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操られる生物達 ジャングルから黒い煙が上がっており、その異変を確認する為に、ランキー、ピカチュウ、ピチュー、フォックス、そしてファルコは、海からジャングルへ戻っていた。 「皆ー!」 そんな彼等を、遠くから少女の声が呼び止める。聞き覚えのある声にランキー達は立ち止まり、辺りを見回すと、奥からこちらへ走って来るタイニーの姿が見えた。 「あれはタイニーや!」 「ピカッ」 「ハァ、ハァ……」 漸く仲間達を見付け、彼等の前まで来ると膝に手を付き肩で息をする。だが、自分の疲れなど気にしている時間は無いと、タイニーは息切れ状態ででも口を開いた。 「み、皆、大変なのよ……!」 「……ああ。ジャングルから煙が見えたからな。非常事態だってことは分かってる」 「勿論それもそうだけど、それよりもっと大変なことが……っ」 「え?」 フォックス達は顔を見合わせた。タイニーは漸く顔を上げ、ギガ軍の一味から聞いた内容を話した。 「な、何やて!? ブラストマティックて兵器を!?」 「話をしていた奴等……そいつ等は間違いなくギガ軍の野郎共だな」 「ピィカァ……ッ!」 「ピッチュ!」 「兎に角、一刻も早くブラストマティックを止めに行かないと、この島は……っ」 タイニーは、故郷を全て失ってしまうかも知れない悲しさから、今にも泣きそうになっている顔を黙って俯かせた。ランキーはそんな彼女の表情を辛そうに見た後、怒りの感情を露わにしながらフォックス達に振り返った。 「海へ戻りまっせ! クルールの船がどっかにある筈や!」 「そうだな。タイニー、マリオ達にも伝えて置いてくれるか?」 「分かったわ」 フォックスはタイニーに、彼等のいる大体の場所を教えることになった。本当なら、フォックスがインカムを使い速やかに連絡をするところだが、リュカ達の世界──厳密にはオソヘ城にて悪事を働いていた幽霊達の所為か、一時的に使い物にならなくなってしまっていたのだ。 タイニーはフォックス達と一端別れ、先ずはマリオ達のいる方角へ向かって走って行った。 ‥ 影虫に操られている証拠として禍々しい紫のオーラを溢れ出させている象は、最初に目にした大木に長い鼻を巻き付ける。僅かな力のみで、大木を根っこ共々いとも簡単に引き抜き、カービィ達へ向かってそれを勢い良く投げつけた。 「とお!」 カービィはファイナルカッターを片手にプリン達の前に出、飛んできた大木を難無く真っ二つにした。 プリンがそのままカービィの横から走り出し、象の背中に飛び乗る。象は背中に何かが乗っかったと感じたらしく、その場を暴れ回ってはプリンを振り落とそうとしていた。 「大人しくするでしゅよっ」 そう簡単に振り落とされないプリンは『うたう』で相手を眠らせようと口を開いた。 「プリッ!? イタタタタ!」 だが歌い出す直前に紫オーラの小鳥達が飛んで来、プリンを嘴で何度も突っついては妨げる。小さな嘴であろうと、集団で攻められれば一溜まりも無い。 「プリン! 遊んでないで早く大人しくさせてよ!」 「プリィ……ッ。遊んでる様に見えましゅか! 助けてくだしゃい!」 何故かそれが楽しそうに見えたらしいカービィに、プリンは涙を滲ませながら声を上げた。 「PKサンダー!」 少年の高々なボイスと共に、帯状の電撃が、プリンを襲う鳥達に向かう。鳥達は慌ててその場から逃げる様に離れたり、中には電撃に当たり地面へ落ちて行く鳥も。気絶までとの隊長命令に寄り力の加減はしているが、鳥達を痺れさせ、暫くの間動けなくするには十分だった。 「プリン、今の内に!」 「ネスしゃん、助かったでしゅ!」 プリンが改めて歌い出すと、象や鳥達──彼女の周りの動物達は夢の世界へと旅立った。 「大分眠らせたり気絶させたりはしたけど、操られている動物はまだまだ多いね」 ネスは目を閉じながら、暴走している動物達を感じ取ると、円らな目を悲しい形にして瞼を開く。そんな彼の様子と言葉に、プリンも疲労と悲しみに落ち込む。 