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悲しき破壊兵器 自らの夢の中で、誰かに呼ばれている気がした。その声は、耳の中へ入り込んでいる訳ではなく、脳内へ直接送り込まれているかの様だった。そしてそれは、まるで自分の声に近い──否、自分の声そのものだ。 上下左右見渡しても周り全てが闇に包まれている空間。その中心で一人佇むネスにその声が聞こえた瞬間、空間が揺れ動いた。変化した空間を目の当たりにすれば、ネスは見覚えのある恐ろしい場所に鳥肌を立たさずにはいられなかった。 ネスの世界で起こった、ギーグとの決戦の時の空間と似ていたのだ。赤と黒の絵の具が、筆で混ざることなくゆっくりと掻き回されているかの様な光景。そこに立つだけで、周りから無数の殺気に包まれかの様な恐怖を抱く。 この空間に変わる直前に聞こえたあの声。自分と同じ声だが、まるで助けを求めているかの様だった。あの声は自分自身なのだろうか? それとも……。 先ずは声の主を探さなければ。恐らく、この空間のどこかにいるのかも知れないと、ネスは怯えている場合ではないと心に言い聞かせ、一歩一歩足を進めて行った。 歩いても歩いても同じ光景。長くいたら気がおかしくなりそうだが、何としてでも自分を呼ぶ者を見つけなければならないと、ネスは使命感を背に諦めずに歩き続けた。 どれ位歩いたか解らないが、ネスは歩きながらこの空間を眺めていて、ふと、ギーグとの戦いのを思い出していた。ギーグの暴走を止める為に戦った仲間達、親友と思っていたポーキーがそこにいたこと。 (ポーキー、君は今どこに……) そして──ギーグと共に消滅したあの子……。 「!」 それを思い出してから、ネスはハッと気付いた。自分に助けを求めていた声、その声はもしや……。 ──タスケテ……。 そう思った瞬間、ネスの脳内へ再びあの声が聞こえた。この声は自分自身ではない。間違いない、彼は死んではいなかったのだと。ネスは一時的に安心感を抱いたが、彼は助けを求めている。故に、苦しんでいるのだろうと思えば、今の気持ちに浸っている場合ではないと、ネスは真剣な表情を作り、何もない赤黒い世界で、その子へ声が届く様祈りつつ声を放つ。 「僕が、助けるから。今は苦しいだろうけれど、必ず君を救い出すから、待ってて!」 そして再び空間が歪み出し、ネスの意識が、やがて夢から現実へと引き戻されていった。 瞼を開くと、宿の天井が目に映った。まだ暗く、周りからは、他のスマブラメンバー達の寝息や鼾が聞こえる。 「必ず、助けるからね……」 ネスは、スチュワートから貰った、赤い液体入りの小瓶を取り出すと、それを見詰めながら静かに言葉を放った。 タツマイリ村に朝が訪れた頃。 「……ん? 何だか皆の様子がおかしいな」 「ピカ?」 宿から出、朝の空気を吸い込みながら思い切り背伸びをした後、マリオと、マリオの肩にいるピカチュウは、外にいる村の人達の様子に軽く眉根を寄せた。焦りと不安の空気からして、どう見ても良い予感がこれっぽっちも無い。マリオとピカチュウは一度顔を見合わせた後、集まっている場所へ向かった。 後から出てきたスマブラの者達も、村の様子に気付けばマリオ達に続いた。そこには、マーシスとメタナイトもいた。 「リュカ、この騒ぎは一体なんなんだ?」 その騒ぎの中には、リュカ、クラウス、クマトラ、そしてダスターもいた。 リュカは不安げな表情を乗せたまま、マリオに振り返り口を開く。 「ドラゴが、どこにもいなくなっちゃったんだよっ」 「え、ドラゴが?」 「急に一匹もいなくなったんだ。ドラゴには元々そんな習慣は無かったと思うし、何かがおかしいとしか思えない」 クマトラは顎に指を当て、考える仕草をしながら呟いた。 「何かの前触れじゃなけりゃ良いんだがよ」 ファルコは頭を掻きながら軽く溜め息を吐いた。 「余り言いたくないですが、宝玉の欠片がこの世界のどこかにある以上、危険は避けられないかも知れません」 周りの村人達に聞こえて不安を煽らせぬ様、リンクは小声で言った。 