襲撃! アーミィ・ジロー








 コング達にとって天国であり、生活上必要不可欠であるバナナ園に到着した、コング・クルーとスマブラ。そこには、太陽の光をたっぷりと浴び、黄色く熟されたバナナが輝く木が沢山生えていた。

「うわぁ! バナナがいーっぱいあるー!」

 見渡す限り黄金の森で、マリオ達はその広さに驚き、その中でカービィが特に声を上げた。おまけに少量の涎を垂らしているのをフォックスが偶々気付くと、微笑しながら首を軽く横に振った。

「じゃあ皆、バナナ運び手伝ってね。持てるだけ運んでくれたらもっと有り難いな」
「よーし!」
「カービィ、吸い込みはダメだぞ。どうせ食べちゃうだろうからな」
「むぅ。分かったよぉ」

 フォックスに言われたカービィが頬を膨らませている反応からして、手伝う振りして食べる気だったのかとマリオ達は思った。
 全員持てるだけのバナナを抱えた後、ドンキーの家を目指した。

「あら? チャンキー、そのバナナは……」

 タイニーは、チャンキーが運んでいるバナナの内の一つを見る。それは、時間が経ち過ぎた余り、既に黒く染まっているバナナだった。

「あ、これ? 元気ないなぁって。つい持って来ちゃった」

 チャンキーは黒いバナナを見ながら言う。

「ワテやったらとっくに捨ててるで?」

 彼の隣を歩いているランキーは、チャンキーが持っている黒いバナナを見て言った。

「ワタシはチャンキーのそう言う優しいとこ、好きよ」

 タイニーがそう笑うと、チャンキーは少し照れながら微笑んだ。ランキーはそんな二匹のやり取りを見て、何やねんと目をそらした。




 はぐれない様気を付けつつ、マリオ達はドンキー達について行く。やがてジャングルの中でも目立つ大きな建物が見えて来た。

「あの家が、オイラ達が暮らしている家だよ」

 ディディーは木や藁で出来た家を指差した。

「ヘイ! 遅かったじゃないか、ドンキー達!」

 その家のガラスの無い家の窓から顔を出したのは、赤いバンダナにサングラスを掛けた、見るからに陽気なコングだ。
 ドンキーは、その場から言の葉を返す。

「ごめんね、ファンキー。でも、バナナ園に向かう途中でマリオ達に会ったんだよ」
「マリオ?」

 陽気なコング──ファンキーコングは、マリオと言う名前に反応し、ドンキー達の後ろに立っているマリオ達を見れば、驚きながらも笑顔になった。

「オー、マリオ! 久し振りじゃないかっ。ベースボールやカートでエキサイティングして以来じゃないか?」
「……んっ? あ、ファンキー! ファンキーじゃないか! 久し振りだなぁ。元気にしてたか?」
「ミーならこの通りだぜっ。マリオも元気にしてたかい?」

