運命








「ムーヴ、僕だよ──ラフィットだよ」
「……」

 ラフィットは、ムーヴとリュカの間に立ち、ムーヴを見詰める。ムーヴも、彼の顔を見ると、少し見開いた状態で彼を見ていた。

「皆、大丈夫? 今、ライフアップを掛けるからね」

 ネスはリュカの傍まで来、ライフアップを掛けて傷を回復させると、共にラフィット達から離れた。
 そして、倒れているマリオの前でしゃがみ、ライフアップを掛ける為に、マリオへ手を向けた。

「……ネス、ポーキーは?」
「……」

 マリオはそう問うと、ネスは僅かに眉根を寄せるが、何も言わずにライフアップを掛けていた。
 マリオも、何か事情があったのかも知れないと、こちらもこれ以上何も言わずにいた。いずれにせよ、ネスとポーキーは、この世界で決着をつけたのだ。その証拠に、ネスは無事に戻ってきた。それで良いんだと、自分に言い聞かせた。

「! ラフィットと言やあ、ネスのクローンで、ギガ軍の一人じゃねぇかっ」
「どうして、ネスと……?」

 まだ意識を失っていなかったファルコやリンクは、ラフィットを見て驚かない訳にはいかなかった。それは無理も無かった。ラフィットの事を詳しく知っているスマメンは、ネス、マリオ、フォックス、そしてスネークだけなのだ。
 ネス達の世界で、少しだけラフィットの話は聞いていたが、彼等にとってはまだ半信半疑だった。

「……皆には、僕から後で説明するよ」

 ネスはスマメン達やクマトラ達にライフアップを掛けながら、ファルコ達に向けて言った。

「だから今は、彼等の戦いに水を差さないで欲しいんだ」
「で、でも……」
「お願い! ムーヴを何とか出来るのは、彼しかいないんだよっ」
「……」

 ファルコ達は未だに納得がいっていない表情をしていたが、ネスは彼等に振り向き、これだけ懇願している。彼の顔を見て、仕方なくこの成り行きを見守ることにした。

「ムーヴ、僕はここにいるよ。だから、もう戦わなくて良いんだよ」

 優しく微笑むラフィットを、ムーヴはただ黙って見詰めていた。
 少し前に、ムーヴの心の悲鳴が、ラフィットの心に響いた。それは、ラフィットに会いたいと言う気持ちで満ちていたのだ。しかし今は、彼の心から何も感じない、まるで壊れ、動かなくなったおもちゃの様に……それは恐らく、自分を見失ってしまったのだろう。
 今は唯、ギガ軍の一人として、目の前にいる敵を倒すと言う本能しかないかも知れない。
 手遅れだろうが、それでもラフィットも、ムーヴに会いたかったのだ。アジトで実験されていた時から、ずっと一緒だったから。

(ラ、フィット……?)

 ムーヴは相手を見たまま、彼から発した名前で、何かを思い出そうとした。ずっと一緒にいた気がする相手。懐かしい感じがする相手。
 だが、

「!」

 ムーヴは相手の心を見た瞬間、血の色をした目から殺気を漂わせたと同時にキャノンを構え、ラフィットへ砲撃を仕掛けた。ラフィットは見開きながらも、素早く見切っては体を翻し、攻撃をかわした。

「ラフィット!」

 ネスは今の光景に驚き、思わず声を上げた。
 ムーヴは彼に会いたかったのではないのか。それとも、本当に心を失ってしまったのか?

「……ジャナイ……」

 ムーヴは武器を構え直しながら、再度口を動かした。

「ラフィット、ジャナイ……君モ、敵ダ……ダカラ、倒ス……ッ」
「ムーヴ、何言ってるのっ! 彼は……」
「ネス」

 ラフィットは、ムーヴの言葉で何かを察したか、ネスの言葉を止めようとその場から掌を向けた。
 ネスは、そうしたラフィットに抗議しようと思ったが、ラフィット達の戦いに水を差してはいけないと言ったのは自分だ。握り拳を震わせ、辛くもこれ以上何も言わず、ぐっと堪えることにした。
 ムーヴは相手へじりじりと近付いた後、剣とキャノンをそれぞれの腕に構えては駆け出した。ラフィットは片手からPSIの光を出し、相手へ人差し指を向けた。
 彼等の目は、本気だ。
 二人の攻撃がぶつかり合おうとした瞬間、強い光が放たれ、マリオ達は思わず目を伏せた。
 そしてネスはこの時、ラフィットの声を聞いた。

 ──PKキアイΩ!!

