Grand Prix








 デスボーンとの決戦。その舞台となる時空上のレースにはガードビームが一本も無い。正に足を踏み外せば一貫の終わりと言う脆い一本橋の上にて、今、マリオ達は最終決戦を迎えようとしていた。

「フフフ。忘れるところだった」

 C・ファルコンとマリオを乗せたブルーファルコンの隣へ、デスボーンを乗せたダークシュナイダーが現れる。急に何だと、二人は驚きを掛けた怪訝な目で隣のマシンへ振り向いた。

「お前達にはまだ会わせていなかったな──いでよ!」

 デスボーンが声を上げたのを合図に、ダークシュナイダーとは反対側に急に電流が起こり出した。そして現れたもう一台の赤いマシン。マリオ達だけでなく、リュウやジェームズ達も見開いた。
 ──赤いマシンの中にいるのは、紛れもなくC・ファルコン? 否、ギガ軍で真に初めに作られたクローン。青いパイロットスーツを着るC・ファルコンとは正反対と言った感じに、相手は赤いパイロットスーツを着ていたのである。

「彼奴が、ギガ軍最初のクローン!」

 黙り込むジェームズとは逆にフォックスは声を上げた。
 それを聞いたスチュワートは、クッと悔やむ表情になる。作りたくも無かったものを目の前に出されては、只苛立ちが募る一方でしか無いのである。

「ピカ……」

 スチュワートと乗っているピカチュウは、そんな彼を悲しい目で見るしか無かった。

「キャプテン・ファルコン! 会いたかったぜぇ!」

 イヤらしくニタリと笑うC・ファルコンのクローンに対し、C・ファルコンは声を交わさずに前を向いた。然しマリオは奴を睨む。

「俺はキャプテン・ファルコンの血から生まれた、フーディアン! 宜しく頼むぜ!」
「……悪党に宜しくされたくは無いな」

 ザ・スカルのマシンに乗っているマーシスがその赤いマシンを見ながら呟く。それを聞いたザ・スカルはカカカと骨を鳴らしながら笑った。

「マーシスの言うことはもっともなんだな」
(ライトニングでの奇妙な空気……あれは雷エネルギーを、発電所を使い大量に利用した結果か。その雷を禁断の時空ワープに使い、これまでのパイロットをここへワープさせ、葬り去ったのだな。そして使い物にならなくなった発電所は用無しとなり、爆発させたのだろう)

