクを見ていた。 「どうしたの、マーシス?」 「!」 マリオに呼ばれ、マーシスはハッとした。 「……いや、何でもない」 マーシスはマリオ達に振り向き、そして自分のベッドに戻った。 「隊長、ファンシーズを全員眠らせた」 そう言ったスネークの側にある大きなベッドは、ファンシーズが丁度全員入った。 ファンシーズはスヤスヤと寝息を立てて就寝していた。 「お、ご苦労さん」 自分の掛け布団を握りながらマリオは言った。そしてスネークの手元を見る。 「ち、ちょっとスネーク!」 「何だ」 「正かお前……それで眠らせた?」 マリオが指差したのは、スネークが握っている小さな銃だった。 「心配ない。ただの麻酔銃だ」 「頼むから普通に寝かせてやってくれぃっ!」 マリオはこけながら突っ込んだ。 「まあ良いじゃねえか、マリオ」 扉が開き、入って来たのはワリオだった。 「ワリオ……」 「朝までドタバタされてちゃ堪んねえからな。仕方ないと思うぜ」 「……ワリオのいびきも堪らないんだけど……」 「ああ!? 何か言ったか!?」 顔を逸らして静かに呟いたマリオだが、ワリオには丸聞こえだった。そこから二人の取っ組み合いが始まってしまった。 「大体、寝る前に茸ばっか食ってんじゃねえよ! だからそんなに太るんだろ!?」 「ワリオだって毎日お菓子ばっか食べてんじゃん! お前よりは幾らかマシだ」 「あんだとお!?」 この騒ぎはどうもファンシーズより酷い気がした。 「……あいつらも寝かせた方が良いか?」 スネークは麻酔銃を上へ構え、メタナイト達に視線を送った。 メタナイトは、翼をマーシスに治療してもらっていた。 二人は顔を見合わせるとクスッと笑い、 「構わんと思うぞ」 と、メタナイトが応えた。 「……了解っ」 スネークは、ニッと笑った。 ダイヤモンドシティから大分離れた暗い森。その森は猛獣の縄張りとも呼ばれ、誰も近付かなかった。 その中には狂暴な虎も住んでいる。虎はノソノソと歩いていると、誰かが集団でいるのに気付く。そこは自分の縄張りらしく、虎は唸りながら身構えた。 「君も運が悪かったねえ」 後ろから声が聞こえたと思いきや、虎の体は一瞬で無数に切断されてしまった。二刀流を構えたディバは剣をしまった。 「もう終わったか」 小さな広場にギガ精鋭部隊がいた。 中でもミエールと、ネスのクローンであるラフィットが、向かい合って目を閉じていた。既に何かを終わらせたらしく、二人は目を開いた。 「ええ、もう終わりました」 ミエールは笑顔だが、ラフィットはうつ向いていた。 「テレパシーで相手の心に語り掛ける。これは今んとこラフィットしか使えない能力だからな」 ディバはこちらへ来て、ラフィットの肩に手を置きながら言った。うつ向いていたままのラフィットは、ビクッと肩を跳ね上がらせた。 「あの戦いで、リンクの心には闇の能力が存在すると分かりました。しかし惜しいことに。たった今何者かが奴を引きずり出しましたよ」 ミエールは舌打ちした。 「後少しで、彼の心底に眠る力が目覚めるとこだったのに……」 そして、ゆっくりとラフィットを睨んだ。目が合ったラフィットは顔を青ざめ、震えながら一歩後ろへ下がった。ミエールは大股で歩み寄ると、彼の胸ぐらを片手で掴んだ。 「そもそもお前がまだ未熟だから……!」 「やめろ。悪いのはラフィットじゃない」 ディバは二人の顔の間に手を出して制した。ミエールは暫くし、彼の胸ぐらから手を離す。ラフィットは慌ててディバの後ろに隠れた。 「覚醒しかけたのは確かなんだ。お前達は良くやったさ」 「しかし、ここで叩いておけば、後の手間は省ける筈です」 慌てて語るミエールに、ディバはニヤリと笑った。 「焦るな。あの勇者は間違いなくお前の言葉を聞いた。闇が呼べば、闇は応える。後はその返事を聞くだけさ」 「……そう、ですね」 ミエールは静かに頷いた。 ディバは、深い闇色に染まる夜空を見上げた。 (クアンにエミー、そしてサーシュンは死んだか……これ以上死なれたら戦力が落ちるな) スマブラに対する憎しみを抱く。 そして背中に装備してある剣を一本引き抜き、一振りすると再び鞘に戻した。