スターウルフ参上!








 グレートフォックスは宇宙空間に出た。深い闇色をした広々とした空間には、遠近法に寄って様々な大きさに見える星々や、数個の隕石が飛び交うのが見えた。

「うわぁ! 広いでしゅー!」
「すっげえー!」

 窓に顔や手をへばり付かせながらファンシーズはかなりはしゃいでいる。マリオ達は吹き出しながら見守った。

『ご苦労だったな、スターフォックスの諸君』

 モニターには、赤い軍服を着た犬の男性が映し出されていた。胸元には輝く勲章があり、どれ程軍の偉人かを物語っていた。

『君達のお陰で、惑星コーネリアは救われた』
「はい……しかしペパー将軍。今回の仕事は、俺達だけで解決してはいません」

 一番前の椅子に座っていたフォックスは立ち上がり、後ろに目線を向けた。目線の先にはマリオ達がいた。

「彼等は、共に戦ってくれることになった戦友です。スマッシュブラザーズと言います」
『ほお。良い戦友達を持ったな。スマッシュブラザーズにも感謝しているぞ』
「い、いえ、そんなっ……」

 格差がありすぎる気がしたマリオは、後頭部に手を回し、躊躇いがちに返事をした。

『だが、まだ喜ぶのは早い』

 ペパー将軍は目を閉じ、首を振った。彼の仕草が妙に引っ掛かったマリオ達は、彼を見つめていた。

『恒星ライラット系でアパロイドに支配されている惑星はまだある。我が軍は苦戦状態だ。スターフォックス、そしてスマッシュブラザーズの諸君、我々は君達を頼りにしているぞ』

 フォックスは少しうつ向いたが、直ぐに顔を上げた。

「任せてください!」

 そう返事をした後、通信は切られた。
 フォックスは溜め息をつくとブリッジを後にした。リンクはとても心配な目で彼を見送ってしまう。マリオを見ると、彼は頷いてくれた。

「行ってあげな」

 何故フォックスが落ち込んでいるのかは分からないが、放っておけない気持ちに溢れていた。そう感じたマリオとリンク。リンクはほぼ急ぐ様にブリッジを出た。
 フォックスは通路を歩き、小さな丸い窓から星達を眺めた。

「フォックス」

 呼び掛けに耳をピクッと動かし、直ぐに横を向いた。悲しい目をしながらも微笑むリンクがこちらへ歩んで来たのである。
 リンクは彼の隣で止まり、彼と同じ外を眺めた。暫く無言の時が虚しく流れ去っていったが、リンクは先にその時間を破った。

「一体どうしたの? 急に落ち込んで、ビックリしたんだよ?」
「あ、ああ」

 フォックスは下を向きながらリンクに顔を向けた。

「実は、次の惑星はパペトゥーンって言う惑星なんだ」
「へえ?」
「……俺の故郷の惑星だ」
「ふーん……って、えっ?」

 また普通に返事をしたリンクだが、もう一度今の言葉を脳内で聞くと、驚いてしまった。

「と言うことは……フォックスの故郷も……?」

 フォックスは黙ったまま、また窓の外に目線を戻した。

「久々に故郷へ戻れるのに、こんな形で帰るとは思わなかったよ」
「それまでは?」
「コーネリアの都市で暮らしてた。仕事でね」
「そっか……」

 フォックスの気持ちは、リンクには痛い程分かっていた。自分の故郷が呪われてしまったあの時は、どんなに悔しい思いをしただろう。ギュッと拳を握り締めた後、フォックスを見た。

「フォックス、君の気持ちは分かるよ」
「リンク……」
「だけど、落ち込んでばかりじゃ何も始まらないよ? 常に前を向いてなきゃっ」

 リンクは微笑み、ガッツポーズをして見せた。

「仮にスターフォックスのリーダーとしての任務じゃなくても、フォックスはその惑星をとても愛してるんだろ? 故郷を乗っとられたのならば、自分達の手で取り戻すんだっ」
「……!」

 少ししてから、フォックスは微笑んだ。

「ありがとうな、リンク。少し元気がわいて来たよ。いつまでもメソメソしてちゃ、父さんもきっと悲しむよな」

 そう言うと、懐からサングラスを取り出した。リンクもそれを見る。

「それは、フォックスの父さんの形見……?」

 フォックスはサングラスを見つめながら頷いた。

「俺の父さん……ジェームズ・マクラウドは、スターフォックスの初代リーダーだったんだ」
「そう言ってたね」
「今でも俺の中の父さんの存在は大きい。このサングラスを掛けると、何だか不思議と力がみなぎるんだ。だからいかなる時でも、俺は負ける気はしない。必ず勝つ! って気持ちが出るんだ」

