針を守れ!








 時間は遡り、ここは階段を下りた少し先の場所。
 地下へ行くメンバーは、リュカ、クラウス、フォックス、カービィ、サムス、スネーク、C.ファルコン、メタナイト、マーシスである。
 地下は薄暗く肌寒い。奥は黒と言う名の闇が塗り潰され、先が全く見えない。そんな不気味な地下を歩く度、固い床を鳴らす彼らの足音が遠くまで反響していく。

「地下ってさ、お化けとかがより出てきそうだよね?」

 フォックスの頭の上に乗っているカービィは、誰に言う訳でもないが、誰かからの返事待ちのつもりで、普通より少し大きめのボリュームで言葉を発した。

「確かにここが本当のお化け屋敷だったら、出現率は高いだろうな」

 フォックスはカービィに向けて目線を少し上げ、返事をしてやった。
 その話は無論、信じている訳ではない。いや、先程までお化けのいる気配はフォックスにも確かにあったが、地下へ来た途端、その気配は完全に無くなったのだ。その証拠に、

「この地下には、お化けや幽霊が現れる心配はないな」

 ヘルメットに取り付けているコンピューターがそれを教えたのだ。フォックスはそのコンピューターでこの地下を調べながら、現実的なことを語った。

「えー?」

 カービィは、なぜか至極ガッカリしていた。お化けが現れることに期待していたのか。

「でも、幽霊のことより……」

 リュカは落ち着き無く辺りを見回している。先程よりも警戒心を強めている様子だ。

「もっと恐ろしい気配を感じるんだよなぁ」

 クラウスも同様、油断も隙も作ってはならないと感じている様だ。指先から少しだけ魔力を溢れ出させている。

「ああ。とにかく、針の元へ到着するまで、油断してはならぬ」

 マントで身を包んだ状態で歩いているメタナイトだが、彼もまた、警戒心を高めた状態だ。
 それに続くかの様に、このグループは皆、幽霊とは違った、悪い意味での気配を感じ始めていた。遠くにいるが、まるで近い。その様にも感じていた。
 クラウスは、そんなリュカ達を、気付かれない程度に見ていた。

「わわぁ!?」

 カービィが驚きの声を上げた。カービィだけでなく、ここにいる全員が驚いていた。
 何か遠くから轟音の様な音が響いた気がした直後、彼らの近くで巨大な爆発音がし、それと同時に物凄い振動が彼らを襲った。

「な、何が起こった!?」

 C・ファルコンは、天井を見上げながら声を上げた。
 その天井にヒビが入ったと思いきや、徐々にそれが嫌な割れ音と共に広がってゆくのか全員の目に映った。

「走れ!!」

 スネークの咄嗟の声を合図に、全員が反射的に駆けだした。
 その直後、天井がヒビを始めに崩れ落ちて来た。彼等の後を追うかの如く、どんどん崩れて行く。
 だが天井が全て落ちた訳でなく、やがて止まったのだ。音が静まって来たのに気付いた全員は走るのをやめた。

「な、何が起こったんだろっ?」

 リュカは、先程通って来た道が壁と化してしまった瓦礫を見つめた。

「何者かの襲撃かも知れん」

 マーシスが言った。

「急な爆発音がしたのだ。事故でないことはまず間違いない」
「マリオ達は無事だろうか」

 サムスのその言葉を聞き、フォックスは咄嗟にマリオに連絡を入れる。ここは地下だが、フォックス達の技術に寄れば、電波など簡単に届くのである。

『フォックスか?』

 連絡を入れてから、直ぐにマリオからの返事が返って来た。

『フォックス、大丈夫か!』
「大丈夫って言ったら嘘かもな……」

 大丈夫なのは大丈夫なのだが、変わらずあちこちで爆音が響く。下手すればいつ巻き込まれるかも解らない現状なのだ。

『まさか怪我した人が!?』
「それについては心配は要らない──そっちはどうだっ」
『今壁がドカーンってなった所だよ。怪我人は……幽霊に何人かいるかもだけど……』
「幽霊? やっぱり本当にいたんだ!」