「大丈夫大丈夫! 隊長達がきっと何とかしてくれるよ。それまで頑張ろう!」 そう言うカービィも多少ボロボロだが、それでも元気付けようとしてくれているのだろう、ファイナルカッターを小さな肩に掛け、ウインクをして見せた。 時々空気を読まない子だが、その態度に何度か救われたのも事実。現にネスとプリンは、そんなカービィを見て自然と笑顔を取り戻していた。 「そうだね。隊長達を信じよう」 「しょれまでに、操られている動物達を少しでも多く眠らせて、島の傷をこれ以上増やさない様にしなきゃでしゅね!」 動物達を止めるのが如何に重要な任務であるかをも思い出した二人は、カービィに「ありがとう」と感謝の言葉を伝えた。そこまで考えていなかったか、カービィは少し驚き一人一人を交互に見たが、何だか照れ臭くなっては頭に小さな手を置いた。 (隊長、皆、どうか勝ってね……!) カービィ達は、マリオ達が戦っている方角へ、暫く振り向いた儘でいた。 「ふんぬ!!」 掛け声と共に、二匹のゴリラから僅かな衝撃波が放たれた。ドンキーとフォルズが互いの両手を掴み合い、力比べを始めているのだ。暫くはお互い一歩も譲らなかったが、フォルズの体が先に震え出していた。 「ボクの力は、偽者何かに負けないよ!」 「グヌヌヌ……!」 「うわわっ!?」 勝利が見えて来たと思われたその時、ドンキーの体が地面から浮き上がり、そのまま後ろへ放り出されたのだ。 「ウホー!!」 逆様の状態で背中を木にぶつけ、頭から地面へ落ち、星をチカチカさせてしまう。 「ドンキー!」 力比べに水を差さないでとドンキーに言われたマリオとラフィット。故に彼等の勝負の行方をその場から見守っていたが、仲間が負けてしまった事に思わず見開いた。 「ボクらクローンは、どんどん強くなってるんだって」 次のターゲットであるマリオ達を見ながら、フォルズは拳を何回か鳴らした。マリオは一瞬狼狽えるが、気を引き締めねばと身構える。 「一番強いかどうかは……ボクらも倒してから言え!」 「……大勢が相手じゃ不公平だから、ボクも仲間を呼ぶよ」 フォルズは、自分の胸板を大きな手で太鼓の様に叩き、吼え始めた。すると、操られている動物達の内、トラやサイ、カバ等、凶暴な動物達がマリオ達を囲む。 「く……っ!」 「あいたたた……ウホッ!?」 意識を取り戻し、打った頭を涙目で撫でているドンキーも、動物達に囲まれている事に気付き驚愕する。 「……」 ラフィットはその場で彼等にテレパスした後、マリオの隣に立つ。 「マリオ、アイツら全員操られてるよ」 「ああ。見れば分かる! でも……」 「分かってる。操られている動物は気絶させるか倒さずに、何とかフォルズに近付かないとね」 「──行くよ!」 フォルズは前方に指を突きつけてはGOサインの合図を出す。マリオ達を囲む動物達の総攻撃が始まった。 ラフィットは動物達の攻撃をギリギリで避けつつ、襲って来た動物にちょっとした電撃を与えては気絶させて行く。ただ、PSIは一日の使用に制限がある為、いつ使えなくなってしまうかは時間の問題だ。故にラフィットは、なるべく最小パワーを使って行った。 「っ……ごめん!」 操られている動物達に謝罪の一言を掛けてから、マリオはマントを駆使しては相手からの突進攻撃等をクルリと反転させる。間に合わない場合は、やむを得まいと殴ったりして気絶させて行く。後者の攻撃法は、ドンキーも同様だ。 「フォルズ! 覚悟しろ!」 マリオは遂にフォルズの直ぐ近くまで来、地面を強く蹴るとそのまま殴りかかった。 「!!」 だがマリオは拳を直前で止めた。フォルズの目前に、動物達が壁となって現れたのだ。 壁だけで無く一気に攻撃を仕掛けて来た為、マリオは慌てて後ろへ下がる。 「卑怯だぞ、フォルズ!」 「これも戦法だよ。後──お喋りする暇、無いんじゃないかな?」 「えっ?」 フォルズのその言葉と共に、マリオの背後から肉食獣の影が現れる。間髪入れずに、鋭い爪がマリオを襲う。 「うわああ!?」 「!」 「マリオッ!!」 