 それを聞いたリンクは少し目を細めた。悪戯っぽい笑みを浮かべてフォックスの顔を覗き込む。

「今、負ける気はしないって言ったよな? 今度俺と勝負しようっ」

 リンクからの挑戦状に、フォックスはニヤッと笑った。

「ああ、分かったっ。ぜーったいに負けないからな」
「フフッ。こっちだって負けないよ」

 フォックスは指でブラスターをクルクル回し、リンクも腕を組んで自信に満ちた笑顔を見せた。

「……そう言えば、フォックスに母親はいるのか?」

 ふとそれを聞いてみたリンクに対し、フォックスは一瞬だけ口篭った。そんな彼に気付いたリンクは、罰が悪そうな表情に変わる。

「あ、ごめん……何か悪いこと聞いちゃって……」
「いや、気にしないでくれ。母さんは今も生きてるから。
 ただ、俺が父さんの意志を継ぐことには猛反対してたんだ。それでも、俺はやとわれ遊撃隊になる為に出て行ったんだ」
「……フォックスの母さんの気持ちも、分からないでもないかも知れないな。旦那さんを喪ったんだから、息子も同じ目に遭って欲しくないって」

 リンクの言葉に暫くフォックスは黙っていたが、やがて口を開く。

「俺も、そう思ってくれたんだろうって気付いていたさ。だけど、俺だって、これ以上大事なものを喪いたくなかった。そして、今回も……」
「?」
「俺の母さんは……パペトゥーンに住んでいるんだ」
「!」

 思わず驚きの表情を浮かべたリンクに、フォックスは心配要らないと微笑を向ける。

「母さんは既に避難していると、パペトゥーンの避難状況を調べてたナウスが教えてくれたんだ。それだけでも救いだよ」
「そうか。良かったな」

 リンクもそれを聞いて、ホッと安堵の息を吐いた。
 そして、二人は改めて窓の外を眺める。

「フォックス、この戦いが終わったら、母さんとこに顔を出そうとは、思っていないのか?」
「……思ってはいないな。親不孝者の顔なんて見たくないだろうし」
「そっか……いずれ分かり合える時が来ると良いな」

 肩に手を置いて笑顔を向けるリンクに対し、フォックスも笑顔で頷いた。

「ありがとう、リンク」




「少し厄介なことになるな……」

 ペッピーは目の前のモニターを眺めながら顎を擦った。

「厄介って?」

 マリオはペッピーの隣に立ち、モニターを見る。
 因みに、ピカチュウは彼の頭の上、カービィは彼の肩につかまっていた。
 ペッピーはモニターを見ながら応えた。

「パペトゥーンへ行くには、あるコロニーを通らねばならんのだよ」
「コロッケ?」
「コロニー!」

 呆けるカービィにマリオは言葉を強調させて突っ込んだ。ピカチュウもカービィに耳を垂らしていた。
 マリオ達とは反対にスリッピーが現れた。スリッピーは少し怯えた目をしている。

「あそこはならず者の溜り場だよ……スターウルフの縄張りなんだっ」
「スター……ウルフ?」
「フンッ。その名前を聞くだけでむしずが走るぜ」

 腕と足を組み、椅子を揺らしながらファルコは鼻を鳴らした。クリスタルは彼を見た後、彼女もマリオ達のもとへ歩いて行った。

「そのスターウルフってチームも、私達と同じやとわれ遊撃隊なの。だけど違う部分があるわ。私達が表世界の遊撃隊なら、彼等は裏世界の遊撃隊ってとこよ」
「裏世界……か。何か悪そうな仕事しかイメージが無いよ」

