サムスの過去








「今回の任務は誠に良くやってくれた。然し、多くの犠牲も出てしまった」
「……」

 依頼主である銀河連邦議長キートンは、議長室へとスマブラを呼び出した。
 窓からの壮大な都会の景色を眺めながら語る彼の言葉達は、スマブラの心を突き刺す。中でも責任を重く感じざるを得ないマリオとサムスは、誰よりも更に俯いていた。

「だが止むを得ない事態は避けられない。そして今回の事件で、スペースパイレーツの狙いが発覚した」
「……これの事ですか?」

 マリオはカプセルを前に持つ。其処にはベビーメトロイドが入っていた。キートンは振り返ると其れを見て、

「彼奴等共はそのメトロイドを何かに利用する目的で現れた。目的を果たす為ならば何でもやる。それが宇宙海賊だ」
「それで、キートン議長。俺達を此処へ呼んだのは?」

 リンクは尋ねた。キートンは彼を一瞥してから、再び窓へと顔を戻した。

「その力に免じ、サムス、そしてサムスの仲間である君達に、新たな依頼を頼みたい」
「そーうか、久々に楽しみが増えたぜ」

 頭に手を回しているクリーツはケケケと笑いながら言った。

「……」

 そんな彼を、巨大猿の様な獣人であるモークが一瞥する。モークも又、サムス達と共に銀河の為に戦った一人である。

「議長の言いたい事は解る」

 サムスはくるりと背中を向け、マリオ達の間を通り、扉へと向かった。

「報酬は忘れるな。前回の依頼と、マリオ達へのも合わせて払って貰う」
「解っているよ」

 躊躇無く首を縦に揺らしたキートンにサムスは微笑のみで返し、そして扉を開くと室内を後にした。

「戦士のお姉ちゃん、元気無いね」

 ピョンチーを腕に抱いているネスは、悲しい表情を描くとフォックスを見上げた。フォックスも彼に気付きネスの表情を見る、何処か辛さを滲ませた。

「そっとして置いた方が良い」

 C・ファルコンが言葉を放つ。

「海賊達との決着を、漸く着ける時なのだからな」
「うん……」
「……」

 腕を組んでいるスネークは、扉を暫く見ていた。




「マリオさん、元気出してください」

 連邦本部を後にした後、マリオ達は外に出た。
 未だに俯いているマリオをリンクが心配そうに話し掛ける。リンクの声に全員が振り向いた。

「マリオ、いつまでも落ち込むのは止めるのだ。そなたは隊長なのだぞ」
「解ってる!」

 メタナイトの言葉を跳ね返す程にマリオはつい怒鳴ってしまった。
 そして再び前を向けば目を手で覆う。

「……けれど、人が死んだのは確かなんだ、しかも沢山……僕が、僕があの時の選択に反対してれば……」

 何もかも、自分を責め立ててしまう。それは仕方無い事情なのだ。あの時の選択で、運命が大きく変わったのだ。

「マリオ殿、気をしっかり持つのだ」

 冷静な口調で前に出たのはマーシスだ。マリオ達は彼を見る。

「悔やむ気持ちは解る。しかし、後悔したって何もならないであろう。故に、マリオ殿は次にやらねばならぬことがあるであろう──これ以上犠牲者を出さぬ為にも」
「……マリオ」

