旅立ちの時 暗黒の重い曇り空から雷鳴が轟く。それは雨の如く降り注ぎ、中心に建つ闇城を怪しく照らし続けていた。 「……ほお、別空間から人間が……」 研究室のカプセルで、まだ未完成であるクローンの生命体を見詰めている、闇組織のボス、ギガは呟いた。カプセルの光にギガの背中は影になり、後ろからでは姿がはっきりしない。 「はい。あの異常気象を調べて直ぐに確認しました」 ザコ敵軍団の団員が男女一人ずつ、ギガの背中に向かって膝を付きながら報告した。 「そんな事は、私も既に知っている」 ギガ達は、別空間の男、スネークがこの世界に現れる以前から、空間を自由に行き来出来る研究を行っていた。まだそれには時間が掛かるが、着々と進んでいるのは確かだ。しかし、その研究を完成させるには、今のギガの手元には無い唯一の品を必要としていた。 「そんな下らない事を報告する位ならば、さっさと例の物を奪いに行って欲しいものだな」 ザコの二人は顔を上げ、見合わせた。例の物とは何なのか、心当たりが無いらしい。 「……雑魚共には伝えてなかった様だな」 わざと自嘲した笑みを浮かべて二人に振り向いた。 「まあ、良くやったと伝えよう。研究が益々捗るだろうからな。 ディバよ、出でよ」 ギガの一言で、彼の側にディバが闇の光と共に現れた。何気に退屈そうな表情をしている。おまけに呑気に欠伸をしていた。 「何だよ、ボス。折角昼寝していたのに叩き起こしやがって」 「嬉しい知らせだぞ。血のご褒美付きの仕事が来た」 その言葉に、さっきまで眠たそうにしていたディバの目の色が変わった。それは本当かと、口端を上げてみせる。それに返事する様に、ギガもフッと笑って見せた。 ディバは精鋭部隊隊長と共にギガの戦友とも言われている。その為か、余程の事で無い限りは、例えギガの依頼でも面倒くさがる。それでもちゃっちゃと片付けてくれるのだが、ギガはそのやり方があまり気に入らず、本来彼へ与える筈の依頼は別の部下に任せる事にした。 彼にとっての『依頼』とは『血』に値する。残忍な性格を持つ彼としては、それは三度の飯より好物だと言う。 「スマッシュ王国へ向かえ」 ギガはディバを見ながら命令を下す。それでも、ディバは溜め息をついていた。 「またあの退屈な国かあ。スマッシュ戦士と戦うのはめんどいな。でも、抹殺ならお安い御用だぜ」 期待する顔付きで鋭い長剣をスラリと引き抜き、刃をいじりながら言った。 「お前に伝える依頼は、マスターに会って貰いたい」 「マスター? あの退屈な国を治めてる人?」 ディバは両手を後ろに回し、目線を上に反らしながら言った。 「用があるのはあいつでは無い。マスターの杖にある、光る宝玉を見た事があるか?」 ディバは頬をポリポリ掻く。暫くすると、ああ、と返事をした。 「虹色に光るあれか」 「あれを持って来て貰おう。王は殺しても構わん。その方が好都合だ」 「言われなくても分かってるよ。だってそれがご褒美なんだろ? それに、今日は向こうは休戦日らしいぜ」 ディバはクスリと笑んだ。ギガもニヤッと笑んで見せる。 「期待しているぞ、隊長殿」 「はいよ」 ディバは取り合えず敬礼をした後、自分の力から出した闇の光に包まれ、研究所から消え去った。 ギガのアジトの天候とは正反対に、スマッシュ王国は平和な快晴である。 今日はスマッシュ戦士は休戦日で、王は特別に各自の世界へ戻る許可を与えた。無論、この世界に残っても構わない。因みに今城に残っている戦士は、マリオ、リンク、ピカチュウ、カービィ、マルス、ロイ、そしてスネークだ。その他の戦士は、それぞれの故郷へ戻っている。 国には結界が張られているが、かなり強力な魔力を使う為、一日しかもたない上、その力が元に戻るのは沢山の時間がいた。スマッシュ戦士がいない間は、この結界が代わりに国を守るのだ。 