その時、目の前を浮遊していた小さな蛾が二つにされた。 スマブラは漸く静かになった。部屋の明かりも消し、部屋内は暗くなる。 全員夢の中に入っていると思ったが、目を覚ましている者が二人いた。それは、アイスクライマーである。アイスクライマーは先にベッドに入っていたので、スネークの麻酔銃からは免れていた。 二人は静かな声でボソボソと話をしていた。 「やっぱり、明日言った方が良いよね」 ポポは悲しげな顔で言った。ナナも辛い顔をしていたが、小さく頷いた。 「私も、決心がついたから」 目から涙が溢れ落ち、息を押し殺す。ポポも泣きそうになったが、自分は男だからとグッと我慢した。 シーツで涙を必死に拭うナナの頭をそっと撫でた。 朝が訪れた。空は快晴で、何羽かの小鳥のさえずりが響き、静かに日が昇る。 起きたばかりのマリオはカーテンを開き、ベランダの窓を開け、ベランダに出ながら背伸びをした。 「んー良い朝だぁ」 序でに欠伸をして、朝日を眺めた。 「凄い綺麗だな」 「当然だろ。このホテルは、『明日の昇る丘』って言う有名スポットが近いんだ」 後に起きたワリオが現れた。 「意外と良いとこに住んでるんだね、ワリオ。初めて来たよ」 「また来たかったらいつでも来い。面倒じゃない限り案内してやるぜ」 「何だそれ?」 マリオがそう吹き出すと、二人は笑った。それでもマリオは心の中で密かに呟いていた。 (……来れたら、ね) ワリオとはスマッシュ王国で久々に再会した。けどもしかすると、ワリオとマリオは各々違う世界から来たのかも分からない。マリオの世界のワリオは、もしかしたら今ここにいるワリオではないのかも知れない。次の欠片の導きが、それを証明するだろう。 漸く全員目覚め、朝食をとり、支度を終えるとホテルを後にした。 ホテルの外には、ワリオの仲間達が見送りに来ていた。 「寂しいYO。また踊りたくなったらクラブ・サトーに来いYO。いつでも待ってるZE!」 「ありがとうでしゅ。絶対また行くでしゅ!」 「ピチュ!」 ジミーは寂しげだが、プリンとピチューは明るく返事をした。 「ジミー、僕もダンスが好きだから、そこかなり気になるんだ」 マリオは笑顔で言った。 「俺もです。ダンスは下手ですが、ジミーさんに教えて貰いたいです」 リンクも言った。 「OH! 大感激だYO!」 ジミーは輝いていた。 「天才博士である私のおじいちゃん、Dr.クライゴアの孫として、新しい発明品を考えているんです。完成したら見てくださいね!」 ペニーは皆にニコッと笑って言った。 「また来る機会があったら、ラグビーの全国大会、皆で見に行こう!」 モナはガッツポーズをした。 「ダイヤモンドじょうもかんこうめいしょのひとつなんです」 「こんど、あたちたちであんないちますね」 くのいちの二人はお辞儀をして言った。 「今度ぼくちんの家に遊びに来てくれ!」 ナインボルトはウィンクした。 「数えきれない程のゲームを用意してあるから、皆でゲームパーティしよう! あ」 「ん?」 こっちを見てきたので子リンは一歩前に出た。ナインボルトは何故か少し躊躇ってから口を開いた。 「そう言えば今まで変な呼び方したよな、ぼくちん。ごめんな、子リン」 「ああ、全然。またゲームで盛り上がろうな!」 子リンは笑顔で言った。彼の顔を見たナインボルトも、ニッと微笑んだ。 「うん! 約束だ!」 二人は手を握り合った。 「お作法は、まだまだ謎が多いです」 クリケットは作法棒を握り締めた。 「最近分かったのは、スプランクスと言う古代の生き物が残した巻物に書かれている説明と、描かれている仕草の絵を真似ると力が発されることです。その力とウィー拳を融合させた技を、きっと編み出して見せます!」 「楽しみにしてるからね」 マリオは親指を立ててみせた。 「全くクリケットは、あちこち言いふらしおって」 溜め息をつくマンティスに、クリケットは後頭部を掻いた。 「リンクはん達、今度来たら、ダイヤモンドシティ一周を約束しますわ!」 スピッツは、長い尻尾を振りながら言った。 「また来てくださいまし」 ドリブルは運転手用の帽子を取り外し、頭を下げた。