誓いの証








 リンクは、ここ何週間も途方に暮れていた。
 何を食べても喉を通らず、寝るにも眠れなかった。誰かが側にいても関わらず、深い溜め息を何回もしている。心配してくれる仲間に何があったのかと問われても、何も答えず、沈黙だけが続いていた。
 マリオは少し距離を置いたとこから、日に日に元気を無くしていくリンクを見ていた。

「リーダー……」
「ん? ピットか」

 マリオを見掛けたピットは、彼の目線先を見ながら、彼に近付いていった。

「リンクさんの調子、どう?」
「……何とも言えないね。やっぱり原因は、彼奴だな」

 白のテーブルに頬杖をつくマリオがそう呟く。ピットも躊躇い無く頷いた。

「フォックスさん、だね? 勿論ファルコさん達も、彼と一緒に行ったけれど……」
「まぁ、リンクはフォックスとは特別な関係……だからな。何週間も帰らないとなると、僕達も心配だけど、リンクにとってはかなりの痛手だ」
「……僕達が話し掛けたとこで、無駄と言うことになるのかな……」

 落ち込むピットだが、マリオに向ける目線は、別の意味を持っている様に見えた。それはマリオにも十分理解している。
 マリオは少しでも安心させられる様に、彼に微笑みを見せた。

「今のリンクに何をしてあげられるか? それは彼等しかいないね」

 タイミング良く現れたのはファンシーズ。リンクの心境を気にする事無く駆け寄って来た。

「ねぇ勇者のお兄ちゃん、遊ぼうよ!」
「ピッピカチュウッ」
「あ……ああ」

 ファンシーズは、リンクをほぼ毎日遊びに誘っていた。
 リンクは、無邪気な彼等の笑顔に適わないのであろう。幾ら落ち込んでいても、ファンシーズの誘いはあまり断らない方だ。それは、スターフォックスが任務に行って暫くしてからの事なのだ。
 流石のリンクも彼等の気持ちは読めるだろうが、子供好きな自分としては、今の彼等は唯一の慰めになる。
 だが、矢張りフォックスのことばかり考えいるのは事実。どんな任務か教えてくれなかったが、危険な任務なのは、相手の様子と予感で理解出来た。

(フォックス……いつ帰って来るんだろ……)
「リンク危ない!」
「え……」

 考え事をし続け、呼ばれて我に帰った時は、リンクの顔面にボールが見事命中していた。




 ──そして、数日後。
 ピットが空中散歩をしている時、ふと遠くのあるものが目に映った。

「……あ!!」

 と、1人見開きながら声を上げた後、一目散に、マリオ達のとこへ向かって飛んで行った。
 空の彼方から、久しぶりに見た宇宙母艦。グレードフォックスだった。何週間振りに、スターフォックスが任務から帰って来たのだ。
 ピットの知らせを聞いたマリオ達は急いで外に出た。その時は、既に母艦が着陸した後である。そして母艦からは、スターフォックスのメンバー達が次々と顔を出した。

「ファルコしゃーん!」

 涙目のプリンは、ファルコを見ると即座に抱き付いた。

「プリン、遅くなっちまって悪かったな」
「遅過ぎでしゅよ! どれ位待ったと思ってるんでしゅかぁ!」

 ファルコの服を濡らしてしまう位にプリンは泣き声でファルコに怒るが、ファルコはわりぃわりぃと、彼女の丸い背中を優しく叩いた。
 後にスリッピー、クリスタル、ペッピーと続き、そして最後に──フォックスがそこに現れた。

「フォックス!」
「サブリーダー! お帰り!」

 マリオとピットはかなり嬉しそうな笑顔でフォックスへ駆け寄った。

「皆、遅くなった」

 フォックスは申し訳なさげな笑顔を見せた。
 そしてマリオとピットは真顔で見合わせた後、彼に道を譲る様に体を動かした。フォックスは、彼等の行動にハテナを浮かべる。

「?」
「何ハテナ浮かべてるの?」
「僕達よりも、先に逢わなきゃいけない人がいるだろ?」

 二人のその言葉で、漸くフォックスは気付いた。

「早く逢いに行ってやりな」
「……ああ」

 そしてフォックスは彼等を横切り、城へと入った。




 彼のいる部屋を目指して廊下を駆け、やっとその扉前迄到着する。ノックするのも忘れ、大きな音と共に扉を全開した。

「リンク!」

 扉と同じ時間に、その名前を発して。
 窓の外を見ながらボーっと椅子に座っていたリンクは、扉と、愛しい人の声に驚く程、反射的に素早く顔を振り向かせた。
 久しぶりの顔が、互いの目に映る。それは僅か数秒の空白の時だったが、二人にとってはとても長く思えた。