 マリオも彼を見ている内に思い出し、自然と明るい笑顔になっては彼と話し始めた。

「感動の再会のところわりぃが、このバナナどうすりゃあ良いんだ?」

 このままでは彼らはこの場で話に花を咲かせ兼ねないと悟り、ファルコが咄嗟に割り込んだ。

「重たくてずっと持ってられねぇんだ」
「あ、バナナならこん中に頼んますわ」

 ランキーは、大木にある大きな穴の中へと彼らを招き入れた。この中はバナナの貯蔵庫であると言う。マリオ達は全員バナナを貯蔵庫に置いた後、コング達の家へとお邪魔した。

「遅い! どこで油を売っとったんじゃ!」
「クランキー、マリオ達だよ。ボク達の仲間」

 杖をついている年寄りのコング──クランキーコングが、杖を振り上げドンキー達に怒鳴る。だがドンキーは平然とした顔で、マリオ達を紹介した。

「……マリオ?」

 マリオと言う名前に反応し、眼鏡を掛け直すクランキー。何かを考えながらジッと見詰めて来ており、一方のマリオはハテナを出していた。

「マリオ、マリオ……どこかで聞いた名前じゃが思い出せん……ま、いずれ思い出すじゃろう」
「はぁ」

 クランキーは白い髭を撫でながら考え込み、マリオも、そう言われると彼をどこかで見た様な気がしたが、中々思い出せないでいた。

「知り合いのコングが多いんだな」

 フォックスは横から、マリオをからかい半分で肘で小突いた。マリオはそう言われ、鼻を掻く。

「思ったよりコングに縁があるみたいだね、僕」
「ドンキーのお友達? いっぱいバナナを持って来てくれたのね」

 金髪にピンクの艶やかな服を着、セクシーなボディを持った女性のコングが、マリオ達のとこまで歩み寄る。

「有り難う、ドンキー達。タイニーちゃんと一緒に、腕によりをかけて、沢山のバナナ料理を作るわね」

 女性のコングは、ドンキーの頬に音を立ててキスをした。キスをされた瞬間、ドンキーは目をハートにし、メロメロな状態となった。

「ウホホー。キャンディーの為なら火の中水の中だよ」
「それを言うなら、例え火の中水の中、だよ、ドンキー」

 女性のコング──キャンディーコングに夢中なドンキーに、ディディーからのツッコミは届かなかった。

「へぇ。ドンキーしゃんに恋人がいただなんて知らなかったでしゅ」
「ピィカ」
「ピッチュ!」

 ポケモン達は少し驚きながら、二匹のコングをジッと見ていた。

「まあ、厳密には恋人と言うか、ドンキーの憧れ……みたいなとこかな」

 ディディーはやれやれと言った顔をしながら、頭の後ろに両手を回した。
 コング達とマリオ達は改めて、自分達のメンバーを紹介した。
 プロペラ機を乗りこなすファンキーコング、楽器屋を経営している女性のキャンディーコング、そして、DKアイランドに詳しい年老いたクランキーコング。

「ヘイ! 宜しく頼むぜ、スマッシュブラザーズの皆!」
「うふ。宜しくね」
「年寄りは大事にするんじゃぞ、お前さん達」

 そうしている内に気付けばお昼の時間となり、今度はドンキー以外に、マリオの腹の虫も元気良く鳴いた。少ししてから、コング達の家の中で笑い声が響いた。




 キャンディーやタイニーが作ったバナナケーキ、バナナパイ、バナナチップス、チョコバナナ、バナナパフェ、焼きバナナ等、バナナオンリーの料理やお菓子がテーブルを埋め尽くした。

「見事にバナナ尽くしだな。喫茶店料理の参考にしよう」
「……しかし甘いものが多過ぎる。他の連中はよくこんなに食べれるものだな」
「文句があるなら食べなきゃ良いんじゃないか、スネーク?」

 C・ファルコン、スネーク、そしてサムスは、立ち食いをしながら会話を交えていた。

「うむ、どれも美味だ」
「全てバナナがメインだが、味に工夫をしてあるのだな」
「初めて食べたのもありますが、皆とても美味しいです」
「うふふ。口に合ったみたいで嬉しいわ」

 メタナイト、マーシス、そしてリンクは、それぞれの料理をゆっくりと味わって食べていた。彼らにそう言われ、キャンディーは彼らに片目を綴じた。

「ボク達の演奏も聴いてってね」
「ワテらの音楽に惚れるんやないでっ!」

 ドンキーらコング・クルーは、キャンディーから貰ったコンガやギター、サックス等を持ち、マリオ達への歓迎として、彼らの前で演奏を始めた。

「ゴリラや猿が楽器を……随分と器用なんだね」
「何だか聴いてて楽しくなって来たよ」

 ラフィットは感心し、ネスはノリノリに体を動かしていた。
 ワイルドだが陽気な音楽に、マリオ達のこれまでの疲れが一気に吹き飛んだ。

「……ピ?」

 ピチューは、チャンキーがテーブルに置いておいた黒いバナナをふと見ると、少し驚いていた。ドンキー達が演奏をしている間に、バナナから黒いシミがみるみる消えて行き、黄色に輝く色に戻って行ったのだった。

「ピチュ! ピィッチュー!」
「ピチュー、バナナがどうしたんでしゅか?」
「……あ。バナナが!」

 ピチューの声にコング達は振り向くや否や演奏を止め、そしてそのバナナに驚きながら近付いた。他のスマメンも、その場から顔を向けた。

「嘘やろ! あんなに黒かったバナナが、めっちゃ旨そうやん!」
「ウホー」
「驚いたわ……!」
「オイラ達の音楽を聴いて、元気になったのかなぁ」

 ディディーの言葉に、クランキーは顎を撫でながら言った。

「ふむ。植物に音楽を聴かせるのは効果的と言うからのう」
「……元気なる。良かった」

 黒かったバナナを持ってきたチャンキーが一番嬉しそうだった。そんなチャンキーを、他の人達は微笑ましく思った。

「ほな、ワテらも頂きまっか!」
「そうね。ワタシも丁度お腹が空いたし」
「チャンキーの持ってきたバナナも皆で食べようよっ」
「……あ。ダメ。ボク、まだこれとっておく」