「でも、お世話になったこのタツマイリ村の人達を巻き込む訳にはいきません」 「ああ。万が一何かがあっても、何としてでもこの村は守らなきゃね」 マリオはリンクに頷いた。 「分ってましゅよ! 皆優しいでしゅし、素敵な村でしゅし!」 「この村の食べ物すっごい美味しいし、それが食べられなくなっちゃったら嫌だよー!」 ファルコの肩にいるプリン、フォックスの肩にいるカービィがそれぞれ声を上げて言ってしまう。口に人差し指を当てたそれぞれのスターフォックス組からシーッと言われてしまった。だが幸いと言うべきか、周りの村人達はドラゴに対する心配ばかりしており、マリオ達の言葉は聞こえていなかった様だ。 「皆さん、この村を気に入ってくれて、本当にありがとう」 この村の者であるリュカ達が、皆の代わりに笑顔で感謝の言葉を述べた。 「さあ、ドラゴの行方を捜さなくてはな」 ダスターは言った。 「探すったってどこへ。この島の一周旅行でもするのか?」 腕を組んでいるスネークは肩を竦めた。 「それだとかなり時間が掛かっちゃうね。僕のテレポートも、一度行った場所じゃないと出来ないし……」 ネスは自分の掌を見ながら、残念そうな顔を乗せて息を吐いた。 それに、マリオ達はギガ軍より先に宝玉の欠片を見つけ出さなければならない。ドラゴの行方を追うか、欠片の行方を追うか、マリオ達にとっては悩まざるを得ない選択肢となってしまった。 だがそんな時、村に大きな揺れが襲った。 「うわ! な、なんだ!?」 突然の大きな揺れに、マリオ達は危うく倒れそうになったが、何とか踏ん張った。その揺れは二、三秒程だったが、マリオ達を始め、村全体が更なる騒ぎに包まれた。 「ピッチュー!」 ピチューはとある方向を見ると驚愕の表情になり、マリオ達にも見て貰う様に大きな声を上げてはその方角を指差した。ピチューが指し示した先には森があった。その森が一度揺れる度に木が倒れていく様に見える。どちらかと言えば、マリオ達から見れば、何者かに薙ぎ倒されてるかに見えた。 「森に何かがいるんだ!」 「あ、クラウス、待ってよ!」 クラウスが森の様子を見ると森へ向かって走り出した。リュカは危険かも知れないと止めようとしたが、既にクラウスは遠くへ行ってしまっていた。それでも止めに行こうとリュカも走り出す。 「あ、リュカ!」 マリオ達は、双子が走って行ってしまったことに驚いてしまった。 そこでマーシスが、森を見ながらマリオの横に現れる。 「マリオ殿、森から邪悪な気配がする。絶対にこの村へは入れさせてはならぬ程の異様な気配だ」 「何だって? 解った。僕とマーシスも行こう。他の皆はこの村にいてくれ。いつ敵が襲ってくるかも解らないからな」 「解りました。気を付けて!」 クマトラ達や他のスマブラに見送られ、マリオとマーシスはリュカ達を追う様に森へと駆けて行った。 「……」 メタナイトは、マリオら二人の背中を見ながら、昨夜のことを考え始めた。 (ブタマスク達は我々三人で退かせたが……まさかその間に何かが……) 森の中に入った途端、まだ朝日が昇っている時間なのにも関わらず、辺りは大分薄暗くなった。おまけに地面がデコボコしており、安定していない。辺りを見れば崖も存在しているらしく、警戒しつつ進まないと、気付けば転落してしまうかも知れないとかなり危険である。 「リュカ! クラウス! どこだ!」 戦士でありながらもまだ子供であるリュカと、その双子の兄であるクラウスは、この島の人物であろうともあの様子だ。何事も無ければと祈りつつ、マリオは二人の名前を呼びながら、マーシスに気配のする方向を教わりつつ走った。 暫くすると、遠くで叫び声が聞こえ、マリオ達は走りながら見開いた。 「な、なんだ、今の声!?」 「少なくとも、リュカ殿達の声ではないが……」 少年の声ではない為、双子の声ではないことは確かだが、今のは何者も近付けさせない程の咆哮である。騒ぎの原因と繋がりがあるかも知れないとマリオ達は睨んだ。 