マリオの方角から叫びと同時に服が破けた様な音が響き、ラフィットとドンキーは思わず振り返った。 相手からの攻撃をマリオはギリギリで避けたが、攻撃を跳ね返したり出来た相棒が、マリオの代わりに無惨な姿となってしまった。 「しまった、マントが……っ!」 「今だよ、マリオをボコボコにしちゃいな!」 「うわっ!」 僅かに口を歪めたフォルズが声を上げると、多数の動物が一斉にマリオに襲いかかる。マリオは何とか受け流したりしているが、今では疲労を溜めており、ラフィット達より蓄積ダメージが急速に増えているのは確実だ。 「フォルズーッ!!」 怒りがおさまらないドンキーは、動物達を強引に掻き分けフォルズへパンチを構えた。フォルズは咄嗟に腕でガードするが、ドンキーは休まず連続パンチを繰り出す。 「うおおおお!!」 「……さっきよりやる様になったね……だけど──」 「ウホッ!?」 何とフォルズは片手だけでドンキーのパンチを難無く受け流しており、それに気付いたドンキーは目が飛び出る勢いで驚愕した。 「まだまだだね」 フォルズは怪しい笑みを描きながら相手の拳を掴む手に力を込め、ラフィットへ向けて投げ飛ばした。 「わわあぁ!」 「!」 横から彼の叫びが聞こえたラフィットは反射的にその場をジャンプしてしまい、ドンキーは彼の下を通過しながら、やがて地面をスライディングして行った。 「ドンキー!!」 「ウホホー……こんな時……ボクの『友達』や──があったら……」 それを言ったきり、星の次は頭の上に幻覚のバナナは散らしながら、ドンキーは気絶してしまった。 彼に驚くマリオだが、そんな自分も体力の限界が来そうになり、遂には地面に膝をついてしまった。 「く、くそ……っ、フォルズを倒さなきゃ……島が……動物達が……皆が……っ!」 「……」 (あのクローン、見た所ドンキーと大差ない力しか無い気がする。否──『今の』ドンキーより力があるんだ。つまり……) ラフィットはフォルズを凝視しながら考え始めた。 その目線に気付いたか、フォルズも彼と目線が合う。 「裏切り者は早めに排除しないとね、ディバ隊長からのご褒美の為に……」 (ご褒美……ドンキーのさっきの言葉──そうかっ) 「ラフィットを取り囲め!」 フォルズが胸板を太鼓にして鳴らすと、五秒もしない内にラフィットの周りを動物達が囲んだ。ラフィットは空中へ逃げようと上を向いたが、鋭い嘴を持った鳥達がこちらを見下ろしていた。 「ラフィットには特別ゲストをお呼びして置いたよ」 フォルズが間抜け面の中ニヤリと笑みを浮かべ、片手を上げる。それを合図に、ラフィットを囲む動物達が、何者かの為に道を開けたのだ。そこに現れた者、それは、強靭な角を持ったサイである。サイはその場で地面を何度も蹴り、ラフィットを睨みながら鼻息を荒らしていた。 始めは気性が荒そうな印象だったが、ラフィットは次第に再度冷静になり、相手に対し円らな目を細める。 「……」 「よーし、吹き飛ばしちゃってよ!」 フォルズが命令を下すと、サイは角を突き付けながらラフィットへ向かい駆け出した。 「ラフィット!」 動物の集団から何とか抜け出したマリオもラフィットに向かい走り出すが、マリオの体力と距離からして、このままでは間に合わないのは明らかだった。 だがラフィットは、サイを凝視した儘その場を動かずにいた。まるで相手からの攻撃を待っているかの様に。 すると、何とそのサイは、ラフィットにぶつかる直前にブレーキを掛けたのだ。 「!? な、何してるの!?」 フォルズも相手の攻撃は予想外だったらしく、その場から同じ命令を下す。が、サイはラフィットを見上げるばかりだ。そして後ろを向くと、フォルズへ標的を変え突撃して行ったのだ。 「ウ、ウホッ!?」 目が飛び出す程驚愕しているフォルズは、そのままサイに追い掛けられる事となった。 「な、何でー!?」 「い、一体どうなってるんだ?」 フォルズとサイが鬼ごっこをしているとこを、マリオは他の動物達と一緒にポカンとして見ていた。 ──マリオ、動物達が油断している今の内に! 「! ラフィットの声か?」 