虫 「メタナイト、出られるか?」 「すまない、マーシス」 先に脱け出したマーシスは、何かに寄ってどんどん沈められて行くメタナイトの手を即座に掴む。辛うじて、メタナイトが完全に沈む前に救い出すことが出来た。 先程マーシス達を引っ張っていた、虫の様な怪物達が出現する。そいつらは素早い動きでマーシス達に急接近する。 慣れた手付きで、マーシス達は剣を振り、次々と敵を切り裂いた。 「そろそろ親が出て来る筈だ」 「そうだな、メタナイト。この異常な殺気は……」 そう言いかけたとこで、マーシスの口が止まる。 (違う、この殺気は新しく無いのも入り混じっている……やはりあいつが……) 「いい獲物がとれちゃったかなぁ?」 壁にある砲台の上に立つ者がいた。聞き覚えのある声に、マーシス達は素早く見上げる。 「ディバ……!」 「あーん? マーシスさんもご一緒とはね。僕ってばとことんついてないね」 と、態とらしく残念がり、肩を竦めた。 マーシスは一歩前に出ると、剣先をディバの方へ突き付けた。 「貴様の様な人と出会すとは、私も相当ついてない様だ」 それを見るディバは妖しげな笑みをニタリと浮かべた。 「ふぅん? 案外僕達気が合うね……ただ、一つだけ解って無いのがあるよ?」 「……何だと?」 「僕達が何で此処にいるのか? それは、ある実験をしてるからだよ」 ディバは片目を閉じながら言う。 マーシスとメタナイトは僅かに困惑し、見合わせた。 ──一体何の実験を? 「序でに言っとくけど、まだ君達はその虫を殺し切れて無いってこと、気付いた方が良いんじゃ無い?」 「!?」 二人は彼の言葉に、素早く敵に振り返った。 メタナイト達に倒された虫達が、紫の液体……と言うよりかは、蠢動する多くの粒に気付けば包まれ、そして溶けて行く。 「なっ! こ、これは……!?」 「君達が知る必要は無いさ」 そう言うディバだが、その笑みの中には、何故か納得のいかない様な色を滲み出していた。だが、それを隠す様により深く笑んだ。 「お楽しみはまだまだこれからって奴だねん……ひひっ」 その紫の何か、恰も丸い虫の様な存在だ。 その紫の虫達は一つに集まると、先程より更に巨大なものへと変貌していく。それは今の怪物の三倍程だ。 「一体奴は何の実験を……!」 メタナイトはギャラクシアを構えながら言った。 「……私にも解らぬ」 マーシスもルーメン=デーウスを構えながら食いしばる。 「しかしこの悪寒は……尋常では無い」 「流石はマーシス様だねぇ。でも、そんなこと考えてる暇さえないんじゃ無いかな? ドレイゴン、いけ!」 ディバはドレイゴンの体に乗り、メタナイト達を指差した。 ドレイゴンは巨大な目を開くと、粘り気の強い液体を次々と吐き出した。 「ぬぉ!」 「メタナイト!」 マーシスはギリギリでジャンプして避けたが、メタナイトは遅れを取ってしまい、液体を一発受けてしまった。粘度があるそれは、簡単に獲物を逃がさない。メタナイトは力を振り絞るものの、身動きはやはり取れずにいた。 「ヒヒヒヒ! 滑稽だなぁ!」 ディバはメタナイトの姿に腹部を抑える仕草をしながら、嗤い声を上げていた。 「食らえ、ドレイゴン!」 マーシスは剣を振るうが、ドレイゴンの体は異常に硬度があった。ガキンと音を散らしながら、マーシスの剣が弾かれる。 「!? 剣は効かないのか!」 ドレイゴンはメタナイトへ向け、巨大な尾を振った。メタナイトはギャラクシアで受け流すことを試みるが、身動きし辛い体では力にも限界があり、完全に防ぎ切れなかった。 「ぬぁ!?」 力負けしたメタナイトは、遂に吹き飛ばされた。 そして砲台に接触し、その場に倒れてしまう。 「メタナイト!」 「余所見しては駄目よ?」 「!」 気を取られてしまったマーシスは、遂に自分も身動き取れない状態に。ドレイゴンの液体を浴びてしまったのだ。 「っ……しまった!」 「しつこく粘るから、簡単には離れないよ」 「……ここで、負ける訳にはいかん。先で待っている者達がいるんだ」 マーシスはディバを睨みながら言った。それをディバは鼻で軽く笑う。 「いつまでその気持ちでいられるかな?」 ドレイゴンがマーシスの目の前に降り立つ。 辛うじてマーシスの右腕は難を逃れており、ドレイゴンの爪の連続攻撃を何とか抑えている。しかしそれは時間の問題だった。 「はぁ!」 ドレイゴンの腹部に剣の攻撃が当たると、ドレイゴンは叫びを上げた。 「ギャアウゥ!」 (! 今のが奴の弱点か!) 「あーあ。ま、良いか。あくまでもこれは実験に過ぎないしねー」 「! なっ!?」 「君も負けない位粘るねぇ? でもそろそろ終わりにしない? 