城のとある部屋で、スネークが窓から青空を眺めていた。 「スネーク、入るよ」 言葉と共に扉のノック音が響いた。そして、スネークは低い声で「ああ」とだけで返事した。入ってきたのはマリオである。 「この世界には大分慣れた?」 マリオは話しながらスネークの隣に立った。 「……大分とは言えないが、少しはな」 スネークは空を見上げながら言った。まだ不安がっているんだとマリオは思った。 (仕方無いよね……) スネークたちの世界から突然この空間が連れてきたんだ。慣れる事何て中々出来ないだろうな。自分もその立場だったら、結構時間が掛かるだろう。 「しかし」 同じ方向を向いたままスネークは呟いた。 「こんな空を見るのは久しぶりだな」 「そうなの?」 マリオは意外だと言う顔をして彼を見た。 「俺達の世界ではこう言う青空は無い訳では無いが、俺はあまり澄んだ空を見た事は無い。いつも灰色に覆われた汚い空だ」 「……スネークは、ここの世界と自分の故郷、どっちが好き?」 答えが分かっていようとも、念のためにこんな質問を出してみた。 「……」 スネークは暫し押し黙ったが、マリオに振り向くと少しだけニヤリと笑んだ。 「聞くまでもない。汚い世界だろうと、故郷は故郷だ。向こうには友もいる。あんたもそうだろ?」 「……」 マリオは少し困った顔をしてしまった。図星を突かれてしまったのだ。自分の故郷が好きなのは誰もが同じだろう。今日、自分達の世界へ戻る戦士の様子は解放感に満ちていて、本当に嬉しそうだった。自分も本当はキノコ王国へ帰りたい。戦士達がいない間は、この国には結界が張られるのは分かっている。しかし、 「勿論、ボクもキノコ王国は恋しいさ。でも、ここも好きだから、離れられない」 「どう言うことだ?」 何だか呆れられた気配がするが、それでもマリオは理由を答える自信はあった。 「仲間がいるからさ。大好きな仲間に、ここでいつでも会えるから」 原則として、スマッシュ王国と自分達の世界へは自由に行き来が可能だ。但し、自分のいる以外の世界への出入りは禁止されている。例えば、リンクは故郷ハイラルへ帰る事は出来るが、ピカチュウ達の住む世界へは入る事が出来ないのである。 唯一彼らが交流出来る場所と言えば、数多の世界を中心から支えるこの国だけである。マリオは、そこに住むだけでも大変光栄に思っているのだ。 「第二の故郷にしているから。正直に言えば、どっちを取るかなんて決められなくなった」 「第二の故郷……なるほどな」 スネークは目を細め、軽く息を吐いた。 「スネークもその内分かると思うよ。今はまだ無理だろうけどね」 「……その内、か」 スネークは呟き、再び青空を仰いだ。 裏庭でクレイジーは花束を持っていた。彼の前に建つ小さな墓石には、彼を拾ってくれた者たちが眠っている。墓の前に花束を供え、立ち上がった。 「父上殿、母上殿……」 今も尚、悲しい色に染める瞳で墓を見守る。 「あれから大変の年月が過ぎたが、向こうでも、幸せに暮らしておられるのか」 爽やかに流れる風にマントが僅かに揺れる。少し雲の動きが速くなった空を見上げた。 「私も、いずれ、そちらに向かう。その時は……」 「ご愁傷様でしたぁー」 どこからか、若い男性の声が聞こえた。クレイジーはハッとし、剣を構えた。 「誰だっ」 「どこ見てるんだよ、おっさん。こっちこっち」 強い殺気を漂わせている男は、クレイジーの横に立つ背の高い木の枝に立っていた。 「貴様、一体何処から入った!」 部外者には入れない筈の結界があるのにも関わらず。 その男──ディバはニヤニヤしながら見下ろしていた。 「何だか結界が張ってあったけど、あっさり通れたよ? 僕は特別なのかしら?」 「そんなバカなっ……!」 顔を青ざめるクレイジーに、残念でしたとヒヒッと笑うと、彼の前へスタッと降りた。 