「……フォッ……クス?」

 静寂を破ったその声は、未だに信じられないと言った声色だ。
 フォックスは、リンクの姿に思わず目を細めた。任務に向かう前と比べて、かなり痩せてしまった上、顔色も良く無い様に見えた。その姿に寄る彼の気持ちを、痛い程胸に刻んだ。

「ごめん、遅くなって……」

 フォックスはリンクに近付くと、とっさに強く抱擁した。リンクの体は強張ったが、直ぐに安心したらしく、少しずつ体を脱力させていった。
 そしてゆっくりと離れる二人。だがリンクは、顔と目を少しだけ反らしていた。
 それに気付かないフォックスは、ポケットを探りながら口を開いた。

「リンクに渡したいものがあるんだ」
「……俺に?」

 フォックスは微笑みながら、ポケットから小さな箱を取り出す。リンクも流石に気になり、フォックスの方へ向き直った。
 箱が片手で小さく開かれる。リンクはその中を見て見開いた。

「フォックス、これ……!」

 感動を交えた声で言葉を零した。
 箱に入っているのは、緑な透明に光る、翠玉の指輪だ。フォックスは指輪を取り、リンクを目に映す。

「リンクに、いつか買ってあげたいと思ってたんだ。だから、今回の任務、凄く頑張ったんだよ」
「任務……」

 リンクは、フォックスの今の言葉にピクリと反応した。

「リンク、俺と一緒になろう、ずっとずっと。その証として、これを受け取って欲しいんだ」
「……」

 リンクは黙り込んでしまった。フォックスは彼の返事を待つかの様に、ずっとリンクを見ている。
 壁に下がっているアナログ時計。秒針が時を語る。
 やがて、リンクの開かれた口から出た言葉は……。

「──要らない」

 静かな呟きと共に返しの言葉。それはフォックスに取って、体温を奪う言葉である。

「え?」

 見開いた表情から逃げる様に、リンクは顔をにたび逸らした。

「リンク……?」
「そんなの要らない。と言うか、もう、俺のとこに来ないで」

 立ち上がるリンクの腕を、フォックスはとっさに捕らえた。

「待てよ、リンク! どうし……」
「この部屋から出て行って!」

 リンクの大声と振り払う手で、フォックスは反射的に驚き、手を離してしまう。
 リンクは窓に体を向けながら立っていた。悲しそうなその背中を、フォックスも心配な目で見ていた。

「……早く、行ってっ……」
「……」

 泣きそうな声で言うリンクを抱き締めたいとも思ったが、今の彼の心境を考えると、そうもいかない。
 フォックスは一度目を閉じ、そして数歩さがった後、扉へ向かって歩き、そして部屋から出て行った。




「リンク……」

 リンクの部屋の扉に触れながら、フォックスは俯いていった。

(俺、何かしたか……?)
「フォックス」

 フォックス達の様子を見に来たマリオは、フォックスを見掛けては片目を閉じ、片手を上げながら呼んだ。

「どうだった、リンクの様子は?」
「それが……」

 何か言おうとするフォックスだが、それが中々口に出せず、次第に俯いていってしまった。
 マリオは彼等の状況を理解したかの様な苦笑いで、思い切り溜め息を吐くと、フォックスに首を横に傾けて見せ、彼に背中を向けると歩き出した。ついて来てと言う、無言の意思表示だ。フォックスも無言で、彼の背中を見ながらついて行った。

「うん、まあ、フォックスの気持ちは良く解るよ」

 バルコニーから景色を眺めながら二人は話を交わす。と言うより、今一方的に話し掛けているのはマリオの方だ。
 フォックスは、先程からずっと黙った儘だ。リンクのことで頭がいっぱいなのである。彼に嫌われてしまったと思うだけで、今にも涙が零れそうな目を伏せていた。
 マリオはそんなフォックスを横目で見た後、頬杖をついては口を開いた。

「フォックス、リンクがどれだけフォックスを心配してたか、解るか?」
「えっ?」

 フォックスは何かに気付かされたかの様に直ぐ様反応をして顔を上げた。マリオに振り向くと、マリオは苦笑いを見せていた。

「僕達も、フォックス達の帰りが遅いから、そりゃあ凄い心配してたけど、リンクだけは別な気がする。リンクの様子を見て、解らなかったかい? フォックスを、死ぬ程心配してたんだって」
「!」