 と……。
 光が無くなり、目の前がいつもの光景に戻った。
 そしてマリオ達が見たものは、背中を向き合う、二人のクローン。ラフィットも多少の怪我を負っていたが、彼にとって大した問題ではない。だが一方のムーヴは、彼からの強力な技を受けた故に、更なる大ダメージを受けた状態だった。そして両膝を付き、遂に地面へと倒れた。
 ラフィットは人差し指を下ろしては振り返り、静かにムーヴを見下ろした。
 ネスのお陰で、マリオ達は立ち上がるまでに回復したが、今は誰一人何も言わず、ラフィット達をその場から見ていた。
 ラフィットは、既に虫の息であるムーヴの傍に座り、相手の手を両手で包んだ。そして、相手は仄かな光に一瞬包まれ、そして直ぐに光は消えた。
 こんな事をしても、彼は助からないことは分かっていた。だが、この行為は、二人にとって特別なことだった。
 ムーヴは薄らと瞼を開き、ラフィットを見た。

「……ほら、疲れなんか無くなったでしょ?」

 そう言ってくれた、ラフィットの言葉。
 この瞬間、アジトの暗い部屋での彼を思い出した。それは確かに、ラフィットといた記憶だった。

「……ラ、フィ……ラフィ、なの……?」

 ムーヴは弱々しく言う。いつもの声色に戻っていた。

「……遅くなって、ゴメンね……ムーヴがこんなことに……こんな気持ちなってたなんて、知らなくて……もっと早く、気付いてたら……っ」

 ラフィットは声を震わすも、相手とやっと再会出来た事に、心から嬉しく思っていた。それと同時に、罪悪感も抱く。
 ムーヴはその言葉に対し、静かに微笑み、首を横に小さく振った。

「また……会えて、嬉しかった……」

 その言葉を聞くと、ラフィットの目から涙が零れ、頬を伝い、握っているムーヴの手を濡らした。
 マリオ達は彼等を見て、込み上げそうな感情を必死で抑えていた。詳しい事情を知らない一部のスマメンでさえ、彼等の今の心情を見ると、悲しみに暮れていた。大人達は顔を逸らしたり、目を伏せたりし、ファンシーズの中には既に、涙を流している者もいた。そしてマリオも、帽子のつばを持ち、より深く被り顔を伏せていた。
 ムーヴの傍へ、今度はリュカがゆっくりと近付いて行く。ムーヴは気配を感じると、彼を静かに見上げた。

「……リュカ……」

 リュカの顔も悲しみに染まっているが、少しだけ微笑んだ。

「……僕の記憶が盗まれている間は、悲しいことがあったら励ましてくれて、楽しいことがあったら、一緒に笑ってくれたよね……クラウスの代わりになってくれて、ありがとう──ムーヴ兄ちゃん……」

 ムーヴはリュカにそう言われると、涙を零す中、相手にも微笑んだ。

「……ゴメン、ね……」

 言いたかった言葉が、口から静かに零れた。そして、ゆっくりと瞼を閉じると、彼の体が次第に赤い液体となって溶け出し、泡となって行く。そして、ラフィットの手の中で、最後の泡が消えたのだった。ラフィットはその手を握り、目を閉じていた。
 ラフィットはあの時、ムーヴが自分を敵視するのは分かっていた。ギガ軍のクローンは、人工的にギガへの忠誠心を植え付けられている。ラフィットは、ネスが使ったDr.スチュワートの薬に寄り、その忠誠心──ネス達の言う『悪しき心』は消えた。だがその後にムーヴは、自分を失った後に残ったギガ軍のクローンの本能から、ラフィットのその心を見た瞬間、ギガへの忠誠心が無い、つまり、本物のラフィットでは無いと認識してしまったのだ。
 しかし、だからと言って、ラフィットはネスのやったことは間違いだとは決して思っていなかった。今の状態となってしまったムーヴを解放するには、こうする他無かったのだ。
 ギガへの忠誠心がありながらも、敵だったネス達の優しさに心が揺らぎ、そして悪しき心が無くなった今、ラフィットは生きねばならない目的が出来た。大事な友達をこんな風に扱った彼等を倒すと言う目的が。