 次にメタナイトが言葉を放つ。

「その運命を悔やむならば、その運命をこれからの定めにぶつけると良い」
「……それって?」
「ピッカー!」

 マリオの肩に飛び乗ったピカチュウは、マリオに笑顔を見せた。

「スペースパイレーツをやっつけるんだよ!」

 マリオの前でカービィが飛び跳ねる。

「カプセルも渡さないでしゅ!」
「ピィッチュウ!」

 カプセルを二匹がかりで持っているプリンとピチューは言った。
 マリオは彼等を順番に見た後、暫く考えてから、

「少し、時間頂戴」

 と、一言静かに呟いたのち、ピカチュウは彼を見てから肩から降り、マリオは彼等を置いて歩き去っていった。

「今はマリオの好きにさせるべきだな」
「……そうだね」

 フォックスとリンクは言った。

「ところで、あのお嬢さんは何処へ行ったのかな?」

 唐突にスネークが言った。

「あ、そう言えばあれから見当たらないなぁ」

 クリーツが額に手を翳せば辺りを見回す。

「ちょっと探してくるわ。モーク、一緒に来てくれ」

 人差し指をちょいちょい動かしながら言うとモークは頷き、二人も其の場からいなくなった。

「サムス・アラン……か」
「そう言えば、スネークはまだ知らないよな、サムスの小さい頃の話」

 フォックスはスネークを見るとそう言った。

「どうやら俺は血の臭いがするって理由で嫌われてるみたいだけどな」

 スネークはフォックスの目を見ると返事をした。

「……無理もないかも知れない」

 スネークの隣に立つC・ファルコンは言った。スネークは彼を睨む様にして見つめ返す。

「サムスは幼い頃、両親をスペースパイレーツに殺されたんだ」
「……あの時の奴らか」
「それからサムスは鳥人族に拾われ、彼等に育てられた。鳥人族は、人間よりも戦闘能力を超えているらしい。サムスの力が人一倍優れているのも、鳥人族より授かったパワードスーツと、鳥人の遺伝子を移植されたからだ。これまでも、あのスペースパイレーツと戦ってきた」
「なるほど、冷たい外殻に身を包む女か……」

 目を閉じながら、スネークは密かに呟いた。

「サムス、もう大丈夫なのか?」

 遠くから聞こえて来るクリーツの声に彼等は振り向いた。クリーツ達よりも前を歩いているのはサムスだ。サムスは目を伏せた儘歩いて来たが、彼等を見上げれば、笑顔を作る。

「心配掛けた。もう大丈夫だ」
「何度も言うけど、あまり無理するなよ、サムス」

 フォックスは腕を組み、顔をしかめている。サムスは彼に無言で頷いた。

「一々気を落としていては、前を見れないからな。戦う皆と共に、私もこの手を武器に戦う」

 挙げた右手に拳を作って見せた。

「僕も同感だよ」

 別の方向から声がした。ピカチュウは耳を動かすと笑顔で振り返り、一目散にその声へ向かい、持ち主の肩に飛び乗った。

「マリオさん……」

 リンクは未だに心配した表情を描いていた。マリオはリンクに微笑み返した後は、一度謝罪して、

「ゴメン、皆。僕だけ何だか取り乱しちゃって。悲しいのは、皆一緒だ」
「そうだよ、マリオ」
「うん」

 フォックスとネスは返事をした。
 そしてマリオは何を思ったか、サムスを一瞥してから目を閉じ、すぅっと息を吸うと、自分の頬を思い切り殴ったのだ。

「た、隊長!?」
「ピカ!」

 カービィとピカチュウが声を上げる。無論、他の仲間も同じく驚愕した。
 マリオは頬を若干腫らしながら、大きな空気の塊を肺から吐き出し、そして気合いの入った顔を作る。

「いつまでも弱気になっちゃいけないっ。引き締めなきゃ、あっと言う間にお陀仏だ」
「……ふ。マリオの行動は時々訳が解らない」

 サムスは苦笑いをしながら肩を竦めた。マリオは彼女に振り向く。

「サムス達の世界を救う為に、宝玉の欠片を取り戻す為に、僕は向けた背中を戻した。ただ、傷ついた仲間を放っては置けない。その気持ちだけは、変わらないよ」
「それは解っている……この戦いが終わったら、私もマリオ達と行こう。構わないか?」
「サムス、来てくれるかっ」
「え! サムス、行っちまうのか?」