 そしてフォックスは直ぐ様バルコニーを離れ、駆け出した。大切な人に、もう一度会う為に。マリオはフォックスの後ろ姿を、その場から優しい目で見送った。




「リンク!」

 フォックスは勢い良く扉を開いた。リンクはその音に肩を上げ、素早く振り返る、大粒の涙を零しながら。

「フォックスッ……」

 フォックスは、何時になく真剣な眼差しを向けていた。リンクは彼を見て少し戸惑って仕舞っている。その間にも、フォックスは彼へと近付いた。

「リンク、心配掛けさせて、本当にすまなかった。死ぬ程、心配してたんだよな」

 と、フォックスは頭を下げながら、反省の意を込めて目を瞑り謝罪する。

「フォックス?」
「謝れば許してくれるだ何て、思っていない。俺、リンクの為だったら、何でもするよ。リンクの為なら、死んでも良いんだ」
「っ……」

 リンクは言葉に詰まっていた。フォックスはその儘の姿勢で、彼の返事を待ち続ける。
 そして十何秒か経った時、

「フォックスは、俺と任務、どっちが大事だと思ってる?」
「!」

 フォックスは閉じていた目を見開き、つい顔を上げてしまった。そして、フォックスの瞳にリンクが映る。

「俺の方が大事なら、もう任務には行かないで。お願い」
「リンッ……」

 虚ろで光を映さない青の瞳に、脱け殻の様な無表情。まるで魂の無い人形の様だった。そんな哀れな姿に、フォックスは静かに冷や汗を流すが内心では涙を流していた。
 彼がこんな状態になって仕舞ったのは、一体何の所為? 自分? それとも、任務?
 愛しい人が、こんな事になるのに、気付かず、自分は……。

「……」
(でも……)

 フォックスは密かに首を横に振った。魔物に取り憑かれた恋人の口に、危うく騙される処だった。そして顔を改めて上げ、リンクを見詰めながら口を開いた。

「それは無理だ」

 その言葉に、リンクは見開いた。だがフォックスは動じない。

「俺は平和を守る為に、仲間達と共に戦ってる。勿論、リンクの為でもある。でもリンクも大事だ。こんなに愛しい、愛しくてならない。

 リンク、もしかして、どちらかを選べば、どちらかは捨てなければならない。そう考えてたのか?」

「!」

 逆にリンクは動じていた、あからさまに。フォックスは怖がらせない様、優しい笑顔になる。

「俺は任務に行ってる間でも、リンクを片時も忘れた事は無い。誓って言うよ。だから、この指輪を買えたんだ」
「……ックス……」

「やっぱり、リンクは納得行かないよな。すまない。けど、俺はどっちも大事何だ」

 罰が悪い表情の中、静かに瞼を閉じている。こう話した時点で、リンクに何を言われようと、覚悟していた。

「ごめん、フォックス……」
「リンク……」

 フォックスは勇気を出し、リンクをゆっくりと見上げた。
 そして、静かに見開いた。リンクが、涙を零しているのである。フォックスをしっかりと見詰めながら、何粒も何粒も。そして正気に戻ったかの様に、リンクは必死で目を擦っていた。だが、涙は刃向かって止まらない。
 震えた声で、何度も謝罪を続けるリンク。フォックスはそんな彼を見るに堪えきれず、リンクを強く抱き締めた。

「フォックス、ごめん、我が儘言って……俺……」
「リンク、俺こそごめんな、本当に」
「俺、平和を愛す、考えるフォックスが大好きなんだ。でも、何故かそれを忘れてて、フォックスの大事にしてるものに、嫉妬して……っ」
「リンク……有り難う、そんなに迄、俺を愛してくれて」

 暫く時を忘れて、二人はずっと抱き締め続けた。
 懐かしい温もりに、涙が出そうになったが、堪えた。

「俺はどんな状況に置かれたって、リンクを考え無かった日は無い。そして、これからも」
「俺もだよ、フォックス。大好き、大好きっ……愛してる」
「リンク、愛してる……」