 ザ・スカルの言葉は聞こえず、マーシスは一人そう考えた。

「マリオにキャプテン・ファルコン。貴様らから先にゴミと化すが良い!!」

 ダークシュナイダーはスピンを始め、ブルーファルコンに突っ込んで来た。思い切り当たったブルーファルコンは激しく振動しながら横へスリップしてしまう。

「うわあ!?」

 衝撃をくらいマリオはマシン内で転がってしまう。

「く!」

 C・ファルコンは操縦管を駆使し持ち直そうとするも、更に横に現れたのは、フーディアンのマシン──ブラッドホークだ。

「!」
「死ね、キャプテン・ファルコン!!」

 そしてブラッドホークが此方へ向かおうとした。
 その時、相手のマシンが何かの強い衝撃に寄り、前へと一気に向かう。

「ぐあっ!?」
「大丈夫か、キャプテン・ファルコンっ」

 そのマシンはドラゴンバードだった。リュウがマシンの中から声を上げる。

「ありがとう、リュウ」
「ああ、借りは返したぜ!」

 リュウは片目を閉じ親指を立てて見せた。彼の言う借りとは爆弾事件の時の件である。

「……ん!?」
「! どうした、デジボーイ!」

 コンピュータをいじる間に眉根を寄せたデジボーイにダイゴローとネスは振り向いた。デジボーイは眼鏡を持ちながらコンピュータ画面を凝視している。

「……ボク達以外にもマシンがかなりの数で追って来てるみたいだね」
「それって正か?」
「ギガ軍の一味って奴か!?」

 ネスが恐る恐る尋ねれば、次に口を開いたのはファルコである。

「大分パーティも盛り上がって来たみたいね!」

 ババは白い歯をキランと反射させながらニッと笑んだ。ファルコはそこから後方を成るべく見ると、先程マリオ達が使わなかったマシン達だと言うことが解った。

「やっぱりあれは罠だったんですね!」

 リンクはプリンシアのマシン──スパークムーンの中から後ろを見て声を上げた。

「あんな奴らに落とされる私じゃないわよ!」

 プリンシアはニヤリと笑み、隣に現れた例の敵マシンに一気にぶつかりに掛かる。ぶつけられた敵マシンはスリップし、コースアウトした。

「プリンシア姫、やりますね」

 リンクは見開くが、こちらもプリンシアと同じく微笑んだ。彼女はリンクに振り向くと片目を閉じた。

「しまった、囲まれた!」
「何!?」

 ジェームズ達を乗せたリトルワイバーンを敵マシンが取り囲んだ。一斉攻撃で潰すつもりらしい。

「く、フォックス! 捕まってろ!」

 彼のマシンは大分ボロボロであるが、振り切るにはやむを得ないと、スピンをかまそうとした時だ。
 敵のマシン達が別のマシンより体当たりをくらい、コース外の時空の闇へ真っ逆さまへと落ちていったのだ。

「大丈夫か、ジム!」
「ピッカチュー!」
「ドクター!」

 それはスチュワートのゴールデンフォックスだった。

「助けられてばかりだからな。こちらも役に立たねば、正義のパイロット失格だ」
「ピッカ!」
「ピカチュウ、ドクター、サンキュー!」
「……スチュワートのマシンはボディ性能が今一なんだから、無茶するなって」

 ジェームズは呆れて溜め息をつくが、口端は上がっていた。

「皆、気を付けろ! この先は急カーブだ!」

 前辺りを走るジョディのマシン──ホワイトキャットに乗るカービィとメタナイト。その中でメタナイトが叫んだ。

「カーブに集中為すぎて、前を確り見なきゃ真っ逆さまよ!」

 メタナイトの注意にジョディが付け足した。

「素人にはクリア不可能のコースだ。思い知るが良い」

 するとデスボーンが先に向かい、急なカーブを難無くクリアした。フーディアンを乗せたブラッドホークも後に続き、彼も同じくクリアだ。

「行くぞっ!」

 C・ファルコンは声を上げた。
 ジョディの言う通り、この急カーブはハンドルを限界まで切れば容易くクリア出来るが、其れに油断をしていると前方に気付くのがかなり危くなり、逆に何とも無いストレートゾーンで墜落する可能性も低いとは言えなくなる。
 C・ファルコン達は自分達のマシンを思い切りカーブさせた。全員コースアウトギリギリの位置でカーブ仕切っていた。中にはグリップ性能が悪いマシンもいるが、それらも注意深く運転すればコースアウトする心配は無かった。
 ──しかし其れは一台を除いてだった。

「ピカピィ!」

 ゴールデンフォックスが曲がり切ろうとした時、ピカチュウが突如声を上げた。スチュワートも、運転の最中だがピカチュウと同じ方向を向いた。
 ──目の前に現れたのは、敵を乗せたゴーストマシン。

「うお!?」
「ピッ!」

 敵のマシンはゴールデンフォックスのカーブ時を狙い、一気に突っ込んで来た。激突を受け声を上げるスチュワートとピカチュウ。ゴールデンフォックスは衝撃に耐えきれず、カーブから飛び出してしまった。

「スチュワート!」
「ピカチュウ!」

 ファルコン達はその様子に、一時レースを忘れ酷く驚いた。

「グワッハハハハ!!」

 同じく見ていたデスボーンが大笑いする。

「この世界はファントムロードとも呼ばれている。ゴミと成ったマシンはこうしてゴーストマシンとなるのだ。スチュワートも仲間となれ!」
「く、此処までか!?」
「ピィカ……!」

 スチュワートは空中で言いながら歯をくいしばり、ピカチュウは目を強く閉じていた。
 マリオ達も落ちてゆくマシンを見ながら悔やみ出した。
 ──このままではゴールデンフォックスが、スチュワート達が……!