 チャンキーは、黄色に元気になったばかりのバナナを庇う様に腕で覆った。

「チャンキー、バナナに情が移ってもうたんか?」
「……情が移ったのかも。でも、暫く大事にしたい」
「フフフ、チャンキーてば」

 こうしてコング達もスマブラに混ざり、食事パーティを始めた。

「あ、そうだ。クランキー」

 暫くバナナパーティを楽しんだ後、マリオは宝玉の欠片のことを思い出すと、クランキーに訊ねた。

「何じゃ?」
「クランキーなら何か知ってるんじゃ無いかなって。欠片のことなん……」

 質問をしようとしたその時、外からの轟音と共に大きな揺れが発生した。

「うわっ!」
「キャッ! 地震でしゅか!?」

 揺れはほんの数秒で治まったが、直後に再び轟音と揺れが起こり、それは数回続いた。激しい揺れが続く故、テーブルの上の皿が、料理と共に全て床に散乱してしまった。

「ああっ! タイニーとキャンディーの作った料理が……!」

 マリオは床を見て見開いた。タイニーやキャンディーもそれを見て、驚きと悲しみの表情となった。

「酷い、何てこと……!」
「あら。折角作ったのに……」
「……ウホー! 許さないぞー!」

 悲しむ二匹を見れば、ドンキーは誰よりも怒りを爆発させ、後先考えずに家を飛び出して行った。そんな彼にクランキーが驚く。

「コラ! 待つんじゃドンキー!」
「ヘイ! 何かがこっちへ近付いてくるぜ!」

 ファンキーは双眼鏡を使い、窓から顔を出してはある方角を見ながら声を上げた。マリオ達も彼に釣られ、入り口付近や窓から同じ方角を見詰める。
 緑が広がるジャングル。だがある遠い所で、木が次々と倒されて行くのが見えた。その度に、そこにいた鳥達が驚いては飛び去って行く。そして倒される木の跡を見れば、こちらへ少しずつ近付いて来ているのが分かった。

「俺達を狙っているのでしょうか?」

 リンクは真剣な表情で口を開く。

「……もしかしたらワタシ達の宿敵──クルール率いるクレムリン軍団の仕業かも知れないわ」
「クレムリン?」

 マリオはタイニーに振り向いた。

「ワニの軍団よ。親玉のキング・クルールは、ドンキーを倒そうといつも必死なの」
「待ってよ、ドンキー! オイラも行くよ!」

 ディディーもドンキーに続き、家から飛び出した。続いてランキー、そしてチャンキーも家を出て行く。

「ワテも行きまっせ!」
「……怖いけど、ボクも行くっ」
「あ。コラ!」

 クランキーが呼び止めようとするも彼らは聞く耳を持たない。だがタイニーも行こうとする前、クランキーに一度振り向いき、言葉を放ってから家を出た。

「相手がどんな奴でも、この島を滅茶苦茶にする奴は許せないわ。一刻も早く、何とかするべきよ!」

 コング・クルーは全員いなくなり、クランキーは溜め息を吐きながら頭を掻いた。

「全く、何も知らずに挑みに行くのは命取りじゃと言うのに」
「でも、このままじゃジャングルが危ないよっ」

 マリオがそう言った直後、何度目かの轟音と振動が彼らを襲った。今の現状からして、マリオ達の言う通りと思わざるを得なかった。

「僕も行こう。皆はここで待機してて。クランキー達を頼んだ」
「分かりました。気を付けて」

 クランキーは、出て行こうとするマリオを暫く見た後、

「! お前さんのことを思い出したぞっ」
「え?」




 ジャングルを転がり、木を次々となぎ倒して行く。それは、鋼鉄で出来た巨大なタイヤの様な形をしていた。それがピタリと止まると、中からアルマジロの様な生物が蝸牛の如く現れた。そして、鋼鉄の外骨格の左右から砲塔が顔を出す。片方ずつ弾丸を発射すれば、爆発や爆風に寄り、目の前の一部が焼け野原と化した。