「──っ!?」 その声の主を目の前にした途端、マリオ達は思わず立ち尽くしてしまった。マリオ達の前にいるのは、暫く戦っていたのか、多少の汚れや傷が目立っている双子。 そして、顔や片足等、所々が機械となっている──ドラゴがいた。 「ド、ドラゴ!? どうして……!」 リュカやクラウスと仲良くしていたあの温厚で勇敢な恐竜が、これ程までに凶暴化していた事に驚かざるを得なかった。不完全ながらも機械化されている姿を見れば、ドラゴは何者かに寄って改造されてしまったのだろうか。 「ドラゴ、どうしちゃったんだよ……っ」 クラウスはドラゴを睨み上げながら、悲しみと怒りの篭った声色で言った。 「ドラゴ……」 リュカはクラウスに比べかなり傷付き、跪きながら相手を見上げた。 ドラゴがこんな姿になってしまったこと、そして、仲良く遊んでたあの頃を思い出す度にそれが涙と変わり、ドラゴに寄って傷ついた頬を伝って行く。 「ギシャアアア!!」 改造されたドラゴが叫びを上げると、口の中から大砲が現れ、光が集まってはそれがリュカ達に向けられる。そしてドラゴの口から巨大な光線が放たれ、爆発が起こった。爆風が辺りの木々を大きく傾ける。やがて爆風がおさまり、暫く出ていた煙も消え、光線が当たった地面が現れる。だがそこには誰もおらず、ドラゴは獲物の確認をしようと辺りを見回す。 「ドラゴ、一体どうしたんだ!」 声がした方向へ振り返ると、少し離れた所で、マリオはリュカを、マーシスはクラウスを抱きしめて片膝を付いていた。間一髪の所で、二人は彼等を光線から離れさせ、何とか守り抜いたのだ。 「何でそんな姿になっちまったんだよ! 何があったんだよ!」 「グアアアア!」 機械と化しているドラゴは聞く耳を持たず、マリオ達に牙を剥いて襲い掛かる。マリオは悲しくなるも舌打ちし、リュカ達と共に相手の牙攻撃を回避した。 「くそっ……何とかならないのか……?」 「ドラゴ!」 「待て、リュカ殿! 迂闊に近付いてはならぬ!」 リュカはドラゴの元へ後先考えず向かい、マーシスの声も聞かないまま相手の目の前で立ったのだ。 「僕だよ、リュカだよ! ずっと前から一緒に遊んでくれたよね? お願い、そんな機械に負けないで、思い出してよ、ドラゴ……!」 相手の心を読む力があるリュカだが、ドラゴに対してその言葉を発していると言うことは、相手の心は無いと言っても過言ではないのかも知れない。だが、相手を倒すべきかと考えればマリオ達は躊躇してしまい、しかしこの儘では、自分以外の者達も危険な目に遭ってしまう可能性が高いとも思えば、どうしたら良いのかと悩んでしまうばかりである。今はリュカの気持ちに懸けるしかないが……、 「ギャオオオオ!」 「! うわああ!?」 リュカの必死の呼び掛けもドラゴの心を空しくすり抜けて行ってしまい、ドラゴが涎を垂らしながらリュカへ襲い掛かった。 だがその時、リュカの目の前に別の人物が立っていた。その人物はドラゴの攻撃を容易く受けてしまい、そしてリュカと同じ位の大きさの影が吹き飛ばされ、近くの崖から飛び出した。 「うわああぁぁ……!!」 崖から落ちて行った少年の、断末魔の叫びが響き渡り、それはやがて闇の底へと消えていった。 リュカ達は、一体何が起こったのか、一瞬だけ思考停止をしてしまったが、次第に現状を理解していった。クラウスはリュカを庇い、リュカの代わりにドラゴに吹き飛ばされ、崖下へ落とされてしまったのである。 「……ク……ラウ、ス……?」 兄を失った瞬間を見てしまい、その場で力無く地面へ座り込んでしまったリュカ。目の前にドラゴがいるのにも関わらず呆然としてしまい、項垂れてしまった。 それに構わず、今度こそはとドラゴがリュカへ近付いていく。それを見ると、マリオの堪忍袋の緒が遂に音を立てて切れた。 「……ドラゴ! てんめええええ……!!」 「マリオ殿!」 後先構わずマリオはドラゴへ殴り掛かった。ドラゴがこちらを振り向いた瞬間、マリオの拳が頬へ減り込み、吹き飛ばされる。