凄い退屈なんだよ……ひゃはっ」 ディバの笑い声と同時に、ドレイゴンの尾がマーシスを捕らえる。 「大人しく死んじゃいな!」 「!」 マーシスは思い切り壁へ叩き付かれる。休む間も無く、今度は床へと移る。それが繰り返され、そしてドレイゴンは振る際に態とマーシスを離した。 「ぐはっ!」 砲台に背中をぶつけ、床へと崩れてゆく。隣には、立ち上がろうとしているメタナイトがいた。 「マ、マーシス……」 「だい、じょうぶか、メタナイト」 「それは私の台詞だ。あれ程敏捷で手強い相手に会うのは、久しいな」 「やはりあの虫の様なものが関係しているのだろうか?」 「その可能性は、極めて高いな」 「さっきから何の話をしてんのー?」 メタナイト達の話に耳を傾けながらディバは言う。しかも余裕な貫禄である。 そしてドレイゴンが、巨大な目を見開いては一気に襲い掛かる。 「くっ!」 二人は別々の方向へとジャンプした。ドレイゴンは背後の砲台へとぶつかる。砲台は崩壊し、電流が僅かながら発生していた。 (! 電流か……) 着地しながら、マーシスは何かを思い付いた。 「ほら、さっさと逝っちゃいなよ!」 厭らしく口をにやけさせながら、ディバはドレイゴンの頭の上にて笑っていた。ドレイゴンはマーシスに襲い掛かる。 「マーシス!!」 メタナイトはギャラクシアを構えて援護に向かおうとした。マーシスは何をするのか、その場から逃げようと、反対の方角へとダッシュする。 ドレイゴンは隙も与えずにマーシスを追おうと方向転換した。 「くっ」 「マーシス!」 「メタナイト、今は待つんだ!」 「っ?」 攻撃から走りながら、マーシスは声を上げた。 マーシスに言われては、メタナイトはその場を中々動けないが、剣の構えは怠っていない。 (相手が隙を与えないならば、こちらが作れば良いのだっ……但しこれは賭けだ。下手をすると我が身も滅びかねない。一か八かなのだっ) マーシスはドレイゴンの攻撃からジャンプし、そして砲台に足を一瞬だけ着けては更に跳躍した。 攻撃の素早いドレイゴンとしては、マーシスが着けた砲台にも手は伸びる。そこから電流が流れていることに、幾ら攻撃派でも気付かなければおしまいである。 「!」 ディバは漸く察知し、ドレイゴンから素早く離れた。 ドレイゴンは、砲台に体当たりした。 「ギエェェェェ!!」 ドレイゴンは壊れた砲台より発生した電流に包まれ、叫びを上げながら動けなくなった。 「ち、やるじゃん……と!」 「そうはさせん!」 ディバは剣を抜いて応戦しようとしたが、マーシスは着地した瞬時に地面を蹴り上げながら剣を引き抜き、攻撃を仕掛ける。ディバは、ドレイゴンにとどめをさす瞬間を邪魔しようとしていたのだ。それをマーシスが止めに入った。 「メタナイト! 今だ!」 「ハァ!」 メタナイトは翼を広げるとギャラクシアを引き抜き、ドレイゴンへ向かった。そして、ギャラクシアでドレイゴンの腹部を貫いた。 「ギャアアァァァ!!」 ドレイゴンは暴れる中、体からあちこち爆発を発し、やがて静かになった。 「悪いがディバ、今はそなたに構う暇など無い」 マーシスはディバの剣を弾き飛ばすと、瞬時で彼と擦れ違った。 メタナイトも、ドレイゴンを倒した後はマーシスの後を追った。 ディバは追おうともせず、長ナイフをしまった。 「この世界の生き物達で色々試してみたけど、まだこの実験は不安定だね。でも、次できっと成功させるよ」 (ここにいる理由は無くなった。後はスマブラの活躍を見物していくか。ヒヒッ) そう苦笑いを浮かべ、その場から姿を消した。 「フォックス、彼らの場所は解るか?」 「ああ、こっちから音がするから、間違いは無い」 「それにしても妙だな」 「何がだ、ファルコン?」 「何か、敵がいなくない?」 「言われてみればそうだな」 「気配も無いでしゅ。一体何が起こってるんでしゅ?」 「ピチュ……」 「そうだよな。まるで……」 「我々が通すのを許す様に」 「……そうだな。一体これは……」 仲間達がサムス達を目指して走る中、それだけが疑問に思っていた。 マーシス達を、背後から狙うモンスターがいた。殺気を出させながら身構えている。 だが、更に背後から何者かが現れたのに気付きもしなかった。 やがてモンスターは、その何者かに寄って喰われたのだ。 「これは、鳥人像か?」 「ピチッ」 スネークはその像の前に立ち、顎を撫でながら見上げた。 その像はスネークよりも多少大きく、座りながら何かを両手で捧げるポーズをしていた。 スネークはそれを見上げながら意味深に密かに眉を顰める。ピョンチーは彼を見上げると、小首を傾げた。 