 カービィはビックリしたと同時にはしゃいでもいた。だが、今のフォックス達には、カービィに構う程の余裕は無い。

『そんなことよりこれは一体!』

 マリオ達にも余裕は無いらしい。どちらのチームもピンチになりかけている様だ。
 熱血なリーダーだからこそ、サブリーダーのフォックスは冷静にならなければいけない。

「こっちもさっき天井が爆破した。危うく閉じ込められるとこだったよ。今オソヘ城は、何者かに襲撃されて……っ!?」

 現状を報告し、これからどうするかを伝えようとしたその時、フォックスの様子が変わった。

「どうしたの、フォックスっ?」

 彼の僅かな異変に気付いたリュカが若干慌てて問う。
 フォックスはゆっくりと振り返り、口を開いた。

「通信が途絶えた」
「えっ!」
「地下にいてもどの場所にいようと、俺達の使う通信電波は途絶えることはないんだが……」
「……何者かが妨害したのかも知れないな」

 スネークは顎を軽く撫でながら言った。

「マリオ達のことなら、きっと大丈夫だ」

 C・ファルコンは前に出るとそう言った。

「俺達は、今俺達にやれることをやるべきだ」
「……そうだな。針を見つけては守り抜いて──そしてマリオ達と合流だ!」
「フォックス……皆……」
「……」

 彼らの意思に、リュカは心の底から嬉しさが込み上がっていた。そんな弟を、クラウスは静かに見守る。

「今はここにいたら危険だ」

 サムスは武器を両手で構えながら言った。

「この地下を先ずは脱けよう」
「よし、行こう!」

 フォックスが言ったと同時にまたもや大きな爆発音が響いた。この地下はいつ崩れるか解らない。フォックス達は駆け足で急いだ。
 暫く走っていると、奥から光が見えて来た。

「あそこから風を感じる……出口だ!」

 彼らは、地下から外へと出ることが出来た。
 そして、城の広々とした中庭に出た。

「……あ! あれじゃない?」

 フォックスの頭の上にいるカービィが、中庭の中心に手を向け声を上げた。
 そこには、光り輝く大きな針が、深く深く、地面に突き刺さっていた。長年そのままだったか、僅かにツタが絡まっている。

「確かに、これは針だね……」

 クラウスは呟く様に言いながら針に近付いた。彼に続いて、リュカやフォックス達も針へと向かう。

「不思議な針だな」

 マーシスは針をジッと見詰めた。

「なにか……強大な力を感じる……それを封じ込めているのが、この針なのだろうな」
「確か、『針を守れ』と言われたんだったな。だとすれば、相当重要なものなのだろう」

 C・ファルコンは言った。

「その任務が──そろそろ来る頃だ」

 何か殺気を感じたスネークがそう言った直後、城からブタマスク隊がぞろぞろと現れた。そして、あっと言う間にリュカ達を取り囲んだ。

「わわっ。豚さんがいっぱい来たっ」

 カービィは手を頭に掲げながら彼らを見回した。

「ヌヘヘヘ、遂に針を見つけたぞ」

 ブタマスク隊の中から変な笑い声がした。ブタマスク達が、そんな彼の為に道を作る。
 現れたのは、立派な黒髭を持った、ブタマスクと同じ位に肥満体な男である。

「お前がコイツらのリーダーかっ?」

 フォックスはブラスターを片手に構え、彼を睨み付けながら訊ねた。

「偉大なるヨクバ様に向けて武器を向けるとは、その勇気だけは誉めよう。但しそれだけ! その針をこちらへ譲って貰おう。さもないと今すぐここでけちょんけちょんにしてやるぞっ」
「針は渡さないっ」

 リュカとクラウスが針の前に来る。他のメンバー達も、それぞれ技や武器を構えた。

「渡さないのならば、力尽く!」
「ブヒー!」

 ヨクバが振り上げた腕を合図に、ブタマスク達は光線銃を両手に持つと、リュカ達に向けて構えた。

「こ、こんなに大勢と戦うのっ?」

 カービィはあわあわしながら見回した。

「だけど、やるしかないっ」

 フォックスも彼らを睨みながら言った。

「来るぞ!」

 ギャラクシアを構えたメタナイトが声を上げた。ブタマスク達が襲って来たのだ。
 それぞれの武器や技を駆使しては、ひたすらブタマスク達を倒して行くフォックス達。だがブタマスクの数が半端無く、キリが無い。それでも、彼らは諦めずに戦う。

「この針がどう言うものかは解らないけど……でも……」

 リュカは言った。

「悪い奴らに渡す訳にはいかないんだ!」
「その通りだ、リュカ!」

 その時、フォックス達とは別の場所から声がした。フォックス達だけで無く、ブタマスクらも、声のする方向へ一斉に振り返った。

「何を企んでるか解らない奴らに、自由にさせちゃいけない!」

 声のする方の先は城の内部へと続く廊な為に真っ暗だったが、その中からブタマスクの一人が、ゆっくりと現れる。だが少しした後、その場に倒れ込んだ。
 その後ろから現れたのは、マリオ達だった。