マリオは休まずドラゴに攻撃を仕掛け、それと共に、仲間をやられた怒りを何度も相手へぶつけていく。 「ギャウウ……」 「よくもクラウスを! 許さないぞっ……!!」 大分弱ってしまったドラゴに対しマリオは止めをさそうと、炎を纏った怒りの拳を構えた。 「ぐっ!?」 その時、マリオの体は横からの強い衝撃を受けた。予想外の事態に体勢を立て直す余裕も無く、マリオは横へと倒れてしまう。 「ぎゃおー!」 「!」 マリオの傍まで駆け寄ってきたマーシス。 そこで見たのは、ドラゴの子供である。大きなドラゴを守る為に、マリオを突き飛ばしたのはこの子だと解った。 ドラゴの子供は、マリオ達を見て一度吠えた後、既に虫の息である大きなドラゴへ歩き、傷の部分を舐め始めた。その必死な行動からして、その子供の親なのであろう、治って欲しいと言う懇願さを感じた。 「! ドラゴの子供が……」 マリオは僅かな痛みに顔を僅かに歪ませながらも、ドラゴの子供を見れば、怒りを忘れ、ハッと我に返った。仲間をやられた怒りがマリオの心を支配し、ドラゴを酷く傷付けてしまった。人間が大好きで、温厚であり、自分達を助けてくれたドラゴを……。 既に瀕死の状態であるドラゴ。子供と言う大切な宝物が傍にいる為か、一時だけ正気に戻ると、一筋の涙を零しながら、静かに目を綴じたのだった。 「ぎゃうー! ぎゃおー!」 ドラゴの子供は、もう動くことのない親を見て、何度も鳴き声を上げた。泣き喚いているかの様に、悲しみが滲み出る程に鳴き続けた。 その傍で、周りの音が聞こえていないのか、ずっと項垂れ続けているリュカの姿があった。 あまりにも悲哀な光景に、マリオは体を震わせ、握り拳を地面にぶつけ始める。 「くそ、くっそ……なんで、こんな事になっちゃったんだよ……っ」 「マリオ殿……」 「くっそおおぉぉ!!」 マリオの声は暗い森中に響き渡り、そして消えていった。 マリオ達の話に寄り、タツマイリ村に更なる不穏な空気が訪れた。そしてドラゴやクラウス達に降りかかった悲劇に、悲しまない者は誰一人としていなかった。 「ドラゴが機械にされてたなんて、一体どうして……」 「チャー……」 カービィが悲しい目になりながら呟くと、ピカチュウ達も耳を垂らしながら落ち込んだ。 「ドラゴにはすまないことをした……クラウス達を手に掛けたから、思わず……」 「あれは正当防衛だったのだ、マリオ殿。さもなくば、リュカ殿も間違いなく、クラウス殿と同じ運命となっていたであろう……」 マリオは顔を俯かせた儘言い、マーシスはそんな彼に言葉を掛ける。 「……もしかしたら、ブタマスクが関係しているのだろうか」 ダスターは腕を組みながら言った。 「可能性は無いとは言えないな……いずれにせよ、ドラゴをこんな目に遭わせた者達を、許すわけには行かない」 クマトラは悲しみの中に怒りを込めた表情を描いた後、リュカの方へ振り向いた。ダスターも彼女と同じく、彼へ目線を向ける。 「そして、リュカやクラウスのことも……」 「そうだな……」 リュカはネスに抱擁されており、彼の胸元に顔を埋めたまま泣きじゃくっていた。そんな彼を片手で抱き締め、頭を優しく撫でるネス。 ネスは彼を見守りながら、一体何があったのか、心に語りかけていた。無闇に人の心を覗くことはいけないことと承知の上だが、今回は事情を把握したいとネスは思っている。その心が、相手に教えられない程に闇に固く閉じ込められている場合、その心を覗くことは困難だが、今回の出来事は聞く事が出来た。 (え……?) その心から聞いた悲しい出来事以外に、とある言葉に、ネスは僅かに目を丸くした。 そんな彼に構わず、リュカは皺が出来る程にネスの服を握り締め、肩を震わせ泣き続けていた。仲良しだったドラゴが凶暴化し、襲ってきたこと、そして、大事な双子の兄を喪ったこと。立て続けに襲う事態に心を押し潰されそうなのであろう。ネスはそんな彼に、今は何一つ言わず、静かに慰め続けた。 「大変なことになっちゃったわね」 マーシスとメタナイトの傍に突然現れたのは、イオニアである。 