「諦めるのはまだ早い!」

 今の声はフェニックスのだった。
 すると、最後尾を走っているフェニックスを乗せたレインボーフェニックスが、カーブを無視し飛び出していったのだ。そしてゴールデンフォックスに己のマシンを衝突させ、二台共々、何と奥のレースへと着地したのである。その結果、随分と遅れをとった二台にリタイアは確定だったが、

「ありがとう、フェニックス。やはり未来人は違うな」
「ピッピカチュウ!」
「当然の事をしたまでだ」

 何より仲間達が助かった事でマリオ達は胸を撫で下ろしていた。

「キュースリー、後は任せる」
「了解シマシタ」
「フン、命拾いしたか」

 フーディアンは如何にも詰まらない表情を作り舌打ちした。

「忌々しいクローン、フーディアン、先ずはお前から倒す!」

 C・ファルコンのブルーファルコンは素早くブラッドホークへ向かった。

「オレ達は雑魚共の清掃係か」

 ピコは落胆した息を吐き落としながら呟く。気に留めずにスネークは後ろを振り返る。

「その雑魚がどうやら俺達の命を狙ってる様だがな」

 ピコはニヤッと目元を歪め、ハンドルを素早い手付きで動かした。

「まあ良い。今は存分にパーティを楽しむとするか!」
「ジェームズ!」
「おう!」

 マクラウド達を乗せるリトルワイバーンはブルーファルコンを追い越す。

「っ?」
「ファルコン、マリオ、 二人はデスボーンを倒せ! フーディアンは俺達に任せるんだ!」
「! ジェームズ、何を……!」

 C・ファルコンは口を少し驚かせていた。マリオも見開いてはリトルワイバーンの方を向く。
 ジェームズは真顔で彼等を見る。

「解ってくれ、ファルコン。俺は自分の大切な友達に、こんな醜い奴を作らせたんだ。その友達は今は戦えない。だから代わりに俺達で潰すんだ!」
「マリオも解ってやってくれ。俺達のことは構うな!」

 フォックスも眉根を寄せながらマリオを見つめる。
 C・ファルコンとマリオは一端顔を見合わた後、もう一度彼等に振り向く。そしてマリオの口から出た言葉は、

「それはダメだ」

 正かの返事にフォックスとジェームズは目を丸くしてしまう。
 マリオは軈て固めていた表情をフッと和らげるとこう言った。

「フォックス達は無理にでもフーディアンと戦うつもりだろうけど、もう十分に戦った。だから、休んでな。逆に不安だよ」
「だ、だけど……」
「ドクターを利用された悔しい気持ちは俺達も一緒だ!」

 其所へ現れたのはドラゴンバードとアストロロビンである。ジェームズはマシン達を見て声を出す。

「リュウにジャック!」
「俺もドクターにはかなり世話になった。ジェームズの気持ちは解るぜ!」
「あんた達にだけ格好付けさせて堪るかってんだ!」
「ジェームズとフォックスはブラックシャドーを倒した。後の戦いはオレ達に任せろ」

 C・ファルコンは口端を上げ、胸元を軽く叩いた。マリオも頷く。
 フォックスとジェームズは少し考え、互いを見合わせた後に彼等に振り向き、

「後は頼んだ!」

 そしてリトルワイバーンを減速し後退させた。

「キャプテン・ファルコン! マリオ! フーディアンは任せろ!」
「ああ。オレ達はデスボーンを倒す! 行くぞ、マリオ!」
「がってん承知!」

 マリオは歯を覗かせながらガッツポーズをした。
 ブルーファルコンはスピードを上げて先へ向かった。

「行くぜ、ジャック!!」
「ああっ! やぁあってやるぜ!!」

 そしてアストロロビンとドラゴンバードはブラッドホークへと向かい走り出した。

「煩い蝿共が来たか」

 デスボーンは軽く首を横へ向け、マリオ達が来るのを静かに見守る。
 ブルーファルコンは漸くダークシュナイダーと並んだ。そしてレースから落とそうと、マシンとマシンのぶつかり合いが始まった。

「くっ!」
「貴様のマシンはその程度の力か」
「何?」

 不気味に笑むデスボーンをマリオ達は不安ながらも睨み付ける。

「我にとっては、エフゼロレース等、只の子供の遊戯場に過ぎんのだ。危険なレースとは、こう言うことなのだよ!」
「マリオ、危ない!」
「!?」

 その時、ダークシュナイダーから何か針の様な物が急に飛んで来たのだ。マリオがそれに気付いた時は、ファルコンの腕が眼前にあった時。一瞬のうめきと共に近くで血の臭いが僅かにした。それが何を意味するのか理解した時は来たが、声を発する時間は多少掛かってしまった。