 マリオは腕を組みながら呟いた。

「そう考えるのは正解だな」

 ペッピーは微笑した。
 そこへフォックス達が戻って来た。

「あっ」

 カービィはフォックスに気付くと直ぐ様マリオの肩から離れ、フォックスの肩へと引っ越した。

「進行状況は?」

 フォックスは前に出ながら言った。舵を担当するナウスは、小さなモニターとレーダーを見ながら言った。

「現在ノトコロ、異常ハアリマセン。コレヨリセクターZ圏ヘ突入シマス」
「スターウルフか。懐かしいなぁ」
「?」

 少し嬉しそうにしているフォックスの様子に気付いたのは、唯一マリオだった。

「うわぁ! 何あのオレンジの雲!」

 目をキラキラさせている子リンは、オレンジ色の星雲を指差した。プリンも吊られてそちらを見る。

「何だか、Zの形してましゅね」
「だからセクターZって言うんだ。宇宙って凄いな、本当っ」

 相変わらずはしゃぐ子リン達を、周りは微笑ましく見守っていた。

「さて、いよいよコロニーが見えて来たぞ」

 宇宙空間を浮遊している影が見えて来た。近付く程、その影は巨大化する。次第に影は薄れ、形が出てきた。

「わ、何あれ! いわゆる宇宙基地って奴かな?」

 子リンはコロニーを指差した。

「そう言う奴だよ」

 スリッピーは言った。

「コロニーヨリ通信ガ入ッテオリマス」

 ナウスが言うと、大きなモニターから人物が表れた。

『よお。久しぶりだな、フォックスさんよ』

 彼は狼の獣人で、左目に眼帯を付けていた。
 そこからフォックスを見下ろしている。その鋭い目付きに、ファンシーズは身を震わせ、怯えてしまっていた。

「確かにいつぶりだろうな、ウルフ。元気にしてたか?」

 フォックスは口端を上げて言い返した。ウルフはフッと笑う。

『貴様と世間話なんかしたくねえ。また俺達の縄張りを荒らしに来たんだな?』
「それは違うっ。俺達はパペトゥーンへ向かう為だけにここを通ろうとしているだけだ」
『ふんっ。その焦り様、貴様の親父を思い出すぜ。俺達は縄張りに入る者は誰であろうと容赦しない。勝負だっ』

 ウルフが指を突き付けた後、モニターから通信が切れた。

「どの道、戦わなければならねえみたいだな」

 ファルコは立ち上がった。

「え。ファルコしゃん、行っちゃうんでしゅか?」

 プリンは途端に不安の色をした目でファルコに言った。ファルコは少し見開いたが、目を細めると彼女の頭をポンッと叩いた。

「直ぐに戻るさ」
「オ、オイラはいいよ。あいつら怖いもん……」

 スリッピーはわざとらしくブルブル震えながら言った。

「じゃあ、フォックス、ファルコ、そして私で行くことになるわね」

 と、クリスタルは言った。

「スマブラの皆はここで待っててくれるかしら。宇宙用戦闘機の扱い方は分からないでしょうし、外へ出るには宇宙服を着なきゃならないし……」
「いやっ」

 クリスタルの言葉を止めたのはマリオだった。

「僕は行くよ」
「僕も行くー!」

 カービィも手を上げてピョンピョン跳ねた。

「え!?」

 クリスタルは驚きを隠せなかった。そして慌てる。

「駄目よ。宇宙空間は空気が無いのよ! 命の保証は無いわ!」
「大丈夫大丈夫っ」

 それでもマリオは胸にドンッと拳を当てた。

「僕、生身で宇宙空間へ行ったことあるからっ」
「僕も宇宙で飛び回ってたから大丈夫だよー!」

 目立ちたくてカービィは何度も跳ね上がった。
 二人の言葉にクリスタルは唖然とした。

「クリスタル」

 フォックスは苦笑いしながら彼女を呼んだ。

「彼等は俺達の世界の住人じゃないんだ。常識は捨てた方が良いよ」
「……何か変な感じがするわね……」

 大きく息を吐いたクリスタルに、周りから笑いが上がった。

「笑ってる場合か? 早く行くぞっ」
「おっと。そうだったね」

 ファルコは少し苛々していた。マリオ達はそれにやっと気付いた振りをしてみせる。

「じゃあスリッピー達、ブリッジは頼んだよ」
「任せてー」

 フォックスの言葉に、スリッピーは元気な笑顔で敬礼した。

「気を付けるんだぞ」

 と、ペッピーは言った。

「メタナイト達も待機しててくれ」

 マリオはメタナイト達に言った。

「何かあったら通信を頼む」
「ああ、分かった」
「じゃあ行ってきまーす!」

 カービィは浮遊しながら手を振った。そしてフォックス、ファルコ、クリスタル、カービィ、そしてマリオはブリッジを飛び出した。
 フォックス達は長い通路を走り抜け、格納庫へ来た。戦闘機アーウィンに乗り込むフォックス達。だが、クリスタルだけはまだ乗らず、マリオ達を見た。