「……リュカ、ムーヴを許さないんじゃなかったのか?」

 リュカの肩に後ろから手を置き、マリオはそう問い掛けてみる。リュカは、ラフィットを見ながら答えた。

「ムーヴとラフィットを見たら、あの頃を思い出したんだ。この場所で、仮面の男──クラウスと会った頃を。ラフィットにとって、ムーヴは本当は戦いたく無い相手だった。僕も、クラウスと戦うのに躊躇った。そう思ったら、他人事とは思えなくなって……」
「リュカ……」
「……ムーヴもきっと、悪い奴等に利用されてたんだよね。それでも、僕のこと……兄となって大事に接してくれて……例え偽の記憶でも、本当に、僕は……」

 言うのも辛くなり、涙が止まらなくなったリュカは、しゃくり上げながら言った。マリオはそんな彼に口端を軽く吊り上げ、リュカの頭をそっと撫でた。

 ──『あの子』は偽りの姿をしていたけれど、リュカを大切にしていたのは、私にも分かる。

 母ヒナワのあの時の言葉を、リュカは理解した。その言葉は、確かなのだから。
 生きている彼等には見えないが、マリオ以外にも、リュカの頭を撫でる者がいた。リュカの亡き母と、兄だった。

(思いやりがあり、優しく、強い子に育ってくれて、嬉しいわ、リュカ……)
(ムーヴのことは、僕達に任せて大丈夫だからね)

 二人は、未だに泣いているリュカを、優しい笑顔で見守っていた。




 ディバはフッと笑んだ後、スクリーンを消した。そして彼の手に現れたのは、一枚のデータ用ディスクだ。

「ラフィット、余計なことしてくれたね。ま、影虫の美味い実験データを得たし、もうこの世界にいる必要は無い」
(良くやったよ、ムーヴ。君の実験は、無駄じゃなかった)

 ディスクを指先で弄びながら呟いた後、心でそう言いながら、目を閉じる。

「しかしラフィットが余計なことしなきゃ、マリオ達を倒せた筈なんだけどなぁ」

 ディバの後ろには、クローン達が集まっていた。
 苛立った状態のデークは重い溜め息をついた後、頭の後ろに手を回した。

「ラフィットはクーシー達を裏切ったでしゅ! ギガ様を裏切った罪は重いでしゅ! 次会ったら倒すでしゅ!」
「ピィッカ」
「ピチュッ!」

 クーシーらギガ軍のファンシーズは、裏切ったラフィットが憎くてならなかった。

「俺は、ラフィットがギガ軍から抜けて清々しましたがね」

 ラフィットのことが気に入らなかったミエールは、肩を竦めた。

「アイツは好きにしてあげると良いよ」

 ディバは鼻で笑い、クローン達に体ごとくるりと振り返った。

「彼はDr.スチュワートの忌々しい薬でああなったけど、所詮は『実験用クローン』。そして君達は『戦闘用クローン』なんだ。ラフィットを倒せるくらい、もっと強くなれるよ」
「まさか、今のムーヴの戦闘データを使って、パワーアップするって訳か?」

 ジビンダーは腕を組み、ディバを睨むように見た。ディバは片眉を上げ、クスリと笑んだ。

「いや? この影虫データは君達には扱えないよ。制御しきれない程に強力だ。下手したら、たちまち暴走を起こしては心身が崩壊していく……ムーヴの状態を見てたなら、分かるだろう?」
「!」
「まだスマブラと戦いたけりゃ、このデータは諦めろ──これはあくまで、ギガ軍の『切りふだ』の為に取って置くんだ」
「切りふだ?」