「ドラゴが暴走を起こしたのだ。何者かに寄って機械化され……突然の事だった故、止める方法が見つからず、やむを得まい決断を下したのだ……」 「ブタマスクが現れてから、悪い予感がしたのよね……まさかこんなことになるとは思わなかったけれど」 そう呟いた後に瞼をふと綴じ、そして何かに決意すると再び開いた。 「昨日のこと、皆に話するって言ったわよね。お話するから、皆、わたしの家まで集まって頂戴」 「……ああ、解った」 マーシスとメタナイトが返事をしている間に、イオニアは背中を向けると歩き去って行った。そして二人はマリオ達に呼び掛け、皆でイオニア宅へ向かうことになった。 「リュカ、行ける?」 心配そうに問うネスに対し、まだ啜り泣きをしているリュカだが、相手の問いに、涙を零す目を擦りながら首を縦に揺らした。 悲劇が起こったにも関わらず、太陽は相も変わらず、眩い光を放ちながら昇っていく。 だがこれは、これから起こる、避けられぬ戦いの序章に過ぎなかったのだ。 「皆、集まったかしら」 イオニア宅は、中に入ると、淡いピンクが中心となった部屋が待っていた。化粧品に鏡、女らしさ溢れるテーブルにベッド等が置かれ、最初はイオニアらしさがあると思ったが、後に中々の幻想的に思い、スマブラは此処に来ると不思議と心が安らいだ。 「うん。全員部屋にいるよ」 マリオは周りの者達を一瞥した次いでに、この部屋を見回ながら答えた。 スマブラは、部屋の真ん中に置かれている大きなテーブルを囲む様に座り、最後に席に着いたイオニアへ顔を向けた。ネスは彼の傍にいてあげようとリュカの隣に座ったが、リュカはネスを見ては、「大丈夫」と言ってみせた。ネスはそう言われても心配な表情になるが、今は彼の気持ちに応えるべく、微笑んで頷いた。 「さあ、イオニア、話してくれるか?」 マリオは余所見する事無く、イオニアを真っ直ぐに見ながら言った。そしてイオニアは、暫くしてから口を開いた。 「ちょっと待ってね、お化粧直してから話すわ」 そう言うと、どこから取り出したのか、いつの間にか口紅、ひげ剃りをテーブルに出し、手鏡を片手に化粧直しを始めていた。ピリピリした空気が一気に崩れると同時、スマブラもその場でずっこけてしまった。 真昼の下、暗い森の中で永い眠りについたドラゴの元へ、一人の男が立つ。 改造された筈のドラゴの目から零れたのであろう、涙の痕を目に映せば軽く舌打ちし、ドラゴの頭部に軽く蹴りを入れる。 「実験だから仕方ないものの、上手くいかないと腹が立つなぁ」 そこに現れたのはディバである。そして、 「申し訳ありません、ディバ様。今度こそはしっかりと心を無くさせ、完璧な兵器にしてみせます」 ディバの背後へ、組んだ両手をスリスリさせながらヨクバが現れた。 「『あの方』もそれをお望み。楽しめる玩具にするのが我々の役目ですから」 「ヒヒッ、頼りにしてるからね、ヨクバ」 ディバが武器であるナイフを背中の鞘から引き抜き、一振りすると、目の前まで繰り出されたサンダーをナイフで弾き回避した。 全く気配を感じれ無かったヨクバはそれを見て酷く驚き、思わずその場で尻餅をついた。 そんなヨクバには構わず、ディバは、僅かな煙を出すナイフを見ては、鼻で軽く笑う程度に留め、サンダーを出して来た本人に目線を向ける。 「──なるほど、心が不安定になってきてるか。流石は実験台だね」 「……」 その姿は森の暗さに支配され、シルエットでしか映し出されない。だが、ドラゴを庇う様にしてその場に立っているのは確かだった。 「ヒヒッ、まぁ良いや。いずれ君も心は失われ、ただの兵器になる。楽しみに待つことだね」 ディバはナイフをしまうと、崖の上からオソヘ城を見下ろした。そして、スマブラに寄って結界を張られた針の方角へ顔を向けると、ニタリと厭らしい笑みを深く刻んだ。 「この島の下には、島と同じ位に巨大なやみのドラゴンが、『針』に寄って眠らされているの」 ──to be continued── |