「……」
「? どうしたの、クリスタル?」

 鉢巻きを巻くカービィとマントを巻くマリオは同時に彼女を見た。その問いに、クリスタルは微笑んで首を横に振る。

「ううん。世の中には常識外れなことが沢山あるんだなって、改めて考えてたとこ」
「……そうだね」

 三人は苦笑し、そしてクリスタルはアーウィンに乗り込んだ。

「通信ライン、グリーン」
「リフトロック、解除シマス」

 ナウスの声が聞こえると、アーウィンのリフトロックが、ガコンと音を立てて解除された。

「よし。皆、準備は良いな?」

 次にペッピーの声が通信で聞こえる。全員準備万端な体制であった。

「Gディフューザーシステム、異常無し。主翼、ブースト、異常無し」

 フォックスはリーダーらしく張り切って言う。
 そして、アーウィンの後ろでエネルギーの光が溢れて行く。

「スターフォックス、発進!」

 三機のアーウィンは、勢い良くグレートフォックスから飛び出して行った。

「よし。僕達も行くぞっ」
「オッケー!」

 カービィは小さな手でスリッピーの様に敬礼した。
 マリオはマントで、カービィはワープスターに乗り、グレートフォックスを飛び出した。

「! 隊長、見てっ」

 カービィが指差した先には、何機ものの宇宙艦隊があった。艦隊は容赦無くレーザー攻撃を仕掛けて来る。

「わわっ!」
「わっ! はっ! とあっ!」

 マリオ達はあちこち動き回りながら、赤いレーザーをギリギリ避けていた。

「くっ!」

 フォックスはアーウィンをローリングさせてレーザーを弾いた。

「ほほお? 中々やるじゃねえか」
「! ウルフェンかっ?」

 フォックスのアーウィンの前に赤い戦闘機が現れた。

「ウルフ!」
「少しは反射神経も良くなったみてえだな。存分に楽しませてくれよ!」

 ウルフェンは真上へ向かって飛び、上からレーザーを豪雨の如く浴びせる。

「うおぉっ!」

 フォックスは急いでその場を離れるが、ウルフは隙を与えずどんどん攻撃する。

「フォックス!」

 ファルコは彼へ向かおうとしたが、彼の前に別のウルフェンが立ちはだかった。

「!」
「また会いましたね、こざかしい鳥さん」

 乗っているのは、緑色のカメレオンの形をした人物だ。落ち着いた口調なのにも関わらず、彼からはとてつもない殺気を感じた。

「貴様は、レオン!」

 ファルコも負けず劣らず睨み付けてやる。

「フッ、また君と遊べるとはね。是非とも満足させて欲しいものだ」
「……じゃあ、楽しみにしていな!」

 ファルコはブーストを出してレオンに突進した。レオンのウルフェンに多少の電流が溢れたが、大したことは無い様だ。

「変わらず無茶な行動を。自分の命は大事にすることだ」
「殺し屋のてめえに言われたくねえっ!」

 クリスタルが暫く飛んでいると、彼女の横にウルフェンが現れた。そのウルフェンは他と違い、機体に薔薇のエンブレムが刻まれていた。それを見たクリスタルは、ガッカリする様な溜め息をついた。

「やあ、クリスタルさん。相変わらずお美しいね」

 そのウルフェンには、ダークブルーの肌を持つパンサーが乗っていた。何故か薔薇を片手にクリスタルにウィンクしている。
 だがクリスタルはプイッと顔を反らした。

「どなただったかしら?」

 態とらしく問う彼女に、男は笑顔で肩をすくめた。

「ハハッ。冷たいなあ。貴女に想いを寄せるパンサー・カルロッソをお忘れかい?」
「女たらしの間違いでしょ? 早く私の前から消えてよ!」

 クリスタルはパンサーの後ろに回ってはレーザーをバンバン発射させた。パンサーはおっとと言いながらUターンをする。クリスタルも追ってUターンをした。

「鬼ごっこも悪くないねぇ」
「ふざけないでっ」
「フッフ。またお楽しみな時間の始まりってとこか」

「うう。しつこいなこいつら」

 マリオ達は、戦艦の猛攻撃に若干苦労していた。だがそれは見せかけで、対したことは無い。

「よーし。無重力を利用するぞっ」

 そう言うとマリオは、花形にした両手を引っ込めた。そのポーズは、まるで某バトル漫画にいる人物の必殺技の構えに似ていた。
 手の中からファイアボールを作り出し、そこからパワーを溜めた。赤い光が徐々に増幅してゆく。