「ん?」 それを他所にディバは彼の側の小さな墓を見た。それを見て、彼の表情が僅かに一変した。 「……」 「どこを見ている」 「! うわっと!」 クレイジーが手から魔法を仕掛けて来た。余所見をしていたディバは咄嗟にジャンプし、魔法攻撃を避けた。彼の後ろへ軽やかに降りる。更にクレイジーが、剣の切っ先から雷の魔法を放ったが、ディバはマントで自分の体を覆い、それを防いだ。マントを広げたディバはドキドキすると示す様にわざと冷や汗を流しては自分の胸を軽くさすった。 「あっぶね! お大臣様ったら短気なお方ですねぇ」 「なぜ結界を擦り抜けたのかは分からぬが、お主を生かして置く訳にはいかぬ。ギガ精鋭部隊隊長ディバ」 切っ先を彼に向けながらクレイジーは声を上げた。それに対し、ディバは口笛を鳴らした。 「驚いたな。ここまで有名人になったんだな、僕」 場の状況を弁えず、照れ臭く笑う。 「マリオ達はお主を知らぬが、裏で糸を引いているのを我々は既に知っている。覚悟するのだ」 「ふん、残念ながら、僕は貴方を殺すつもりは無い。今日は他の件で来たからね。んじゃ、ア・バ・ヨ!」 そう言い残すとディバは飛び上がり、城の屋根へ移るとそのまま向こうへ行ってしまった。 「ま、待て!」 更に魔法を仕掛けようとしたが、ディバは既に彼の攻撃では届かない距離まで行ってしまっていた。 この事を王様に伝えなければ……! クレイジーは一目散に王の間へ向かった。 「……」 王が玉座で何か考え事をしていた時、彼の前に突如闇の光が現れた。 「!」 マスターは危機を感じたが、その場を動かず、その光を見ていた。その光が消え、ディバが紳士的なお辞儀をしながら現れた。 「不法な侵入、失礼致します。マスター様」 彼に似合わない柔らかな口調が放たれる。 「そなたは、ディバと言ったな。何故結界を……」 それでも警戒心を緩めないマスターは片眉を上げ、目を細めながら彼を睨んだ。マスターも、彼が一体何者なのかは分かっていた。それに対し、ディバは顔を上げると、ウィンクしながら笑った。 「何。ほんの一寸の用事で来ただけですよ。上からのご命令でね」 「何の用だ」 「貴方様の大切に持っておられる宝玉に用があるのです」 マスターが手放さない杖の先には、スマッシュ王国のマークが中に刻まれている虹色の宝玉が付けられている。ディバは、それを目線だけで羨ましそうに見た。 「例え、我が国の者であろうとも、空間とマリオ達の世界を守る最大の源を譲る訳にはいかぬ」 マスターは冷たくあしらった。それにディバは眉を上げ、肩を竦めた。 「それもそうですねえ。どうしても必要なんだけどなあ……仕方がない。そこまで言うのならば……」 ディバの体からは、赤く燃えたオーラが現れた。それを発しながら、ディバは剣を引き抜いた。 「力尽くで」 刃を唾液交じりで一舐めした。マスターは杖を武器に構え、立ち上がった。 一瞬の沈黙が響く。 そして、ディバが高速でマスターへ向かっていったが、マスターは杖を一振りした。炎の壁が現れ、マスターを丸く包んだ。 「ぐっ!」 剣が炎のバリアに当たった瞬間、バチィッと痛々しく弾けた音が響き、ディバは舌打ちするとその場を離れた。 「王様!」 バンッと間の扉が勢いよく開かれた。クレイジーと、騒ぎを聞きつけた残りの戦士達だ。 「あいつがディバかっ!」 マリオ達とディバとは初対面だが、ディバは彼らが誰なのかは直ぐに察した。 「くそ、邪魔が入ったな」 ディバは彼らを睨め回しながら剣を仕舞った。 「只働きなのもめんどいけど、ボスが喜ぶのならば、さっさと頂いちまおうっ」 言い終わったと同時にディバはマスターの前まで瞬間移動し、彼が怯んだ隙に杖を蹴り上げた。マスターはその衝撃で杖を手から離してしまった。 