「フ、ファルコン!?」
「くっ……!」

 C・ファルコンは片手で何とか運転はしているが、もう片手がそのまま固まってしまっていた。C・ファルコンの片腕には、5センチ程の長さはあるだろう針が突き刺さっていたのだ。痛むあまりか拳は震える程に強く握っていた。

「だ、大丈夫か!?」
「……恐らく、大丈夫じゃない」
「え!」
「腕が動かないんだ……これは毒針だっ」
「何だって!?」
「その通り」

 低い声で言い放つのはデスボーンだ。マリオは素早く彼に振り返る。

「レースに勝つならば手段は選ばない。パイロットが毒で死のうが爆死しようが、知った事では無い! ハァッハッハッハッ!!」
「てんめぇ……!」
「死にたく無ければ我に逆らわぬことだ。分かったか! ハッハッハッ!」
「くっそぉ……!」

 マリオは今直ぐにでもデスボーンをブッ飛ばしたい気持ちに溢れているが、此処を出れば何が起こるか解らないし、何よりファルコンを置いていく訳にはいかない。それに、後ろではリュウ達がフーディアンと戦っている。皆も、邪魔をさせない為の壁となってくれている。
 全てを無駄にはさせない、させられる訳がない。
 僕も、ファルコンのマシンに乗っているから、パイロットの一人だ。だから、レースの上で、必ずデスボーンに勝つ!!

「ん?」

 デスボーンは目を細めた、マリオの行動に。そして更に目を細くする。
 マリオは、ファルコンのハンドルを握り締めたのだ。エフゼロマシンを操作するのは無論初めてだが、今はそんな事考えてる余裕等無かった。マリオはハンドルを握りながら只前を睨む。

「マ、マリオっ?」

 C・ファルコンも流石に驚きを隠せずにいた。マリオはそんな彼に笑い掛ける。

「僕もファルコン達と共に戦うスマッシュ戦士だっ。散るならば共に散ってやる! だけど、勝つまでは絶対に諦めないんだからな!」
「マリオ……」

 暫しマリオを見ていたファルコンにも次第に笑みが浮かび上がる。そして彼も前を見ながら自由な手でハンドルを確りと握った。

「マリオもマシンに乗った以上は、パイロットだ。責任は持つんだぞ!」
「分かってら!」
「パイロットが何人増えようが変わらぬ! 遊びは終わりだ!」

 デスボーンが叫べばダークシュナイダーは回転を始め、このままブルーファルコンに向かい突っ込んで来た。C・ファルコンとマリオは息を合わせ、握るハンドルを同じ方向へと動かした。マシンは素早く後退し、避けられたダークシュナイダーはブルーファルコンの前まで来る。

「何っ?」
「おりゃあ!」

 ブルーファルコンはブーストを使い、ダークシュナイダーに体当たりをかました。

「ぐっ! な、何だと!?」
「どんどん行くぜ!」

 マリオはニヤリと歯を見せた。ファルコンも同じく口角を吊り上げている。そしてブルーファルコンはダークシュナイダーにどんどん体当たりしていった。

「くそ!」

 やむをえまいとデスボーンはハンドルを動かし、かなりのダメージをくらったダークシュナイダーを横へずらした。ブルーファルコンは再びダークシュナイダーと並ぶ。

「バカな! たかがド素人が何故そこまで息が合うのだ!」
「素人だろうが玄人だろうが、関係無い! 僕達は仲間だ。仲間だからこそ、力を合わせるんだ!」
「……実に、下らなさ過ぎる!!」

 勢い任せた怒声をデスボーンは吐き出し、改めてぶつかって来る。かなりの速さ故にマリオ達は避けきる事は出来ずストレートに受けてしまう。

「うわぁ!」

 マリオ達は戸惑いながらもハンドルを必死で傾けさせ、ギリギリでコースアウトを免れた。

「仲間など、弱者の集まりだ!」
「うお!?」
「そんな力で我を倒せると思っているのか! 片腹痛いわ!!」
「ぐっ!」

 デスボーンは言葉を放つ度にダークシュナイダーをブルーファルコンへぶちあてていた。抵抗する余裕も無く、マリオ達はなすがままにされてしまう。

「それならば我を止めて見せろ! 仲間とやらの力を借りて!」

 一端離れたかと思えば、ダークシュナイダーの側面から巨大な刃が現れたのだ。そしてデスボーンはマシンを再びスピンさせる。このままブルーファルコンを真っ二つにするつもりだろう。