「よーし、僕も!」

 カービィは他の戦艦へ顔を向けるとペロリと舌を出す。
 ハンマーを取り出し、ハンマー投げ前のポーズを取った。

「ファイアァ……ボール!!」

 マリオは両手を突きだし、巨大ファイアボールを発射させた。無重力に寄りスピードは尋常じゃない程に加速した。

「えええぇーっ! ウソオォ!?」

 戦艦の乗組員は戦艦と共にビビり出した。そんな間にファイアボールが戦艦を貫通し、戦艦は爆発した。

「はあああぁ……!」

 カービィは己の体をコマの様にぐるぐると高速回転させ、

「とりゃああぁ!」

 正にハンマー投げの如く、ハンマーを投げ飛ばした。
 ハンマーはかなりのスピードで回転し、一つの戦艦を一撃で破壊してしまう。それに反動して次の戦艦へ直撃。それから何機もの戦艦がこっぱみじんとなった。
 帰ってきたブーメランハンマーをパシッと受け止め、カービィはフッと輝く。

「……ナーイスストラーイク」
「……」

 自分よりの大技を繰り出したカービィに、マリオは開いた口が塞がらずポカンとしていた。

「隊長っ。何ボーッとしてるのっ!」

 パッと表情を百八十度切り換えたカービィに、マリオはハッと我に帰った。

「他の奴らも一掃して、フォックス達の援護をしなきゃ!」
「あ、ああ。そうだね」

 カービィはワープスターに乗り、別の敵艦隊へ飛んで行った。マリオはまだそこにいたが、少しだけ吹いた。

「……宇宙にいると、何だか立場が逆転するみたいだよ」

 宇宙の戦いに不慣れなマリオは、宇宙の戦士であるカービィを見てそう思わざるをえなかった。

「私にまとわり付かないでよ!」

 クリスタルはさっきからパンサーを追い掛け追わればかりで、互いのダメージは全然である。だがパンサーは相変わらず楽しそうにしていた。

「俺としては結構良い一時なんだがなあ」
「もおっ! フォックス、助けてー!」

 クリスタルは通信を使ってフォックスにSOSした。パンサーはそれには気付かず彼女を追い掛けていた。

「ク、クリスタル! うぅわっ!」

 通信に気付いたフォックスだが、後ろからレーザーを受け、アーウィンが激しく振動した。

「気を取られてると即地獄行きだぜ」
「ウルフ……!」
「そろそろ終わりだ」
「!」

 ウルフは、フォックスのアーウィンにロックオンをした。
 フォックスはその音にハッとしたが、ロックオンをされると逃れることが出来るのはかなり低い可能性だ。しかも彼のアーウィンはかなりダメージを受けている。次のチャージ弾をくらえば、恐らくひとたまりもない。

「くっ!」

 フォックスはブーストを使い、そのまま機体を上へ向けて宙返りをし、振り切ろうと試みたが、ウルフも同じく宙返りをして追って来た。

「くそ、まずいっ……!」
「落ちろ! フォックス!」

 ウルフはボタンをカチリと押した。すると、赤いチャージ弾が放たれ、フォックスを追尾した。そのスピードは彼より速く、フォックスは負けてしまうのかと諦め掛けた。

「フォックス!!」
「なっ?」

 その時、フォックスとチャージ弾の間に何かが現れた。それはチャージ弾の動きを止め、そしてウルフにお返ししたのだ。

「! 何だと!」

 ロックオンは解除され、ウルフは急いでそれを避けた。
 フォックスもそれにはかなり驚いていて、気付けば見入ってしまっていた。

「マ、マリオ!」
「ふぅー。何とか間に合った」

 掴んでいたマントをバッと広げると、それはマリオだった。マリオはそう言った後、ドキドキしながら息を吐いていた。
 そして、フォックスに笑顔で振り向いた。

「フォックス、早くクリスタルのとこへ行けっ。ここは僕に任せるんだっ」
「! だけど……機体に対して生身は……!」
「いいからっ。僕は機械を相手にしても勝った男だよ? 心配無用っ」