 ジビンダーは言葉のオウム返しをした。ギガ軍の切りふだとは……それが一体何なのかは、クローン達には分からない。

「ヒヒッ。その時まで生きていられたら、見せてあげるよ。楽しみにして置くんだね」

 ディバは苦笑を零した後、ディスクをしまった。




「リュカ、いよいよ来たな、針を抜く時が」
「この針を抜いて、リュカの心を、やみのドラゴンに見せるんだ」

 クマトラとダスターは、針とリュカを交互に見た。
 リュカは彼等に頷いた後、針へと近付いて行く。
 だが、そこでふと立ち止まった。

「……どうした、リュカ?」

 マリオは目を少し丸くした。リュカは振り返ることなく、ある疑問を呟いた。

「……最初の針は、ムーヴが抜いた訳だよね? 僕がこの針を抜いたら、やみのドラゴンは、どっちの心を見るんだろう……」
 ──それなら心配要らないわ。

 その時、どこからか声がし、リュカやマリオ達は驚きながら辺りを見回した。だが、どこを見回しても、自分達以外の者はいない。

 ──言ったでしょ? 私は死んだ訳じゃないって。
「! イオニア……!」

 それを聞いて、リュカ達はその声がイオニアのだと分かった。リュカは笑顔の中、僅かに涙を滲ませた。

 ──私の姿は無いけれど、皆のことをずっと見守っていたの。だから、勝手に殺さないで頂戴ね。うふふ。

 イオニアの冗談を聞いて、マリオ達にも漸く笑顔が戻った。

 ──リュカ、良く聞いて。貴方がこの針を抜くと、やみのドラゴンは、間違いなく貴方の心を見るわ。
「えっ。どう言うこと?」
 ──あの時私が言っていなかった、もう一人の選ばれし者。それは、クラウスだったの。でも、クラウスはもうこの世にはいない……ムーヴって子が針を抜けたのは、クラウスの体を使ったからなの。もしもムーヴがこの針も抜いてしまっても、やみのドラゴンは、既に魂の無いクラウスの心を見ることは出来ないのよ。
「じゃあ、そうなった場合……」
 ──恐らく、この世界は無に帰す……永遠の闇の世界が待っていたかも知れないわね。
「……」
 ──でも、リュカには心がちゃんとあるわ。だから、やみのドラゴンは、貴方の心を見る筈。
   さあ、リュカ。皆の未来、皆の願い、皆の希望を胸に、その針を抜きなさい。

 目を閉じながら聞いてたリュカ。そして目を開くと、コクリと頷いた。既に、決めていたのだ。これからの世界を、これからの未来を……。
 リュカは、針の前に立った。ダスターやクマトラ、ネスやラフィット、そしてマリオ達は静かに見守る。ファンシーズは、小さな不安を抱きながら、見守った。
 リュカの両手が針を握った瞬間、針にあった翼が上へと消える。そして手に力を込めると、刺さっている部分から光が溢れ出し、抜かれていった針は、上へと放たれる様に消えて行った。
 地面が激しく揺れ出す。それと共に、大きな鼓動が響いている気がした。
 そして──、




 気付けば閉じていた瞼を、マリオはそっと開いていった。目の前に広がるのは、青く澄んだ空。柔らかな風が流れ、草の香りがした。
 体を起こすと、見覚えのある場所に、全員が気を失っていた事が分かった。ここは、タツマイリ村にある丘の上だったのだ。
 あれから何があったのかは、リュカも気を失っている為に今は分からないが、いつもと代わらない光景の中で、自分達が生きていることは確かである。
 少しすると、他のスマメンやクマトラ、そしてダスターも目を覚まし、体を起こして行った。

「あれ? ここは、タツマイリ村か?」
「何か、普段と変わってない気がしましゅ……」
「どうなってやがる。リュカはあの時、針を抜いた筈じゃなかったのか?」

 マリオ達は疑問に思っていたが、

「うん。針を抜いて、やみのドラゴンは確かに目覚めた。けど、何も変わってはいないよ……いや、変えなかったんだ」

 遅れて目を覚ましたリュカに、マリオ達は振り向いた。

「これまでの事を考えたら、記憶を封じることで、過去に背中を向けちゃダメだって思ったんだよ。その過去を背負って、これからの未来を、僕達で築いて行かなきゃならないって」
「リュカ……」
 ──そうね。

 マリオ達とは大分離れた、空の方で、イオニアは呟いた。

 ──今の世界をこれからも歩む。良い考えと言えるわね。リュカ達のような子がいる限り、針なんか無くとも、きっと明るい未来になっていくわ。

 そしてイオニアは、空の彼方へ消えて行った。
 ネスがリュカの傍まで来た時、ネスのポケットがキラリと光った。ネスはポケットに手を入れ、それを取り出してみた。光っていたのは、ポーキーに昔あげた『ともだちのヨーヨー』だった。