「マリオ!!」
「ぐぬぬ……仲間がいたとは……」

 勇ましい登場の仕方をしたが、よく見れば、マリオ達はなぜかずぶ濡れ状態だった。

「ところで、何でマリオ達はずぶ濡れなんだ?」

 フォックスはマリオ達に指を差して訊ねた。

「いやぁ、話せばちょっと長くなるんだけど……」

 それを聞いたマリオは頭を掻き苦笑いをした。だがその間、ブタマスク達はマリオ達に襲い掛かった。
 ブタマスクのパンチが繰り出されるが、マリオはそれを難無く避け、足を思い切り引っかけては転倒させた。ブタマスクは地面に頭を打ち、気を失った。

「僕達、タマゴの為に上の階へ行ったんだけど……」
「ああ。それで?」

 フォックス達も、攻撃して来るブタマスクの相手をしながら、マリオの話を聞いていた。

「どうやらタマゴのある場所には、万が一の為に仕掛けがされていたらしくて」
「マリオさん、『どうやら』じゃなく、本当の話でしょうっ」

 ブタマスクに向け盾アタックをしながら、リンクは背中を向けた儘訂正した。

「ありゃ、そうだったなっ」

 リンクに振り返り頭を掻いて見せるマリオを、後ろからブタマスクが襲うが、マリオは素早く屈み、ミドルキックをお見舞いした。

「まぁそんで……」

 そして話を続ける。




「うわわああぁ!」

 タマゴをゲットし、罠である大穴から真っ逆様に落ちて行くマリオ達。先程爆発に寄って崩れた床の穴を通り、その儘地下へと落ちて行く。
 そして、巨大な水しぶきを上げながら、何かに着水した。

