迫り来る野望








 場所は打って変わって、ここはアイシクルマウンテン。
 アイスクライマーがダイヤモンドシティにて、欠片の力に寄りこちらへと戻って来た時のことだ。
 ポポとナナが自分のクローンを倒したあの時、彼等のクローンらは息絶える前に言っていたのだ。自分の故郷が、既にギガ軍の手に落ちているかも知れない、と。
 奴らの言うことは信じたくない。だが、どの道確かめに行くしか、その話は事実かどうかは解らない。その上、アイスクライマーの故郷の世界なのだ。心配していないと思えば嘘になってしまう。
 見慣れた雪山に一つずつ足跡を残しながら歩みを進めるアイスクライマー。だが慎重に辺りの様子を見回していた。

「見慣れた風景で、全く変わってない感じね」

 ナナは首をあちこち動かしながら口を開いた。

「奴らは嘘をついたのかな……?」

 ナナは未だに警戒しているが、ポポは少々安堵感を抱いていた。歩いても歩いても、いつまで経っても、旅立つ前とは様子が全くと言って良い程変わっていない。だから、ポポの様に安心し始める者が出てきてもおかしくはないだろう。

「トッピー達も相変わらずだし……」

 トッピー達の村では、既に復興が終わったのか、あの時の村の形へと元通りになっていた。
 いつもと変わらない、見慣れた景色に、アイスクライマーは安堵の息を吐いた。

「やっぱり奴らの思い違いだったのかも知れないわねっ」
「そうみたいだね。とにかく安心したよ……」

 そして二人はトッピー達に挨拶をしに行こうと歩き出した。
 その時、ナナはふと足を止めた。先に進んだポポは、彼女の様子に気付いた所で足を止めては振り返った。

「ナナ? どうしたの?」
「……ねぇポポ、何か……嫌な予感がしない?」
「えっ?」

 突然の発言にポポは少し驚いた。いきなりそう言われると思わず戸惑うが、ポポも改めて警戒心を高めては辺りを見回した。

(……何だろ、この変な胸騒ぎ……)

 言われてから、何やら辺りの様子のおかしさに彼も気付く。見た目は以前と変わらない儘なのだが、そんな平穏を何者かが──消し去ってしまおうと言う邪念?

「ポポ!!」
「!!」

 ナナが空を思い切り指差した。それとほぼ同時に、ポポも彼女と同じ方向を向いていた。
 空から『何か』が現れたのだ。それは影に覆われて良く解らないが、二人にとっては見覚えのある形に見えた。
 だが、それが一体何を意味するのかが解らなかった。なぜ、『その影』がこの世界にいるのかが……。

「のこのこと戻って来おったか。バカ者共め」

 二人の前で浮遊しながら、その巨大な影は言った。太陽の逆光を受けている為に輪郭しかハッキリしないが、それは確かにアイスクライマーにも面識があった。

「な! お前は……!」
「クッパ!? 私達の世界に何しに来たのよ!」

 ポポが相手の名前を呼ぼうとする前にナナが声を上げてそれを遮った。
 その影──クッパは笑い声を上げると、

「当然、この世界を支配する為だ!」
「な! 何ですって!?」
「無論、貴様達の世界だけでは無い。マリオ達の世界、否、宇宙を全て我がものにするのだ!」
「誰がそんなことさせますか!」

 彼の野望を許す訳にはいかない。アイスクライマーはハンマーをそれぞれ素早く構えては、奴を睨み上げた。
 だが、ポポは彼に対する疑問を抱いていた。

「……クッパ、どうしてっ?」
「ポポ?」
「クッパもスマッシュブラザーズのメンバーのなのに、どうしてこんなことをするの!?」
「……」

 ポポの言う通りだ。
 クッパも、スマッシュ王国を守るスマッシュブラザーズの一人の筈なのだ。スマッシュブラザーズのメンバーは悪を働くことは一切許されず、あのガノンドロフの魔力や暴走も、マスターハンドの力に寄って制されているのだ。
 クッパがこんなことをしているとマスターハンドが知れば、クッパは厳しい処罰を受けるだろう。それを解ってて、マリオ達の世界を支配しようとしているのか。
 そもそも、どうやってこの世界へ来れたのか。