「え。何で、僕のヨーヨーが光ってるの?」
「……そう言うことか……」
「マーシスさん?」
「仮面のお兄さん?」

 何かに気付いたマーシスは立ち上がると、ネス達の方へ行った。

「地下へ行った時に欠片の気配が薄れていたことに疑問を持っていたのだが、今、漸く分かった。そのヨーヨーに、宝玉の欠片が入っているのだ」
「そうか。つまり、ネスの世界からこの世界へポーキーが移動出来たのは……」

 メタナイトが言うと、マーシスは頷いた。

「ポーキー殿が持っていたヨーヨーに、偶然にも欠片が入っていたからであろう」
「じゃあ、何で今になって欠片が輝き出したんだろう」

 考えるマリオに、マーシスは答える。

「おそらく欠片は、我々の力を見ているのかも知れないな」
「え?」
「宝玉は心正しき者にしか触れることは許されない。しかし欠片となった今、宝玉は悪しき者も触れられる。その為、欠片は悪しき者に囚われたり、その力を利用されたりすることもあった。それでも欠片は、歪んだ世界を元に戻した者を心正しき者と認め、光を取り戻し、姿を現すのだろう。これまでも、そうだったからな」
「つまり、世界を救った僕達へのご褒美みたいなものなんだね!」

 とカービィは言うが、強ち間違いではないなとマリオ達は思った。
 ネスのヨーヨーから、欠片が姿を現す。そしてそれは、リュカの手元へ向かった。リュカがそれを受け取ると光が放たれ、リュカの体へ吸い込まれ、そして消えて行った。

「この力で、僕はこの世界を守ろうと思う。大好きなこの世界を……」
「おいおい、オレ達も忘れて貰っちゃ困るぜ?」
「!」

 そう言って出たのはクマトラだ。彼女の隣にいるダスターも、微笑んで頷いた。

「皆で力を合わせて、この世界を守るんだ。これまでで傷付いた人達を癒し、より良い世界を、皆で作って行こうじゃないか」
「クマトラ……そうだね」
「間違って『お元気になるキノコ』を食べて、気力を無くすんじゃないぞ」

 口端を上げたスネークは、リュカの頭に手を置くとそう言った。リュカは少し驚いたが、スネークを見上げては「しませんよっ」と、少し強気に言い返す。マリオ達の間で笑いが響いた。

「ぎゃおー!」

 聞き覚えのある鳴き声が遠くから聞こえた。そこからやって来たのは、あの時のドラゴの子供、そして、父親の方のドラゴである。
 マリオはドラゴ達を見て、突如罪悪感を抱いた。母親のドラゴはメカにされ、そしてマリオの手に寄って……。

「ドラゴ、ごめん……謝っても許して貰えないのは分かってるけど、あの時はああするしか……」
「ぎゃうー」

 俯いているマリオの頬を、子供ドラゴがペロリと舐め上げた。そうされたマリオはビックリしては、子供ドラゴに目を丸くする。

「グオオオォン」

 そこで、父親のドラゴが吠えた。何か話している様にも聞こえる。ネスはそこで、ドラゴの言葉を聞く。

「……『君達がいなければ、この世界の運命は悪い方向へ行っていただろう。感謝している。俺達や、妻の分も、頑張って欲しい』って言ってるよ、隊長」
「! ああ、勿論だ。皆の世界は、必ず僕達で……っ!」