「ぬ! しまった……!」 「やめろ!」 ディバはマスターの手放した杖の宝玉に手を伸ばした。マリオ達は急いで止めに入ろうと走り出すが、ディバの手と宝玉はもう数センチの距離だ。 ──間に合わない! ディバの手が宝玉に触れたその時、宝玉から急に強く白い光が広範囲で放たれた。 「ギャア!」 ディバはその白い光に両目を打たれ、両腕で顔を覆い、跪いた。 「ななな何だあ!?」 マリオ達も理解不能で、片手で目を隠しながらその宝玉を何とか見る。 宝玉は光の玉となって宙に浮いた。そして、無数の光に分裂し、壁を擦り抜けて四方八方へ飛んでいった。光の矢の如く空を舞い、やがて空の彼方へ消えていった。 「な、何がどうなってんだ?」 マリオ達は目を見開いたまま固まってしまっていた。マスターは冷静に、光が擦り抜けていった壁を見詰めていた。 「とんでもない事になったな」 マスターは冷や汗を一筋流し、杖を拾い上げた。 「うぅ……」 ディバは顔色を悪くしながらよろよろと立ち上がった。 「くそ。取り合えず退却だっ」 「あ! 待ちやがれ!」 マリオはディバへ殴りかかろうとしたが、ディバは闇の光と共に姿を消した。マリオの拳は空を切るだけだ。 「王様!」 全員は急いでマスターの元へ向かっていった。マスターは杖をついたまま膝を付いている。 「お怪我はありませんか?」 リンクは彼の両肩を手で覆い、心配そうに話し掛けた。マスターは彼の顔を見ながら答えた。 「ああ、心配は要らぬ。只……」 マスターは不安げな表情で杖の先を見下ろした。マリオ達もつられてそれを見る。杖の先を見て、何かが物足りない気がした。 「大変な事になってしまった」 杖を握り締め、マスターの顔は険しくなった。 「どういう事です?」 と、前で膝を付いているマリオは問うた。マスターは顔を上げるとこう言った。 「とにかく、皆をここへ集めて貰いたい。急いでな」 「分かりました。マルス、ロイ、頼めるか?」 「はい」 マリオはそう頼むと、マルスとロイは頷き、急いで王の間を後にした。 「王様、あの宝玉は一体、何なんです?」 リンクは訊いた。マスターは杖を見ながら答えた。 「あれは空間神の宝玉。支配している空間内全ての世界を守護する力がある、所謂空間の核なのだ」 「それが、光となって消えてしまったのですが?」 「宝玉は魔の手が触れてはならぬ物でな、それを感じ取った宝玉は逃れる為に無数の光となり、あちこちの世界へ流星の如く散らばったのだ」 「そんなに凄い物だったんだ。普通の宝石だと思ってた!」 「ピィカッチュウ!」 カービィがそう言うと、ピカチュウも同感して頷いた。 「大変です!」 先程出ていったばかりのマルスとロイが慌てて戻ってきた。 「み、皆と連絡が取れません!」 「えええええ!?」 「何だと!」 マリオ達は驚くばかりで思い切り叫んだ。 「やはり……」 「え?」 マスターの呟きに全員振り向いた。 「守護の力が分散してしまった所為で、その光が落ちた世界はその力に完全に守護された状態となった」 「と、言う事は?」 正かと思いつつマリオは恐る恐る言葉を発した。クレイジーは目を閉じると代わりに答えた。 「外部からの侵入は無論、その世界から出る事も出来ぬと言う事だ」 「そんなっ! じゃあ、一体どうすれば……っ!」 となると、皆はここへ帰ってこれないのだ。故郷にずっといるのは悪いとは言わないが、戦士達はそうはいかない。結界は今日しかもたないから、明日までにここへ戻って来なければならない。でなければ、この国はいつ闇に支配されてもおかしくない。マリオは拳を力いっぱい握り締めた。一部始終を黙って見ていたスネークは、そんなマリオをジッと見詰めていた。 「心配は要らぬ。これを見よ」 マスターは、皆に見える様に、握っていた片手を開いて見せた。