「そのマシンを貴様らごと二つにしてくれる!」

 巨大な回転カッターと化し、向かって来た。当たれば即切断確実である。

「これはレースだ」

 不意にC・ファルコンが口を動かした。

「! ファルコンっ?」
「法律が無いとは言え、エフゼロは傷付け合うレースでは無い。ライバル同士速さを競い合い、エフゼロでしか味わえない音速の世界を見るのだ。仲間と共に音速の世界を走るレース、それがエフゼロだ。それを忘れたデスボーン、お前にマシンを動かす資格は無い!」
「小賢しい!」

 ダークシュナイダーは一気に向かって来た。

「──Come on! Blue Falcon!!」

 唐突にC・ファルコンの口調が変わった。マリオはハッとし振り返る。C・ファルコンのヘルメットの奥には、恐らく目の色が違う彼がいるだろう。それは近くだからか、それとも今、共に戦っている仲間だから解ることなのか。
 C・ファルコンが叫んだ途端にブルーファルコンが輝き出した。そして、物凄いスピードを上げたのである。お陰でマシン用のギロチン並のスピンを見事かわした。

「何!?」

 そう口で言うデスボーンだが、彼のマシンは既にブーストを使い、C・ファルコン達の後を追っていた。

「ふふ、いつになれば俺を倒せるかな!?」
「くっ!」

 その頃、リュウとジャックはフーディアンとの激戦を繰り広げていた。しかしフーディアンは思った以上に強く、リュウは歯をくいしばっていた。

「此処で諦めたら、俺たちゃゴミ扱いだぜ!」

 リュウに続くジャックが叫んだ。

「……ん?」

 ふと、フーディアンは前のマシンに笑顔を消した。様子が変わったのに気付き、不振に思ったリュウとジャックも彼の目線を辿った。
 物凄い速さ──音速どころでは無い程の光線が見えた。僅かに青と赤の影がボヤけつつも、リュウ達の目には十分映し取れた。

「あれは、キャプテン・ファルコン達とデスボーンのマシンかっ?」

 疑り深い声色でジャックは疑問の言葉を放つ。然しリュウは違った。

「間違いなくそうだ、ジャック! きっと、キャプテン・ファルコン達の最後の戦いなんだ」
「最後の大勝負……是非とも観戦したいものだな!」
「ククク、ファルコン達がいつ時空のゴミになるのが楽しみだな! 無論、貴様らもだ!」

 馬鹿にしては大笑いを上げるフーディアンに、二人は険しい目をほぼ同時に向けた。

「ふざけるな!」

 リュウとジャックのマシンはブラッドホークを囲む。

「これで終わりにしてやる!」
「覚悟しな、フーディアンさんよぉ!」

 そう言われるも、フーディアンの表情は未だに余裕たっぷりと言った所だ。左右交互にマシンを見れば、煽られたかの様に更なる不気味な笑みを作り上げる。

「ククク、もう此処にいる必要は無い」
「な! いきなり何を言ってやがる!」

 ふざけるなとジャックは怒鳴る。リュウは意味が解らないと言った風に眉根を寄せていた。

「じゃあな貴様ら!」

 するとブラッドホークは瞬間移動したかの様にその場から姿を消してしまったのだ。

「あ! 待て、フーディアン!!」
「ドウヤラ逃ゲラレテシマイマシタ……」

 そこへキュースリーのマシンであるローリングタートルが現れた。

「キュースリー、奴は何処へ!」
「……少ナクトモ、モウコノ空間ニハイマセン」
「そうか……」

 リュウの問いにキュースリーが答えれば、二人は舌打ちしそうな悔しい表情を浮かべた。
 そして彼等、雑魚マシンらを一掃したスマブラやパイロット達、全員、マリオとC・ファルコンに全てを懸けることにしたのだ。