マリオの心に、彼の言葉が聞こえる。 ──フォルズが立っていたとこの側に生えてる木を揺らして、落ちて来た物をドンキーのとこへ持って行って。一刻の猶予も無いから、急ぐんだ! 「え? な、何だか良く分かんないけど、やってみるよ!」 ラフィットの言葉を信じ、マリオは木に突進する為にその場から全力で駆け出す。 「ウホホー! 何をしたんだラフィットー!」 サイからの攻撃で若干ボロボロ状態になったフォルズは、ラフィットを怒りを込めた目で思い切り睨みつけた。逆にラフィットは、冷静な目で彼を見ている、まるで勝利を確信しているかの様に。 「もー許さない! 完全に粉々にしてやる!」 短めの足で走り出し、そのままラフィットへ強力なパンチをお見舞いしてやろうとした、その時である。 「バナァーナパァワァー!!」 力溢れる声が、島中にと言う程に響き渡った。フォルズの声かと思いきや、それは別の方角から聞こえる。 復活したドンキーコングが、巨大な力瘤を作ったり、胸板を太鼓の如く拳で鳴らしながら、空へ向かって雄叫びを上げていた。 ドンキーの横には、バナナの皮を握り、ニヤリとさせているマリオが立っていた。 「そ、そんなバカなっ!? ドンキーコングはおねんねだった筈なのに……!?」 フォルズは見開き、頭を両手で抑えていた。 「さぁ、ドンキー。君の力で、自分のクローンをやっつけるんだ!」 フォルズを指差しながら、マリオは声を上げた。 「うん。動物達のことは任せたからね、二人共! じゃ、反撃開始だよ!」 「くっ! 返り討ちにしてやるもんね!」 ドンキーは片腕をブンブン回しながら地面を蹴り、瞬時でフォルズと間合いを詰めた。フォルズはギョッとしつつも、パンチを次々の繰り出して行く。だが、ドンキーはそれらを次々と掌でガードし、一発も喰らう事は無かった。手応えを全く感じないフォルズは、驚き通り越して恐怖心を煽られていた。 逆にドンキーは、次々とフォルズにパンチをお見舞いしていった。顔から頬、胸や腹まで、全てクリーンヒットである。 「うぐっ! な、何で!? 何でオリジナルの方がこんなにも……!」 「とどめに、これを喰らえ!」 フルパワー状態であるドンキーの頭からは湯気が立っており、そして構えた片腕の筋肉を更に膨張させ、 「ジャイアントォ……パァーンチッ!!」 フォルズの腹に、強烈なパンチをお見舞いしたのだ。 「グフオオオォ!!」 フォルズはパンチのダメージだけで無く、喰らった勢いで一気に後ろへ吹っ飛び、大木に背中を激突させるとその儘気を失った。 フォルズがやられた瞬間、動物達の体から影虫が溢れる様に現れ、そして泡の如く次々と消滅していった。動物達は目を覚ましたかの様にハッとし、辺りをキョロキョロ見回していた。 「やったぁ! ナイスだ、ドンキー!」 マリオは歯を見せた笑顔で、ドンキーに向けて親指を立てた。 「ううん。マリオがバナナを持って来てくれなかったら、ボクはフォルズを吹っ飛ばせ無かったよ」 「いや、ラフィットがバナナがなってる木を教えてくれなかったら、僕達きっと負けてたよ。有難うな、ラフィット」 お礼を言いながらラフィットに振り向くが、ラフィットは軽い溜め息で返事をした。 「フォルズのご褒美でピンと来たんだよ。彼にとっての褒美はバナナ以外に無いと思ってね。でも、正直言って、僕も危なかったけどね」 「そうなの?」 「まぁ、負ける気はしないけど。『あのサイ』が操られてなかったから、勝てる確率が上がった訳」 「え?」 とある場所へ振り向くラフィットの目線を追う。そこには、他の動物達とはどこか雰囲気が違うサイがいた。 「ランビ!」 マリオにとっては初対面だが、ドンキーはサイを見ては嬉しそうに声を上げた。ランビと呼ばれたサイもドンキーを見ると、少しだけニッと笑んだ。 「ランビはボクの友達なんだよ」 「へぇ、そうなんだ。僕はマリオ。宜しくね、ランビ」 「そのサイは、僕らが相手をしていた動物達で唯一、影虫に操られていなかったんだ」 ラフィットはランビを見ながら言った。 