「やめろー!!」

 木々を移動して来たドンキーは、今の光景を見ると更なる怒りを覚えた。相手の前に飛び下り、拳を構える。

「来たな、ドンキーコング」

 アルマジロはドンキーを見るとニヤリと笑みを浮かべた。

「このアーミィ・ジロー様の砲撃で黒焦げになるが良い!」

 アーミィ・ジローは標的をドンキーへと切り替え、砲撃を開始した。ドンキーは手足を使って走り、砲弾を避けて行きながら相手へと近付いて行く。そしてジャンプすると、アーミィ・ジローの横から殻めがけパンチを喰らわせた。

「うおぉっ」
「……ウホー! 痛いよー!」

 アーミィ・ジローは体を思い切り傾けるが、一方のドンキーも油断してしまった為か、あまりの硬さに手を腫れ上がらせた。
 傾くも何とか踏ん張ったアーミィ・ジローは、体勢を立て直した後、腫れた自分の拳に何度も息を吹き掛けているドンキーを睨み付ける。

「おのれ……喰らえ、ドンキー!」

 今がチャンスだと見、相手へ集中的に砲撃した。ドンキーの周りで爆発が起こり、仕留めたと確信した。
 だが煙が晴れて行くと、そこに彼の姿は無かった。アーミィ・ジローは目を丸くし、辺りを見回す。

「なっ……どこだ、どこに行きやがった!」
「ふぅ。間一髪だったね」
「!」

 声がした方向を見上げると、ドンキーは、バレルジェットを装備したディディーに担がれていた。

「ディディー、ありがとう!」
「置いてけぼりは無しだからね!」

 地面へ下ろし、感謝するドンキーに対し、ディディーは片目をとじた。

「ぐぬぅ……仲間か。行け、アーミー軍団!」

 アーミィ・ジローが声を上げると奴の背後から、殻の無いアーミィ・ジローに似た外見だが彼より小さめなアーミー達がぞろぞろと現れる。そしてドンキー達へ近付いて来ると、体を丸めては一斉に襲い掛かって来た。

「ディディー、援護をお願い!」
「任せてよ!」

 ドンキーはこちらへ来るアーミーをパンチで吹っ飛ばして行き、ディディーは両手に、木で作られたピーナッツ・ポップガンと言う武器を構えると、バレルジェットで上を移動しながら、ピーナッツの弾丸をアーミー達へ向け休まず撃って行った。攻撃を喰らったアーミーは倒れたり、驚いて逃げたりするが、アーミーは続々と現れ続ける。

「ドンキー! これじゃキリが無いよ!」
「諦めちゃダメだよ、ディディー!」
「フフフ。無駄だ。アーミーの数は驚く程いるぞ」

 次第に疲れが蓄積されて行くドンキーとディディー。それでもアーミーは休まず現れ、地上にいるドンキーを攻撃して行く。

「ドンキー!」
「遊びは終わりだ。消し飛べっ!」

 アーミィ・ジローが、ドンキーへ狙いを定めた。

「させないわ!!」

 その時、木々から新たな影達が飛び出して来た。
 それぞれ羽、葡萄、パイナップルの弾丸が放たれ、アーミー達を大量に蹴散らして行く。
 そして、

「どぉりゃああああぁ!!」

 更にもう一人が現れる。彼は大きな黒いハンマーを両手で振り上げ、落下の力も利用しつつ、アーミィ・ジローの殻を思い切り叩き付けた。

「ぐおああぁっ!」

 鋼鉄故にヒビ一つ入らないが、叩かれた際の中への振動が想像以上に大きく、その衝撃に寄り左右の砲塔が、小爆発を起こしながら破壊された。

「タイニー! ランキー! チャンキー!」
「間に合ったみたいね」
「ワテらも混ぜらせてや。ワテらでコング・クルーやさかいな!」
「凄い数、だけど皆がいれば、きっと勝つ」

 ドンキーとディディーの前に着地した三匹のコング。フェザー・ボウガンを手に構えたタイニー、グレープ・シューターを吹き矢の様に構えたランキー、そして、パイナップル・ランチャーを肩に構えたチャンキーだ。