「キャプテン・ファルコン、マリオ、どうか勝ってくれよ!」
「うおおお!!」

 C・ファルコンとマリオは声を上げ、どんどんブルーファルコンのスピードを上げていく。

「落ちろ、キャプテン・ファルコン、マリオ!」

 ダークシュナイダーの刃が回転を描き牙を剥く。然し気に留めず、マリオ達は只前だけを見つめていた、レース上の勝負を一心に。
 軈てゴールラインを、二台のマシンは越えていた。それは明らかにブルーファルコンが先だった。
 然しダークシュナイダーのマシンカッターはおさまる気配が無い。どうやらデスボーンの諦めは悪いらしい。勝敗も納得せず、唯マリオ達を抹殺しようとしていた。

「チッ。往生際の悪い奴だ!」

 彼等を観戦している者達の一人であるファルコが舌打ちした。

「待て、ファルコ殿」

 その言葉を発したのはマーシスだ。マーシスもまた、ブルーファルコンらを見ている。

「んだよ、マーシス」
「……様子がおかしい」
「あ?」
「何ですって?」

 マーシスの一言にリンクは眉根を寄せ、同じく怪訝そうな顔付きになっているプリンシアと顔を見合わせた。

「お、おおおぉ……」

 ダークシュナイダーからうめき声が聞こえて来た。その声は皆に聞こえており、全員静かに驚いていた。

「な、何だ?」

 マリオもやはり気になってしまった。C・ファルコンもダークシュナイダーの方をマリオの後に続いて見た。
 ダークシュナイダーの動きが次第におかしくなっていた。まるで生き物の様にガクガクと痙攣を起こしているのである。パイロットのうめきも次第に大きくなり、マリオ達の鳥肌を立たせた。

「おおおおお!!」

 軈てダークシュナイダーは大爆発し、時空の闇へと消滅していった。
 それを合図にしたかの様に、C・ファルコンとマリオの目の前に柔らかな光が二つ程現れた。欠片と本型ホログラムだ。デスボーンに何があったかは分からないが、今は目の前のものを見る。マリオは本、C・ファルコンは欠片を手に取った。C・ファルコンが取れば欠片が光を放ち、彼の中へと吸い込まれていった。

「……ベルトから不思議な光が放たれていたと思えば、この欠片だったのか……奴の手に完全に渡らなくて良かった」
「それが未来からの欠片か……マーシス」

 少し不安になったマリオは、マーシスに振り向いた。マーシスは口端を上げて頷く。

「欠片は過去にあろうと未来にあろうと、その力は連動している。それは未来の欠片だが、今の時代に来れば、その時代の欠片となるのだ」
「なるほどな……やったな、ファルコン!」
「ああっ」

 二人は微笑み合い、手を強く握り合った。他のパイロットやスマブラ達も笑顔になっていた。

「……奴の限界は既に越えていた。そう言う事か」

 フェニックスは、消滅したダークシュナイダーに顔を向けたまま呟いた。

「ベルトノ反応モアリマセン。恐ラク、ダークシュナイダート共ニ……」
「あのベルトは現実にあってはならぬものだ。消滅して正解だろう」




「やれやれ、デスボーン君ったら無理しちゃって」

 マリオ達に気付かれない為に気配は消したまま、時空の空中で腰に手を当てながら浮遊しているディバがそこにいた。ディバの言葉とは裏腹に、本人の表情は、まるで遊びに飽きた玩具が壊れたのを呆れた笑みで見下している様な妖笑だった。

「だけど、まだまだチャンスは僕達に有る。あいつらの世界だけじゃなく、全ての世界を、僕らギガ組織が手に入れる、絶好のチャンスがね」

 腕を組み言うと、ヒヒヒッと微笑した。そして笑うのを止めると、

「……久しぶりだね、フーディアン。あいつらと遊んで楽しかったかい?」

 ディバは、背後に現れた笑顔のフーディアンにそのまま話し掛ける。フーディアンも、ディバに負けぬ位の不気味な笑みを浮かべていた。

「すげえ楽しかったな。また遊んでやりたい位だ!」
「ヒヒ、それは良かったね。そして喜びな、フーディアン。これからも、アイツら遊んでくれるみたいだから、楽しみにして置くことだね」