 唐突な質問にクリーツ達は驚く。そして、プリン達が支えているカプセルの中にいるベビーメトロイドも、ピィと鳴いて、

「あ!」

 カプセルから飛び出し、サムスまで飛んでいったのだ。すっかり母親と見て縋るベビーメトロイド。サムスも見開いたが、微笑むとベビーメトロイドを撫でる。

「私は銀河を守る戦士。そして、マリオ達と共に戦うスマッシュブラザーズの一人。今の私は、私自身の意思に従うだけだ」
「ま、サムスがそう言うなら仕方無いけどよ」

 クリーツは頭に手を回した。

「帰る場所は決まってる。今回の任務もそうだ。絶対帰ってこいよな」
「……クリーツ達こそな」

 閉じた目の内片方を開き、クリーツは口を歪める。サムスは、そんなクリーツに微笑を描き静かに頷いた。

「そろそろ向かうとするか?」

 スネークは親指を後ろへ向けながら言った。

「そうだな」

 サムスは言った。

「奴らの本拠地である惑星ゼーベス。そこまで皆を案内しよう」
「よし。行くか、皆!」

 マリオはニッと笑うと、拳を作った。




 ダイバンより飛び立つ光達。
 マリオ達の乗るファルコンフライヤー、そしてサムスのスターシップが、惑星ゼーベスへと向かう。

(ゼーベス、か……)

 スターシップを操作している、パワードスーツ状態のサムスは、惑星ゼーベスを思い浮かべては、静かに目を閉じた。




 橙色の惑星ゼーベス。
 二つの光がそこへ向かい、やがて消える。地上へと漸く着地した。
 現在、この惑星の天候は曇り。今にも雨が降りそうな雰囲気だ。スターシップから出たサムスは空を見上げる。

「皆、なるべく早く海賊の基地へ向かうんだ。間もなく酸性が非常に強い雨が降る」
「酸性雨だって?」

 マリオは驚いて言った。

「ただの雨じゃねえのか」

 ファルコはファルコンフライヤーから降りる前に空を仰いだ。

「大丈夫っ。万が一の事があったら、僕のシールドが守るよ!」

 ネスは指先から光を出し、サムスに片目を閉じた。

「へぇ? ただの子供だと思ってたけど、案外頼もしいな」

 クリーツは歯を覗かせながらネスの顔を覗き込む。ネスは嬉しさに寄り、彼を見て僅かに頬を熱くした。

「あ、有り難う」
「……マリオ殿、どうやらこの惑星に欠片がある様だ」

 欠片の気配を感じ取ったマーシスはマリオにそう伝える。マリオは彼に振り向き、大きく頷いた。

「よっしゃ! いっくぜぇ!」

 マリオは宇宙海賊の基地へと駆けて行った。次にベビーメトロイドを連れたサムス、そしてクリーツにモーク、スマッシュブラザーズと続いていった。ネスの腕から降りたピョンチーも、彼等の周りを跳ねながら走っていった。




「スマブラが来ちゃったねぇ」

 宇宙海賊基地の奥にある巨大な部屋。
 ディバは外を見張るモニターを見ながらクスッと笑った。

「そろそろ大暴れさせてよ、隊長。待ちきれないよっ」

 リズはディバの肩に飛び乗り、子供みたいな語調で強請る。

「それは構わないけど、金髪の姉ちゃんは、リドリーらに任せよう。リドリー自身、彼女を憎んでるみたいだからね」
「ふん。サムスは俺様の手で八つ裂きにしてやりてぇのよ」

 彼と共にいるリドリーは爪を剥き出させながら声を僅かに荒げる。

「だが、先ずは手下共だ。サムスの仲間と抜かしやがる奴らを掃除する」
「彼等の力を侮ってはいけません」

 背後からの声にディバ達は振り返った。そこには、一つ目の巨大な大脳マザーブレインがいた。マザーブレインとは、宇宙海賊の最高指導者である機械生命体だ。

「スマッシュブラザーズ。数々の死闘を経験している。気を緩めては、デリートは確実。常に最大限のパワーで対抗するべきでしょう」
「だってさ、キャプテン?」

 ディバは皮肉たっぷりな笑みと口で告げた。リドリーはチッと舌打ちする。

「俺様達の力を舐めんなよ。全てをズタズタに引き裂く。それが俺達、スペースパイレーツだ──そう、全てをな」

 そう言いながら意味深に笑んだ後、飛び去って行った。

「──さぁて、諸君? 存分に遊んでおいで?」

 ディバはマントを翻し、海賊達と精鋭部隊に命令を下した。










 ──to be continued──