「マリオもっ」

 マリオも巨大な鋼鉄ハンマーを片手に着地し、ディディーが喜びの声を上げる。

「マリオ、そのハンマー……」
「クランキーから借りたんだ」

 ドンキーに指を差されたハンマーを見下ろし、マリオは微笑してはハンマーを掲げて見せた。

「し、しまった、砲塔が……!」

 アーミィ・ジローは、小さく焦げては小さな煙を上げている、嘗て設置されていた砲塔の跡を左右交互に見る。そして、次第に怒りを露わにし出した。

「ぐぬぬ、不味いぞ……ドンキー達を倒したらマッド・ジャックも処分する様言われていたのに……」
「……マッド・ジャック?」

 今の名前を唯一耳にしたタイニーは、一体誰のことかと疑問を持つ。

「このまま帰ったらクルール様に怒られてしまう。こうなったら、お前達全員ペッチャンコにしてやる!」

 アーミィ・ジローは体を殻の中へと引っ込めると、高速で転がって来た。

「簡単にやられるか!」
「島を荒らす奴は、絶対に許さないぞ!」

 マリオとドンキーはコング達の前に立ち、ドンキーは腕を回し始め、マリオはハンマーを横に構えた。
 そして、

「喰らえ、アーミィ・ジロー!!」
「ジャイアントパーンチ!!」

 マリオはハンマーを思い切りスウィングさせ、ドンキーはパワーをためたパンチを思い切り繰り出した。

「うおああぁぁ……!!」

 ハンマーとパンチが同時に殻にぶち当たればアーミィ・ジローは吹き飛ばされ、そのまま空の彼方へと消えて去った。
 残されたアーミー軍団は、リーダーがやられたと分かり慌てた後、蜘蛛の子を散らすかの様に退散して行った。

「ヤッフー! ホームラン!」
「手が痛い……」

 マリオはハンマーを肩に掛け、額に手を翳しながら言った。
 そしてドンキーは、パンチを放った拳を再びブラブラさせていた。そんな彼を見て、ディディーは呆れて溜め息を吐いた。

「……最初の攻撃で学習しなよ、ドンキー」
「でも流石やで、お二人さん! 流石ヒーローズですわぁ」

 笑顔のランキーが頭の上で手を叩きながらそう言うと、ドンキーは彼らを見て微笑しつつ首を横に振った。

「ううん、皆のお陰だよ!」

 マリオやコング達は、島を襲いに来た敵を何とか追い返すことに成功し、勝利の喜びを分かち合った。




「ハンマーありがとう、クランキー」

 コング達の家に戻り、マリオはハンマーをクランキーへ返そうと差し出した。だが、クランキーは受け取ろうとはしなかった。

「持って行くが良いぞ」
「え! 良いの?」
「──元々はマリオのじゃろう。返すのは寧ろこっちの台詞じゃて。それまではただ飾っていただけじゃからのう」
「……ありがとう、クランキーっ」
「それにしても、マリオさんとクランキーさんが、嘗て闘っていたライバル同士だなんて驚きましたよ」

 リンクは微笑を浮かべながら二人を見て言った。マリオはそんなリンクに一度振り返り、そしてハンマーを見下ろす。

「ああ。だから、クランキーと闘う時に使っていたハンマーを渡された時、凄く懐かしい気持ちになったよ」
(……マリオって年とらないんだね)
(……それは言っちゃダメだよ)

 ラフィットとネスは、テレパシーでこっそり会話をした。

「そうだ、クランキー。パーティの時に言いそびれてしまったんだけど」
「何じゃね」

 マリオは欠片のことと、これまでの事情をなるたけ簡潔に説明した。

「なるほどのう」
「だから、この島に詳しいクランキーは何か知っているんじゃないかなと」
「そうじゃのう……そう言えばこんな話があるぞ」

 クランキーが話し始めようとし、マリオ達は真剣に耳を傾けた。

「この島には、伝説のゴールデンバナナと言うものがあるのじゃ」
「ゴールデンバナナ?」
「何それ美味しそう!」
「カービィは黙ってろ」
「いった!」

 ファルコは、バナナと聞いて目を輝かせるカービィの頭を軽く叩いた。叩かれた場所をカービィは抑えつける。

「ゴールデンバナナは見つけた者の願いを叶える奇跡を起こすものじゃ。残念ながら欠片の在処はワシにも分からんが、ゴールデンバナナを見つければ力を貸してくれるじゃろう」
「欠片に導かれて我々はここに来た。故に、この島に欠片は必ずあるが……」