 それを聞いたマリオは、頷いた後に握り拳を作り、そう誓って言ったのだった。




 何日か村でお世話になり、マリオ達の体力は全回復をした。
 そして、マリオ達はそろそろ次の世界へ行こうと考え、タツマイリ村の皆に見送られることに。

「皆さん、本当にお世話になりました」

 マリオは笑顔で言った。

「世話されまくったのはこっちだよ。別れるのは少し寂しいけど、オレ達の分も頑張るんだぞ」
「この島のことは、俺達に任せろ」

 クマトラは鼻を啜りながら、ダスターは彼女の隣に立ってはそう言った。

「オソヘ城も救ってくれてありがとう。また、幽霊達と静かに暮らせるよ。演奏を聴きたくなったり、死んで幽霊になった時は、いつでもオソヘ城へ来るが良い。歓迎しよう」

 光を浴びても平気になったらしい。パッションさんは指揮棒を振りながら、首を一回転させた。マリオ達は、そんな彼に苦笑いしか出来なかった。

「この島……この世界は、僕達が守るから。だからマリオさん達は、自分達の世界の為に……絶対に負けないでねっ」
「おう!」

 リュカの顔は、いつに増して勇ましく見えた。心が成長した証だろう。マリオはそんな彼を見て、安心した。
 そして、後ろにいる『彼』に振り向いた。

「……ラフィット、改めて聞くよ。僕達に力を貸してくれるか?」

 そこにはネスがおり、そして、隣にはラフィットが立っていた。
 スマメンはここで体を休めている間、ネス達からラフィットについて色々と話を聞いていた。そして、ラフィットはこれからは、スマブラと共に戦うと誓ったのだ。これまでの詫び、救ってくれたネス達への恩返し、そして、死んだ友の為に……。
 ラフィットは躊躇い無く、首を一回だけ縦に振った。

「僕は全力で君達に協力するよ」
「よしっ」
「……これからは宜しくね、ラフィット」

 ネスはラフィットに微笑んだ。その表情は、心から嬉しそうだった。そんな彼を見たラフィットも、ネスと同じ表情を描いた。

「こちらこそ」
「じゃあ、マリオさん、行ってらっしゃい」
「ああ。行って来るぜ、次の世界へ!」

 リュカは欠片を取り出し、マリオは未完成の宝玉を取り出した。欠片が宝玉に引き寄せられ、宝玉は更なる形を描いた。そして宝玉が輝き出すとスマメンを光で包み、リュカ達に見送られながら、次の世界へと向かったのだった。




 丘の上に沢山咲いている向日葵。
 そこにはヒナワの墓と、隣には、新しく作り直されたクラウスの墓があった。
 そして、クラウスの反対側には、クラウスと同じ大きさの墓があった。その墓には、『ムーヴ』の名前が刻まれていた。




 とある世界。
 白いフードを深く被った者が、小さな四角いスクリーンから、マリオ達の様子を見ていた。

「……ポーキーが欠片を持っていた、か」
「何ですか、空間神様?」

 空間神と呼ばれた者は、神官に振り返った。

「いや。ポーキーが欠片を偶々持っていなかったらどうなってたんだろうなぁって」
「……『ポーキーが時空を越え、リュカの世界へ行く』。リュカの世界では、そういう『運命』なのですよ。欠片は、その意思に引き寄せられたと言うことです」

 空間神は、指で顎に軽く触れながら、フードの影に隠れている口端を吊り上げた。

「本当にこの──は面白いなぁ」
「感心してる場合ではありません。宝玉が崩壊した今、各世界で定められた運命があちこちで大きく変わって来ています。リュカの世界も、一部がそうでした。最早一刻も早く、悪しき者達よりも先に宝玉を修復させなければ、何もかも……」
「うん、分かってるよ」
「ダイヤモンドシティでも、黄色い少年が使用していたあの『機械』を通じ、マリオ達に今の事態を伝えねばと思いましたが、やはり妨害されてしまいました」
「……マリオ達が欠片を元に戻す為に命懸けで戦っているのは、見守っていて分かるから、その心配は、きっと無いよ。
 ──本当なら僕の手で、壊れちゃった宝玉をすぐに直すんだけど……」

 スマッシュ王国のマスターにも話していたが、彼等は何者かに寄って囚われの身となっている。その為、今はマリオ達を見守ること位しか出来ないのである。下手に動けば、マリオ達の運命がどうなるか、神でさえ分かりかねていた。

「マリオ達の世界が危ないのに何も出来ないだなんて──僕は情けない神だよ」

 自虐している神の背中を見て、神官はフッと笑んだ。

「いえ。その代わり、スマッシュブラザーズや、その世界の者達が、自分達の世界の為に戦い、守ろうとしているのです。寧ろ、誇りに思うべきでは」
「……ふふ、そうだね」

 今出せる魔力が尽きたか、スクリーンに砂嵐が発生し、プツンと言う音と同時に、スクリーンが消えてしまった。

(『運命』か……だけど、どんな運命でも、きっとマリオ達が良い方向へ導いてくれると、信じてるよ)

 空間神は、消えたスクリーンの方を向いたまま、口を開いた。

「マリオ達の世界、そして、この世界の運命がどうなるかは、君達次第だ──頼んだよ」










 ──to be continued──