 二人はどちらからともなく、深く口付けた。




 その夜、二人はリンクの部屋のベッドの上で熱い体を交わした。

「リンク、挿れるぞ」
「ん……」

 リンクの、慣らし立ての柔らかな孔に、フォックスは硬い肉棒の先端を押し当て、ゆっくりと埋め込んだ。

「あっ……」

 クプリ……と、柔らかな音を鳴らしながら、リンクの孔はフォックスのを難無く呑み込んだ。渇きに飢えていた口が、水を非常に欲するかの様に、奥へ奥へと誘う。
 フォックスのが奥まで挿入した後、肉壁の気持ち良さを堪能しつつもう一度軽く引き抜き掛けてから、再び奥を突くの繰り返しを始める。
 二人を繋げる局部からは、相手を甘く激しく誘う淫らな音が響く。

「リンク……っ」
「あ……フォックスっ……」

 最も敏感な最奥を硬い先端で何度も突き続ける程、リンクは躯を揺らし、とろけた表情を仰け反らす。熱い吐息が遠慮無く漏れ、リンクの肉壁も、フォックスへの求めとしてひくひくしている。
 露わな白い首筋を目にしたフォックスは密かに生唾を呑み込み、その首筋に優しく噛みつき、鬱血を作る。軽い痛みにリンクの体がピクリと痙攣する。目立つ部分だが、気に留めなかった。リンクは自分のものだと言う証を、永遠に残してしまいたい程だから。
 痙攣しては、リンクの背が反れ、その胸から現れた2つの硬い小さな突起。フォックスは腰を緩やかに動かしながら、その突起を口に含む。

「ん……ぁ」

 ピクピクと、リンクの躯が反応を示す。フォックスは構わず舌先で転がし、コリッと時折音を立てて噛み付いた。

「ぁん……フォックス……っ」
「リンクの此処、凄くかわい……」

 まるでそこに飴玉があるかの様に、夢中でリンクの突起をしゃぶるフォックスにリンクは更に顔を赤く染め、ブルリと躯を震わせる。
 そしてフォックスは顔を上げ、律動を本格的に再開させる。何度も何度も、肉の感触を受けつつ奥を目指す。
 だがやがて限界が近付いたのか、突然腰を速く動かし出す。

「あああぁ……!」

 リンクは目をギュッと瞑り、甘い声を上げながら絶頂へと向かう。肉壁がフォックスの雄を強く締め、フォックスも限界の域につきそうだ。

「リンク……っ、俺もう、イく……っ!」

 そして動きは更に激しくなる。
 雄の激しいピストンに寄り、リンクの前立腺がしつこく攻められる。リンクの雄も大分濡れたのに、また絶頂を迎えようとしていた。下半身への熱が異常で脊髄にも電流が走る。

「ふあ! や、あぁ! フォックス……駄目、ん……や……っ!」
「はぁ、はっ、リンク……!」
「フォック……ス! 奥に、フォックスのが……ああぁっ!」

 ドクンと脈打ち、リンクの雄から精が放たれる。

「ん……」

 フォックスも、リンクの奥へと、精をたっぷりと放つ。軽く抜き差しながら、突く度に残りも全て注いだのだった。
 互いの気持ちが、混じり合った瞬間だった。




 リンクが幸せな夢から覚めた時、左手に僅かな違和感があった。ゆっくりと左手を上げてみると、あの時の綺麗な指輪が薬指にはめられていて、朝日の光に美しく反射していた。

「リンク」

 隣に座っているフォックスを、リンクはその場から見上げた。

「俺は何があっても、リンクを世界で一番、愛してるよ」
「……うん。俺も……愛してる……」

 リンクは一筋の涙を零した。フォックスはそれを親指で拭い、リンクの手に手を絡ませると、再び甘いキスを交わした。
 絡まれた指にはめてある指輪が、一瞬だけ一際輝いた。




 今迄の君が好き。
 そしてこれからも、君が好き。
 この指輪は、永遠の誓いだ。
 どんなフォックスでも、どこにいても、世界で一番愛してる……。










 ──Fin──








 【後書き】


 大変長らくお待たせ致しまして申し訳御座いません!!
 時雨様がゲットして下さった15500番リクのフォクリンです。如何でしたでしょうか?

 矢張り私はシリアスのちハピエンが大好きな様です(爆)。バトエンやシリアスオンリー、甘々やギャグ(え)も好物ですが、良く書くのはこんな感じが多いっぽいです。
 フォクリンは幸せになって貰いたいのよ! そして甘い裏でいちゃいちゃして欲しいのよ(コラ)! 失礼しました(汗)。

 リクエスト有り難う御座いました! この様な出来で良ければ、受け取って頂けると嬉しいです!