 マーシスは顎に軽く触れ、考えながら言葉を放つ。そんな彼にメタナイトは振り向く。

「マーシス?」
「欠片の気配がない──否、常に感じてはいるのだが、まだ手中に戻ろうとしない。そんな感覚なのだ」
「欠片が顔を出さないのなら、ゴールデンバナナとやらを見つけて無理にでも連れて来る。そんなとこか」
「その言い方はどうかと思うけどな」

 腕を組みながら言うスネークに、サムスは眉根を寄せた。
 だが、クランキーが難しい表情を作っていることにマリオは気付いた。

「クランキー?」
「……じゃがな、ゴールデンバナナにはこんな言い伝えもあるんじゃ……」




 ──島が滅び、真の友情が生まれし時、島甦り、黄金の力実現せん。




「……ゴールデンバナナを手に入れるには、島が滅ぶ必要があるの?」

 キャンディーは不安げに言った。クランキーは腕を組み、考えながら口を開く。

「あくまで伝説の話じゃ。奇跡は簡単には起こせず、リスクが必ず伴う。そう言うことじゃろうのう」
「……折角話してくれたクランキーには申し訳ないけど……」
「言いたいことは分かっとる。ゴールデンバナナに頼らず、無事に欠片が見つかることを祈っておるぞ」
「ヘイ! ミーに出来ることがあるなら何でも言ってくれ! 力になるぜっ」

 ファンキーは白い歯を見せ笑顔になりながら、張った胸をドンと叩いた。次にキャンディー、そして、コングが次々と口を開く。

「私も出来る限り力になるわよ」
「ワテも協力しまっせ!」
「アーミィ・ジローを倒したワタシ達だもの。何でもやって見せるわ」
「ボクも、力貸す!」
「ウッホ。マリオ、必ず欠片を取り戻そうね!」
「……ありがとう、皆」

 感謝を述べるマリオを見守る仲間達。その中で、マーシスが静かに口を開いた。

「仲間がいるのは、心強いことだな」




 タイニーは、夜の海を眺めながら浜辺の散歩をしていた。変わらない静寂な時間。だが、昼間に起こったあの事態を思い返すと、同じ景色でもいつもと違う風に見えた。

「悪い予感がするけど、何も起こらないと良いわね」

 アーミィ・ジローからクルールと言う名前を聞いてから、避けられない運命が待っているであろうが、いつもの様にドンキー達で奴を倒せば良いだけの話だ。
 マリオ達が無事に欠片を見つけ出し、いつもと変わらない同じ時間が流れて行くと良いと。それは、誰もが願っていることだろう。
 暫くして、少し遠くの岩陰から見たことの無い、大きなシルエットが顔を出しているのが見えた。それは、箱の形をしていた。

「あれは何かしら?」

 気になったタイニーは、躊躇無く早足で向かった。
 岩陰の奥を覗くと、少しだけ見開いた。何者かが倒れているのである。生き物なのか分からない。その姿はビックリ箱の中身が飛び出しているかの様で、箱の中と相手がバネで繋がっていた。黄緑色の顔に、服を着ている。
 相手はずぶ濡れで倒れており、おまけにボロボロだった。

「オモチャなのかしら?」
「……うぅっ……」
(! 生きてる……!)

 まるで生きているかの様な声、そして、気が付いたらしく大きな手がピクッと動いたのが見えた。タイニーは恐る恐るだが、様子を見ながら近付いて行く。

「……だ、誰だっ……」
「キャッ」

 突如喋り出し、メカで出来た眼帯から赤い目が光る。タイニーは思わず声を上げて立ち止まるが、

「クレムリンの……追っ手か?」
「……クレムリン?」
「畜生、消すならさっさと消しやがれ……っ」
「ちょっと待って」

 彼の言葉を聞いて頭の中を整理しつつ問い掛ける。

「貴方、あのクレムリン軍団の人なの?」

 相手はタイニーの言葉を聞くと、少し驚いた表情をこちらへと向けた。

「……お前、クルールの仲間じゃ無いのか?」
「まさか。アイツがやって来たらワタシ達で追い返すわよ」

 何か訳ありで倒れているのだろうと確信したタイニーは、今度は恐れること無く相手へ近付いた。

「ねえ、教えて。貴方、クレムリン軍団に追われているの?」
「……オレはクレムリンの奴等に作られたんだ。だけど使い物にならなくなったって理由で処分されそうになったから、ここまで逃げて来たんだ。
 ……ところで、ここはどこだ?」
「ここ? ここはDKアイランドよ」
「DKアイランド……なるほど、お前はクルールの敵か……つまり、オレの敵でもあるって訳だな」
「……」
「オレはこの通り何も出来ねえ位に弱っている。スクラップにするなら今の内だぜ」