 マリオは片目を瞑った。彼のその目はいつも自信に溢れていて、フォックスはそれで何故か安心感を抱いてしまうのだ。彼に任せて、きっと大丈夫だと。

「わ、分かった……頼んだぞっ」

 フォックスはクルッと回り、そこから飛んで行った。

「貴様、なぜその格好で宇宙空間にいられるんだっ……!」

 流石のウルフも彼の姿に見開いてしまっていた。
 だがマリオは構わず、キッと表情を変えて拳を構える。

「さあ、どっからでも掛かって来い、狼さん!」
「チッ。舐めた真似を……!」

 操縦管を握り、一気にマリオへ向かった。
 その頃ファルコは、レオンとの激しい攻防戦を行っていた。どちらも戦いとしての興奮が止まず、力はほぼ互角の状態だった。
 だが、戦闘機の状態はあまり良いとは言えず、既にあちこちが破損していた。

「フフ。たっぷりいたぶってから料理してやる」

 レオンはファルコの後ろに回り込み、レーザーを連射した。

「チィッ!」

 ファルコは後ろを向いた後、操縦管を一気に傾けた。彼の横をレーザーの嵐が通りすぎる。獲物を外したことにレオンは舌打ちした。

「随分とすばしっこい獲物だな……面白くなってきた」

 ニヤリと口端を上げ、ファルコを追尾した。

「いつまでも勝ち気でいるなよっ」

 レーザーを避けながらファルコは呟き、そして再び横へ傾いた。

「フン。貴様の行動がワンパターン過ぎて笑える」

 余裕顔のレオンはファルコを追う為に自分も傾いた。そして後ろを向いた時、レオンが珍しく眉をひそめた。

「? 何?」

 そこにファルコの姿が無かった。妙な疑問を抱いたが、それは直ぐに消された。

「正か、更に後ろへ!?」

 思わず声を上げた。

「今頃気が付いても遅いぜ!」

 レオンの後ろからファルコがサッと現れた。

「!」
「くたばれ!」

 操縦管のボタンを押し、ハイパーレーザーを連射した。
 レオンは慌てて避けるが、片翼が撃ち抜かれ、翼が吹き飛ぶ。ウルフェンはバランスを崩し、今度は機体自身が傾いて飛行することになってしまった。

「くっ! 私を誰だと思っているんだ!」

 ベテランパイロットのレオンは巧みな操縦でその場から逃げる様に飛び去る。

「逃がすかよ!」

 機体を睨みながらファルコもレオンを追い掛けた。

「クリスタル、そんなに抵抗するなら、撃っちゃうよ?」

 パンサーは少しガッカリした顔になる。
 だが、クリスタルは先程から表情を少しも変えず、相変わらずうんざりしている。

「貴方と付き合う位なら戦った方がマシよ!」

 きっぱりと断言した。パンサーはそれを聞き、耳を一瞬だけ痙攣させた。

「……それなら仕方がない。鬼ごっこ、とっても楽しかったよ」

 爽やかスマイルを見せた後、今度は本気モードになったらしい。機体のスピードを上げ、クリスタルに急接近した。
 彼のその行動にクリスタルはギョッとしてしまった。

「速い!?」
「可哀想だけど、俺の赤い薔薇を見ながら天国へ旅立ってくれ」

 少し哀れな目で見つめ、そして攻撃に掛かろうとした時だ。

「やめろーっ!!」
「!?」

 上から声を聞いた気がしたパンサーは、ピタッとブレーキをかけ、辺りを見回した。そして上からレーザーが降り注ぎ、慌ててその場を離れた。
 クリスタルも止まり、そして彼女の前にもう一機のアーウィンが、彼女を守る様に前へ現れた。

「無事か、クリスタル?」
「ええ。私は大丈夫よっ」

 戻って来たパンサーは、彼等を見て口笛を鳴らした。

「ほほお? 彼氏の登場か。案外お似合いカップルなんだね、君達は」
「! バ、バカ! 俺達は、そんなんじゃっ……!」

 彼の一言にフォックスは慌てふためいていた。只、妙に顔を赤くしている。
 だが、フォックスの今の言葉に、クリスタルは少しショックを受けてしまった。そしてフォックスの横に出る。

「フォックス!」
「わっ」

 思わずそちら側に浸っていたフォックスは、彼女の怒鳴りで目を覚ました。

「早く彼をけちらすわよっ」
「あ、ああっ」
(な、何を怒ってるんだ?)