「良く解らないが、俺は何故かこいつが気に入らないな……」 「ピチッ」 そう呟きながら鳥人像を見詰めていると、鳥人像の目が開かれ、光を放った。ピョンチーは一歩後退り、スネークは身構え、武器に軽く触れながら鳥人像を睨んだ。 だが、スネークの目の前が一気に変わったことに、彼は見開いた。 「……どこだ、ここは?」 近未来な場所で、巨大な工場らしき建物の近くに、彼等は立っていた。何故か、スネーク達以外誰もいない様に感じた。 そして再び光景は変わった。 それは、この場が一気に地獄と化した瞬間。 辺りは火の海と化し、建物は崩れ、肉の焼ける匂いが鼻につく。スネークは目元を歪めながら、鼻を腕で覆った。 「居心地良くないな」 「……」 「ウサギリス?」 ピョンチーは、スネークの足元に縋る様に怯えていた。ピョンチーには、どうやらこの地獄絵図に心当たりがあるらしい。 「……マ……」 「?」 別の誰かの声が聞こえた。ほんの僅かしか聞き取れないが、幼い少女に似た声だ。それでも、スネークは警戒心を緩めない。 炎の向こうから、少女の影が現れた。短い金髪に、翠の瞳。今にも倒れてしまいそうな足取りで、こちらへ向かって歩んでいた。 「ママ……パパ……ど、こ? 独りにしないで……」 「! あの少女はまさか……」 スネークが思い出そうとした時、彼の目の前で少女が倒れようとした。スネークは彼女を抱き留めようとしたが、少女の姿はそこで消え去った。 「やはり、彼女は……」 「ピィ……」 スネークは今、C・ファルコンの話を思い出した。彼女の、過去の話を。 その時、急な強い光が放たれた。反射的にスネークは目を伏せる。そして、うっすらと瞼を開いていった。 また、別の誰かが立っていた。逆光を浴びている為に黒の人影しか解らないが、どこかで見た形だ──その顔の輪郭からして、鳥人と見てとれた。 「未知ナル世界ヨリ、出デシ者」 「?」 目が慣れて来たスネークは、睨む目つきは変えずとも、相手の話には密かに耳を傾けていた。 「彼女ノ深イ傷ガ、開カレヨウトシテイル」 「彼女の……傷?」 無機なる言動だが、僅かなる感情をも感じた。 彼女の傷……。 「仲間ガ、何ヨリノ力。彼女ヲ救エルノハ、仲間ダ──娘ヲ、頼ンダ」 「娘? おい……!」 今の言葉が気になってしまい、スネークは問おうとしたものの、その時はなぜか上を見ていた。 「!」 スネークは、仰向けの状態で倒れていたのだ。ピョンチーも、彼の側で丸くなった状態で目を覚ます。二人とも起き上がり、顔を見合わせる。 「夢にしては、随分とリアルだったな」 「ピチッ!」 そして、鳥人像を見ながら立ち上がる。 その鳥人の言葉を何度も思い出しながら、スネークとピョンチーは急いでその場を後にした。 「あ、スネーク! 何してたんだよ?」 「すまん、待たせてしまったな」 難破船に入ったとこでマリオ達はスネーク達を待っていた。スネーク達が駆けて来たのを見ると、マリオは手を振った。 「……三十秒の遅刻だ」 背中を向けるサムスが呟く。スネークは彼女の背中に微笑みを掛けたが、直ぐに消えた。 ──彼女ノ深イ傷ガ、開カレヨウトシテイル。 あの鳥人の言葉が、どうも気になっていた。 「何だ、スネーク」 「……いや? 何でも無い」 彼女には、クールな感情のイメージがある。その傷が開かれてしまうことなど、余り想像がつかないが……。 「よし、行くよ!」 マリオが走り出し、それを考える暇が無かった。スネークは仕方無いと、様子を見てみることにしたのだ。 「? 何か凄い寒気がする?」 「ピッカ」 それは気のせいとは言い難いものだった。難破船の奥まで来ると、確かな冷気が彼等を包んだ。 「どうやら近いな」 「幽霊がか?」 サムスの呟きにスネークが問う。 「そうとも言うな」 「テレサと良く戦ってたから、幽霊とかは慣れてるけどな」 呑気な会話中に全員は立ち止まり、殺気が強い部屋で辺りを見回した。 すると、彼等を囲む様にして、人魂の如く青い炎が次々と現れた。 マリオ達は身構え、青い炎を睨み回す。 そしてその炎が上へ向かい、そこから巨大な何かが姿を現した。一つ目で、まるで鮹の頭の様な半透明の姿だ。 「ファントゥーン!」 「や、やっぱ幽霊なのか!?」 「ピィカァ……!」 「なるほど、幽霊か」 「感心している暇は無いだろう」 サムスも武器を構え、マリオ達を見た。マリオはサムスに微笑む。 「だな。さて、どうやって倒すかな」 「ピカアァ……」 マリオは舌を出し、ピカチュウは怒りの目をファントゥーンに向けた。 立ちはだかるファントゥーンが、この後マリオ達の戦いを困難に陥れること等、今のマリオ達には知る由も無かった。 ──to be continued── |