虹色に輝く宝石の小さな欠片が、キラリと光って現れた。 「これは?」 「宝玉の欠片だ。無数に崩壊された隙に一粒取り戻しておいたのだ」 「流石王様」 戦士達は少し安心した。 だが、マリオは直ぐに安堵を消した。 「しかし、そんな小さな欠片が何の役に立つんです」 それを聞いたマスターは口端を上げた。 「宝玉は欠片となった時、他の欠片と繋ぎあわせる力を持っている。これさえあれば、欠片のある世界まで移動が出来るのだ」 「そうなんですか?」 戦士達は声を上げた。 「では、これで欠片と仲間を元に戻す事が出来る訳なんですね?」 リンクが皆の代わりに笑顔で言うと、マスターは頷いた。 「住む世界が違うとも、この欠片がある限り、出入りは出来る。そして、マリオよ、これを持ってみるが良い」 「こ、こうですか?」 マスターはマリオに欠片を差し出した。マリオは少し躊躇いながらもそれを手に取ってみた。 「うわっ」 「マリオさんっ」 それに触れた途端、欠片が光りだし、光はマリオを包み込んだ。そして、マリオの中へ吸い込まれる様に入っていった。何事も無かったかの様に、光る前の状態のマリオは、それでも何があったと体中を見回した。 「その宝玉は守護の力だけでは無い。触れた者に与えられる特別な力が備わっているのだ」 「特別な力……」 マリオは自分の手の平を眺めた。言われてみると、自分の中の何かが目覚めた感覚がした。力も漲り、不思議な感じだ。 「その力を発揮出来る時間はその者次第だ。いずれ分かる時が来る」 「……」 「今は欠片だから一部の力に過ぎんがな。全て揃えば、戦士達の完全な味方となってくれるであろう。但し、欠片は力が弱まっていて、魔の手にも触れられる。ギガや魔物達よりも早く宝玉を元に戻して貰いたい」 マスターは欠片を持っているマリオの片手を握らせた。 「良いんですか、ボクに欠片を預けて……?」 マリオは申し訳無さそうに言った。それでもマスターの真剣な眼差しは色を変えない。 「これから旅立つ君達に持っていって貰いたい。欠片を全て取り戻す事が、お前達スマッシュ戦士への次の指令だ」 「し、しかし、この国は……」 スマッシュ戦士がいなくなったら、スマッシュ王国を守る力が失われるのか。戦士の誰もが心配する事である。マスターは、安心させる様に、ゆっくりと首を横に振った。 「心配は要らぬ。ギガの最大の目的はあの宝玉だ。今や血眼になって探しているであろう。暫し、我が国を襲う事は無いであろうから、この国は我々に任せるが良い」 「ですが……」 「王様。僕達はここに残ります」 そう言ったのはマルスとロイだ。戦士だけで無く、王と大臣も驚いた。 「そなた達」 「クレイジー大臣や王様方だけに任せる訳にはいきませんよ。ここで共に、王国と王様方をお守りします」 二人は王と大臣の前で、腕を胸の前で横にして敬礼した。 「マルス、ロイ……」 マリオが二人の名を呟くと、マリオ達に勇ましい笑顔を見せた。 「マリオさん達は、行ってください。僕達は大丈夫です」 「……分かった」 少し悩んでしまったマリオだが、笑顔を見せて頷いた。 「……」 リンクはその様子を見て少し考えた後、二人に近付いた。 「二人とも、ちょっと待ってて」 青いオカリナを取り出し、片手でとある短い曲を器用に奏でた。柔らかな音色が王の間に響き渡る。 すると、どこからともなく妖精が現れた。光の玉に羽根が四枚付いている。妖精が飛んだ後ろには小さな光の鱗粉が零れ落ちた。 リンクはその妖精を自分の手の上で止めると、二人に言った。 「欠片の力で、多分使えると思います。この妖精は、マルス王子達と俺達との会話を繋ぐ事が出来る能力を持っています。何かあったら、この子を使ってください」 リンクが手を前へ差し出すと、妖精は二人の元へ飛んでいった。