「操られていなかった? じゃあ、どうしてフォルズは……」 「……簡単に言えば──気付いていなかっただけ、なんだと思うよ」 ラフィットは、何故か顔をそらしながらそう言った。まるで気まずそうな彼の仕草に、マリオは少ししてから納得し、ジト目になる。 「やっぱり、ドンキーのクローンもドンキー……ってか」 「……どう言うこと?」 唯一理解していない本人は、頭を掻きながらハテナを幾つか浮かべていた。 「隊長ー!」 「ドンキーしゃーん!」 「ラフィット! 皆無事!?」 遠くから子供達の声が聞こえる。カービィとプリン、そしてネスである。 「ああ。こっちは大丈夫だ! カービィ達も、無事で何よりだよ」 「うん! 何かね、動物達の体から急に気持ち悪い色の泡が沢山出て来たんだ。そしたら、みぃーんな正気に戻ったんだよ!」 カービィは小さな手を振りながら嬉しそうに話した。マリオは、それは良かったと微笑んだ。 「やっぱりフォルズが、影虫を操っていた張本人──」 そう言いながらフォルズのいる方へ振り向いた刹那、マリオは驚きの表情となった。 「隊長?」 「何でだ? フォルズがいないぞ?」 ドンキーに吹っ飛ばされ、木に体をぶつけ気を失っていた筈の彼がいなくなっていたのだ。 「……どうやら逃げられちゃったみたいだね」 ラフィットはそう呟いた。 彼等から少し遠くに生えている木の裏には、ディバが立っていた。彼はフォルズの回収を確認出来た後、その場から瞬間移動の如く消え去った。 ‥ 「はぁ、はぁ……マリオ達の声が聞こえたわっ」 マリオ達の声が聞こえたタイニーはその方角へ向かって駆けて行く。 その時、茂み音がタイニーの耳に響いた刹那、クレムリン軍団の多数のワニ達が現れ、タイニーを囲んだ。 「もう! 急いでるのに……っ!」 怒りの余りその場で腕を上へ上げては振り下ろす。だが、そんな事を言っている場合では無いと気持ちを切り替え、フェザー・ボウガンを構えた。 「そこをどきなさい!」 「どけと言われて素直にハイ、そうですかと言う俺達だと思うか?」 タイニーを囲んでいる敵はかなりの数だ。それは男性のコングさえある程度退けられるかも分からぬ程故、たった一匹の少女が何とか出来るレベルでは無かった。 「く……っ」 しかし今の彼女は、やれるだけやらねばならないと、そう決心するしか無かった。 「やっちまえ!」 敵の言葉を合図に、クレムリン軍団はタイニーへ向かい一斉に飛びかかった。 その時タイニーは、ある光景に思わず見開いた。目の前へ襲い来るワニ達を一気に払った、巨大な手が横切ったのである。それを見て、タイニーだけで無く、他のワニ達も驚き、慌てふためいていた。尤も、タイニーの驚きはそれだけでは無かった。 「間に合ったみたいだな。タイニー、怪我は無いか?」 「ジャック!」 その巨大な手の持ち主は、ジャックだったのである。 「あー! 貴様は、確かスクラップにされた筈じゃあ……!」 「煩いなぁ」 そう零したジャックが再び手を振り払えば、またもや多数のワニ達が一斉に吹き飛ぶ。 「くっ! 何故貴様が……し、しかも、このコングの味方にぃ!?」 色々と動揺しているクレムリン軍団は次々と驚きの声を上げた。 「俺はクルールの奴に捨てられたんだ。そこからは、俺が何しようと勝手だろ」 「お、己ぇ……っ! 覚えてろ!」 適わないと判断したか、捨て台詞を吐いた後は全員その場から逃げ去って行った。 「有難う、ジャック。それで、あの……」 タイニーは、あの時の事を謝ろうと口を開こうとしたが、 「お喋りしてる暇は無いぜ。その様子だと、タイニーも気付いたみたいだな。なら、一刻も早く仲間に知らせるべきだろ?」 ジャックも彼女に対し何かを察したか、罰が悪そうな表情をし、そう言いながらタイニーを優しく手に持つと、自分の箱にそっと入れた。タイニーは少し驚いたが、彼の言う通りだと、真剣な表情で頷いた。 「確りつかまってろ」 そしてジャック自身も箱の中に入ると、大きくジャンプをしながら、マリオ達のもとへと向かった。 ──to be continued── |