 ディバはニタリと笑みながらマリオ達を見下ろし、軈てフーディアンと共にその場から消え去った。




 時空空間から脱出し、無事元の世界へと戻ったスマブラとエフゼロパイロット達。場所は、マリオ達が走っていた路上だった。

「はい、フェニックス。歴史の本っ」
「ご協力、感謝します!」

 フェニックスは額に手を当て敬礼しながら、マリオから本を受け取った。

『そうだったのか──分かった。今の話は、国王達に全て報告するよ』

 妖精ナビィを通じ、C・ファルコンはクローンの事を分かる範囲で全て話した。

「ああ。今まで黙っていたのは申し訳無く思っている。早く話していれば、何かしら対策は出来た筈だ」
『……いえ、話せなかったファルコンさんの気持ちは分かります。だから、そんなに自分を責めないでください』

 ナビィからロイの優しい声が聞こえるが、C・ファルコンは黙り続けている。
 そこへリンクが入って来た。

「それではマルス王子、ロイ、後はお願いします」
『はい。それでは失礼します』

 話を終え、ナビィはリンクの帽子の中へと戻った。

「すまない、リンク」
「いえ。必ず、ギガ軍に勝利しましょう。ですからファルコンさんも、力を貸してください」
「ああ、それは勿論だ。俺は全力で、君達の力になろう」

 C・ファルコンは拳を作ると、絶対勝利を誓った。

「……そう言えば……」

 マリオはうつ向きながら呟いた。

「アイツも──デスボーンも、アンドルフらとおんなじ様な事を言ってたな。ああ言う奴は、慕って来た部下達を顎で命令してたんだろうけど、仲間とは一切思っていなかったのかな。悪人は皆そうなのか?」

 辛そうに震わせた瞼で目を閉じ、固い拳を震わす。周りの者達は悲しい目でマリオを見ていたが、暫しの静寂を最初に破ったのはマーシスである。

「そんなことは無いぞ」

 マリオは顔を上げ、マーシスに顔を向けた。

「悪の全てが根から悪に満ちているとは限らん。思い出せないか? ガノンドロフ殿やウルフ殿達は、我々に協力したでは無いか。全ての悪を否定するなとは言わんが、我々にはそう言う仲間もいる事を忘れてはならんぞ」
「! ああ!」

 何かを思い出されたマリオはハッとし、そしてマーシスに笑んだ。

「……ねえ、スチュワート先生」

 呼びながらスチュワートに近付いて行ったのはネスだ。

「何かね?」

 腕を組んでいるスチュワートは顔をネスの方に向けた。ネスは始めは何かを言うのを躊躇っていたが、勇気を振り絞ると顔を上げ、スチュワートの顔を真っ直ぐに見て口を開いた。

「聞いたら悪いって解ってるんだけど……スチュワート先生は、クローンを作った人なんだよね?」
「そうだが」

 スチュワートは動揺せず、然し笑顔は消えてネスを見ていた。

「あの……だから、ギガ組織にいるクローン達を、スチュワート先生の手で何とか出来ないかなと思って、その……」

 ネスの言葉にスマブラ全員がスチュワートを見ていた。スチュワートは暫く無言のまま何かを考えていたが、顔をネスに向けると、

「すまない。今では、クローン達は我々の未知なる世界へ逃げてしまっている。そこまで追跡し、デリートする事は出来ない」
「そう……」
「ただ……」

 スチュワートの次の単語を聞くとネスは顔を素早く上げた。序でにどせいさんもリュックから顔を出す。

「ただ一つ言えるのは、私の作ったクローンは最初は心がまだ無い。ブラッド・ファルコンは洗脳されたからああなったのだ」
「元々悪心の持ち主では無いって事?」
「だから洗脳を解けば、相手は元通りの姿になる筈だ。無責任に思うだろうが、その先は君達に任せるよ」

 そう言いつつもあまり自信が無いらしく、スチュワートはそれきり顎を撫でて考えている。
 ネスとマリオは、互いの目を見合った。スネークも、少し考えていた。

「ありがとう、スチュワート先生」

 ネスはペコリと頭を下げた。

「……そうだ。これを持って行きなさい」
「?」

 何かを思い出したかの様にスチュワートは声を少し上げると、ネスの前で膝をつき、彼にある小さな物を握らせた。ネスが手を開くと、それは赤い液体の入った小瓶だった。

「これはクローンに植え付けられた洗脳……つまりそう言う名の毒を中和させる為の薬だよ」
「てことは……」

 マリオは少し希望を持った目をしたが、スチュワートは難しい表情を見せる。

「これはクローンを作った後に、私がこっそり作って置いた試作品だ。効果の絶対は約束出来無いが、成功すればクローンの洗脳が解けるだろう。これは私からの精一杯のお詫びだ。受け取り給え」
「ありがとうっ」
「ただし、これは一回分しか使えない……よく考えて使うのだよ」
「はいっ」

