Soldier of another space──後編:異次元空間の新戦士── 回廊を、足音立てず速やかに走る。曲がり角では、出る前にその場へしゃがみ、人がいないか確認する。今は人があちこち駆け回っている。恐らく自分を探しているのだろう。 スネークは自分のいた部屋の方角に振り向くと、 「悪いな、お嬢さん。助けてくれたのは恩に切るが、いつまでもここにいる訳にはいかないんだ」 まだ自分は任務中だった。あれからあそこはどうなったろうか。何も分からないまま無理矢理連れてこられたのだから、早くここから脱出しなくてはならない。 そう思って立ち上がろうとした。 「っ! く……!」 身体中に一瞬だけ痛みが走ったが、スネークにとってはかなり響いた。腕の傷がまだ痛む。深いので、まだ完全に回復していないのは分かっているが、そんな事を一々気にしてはいられない。ジッと蹲っていると痛みが少し和らいだので、スネークは改めて立ち上がった。 曲がり角の回廊に人の気配は無い。今の内にと、速やかにそこを通った。 数分が経った。 大分大地の位置まで近付いたと思うが、出口までには一向に辿り着かない。 (まるで迷路だな) 幸い、これまで人には出くわさなかったが、出口が見当たらないのが問題だ。一階まで階段を降りたまでは良かったが、肝心の目的地までどうしても行けない。 代わりに見付けたのは、この城に来てから今まで、スネークが見た中でも最も大きな扉である。中から何やら賑わう様な声が聞こえる。何かの宴だろうか。スネークは気にせず、ここを突破しようと銃を手に構えた。ここに住む者達に助けられた恩は忘れない。だが、用心は不要だと言う考えは無い。 この部屋を抜ければ、出口を見付けられる。根拠は無いが、いちかばちかである。 スネークは扉に背中を当て、片手で取っ手を握った。一度深呼吸をし、扉の向こうへ転がりこんだ。 「うわああーっ!!」 「きゃあ! 助けてー」 「? なっ……」 スネークは目をぱちくりさせた。直ぐ目の前を子供達が(中には奇妙な生き物もいるが)通って行った。いきなり現れた男に驚き、悲鳴を上げてはバラバラに逃げ回る。明らかに遊び半分に見えるが。 そして最終的に子供達が集まったとこは、大きな玉座に座っている王様らしき人物。きっとこの国の長なのだろうが、それでもスネークは銃を下ろそうとしない。子供達は震えながら彼にすがっていた。 「心配は要らぬ」 マスターは彼の銃を指差した。すると、彼の持っている銃が光に包まれた。スネークが驚いている間にその銃は彼の手から離れ、マスターの手元へ渡った。 スネークは次の手を使おうと別の武器を取り出そうとした。すると、マスターは掌を前に出し、それを制した。 「私は、心配は要らぬ、と言った筈だ。そなたを手にかけるつもりは無い」 「……」 スネークはそのまま動かないが、マスターの優しい表情は見ている。観念したか、後ろに装備してある武器から手を離した。 「あ、あれ?」 そこへマリオ達が通りがかった。スネークが王の間にいるだなんて思ってもみなかっただろう、ふと王の間をチラリと覗いただけなのだから。 「何で君がこんな所……」 「スネーク!!」 続いて現れたのはサムスである。 「ス、スネーク?」 「……チッ」 スネークは囲まれたと分かり、静かに舌打ちした。 「勝手に逃げるとは……!」 「ち、一寸サムス! 落ち着いて……!」 マリオは、怒りながらスネークへ歩み寄ろうとするサムスを必死で抑えた。 (サムスが彼に悪意を抱いている?) そんな疑問に眉をひそめた。 「我々はそなたの味方である」 周りを気にせずにマスターは口を開いた。 「なぜ逃げようと考えたのか」 「っ……」 スネークは、グッと噛み締めた。力を抜くと、話し始めた。 「見ず知らずの人等に助けられ、更に面倒も見くれたことには感謝している。だが、俺はいつまでもこの国にいる訳にはいかない。まだ任務が残っているんだ」 「あんなに大怪我してたのは、やっぱ任務中に……?」 マリオが言った。 だがマスターはさっきと変わらず、穏やかな表情をしている。 「先程も申したであろう。心配は要らぬ」 「……どう言う意味だ。ここは未だに胡散臭い世界だからな。信じ難い」 「王様に向かって何と言う口の利き方……!」 「だ、だから落ち着けって、サムス!」 一体、彼女に何があったと言うのだろう。ボク達は彼に会ってまだ間も無いと言うのに。 「サムス、良い」 「王様……」 サムスは、彼の言う通りに従い、一歩下がった。 マスターは彼に顔を向けると、 「そなたは、我々の住む国とは違う国から来たと言うのは分かるな?」 「……ああ」 「そなたは何らかの事故で異空間から飛ばされて来たのだ。その空間を可能な限り調べた結果、時間の流れが違うと言う事が分かったのだ」 「時間……」 「そなたのいた空間はこの空間よりも遥かに時間の流れが遅い。例えばここが約一ヶ月経ったとすると、向こうでは一秒しか経たないのだ」 「!」 スネークだけでは無く、戦士も同じ位に驚いた。 「焦らなくとも良い。無論、そなたが元の世界へ戻れる方法を、今徹底的に調べてる。しかし、情報は未だに曖昧だ。そこで、そなたの協力が必要なのだ」 「……俺の?」 スネークは見開いた。 「そうだね」 マリオはスネークの隣に立ち、彼を見上げた。 「スネークを元の世界へ還したい気持ちは山々なんだ。だから、力を貸してくれないか?」 「……なるほど」 スネークは顎を持った。暫く自分の決意を探る。そして、見付けると顎から手を離し、マリオに微笑んだ。 「還すと確り約束してくれるなら、ここにいよう」 「それなら、ボクらのチームに入らないか?」 「チーム?」 「この王国を守るスマッシュブラザーズに。スネークがいてくれたら、きっと心強いよ」 「私は反対だっ」 「! サムス?」 そこへ唐突に、サムスが強気で割り込んだ。 「私、この人が怖い……」 「……」 木枯らしに凍えるが如く腕を擦る彼女を見て、スネークは密かに口端を吊り上げた。 「サムス、どの道彼はここにいなきゃならないんだよ。サムスだって分かってるだろう?」 「そ、それはそうだが……」 「それに、この人は良い人だって分かるんだよ、ハッキリとね。信じようよ、スネークを」 マリオはサムスに何とか説得した。サムスはリーダーの意見には絶対なのだが、この時初めて反論を持ち出した。それはマリオも知っていて、一瞬戸惑った。 やがてサムスは、納得しないながらも諦めた。一旦スネークを鋭い目付きで睨むと、マリオに頷く。 「一刻も早く彼の世界へ還す様、努力する。心配は要らぬぞ」 それを見ていたマスターはくすりと笑った。 「……はい」 サムスはそっぽを向きながら返事をした。マリオはやれやれと溜め息をついた。 「スネーク、これからも宜しくね」 マリオは笑顔でスネークに手を差し出した。スネークはそれを見た後、自分も手を出し、握手を交わした。 「よろし……っ!」 「あっ! ゴメン、まだ傷が治って無かったね」 「いや、平気だ」 いきなり顔を引き攣らせたスネークにマリオは焦った。そして、顔を見合わせ、微笑み合った。 サムスと子供達以外は笑っていたが、あとの者は少し不安げな表情をしていた。 異次元世界から来たソリッド・スネークは、今日からマリオ率いるスマッシュブラザーズの一員となった。 ──to be continued── |