スマブラは彼等に微笑んだ。 「……ん?」 誰かにズボンを引っ張られた気がし、スネークは目線を落とした。そこには、引っ張って見上げるアシュリーと、側を飛ぶレッドがいた。 「わ、いつの間に来ていたんだ」 マリオは彼女達にドキッと驚いた。だがスネークだけは落ち着いていて、膝を付いて彼女と目線の高さを合わせた。 「逃がしたくないのか。俺を材料にしたいからか?」 「……」 アシュリーは無言でスネークに拳を出した。何かを握っている様だ。スネークは目を少し丸くしながら掌を差し出した。アシュリーがゆっくり手を広げると、彼の手にそれが乗せられた。 それは、小さなドクロのペンダントだった。 「材料にする為にこれを思い出したら戻って来て欲しいとアシュリーが言ってたで」 レッドが代わりに言った。 スネークは微笑みながら彼女の頭を撫でた。 「ああ、分かった。また戻って来る」 「……」 アシュリーは頬を少し染め、何一つ言わずレッドを掴むと、 「あ! ち、ちょっとアシュリー!」 ホウキに変身させては乗ると逃げる様に飛んでいってしまった。 彼等を見ていたスマブラとダイヤモンドシティの仲間達は苦笑していた。 「そうだ、ワリオ」 「あ? 何だ」 マリオは、隣で腕を組んでいるワリオに振り向いた。 「スマッシュ戦士として、一緒に来てくれるか?」 ワリオは腕を組みながら少し考え、 「おう、そうだな。ダイヤモンドシティを攻撃されちまったし、黙ってはおけねえな」 「協力してくれるか」 と、マリオが言った直後だ。 「ええ! ワリオさんも行っちゃうのですか!?」 ペニーは目を丸くした。それから次々と仲間達が声を上げる。 「おじさまも行くなんて嫌よ!」 「ワリオはんも行ってしまうんですか?」 「ワリオはんがいてくれへんかったらワテつまらんわぁ……」 「HEY! ワリオがいなくちゃ、誰と一緒にダンスすれば良いんだYO!」 段々仲間達の声がエスカレートして来た。ワリオは目を瞑って黙り込んでいる。 「ワリオさん、行ってしまうんですか?」 「ワリオがいないダイヤモンドシティは考えられん」 「おじさんがいなくなるなんてあたちいやだよぉ」 「あたちもおー」 「もうぼくちん達とゲームしてくれないの?」 「そうだと、つまらんばい」 「ワリオー」 「だあああ!! うるさいうるさいうるさーい!!」 突然ワリオが爆発したので周りの者はかなり驚いてしまった。 「……ワリオ」 マリオは静かに呼んだ。その時の彼は僅かに微笑んでいた。 「良いよ、ここにいても」 「だがマリオ……」 「友達が嫌がってるんだ。なら、僕も彼等に賛成だよ。ワリオ、僕達が欠片を戻したその時まで、ダイヤモンドシティの平和を守ってくれ。これは隊長命令だ」 「……」 ワリオはマリオを睨んでいた。他の者達は少しドキドキしながら彼等を見守る。次第にワリオも口端を上げた。 「分かった。隊長の命令なら、仕方ねえな。ま、頑張れよ!」 「あだっ!」 ワリオに背中を強く叩かれ、マリオは一気に引っくり返ってしまった。 「ワリオさん!」 「残ってくれるの!?」 「言っておくが、てめえらが止めたせいだからなっ」 ワリオは少し苛付いていたが、仲間達のとこにいった。 「じゃあマリオ。必ず欠片を元に戻せよ」 ワリオはマリオの前に立つと手を出した。 「冒険の途中で死んだら只じゃおかねえからな」 「おうっ」 マリオも手を出し、二人は固い握手を交した。 その間、アイスクライマーの二人は困った顔を見合わせた。ナナが頷くと、ポポはキッとした表情で頷いた。 「ワリオ。欠片を渡してくれるか」 「ああ、良いぜ」 ワリオは懐から欠片を取り出し、マリオに渡した。そしてマリオも自分の欠片を取り出そうとした。 「マリオ隊長!」 突然誰かがマリオを呼んだ。マリオは手を止め、声の方に振り向いた。そこにいたのは、アイスクライマーだった。 アイスクライマーはうつ向き、とても悲しい目をしているのに皆が気付いた。 「どうしたの、二人共?」 隣にいた子リンは彼等の顔を覗き込んだ。 ポポは顔を上げた。 「マリオ隊長。実は……」 「……んっ?」 