「あちちっ! な、何だぁ?」

 マリオはびっくりしながら、そこから顔を出した。

「……どうやら、偶然にも浴場まで落ちた様ですね」

 リンクは周りの状況を冷静に判断しながら言った。
 そう話している間、ピカチュウやプリンが、呑気に浸かっていた。

「……タマゴも無事だし、とにかく、助かったな」

 クマトラはホッと一安心した後に表情を引き締め、そこからザバッと音を立てて立ち上がった。

「よし、フォックス達と合流しよう! さっき何かがあったかも知れないけど、今も彼らの気配があるから」
「本当か! 良かったぁ……」

 マリオ達もそれを聞いてホッとし、次々と立ち上がった。ピカチュウとプリンはまだお湯に浸かっていたが、ファルコのそれぞれの片手に引っ張り上げられた。

「よし、行こう!」




「──と、言う訳だっ」

 マリオはそう話しながら、二人のブタマスクの頭部を掴み、お互いの顔と顔をぶつけ合わせては気絶させた。

「なるほどな、よーく解ったよ」

 フォックスはニッと笑んだ。それは、安心仕切った表情なのだろう。

「うぬぬぬ……余裕で戦いやがって……!」

 悔やみに悔やむヨクバは、歯軋りをしながらマリオ達を睨み上げていた。

「コイツで捻り潰してくれるわ!」

 そして、彼が片手を横に回した時、彼の後ろの影から、ゆっくりと現れる者が。

「っ?」
「わぁ、何あれ!?」
「でかいな」

 マリオ達は一旦戦いを中断させると、現れた者を見てそう言った。その者は粘土で出来ており、歩く度に地面を揺るがした。

「ヌヘヘヘ! ネンドじん! 奴らをぺちゃんこにしろ!」

 ヨクバがマリオ達に指を突き付けながら命令を下すと、ネンドじんと呼ばれた怪物は、地面を更に揺るがせながら、マリオ達に襲いかかった。

「うわわ!」

 マリオ達はネンドじんのパンチを素早く避ける。

「このっ……!」

 リンクは剣でネンドじんの腕を狙う。腕は粘土らしい断面を残し、あっさりと斬り落とせたが、

「ぐっ!?」

 もう片手の素速いパンチを避け切れず、喰らってしまう。

「プリリリリ!」

 プリンも『おうふくビンタ』を仕掛けたが、相手は平然としており、

「プリ!?」

 プリンをでかい片手で掴むと、後ろへ放り投げてしまった。

「つ、強い……」

 リュカは僅かに後退りをしてしまった。

「だが、腕が切り落とされた儘だ。コイツは使い捨ての兵器と言って良い」

 スネークは冷静に観察をしていたらしい。リュカの隣へ来ると、そう説明した。

「使い捨て……好きじゃない言葉……」

 リュカは少しだけ顔を歪めた。そんな彼を見たメタナイトが口を開く。

「……コイツは粘土細工に過ぎない。ただ動かされているだけだ。時には心を鬼にしなければ、戦士の資格など無いぞ、リュカッ」
「! 解ってる……!」

 リュカはその言葉にぐっと突かれたが、彼の言う通りだと、表情を引き締めた。
 そして、指先から魔法の光を零す。

「何をごちゃごちゃと話している。もしや諦めるのか?」

 ヨクバは腕を組み、余裕の笑みを描いた。

「今更降伏したって遅いがなっ。ネンドじん! 行けぇい!」

 ネンドじんは拳を構え、リュカ目掛けパンチを喰らわそうとした。

「!」
「リュカ!」

 油断した為に思わず顔を腕で覆ったが、ネスの声がしたと思い、顔を上げれば、そこで見たのは、パンチを跳ね返されたネンドじんと、リュカの前にいる彼だ。

「! ネスっ!」
「躊躇ったらやられちゃうよ。心を鬼にして戦わなきゃ!」
「ネス……」
「……」

 マリオやフォックスは、ネスを見て思った。彼は強くなったんだな、と。

「ムオォン……」

 ネンドじんは、ゆっくりと立ち上がり、ネスを見ながら拳を繰り出そうとして来た。

「ふっ!」
「わ!」

 ネスはリュカを押し退け、距離を離させた後、彼もPSIの力を使っては浮遊した。彼等のいた地面に、ネンドじんの拳がめり込む。

「PKフリーズα!」

 ネスは声を上げ、PKフリーズで攻撃をした。

「ムオォ……」

 見事に命中し、ネンドじんが一瞬怯んだ。だが直ぐに体勢を立て直し、

「ムオォン」
「わわっ」

 何と今度は体を使って倒れ込んで来ようとしていた。ネスは見開き、素早く後退してはギリギリ避けた。

「ム……」

 ネンドじんは暫くしても、中々起き上がる気配を見せない。

「……あら?」

 ネス達の戦いを見守っていたマリオは、時間が止まったかの様な空間を感じた。

「だぁー! その技はやるなと言っただろうがぁー!」

 ヨクバは頭を抱えた。
 そう、ネンドじんは倒れた儘、自分の重みが災いし、起き上がることが出来なくなってしまったのである。

「……あっ」

 ネスやリュカ達もポカーンとしてしまったが、先にハッとしたのはネスで、

「PKキアイα!」
「ムオオォォ……」

 その場で必殺技を繰り出し、ネンドじんを倒したのであった。ネンドじんはやられると形が崩れて行き、普通の粘土へとなった。

「いやああー! ネンドじんがあぁ!」

 ヨクバはやられたネンドじんを見ては頭を抱えながら、まるで女性の様な悲鳴を上げた。

「ぐうぅ……この役立たずめ!!」

 粘土の塊を、罵声を放ちながら蹴り飛ばす。

「こうなったらお前達全員ドカーンだ!」
「! ネス、危ない!」
「!」

 リュカは危機を即察知し、ネスの前に即座に立った。そして──あるPSIを発動した。

「PKLOVEα!!」
「うわあぁ!?」

 爆弾を準備していたヨクバは、リュカの技に呆気なく吹っ飛ばされた。

「リュカ、やるじゃんっ」
「へへ……」

 ネスが微笑むと、リュカは彼に振り向いては頭に手を置き、照れ臭く笑った。

「な、何て強いんだ……」
「俺達じゃ敵いっこない!」
「に、逃げろぉ!」
「あ! どこへ行く! 逃げるな!」

 ヨロヨロと立ち上がるヨクバが止めるのも聞かず、ブタマスクらは豚の様な声を上げながら一目散に撤退してしまった。ただ手を伸ばした状態のヨクバがそこで佇み、そこに乾いた風が吹く。
 少ししてから、舌打ちしながら振り返り、マリオ達を指差し、言い放った。

「お、覚えておれよ! そして後悔させてやる! いずれこの島の平穏は終わりを迎える運命なのだ! 今の内の勝利に喜んでいるが良い! ヌヘ、ヌヘヘヘヘ!」
「……あ」

 マリオ達は何故か、ヨクバから少し目線をずらしていた。まるでそこに誰かがいると言う様に。
 ヨクバも気になり、振り返ってみると、

「グアオオオォ!!」

 そこにいたのは、先程リュカ達をここまで運びに来た、ドラゴであった。

「……あ。や、やめて……ら、乱暴は……」

 ブタマスク達が撤退した為、ここにいるのはヨクバのみ。ヨクバが一歩退きながらそう言ったが、

「グアァ!」
「イヤアアア!」

 口でヨクバの服を掴むと、思い切り振り上げては空の彼方へと吹っ飛ばし、ヨクバは空の向こうへと消えて行った。

「やったー!」
「ありがとう、ドラゴ!」

 マリオ達は勝利に喜び、リュカはドラゴに駆け寄り、大きな顔に抱き付いた。

「これで、針は守られたな」

 クマトラは、地面に深々と刺さっている針を見ながら言った。










 ──to be continued──