「ガハハハ! その様な口答え、後十分もすれば何も意味を持たなくなるわ!」
「なっ! どう言うこと!?」
「それは嫌でも明らかになるだろう。何度でも言おう。ワガハイは全ての宇宙を支配するのだ!!」
「く! やあぁ!!」
「たあぁ!!」

 怒りに満ちた二人はハンマーを構え直すと、クッパに向かって思い切り跳躍した。

「どんな理由であろうとねぇ!」
「僕達のマウンテンは、僕達が守る。それを誓って、帰って来たんだ!!」

 そしてクッパの位置まで来ると、思い切りハンマーを振り下ろそうとした。
 そこでクッパは、彼らに向けて手を掲げた。するとその手から紫の光が放たれ、クッパにドーム状のバリアが張られたのである。
 アイスクライマーのハンマーがバリアに直撃すると、そこから電流が放たれ、二人に襲い掛かった。

「うわあぁ!?」
「きゃああぁ!!」
「ガハハハ、愚か者共めっ」

 クッパはニヤリと笑みを描き、爪を構えると思い切り横へと振った。電撃で動けないアイスクライマーはその爪攻撃を諸に食らい、地面へと叩きつけられた。

「ぐっうぅ……!」
「つ、強い……っ」
「ワガハイは嘗てマリオ達の世界にて、銀河を支配しようとした大王だぞ? そんなワガハイに立ち向かおうなど、百億年早いわ!!」

 力無い状態で立ち上がろうとしているアイスクライマーをクッパは見下し笑いを上げる。
 そんなクッパを、二人は思い切り睨み上げた。

「ま、まだまだ……!」
「私達は、諦めない!」

 ハンマーを構え、再びクッパに立ち向かおうとした。
 そんな二人を暫く見下した後、クッパは目線を横に向け、何かに合図を送る様に顔を動かし促した。すると、彼女達の目の前に現れたのは──二体のロボットである。

「わわっ……!?」
「何よ、アンタ達!」

 二人の言葉には聞く耳を持たず、ロボット達は、未だ倒れた儘の二人を取り押さえたのだ。

「くっ!」
「はっ、離しなさい……!」
「……さて、そろそろ時間だ」

 クッパは顔を上げ、唐突にそう言った。
 その時、上から巨大な銀色の玉が一つ、アイスクライマーの目の前へと落ちてきた。落ちた反動か、その玉が二つに綺麗に割れたと思うと、中から顔を出したのは──カウントダウンをしているタイマーだ。

「!?」
「恨みは無いのだがな。喧しい貴様らにはそろそろ黙って貰おう」

 タイマーは既に三十秒を切っている。
 二人はそれを見て焦り、力ずくでも足掻いてはロボットから逃れようとした。だがロボットの力は尋常ではなく、びくともしない。

「そうやって己の無力さに悔やむが良い!」

 クッパは笑い上げながら、自分の乗っているクッパクラウンを上昇させていく。

「愛する国と運命を共にすることを光栄に思え!」
「ま、待て!! くっそ……!」
「ポポ!!」
「!!」

 二人はタイマーに目を向けた。
 タイマーは既に残り三秒を切っていた。
 そして──、




 クッパクラウンは、既にアイスクライマー達のいる雪山から遠くにいた。
 彼等のいる雪山は黒い爆発に巻き込まれていく。
 クッパクラウンは適当な場所で停止し、クッパは雪山に振り返った。

「ククク、いよいよ始まった……」

 仮面を張り付けるが如く、クッパは怪しげな笑みを描いていた。

「皆がワガハイの前で平伏するのも最早時間の問題! 先ずはこの世界をゆっくりと支配してやろう! ガハハハハハハ!!」

 空に向けられたクッパの豪快な笑い声は、辺りの雪山達にも木霊し、延々と響き渡った。









 ──to be continued──