 鈍感なフォックスに対し、クリスタルはハァッと溜め息をついた。

「はははっ。やっぱり君達はお似合いだねえ」

 パンサーは面白おかしく笑っていた。そんな彼にフォックスはまたもや顔を赤くする。

「わ、笑うな! い、行くぞ!」

 そしてフォックスは彼に向かって飛んで行った。

「俺を本気にさせてくれよっ」

 パンサーも微笑みながらウルフェンを動かした。
 その頃マリオは、高速で飛行していた。彼の直ぐ後ろをレーザーが追う。

「ちっ。中々素早いな」

 止まったままレーザーを放っていたウルフェンだが、ウルフがそう言うと、マリオに向かって行った。

「わっ。来た!」

 マリオはふと後ろを向くとウルフェンが追って来るのに気付き、スピードを上げた。

「逃がすか!」

 ウルフが横にある赤いレバーを引くと、ウルフェンはブーストでスピードアップした。あと少しでマリオは追い詰められる。

「くっそ!」
「?」

 マリオは少し離れたとこで止まり、拳を構えると直ぐに半回転した。

「! しまった!」

 ウルフは焦ってウルフェンを止めようとしたが、その前にマリオの拳が、互いの掛け合わされたスピード利用で一気に機体にめり込んだ。

「ぐあっ!」
「どうだ!」
「くっ……正かこんな男ごときに俺がてこずるとはな……」

 ウルフェンは、バチバチと電流を流しながらマリオから離れて行った。

「今度はこちらの番だ!」

 と、マリオが気合いを溜めたその時だ。
 ビービービー。
 マリオの付けているインカムから妙な音が鳴り響いた。

「……何だっ?」

 まるでそれは警報音の様で、マリオはピタッと攻撃体勢をやめてしまった。
 警報は彼だけでは無く、ここにいるスターフォックスとスマブラ全員に行き渡っていた。全員、マリオと同じく動きが止まったのが唯一それを意味した。
 だが彼等だけでは無く、スターウルフも動いていなかった。ウルフ達もどうやら何か警報を聞いたらしい。
 ウルフは即通信に入った。通信相手は、コロニーにいる、手下の一人である。

「どうしたんだ」
『お、親分! た、助けて下せえ!』

 悲鳴に似た哀願の声が響いて来る。小さなモニターには、何故か傷だらけの猿顔がいた。後ろから男達の悲鳴や破壊される機械の音が、嫌と言う程に耳に入る。

「どうした! 何があった!」
『コロニーに、な、何者かの軍隊が侵入して来たッス! もう殆んどの仲間がやられちまいました! 親分、どうか助け……ぎゃあああぁぁぁぁっ!!』

 断末魔の叫びと共に、画面内には、手下が影に乗し掛られた映像が映った。そして、砂嵐の画面しか映らなくなった。

『マ、マリオさん! 皆さん、聞こえますか!?』

 マリオ達のインカムからリンクの声が聞こえた。只、辺りから雑音がたまに響き、あまり聞き取れない。

「聞こえるよ、リンク。一体どうしたっ」

 マリオはインカムを押さえながら返事をした。

『ああ、マリオさん、聞こえるんですねっ。と、とにかく、い……は一刻も早くグレ……ックスに戻って来て……さい!』
「えっ。急に何を言い出すんだっ」
『……トフォックスが……れてるんで……ま……らな……』
「? 何? リンク、聞こえない!」
『……ド……てる……マリオさん達、はや……』
「リンク? リンク!!」

 マリオはインカムに向かって何度も彼の名前を叫ぶが、彼の声を途絶えさせた雑音がザアァ……と響き、そしてプツンと切れた。

「マリオ!」

 その直後、フォックスから通信が入る。

「何故か向こうは通信妨害を受けてるんだ。だけど、聞き取れただけ聞き取れたが……」
「今はそんなこと言ってる場合か! 早くグレートフォックスに戻ろう!」

 マリオの怒鳴りにフォックス達は若干驚いてしまったが、直ぐに頷いた。

「パンサー! レオン!」

 ウルフは二人に通信を繋げた。
 モニターの二人は同時に頷いた。

「縄張り戦は休戦だ。これよりコロニーへ戻るぞ」
「言われなくても分かってるよ」
「今のモニターから、とてつも無い血の臭いがしたからな……」

 スターウルフはコロニーへ、そしてマリオ達はグレートフォックスへ各々戻って行った。自分達の仲間を助る為に……。









 ──to be continued──