 相手は既に諦め状態となっており、本当に何かをしてくる様子はなかった。
 タイニーは暫く考えた後、一度コングの家へと戻り、そして再び彼の元へと戻って来た。彼女が持って来たのは、救急箱である。相手はそれを見ると目を細めた。

「何の真似だよ」
「貴方は敵だって言ってるけど、もうクルールの手下じゃないんでしょ? なら、手当てしてあげるわ」

 タイニーは救急箱の蓋を開くと包帯を取り出し、相手の怪我している部分に巻いて行く。

「……何でオレを助けようと……」
「ボロボロになった貴方を放って置くなんて出来ないわよ。安心して、他の仲間達には、ワタシから言っておくから」
「……ふん、お人好しのコングめ」
(だが、彼女らとなら、あのワニ共に復讐が出来るな)

 タイニーに手当てをして貰いながら、相手はそう思っていた。

「ワタシはタイニーコングよ。貴方は?」
「……オレはジャックって言うんだ」
「!」

 彼の名前を聞いて、ハッキリした。アーミィ・ジローが口に出していた名前と一緒だったからだ。クルールの命令を受け、彼を処分しようとしていたのは間違いなかったと。

「宜しくね、ジャック」

 タイニーがニコッと微笑むと、ジャックもそれに釣られる様に静かに微笑を浮かべた。




「お、おのれぇ、ドンキーコングウゥ……!!」

 案の定、アーミィ・ジローが失敗したとの報告を受けたクルールは、怒りの余り座っている椅子を力任せに叩いた。

「──さて、クルール様。こうなった以上、ぼく達の力を借らざるを得ない……どうしますか?」

 クルールの隣に立ち、予想通りの結果になったとディバは密かに笑んだ後、横からクルールを見やる。クルールは歯軋りをしながら考えたが、今の状況だと相手の言葉を呑む以外に無いと判断すれば溜め息をつき、ディバに指を突き付けた。

「良いだろう。ブラストマティックの修理が終わるまで時間稼ぎをするのだ。どんな手段を使っても良い。倒したって構わん」
「かしこまりました、キングクルール様」

 ディバは優雅にお辞儀をした後、その場から消え去った。
 そして、アーミィ・ジローのいる部屋へと瞬間移動をした。部屋は暗くて何も無く、扉は一つしかない。任務に失敗した為にこの部屋に閉じ込められているのだ。
 殻の無い裸状態の中、負けた為か息を荒らしているアーミィ・ジロー。ディバを見るや否や、一気に悪い予感が襲ったか、怯えた状態で彼を見上げた。

「アーミィ・ジロー、ドンキー達を一匹もやっつけられなかったみたいだね」
「ゆ、許してください……次は必ず仕留めてご覧にいれます……!」

 まるで命乞いをしているかの様に声を震わせている。ディバはそんな彼にフッと笑むと、手の平を差し出して来た。許してくれるのだろうかと、アーミィ・ジローが安堵の表情を見せた時だ。
 ディバの手の平から、紫色の玉達が蠢きながら溢れ出し、そしてアーミィ・ジローへと近付いて行く。

「なっ……うわ! な、何だ? た、助けて……!」

 得体の知れないものがどんどん増えてはこちらへ来るのに恐怖し、アーミィ・ジローは逃げようとしたが、扉はロックされ入れない。あちこちに逃げ回るが遂に部屋の隅へと追い詰められる。蠢く紫色の玉達は止まること無く、アーミィ・ジローの体を丸ごと包んで行く。

「ひっ……うわあああぁ……!!」
「安心してね、他のクルール様のペットにも同じことするから」

 慄き叫び声を上げる相手を楽しげに見守るディバ。
 そして背中を向け、今度は手の平から赤い液体を数滴床へと零す。すると、床へ滴った赤い液体が生き物の様に動き膨張し、やがて誰かの形へと変化した。

「さあ、任務だよ。しっかりやってね?」

 それは、ドンキーコング、ディディーコングと瓜二つ──否、そのものだ。とじていた瞼を開けば、血の色をした目が妖しく光った。










 ──to be continued──