マルスとロイは目を少し丸くしてそれを見上げていた。 「有難う、リンク。大事に使わせて貰うよ」 マルスとロイは彼に笑顔を向けた。 「よし!」 と、マリオは手に拳を当てて気合いを入れた。 「早速、出発の準備に取り掛かるぞ」 「マリオ」 マリオの肩に後ろから大きな手が置かれた。彼を呼んだのはスネークだ。 「俺も行こう」 「え!? 良いの?」 その言葉に、ここにいる者達は驚いてしまう。それでもスネークは、冷静に首を縦に振った。 「ここで平和ボケしてると、腕が鈍るからな。それに、俺はあんた達に借りを作った。その借りを返す為にも、協力する」 「うむ。スネークも共に行くが良い」 マスターは言った。 「仲間達との絆を深めるが良い。そして、そなたをこの世界へ連れて来た空間の異常現象についても、何か解るかも知れぬ。その時は報告をしてくれないだろうか」 「……ああ、解った」 「スネークも来てくれると心強いよ。ありがとう!」 マリオはそう笑顔を見せた。スネークは、そんなマリオを見ていたが、暫くして、 (……第二の故郷を救出。これを、今の俺の任務にするとしよう) 「え。何か言った、スネーク?」 「気にするな、マリオ……否、隊長。 ──さて、さっさと支度をするぞ」 スネークは照れ隠しか、手で顔を少し覆うとさっさとその場を後にした。マリオは、実は彼の小さな声は聞こえていた。そして、自然と笑顔になっていった。 「しくじったな? 戦友とて、それは許しがたい」 研究所に戻って来たディバは、失敗した事にかなり不機嫌な状態だ。それはギガも一緒で、声からして明らかに怒りを決死で押さえていると見た。 「悪かったって言ってるだろ? あんなに嫌な光が放たれるとは思わなかったんだからさあ」 目を閉じたまま腕を組んでズバッと言うが、ギガはそれでも黙り込んでいる。何かを言いたげな様子だが。 暫くしてディバは片目だけ彼を見ると、クスッとおかしく笑いながら彼の隣へ来た。 「でもさ、見てみろよ」 彼を喜ばせる作戦として、ディバは彼の目の前で、拳を開いて見せた。そこには、虹色に輝いた空間神の宝玉の欠片が一つあった。ギガはそれを見て目を丸くした。 「こっそりと一欠片手に入れたんだぜ?」 内緒話の様にギガの耳元でボソッと囁いた。ギガの不機嫌だった口元が、次第に笑みを取り戻した。 「……私が求めるのは完全体だが、まあ良い。残りの欠片は、間違いなくスマッシュブラザーズが集めに向かうだろう」 「つまり、欠片をあいつらより先に集めなきゃならないの? 面倒だなぁ」 ディバはまたご機嫌を斜めにし、欠片を何度も上に放る。 「私だって馬鹿ではないことくらい、分かっているだろう?」 そしてギガは彼にある事を話した。それを聞いたディバは、パシッと欠片を握ると、彼に笑んだ。 「へえ、流石ボスだな」 「我々が本格的に始動をするまで、呉々も無駄ごとは慎め」 「ハイハイ。じゃ、行ってくるよ」 ディバはその場を消え去った。ギガは彼の消えた場所を見詰めながら、こっそり呟いた。 「フン、愚か者め」 「では王様、大臣、行って参ります」 城の前で、準備を整えたマリオ一行は、見送る王達とマルス達にペコリと頭を下げた。 「良いな、無事に帰って来る事も、我々からの命令だ」 と、クレイジーは言った。 「何かあったら連絡をするから」 と、ロイ。 「武運を祈るよ」 と、マルスが言った。 「そなた達の無事が、我々の一番の願いだ。共に信頼、協力しあい、前へ進んでいってくれ」 「はいっ」 最後にマスターの言葉。それぞれの言葉に、マリオ達は大きな声で返事をした。 旅立つ決意を皆が固めたその時、マリオの懐に仕舞ってある欠片が輝き始めた。その白く優しい光はマリオ達に渦を作り上げ、彼らを吸い込んでいった。 空間神の宝玉の欠片探しが、いよいよ幕を開いた。 ──序章:了── |