 ネスは小瓶を両手で大事に握った。

「それにしても」

 マリオはニッと笑い、胸に手を当てた。

「エフゼロレースって、凄く興奮するんだな。こんなに熱くなったの、久しぶりな気がするよ」
「俺もだ。こんなに心臓がドキドキするだなんて、初めてアーウィンを操縦した時以来だと思う」

 フォックスも胸に拳を当て、そしてジェームズに振り向いた。ジェームズもその話にクスリと笑った。

「それじゃあ、明日のF-ZEROグランプリにマリオ達を招待するぜっ」

 リュウは笑顔で言った。

「本当!? やったあ!」

 カービィが声を出すと、ファンシーズも喜びのあまりジャンプしていた。

「そうだな。それに、暫しグランプリには出なくなるからな」
「ファルコン……」

 C・ファルコンは笑みながら腕を組んだ。マリオは彼に悲しい目を向けつつも微笑んでいた。
 本当は今直ぐにでも次の世界へ向かいたいが、C・ファルコンは暫くこの世界にはいられなくなる。だからその前に彼の気持ちを考えてやったのだった。




 ──翌日。

「レディースアーンドジェントルマン! 今回も熱いF-ZEROグランプリレース会場へようこそ来てくれた! 早速パイロットを紹介するぞ!」

 実況の熱い語りに応えるかの様に、観戦者達はヒートアップしていた。無論、スマブラもそこにいた。

 ──ミス銀河宇宙連邦──ジョディ・サマー!
「カービィ、メタナイト、見ているかしら?」

 ──侮れない敏速男──ジョン・タナカ!
「ジョディだけに走らせるか!」

 ──スピード狂の暴走クイーン──プリンシア・ラモード!
「リンク、ナビィ、このレースに出れたのも、貴方達のお陰よ」

 ──暗黒世界の殺し屋──ピコ!
「ありがとよ、蛇」

 ──天然パワー爆発の野生児──ババ!
「ファルコー、見てるぅ?」

 ──宇宙暴走族のヘッド──マイケル・チェーン!
「ふんっ」

 ──大和魂侍──サムライ・ゴロー!
「今日こそC・ファルコンに勝つぜ!」

 ──やりたい放題の悪ガキパイロット──ダイゴロー!
「ピース!」

 ──驚異の天才少年──デジボーイ!
「ネスくんとも是非競いたかったね」

 ──召還された伝説のレーサー──ザ・スカル!
「マーシス、見てるんだな」

 ──交通ルール無視のタクシードライバー──PJ!
「やっぱりここが一番落ち着くッス」

 ──時空警察の切り札──フェニックス!
「悪は必ず捕える!」

 ──生まれ変わったロボット──キュースリー!
「相変ワラズ緊張シマス」

 ──電光石火のスーパーアイドル──ジャック・レビン!
「リュウ、行くぜ!」

 ──白き龍を操る男──リュウ・スザク!
「ああ!」

 ──迅速緊急救命医師──Dr.スチュワート!
「久々に暴れるか、ジム」

 ──やとわれ遊撃隊の切りこみ隊長──ジェームズ・マクラウド!
「フォックス達も見ているしなっ」

 次々と紹介されて行くパイロット達──そして、

「そして我らがヒーロー! キャプテエエェン・ファルコオオォォン!!」

 最後にC・ファルコンの名が上がると客達も更に熱くなった。

(皆、頑張ってくれよ!)

 更なる熱さに期待しているマリオ達。マリオはニッと笑み、拳を強く握った。
 C・ファルコンはマリオ達に振り向き、口端を上げ、ブルーファルコンに飛び乗った。

「早速ブッ飛ばすぞぉ! Ready……」

 実況がスタンバイを呼び掛ければマシン達は浮遊し、ブーストをその場で仕掛け、そしていよいよ、F-ZEROグランプリの至上最高に熱いレースが始まろうとしていた。










 ──to be continued──