マリオは妙な胸騒ぎを覚え、眉をひそめて体も向けた。 ポポが事情を話して数十秒後、皆が同時にざわめいた。 「アイシクルマウンテンがギガの手に落ちたかも知れないだって!?」 冷や汗なリンクは言った。 「初めは、倒したクアンの言葉なんか信じないって思った。けど……やっぱり心配で我慢出来なかったんだ。だから昨日の夜、ナナと話し合って、それで決めた」 ポポは怒りと悲しみを込めた涙目をマリオに見せた。 「僕達、アイシクルマウンテンに戻りたいと思ってるんだっ。真実を確かめたくて……っ」 「ポポ……」 「隊長」 次にナナが前に出た。 「もう私達の偽者はやっつけたから、目的は果たせたわ。本当はもっと皆の役に立ちたかったけど、大好きな場所を失いたくないの……お願い、アイシクルマウンテンへ還らせてっ」 「ナナ……」 アイシクルマウンテンはアイスクライマーの故郷同然だった。そこがギガに支配されたかも知れない。それは、クアンの嘘か、それとも誠なのか。そうであっても、そうでなくても、自分達の愛する場所が今どうなっているのかを確かめたい気持ちは誰にでもあると思う。 マリオは欠片を見下ろし、再び顔を上げた。だが、マリオも不安な顔をしている。 「還らせたい気持ちは山々だよ。けど、今の欠片にそんな力が……」 「あるぞ」 口を挟んだのはマーシスだった。 「神の宝玉は次元空間の核だ。欠片と化しても、移動能力は備わっている筈だ」 「じゃあ、アイスクライマーをアイシクルマウンテンに送る事も?」 カービィが嬉しそうに問うと、マーシスも口端を上げて頷いた。 が、直ぐに真剣な表情を作る。 「だが一度戻ると、欠片の力を借りぬ限り、二度とその世界からは抜け出せない。それでも良いか?」 「二度と……!?」 アイスクライマーはギョッとし、互いの悩んだ顔を見合った。 「アイスクライマー……」 だがそれでも、二人は頷いた。 「隊長、アイシクルマウンテンは僕達で守る! だから、お願い!」 「……分かった。アイシクルマウンテンの平和は君達に託したよ。暫しのお別れだけど、また会おうなっ」 「うんっ」 マリオが頷くと、アイスクライマーは笑顔を見せた。周りの者は微笑んだり、悲しんだりしていたが、全員の気持ちは恐らく一緒であろう。 「マーシス、これをどうすれば良いの?」 マリオはマーシスに欠片を見せた。マーシスは直ぐに歩み寄り、欠片を持つと説明した。 「欠片の所持者と戻りたい者が同時に欠片に祈りを込めれば良い」 「祈りを……」 そしてマーシスから欠片を受け取り、マリオはアイスクライマーを見た。アイスクライマーは頷き、欠片を握るマリオの手に触れた。 目を閉じて祈りを込めると、欠片が虹色に輝きだした。そしてその光は、アイスクライマーの身を包み込んだ。 「アイスクライマー、またな」 「うん。頑張ってね、隊長! 皆! 絶対ギガ軍なんかに負けないでね!」 「アイスクライマーも、頑張ってね」 リンクは言った。 「幸運を祈るぞ」 メタナイトは言った。 「平和になったらまた一緒に遊ぶでしゅ」 「ピッカ!」 「ピィチュ!」 「頑張れよ!」 「またね!」 ファンシーズは手を振った。 「皆、じゃあねっ!」 彼等は完全に光に包まれると、光はそのまま消えていった。 「……世界が元に戻っても、危険までは消えたとは限らないかも知れませんね」 「ギガ軍は、欠片と共にこの世界をも支配しようとしていたからな」 リンクとメタナイトは真剣な表情で言った。 「仲間も頑張ってるんだ。僕達も張り切っていくぞ。そして、一刻も早く欠片を元に戻そう!」 「おおー!」 仲間は大きな声で返事をした。 「……じゃあ、今度こそ僕達も行くぜっ」 マリオが二つの欠片を掲げると、欠片は彼の手から浮かび上がり、そして合わさった。優しい光がマリオ達を包む。 「マリオ、さっきも言ったが、死んだらオレ様が貴様をブッ飛ばすからなっ」 ワリオは拳を握った。マリオもそれを見た後、同じ様に拳を握った。 「……お前こそなっ」 「皆、さようならー!」 「またねー!」 そしてスマブラは欠片に導かれ、次の世界へと旅立っていった。 ──to be continued── |