桜の世界・桜色の君








 凍える程の冬も過ぎ去り、暖かな春が訪れた。
 キノコ王国も桜色に染め上がり、この日は花見日和だった。マリオファミリーも、現在進行形で花見を満喫している。
 桜の花びらが舞い散る広場。王国の住人達は、毎年恒例で飲み食いしながら花見をしている。

「ヨッシー! 弁当一個分、一人で食べるな!」

 弁当の中身を食べ尽くし、口をモゴモゴさせているヨッシーを、ワリオは怒りマークを出しながら叱る。ヨッシーは聞こえていなかったのか、口を動かしながら彼をポカンと見る。

「俺様達の分も食うなっての!」
「ギャー! ワリオさぁん、やめて下さいぃー!」

 ワリオは身長は低いのにも関わらずヨッシーを万字がためした。

「だ、大丈夫だよ、ワリオ。まだまだお弁当は沢山あるんだから」

 ルイージは袋から弁当を取り出して彼に差し出した。

「バナナはどこなの、ルイージ? 持ってきたー?」

 ドンキーは袋をあさっていた。

「コラッ、勝手にあさらないでよ! ちゃんと持ってきてるからっ」

 彼らがギャーギャー騒ぐ一方、

「ふふ。皆、花より団子みたいね」

 ピーチは彼らを見ながら微笑んだ。ジュースの入った水筒の蓋を両手で持っている。

「しかし、また皆とこうして騒いでるのも楽しいものです」

 隣で胡座をかいているマリオは三色団子を頬張りながら言った。彼を見るピーチはクスッと笑った。

「それもそうね。それに……」
「?」

 言葉を濁したピーチにマリオは振り向いた。

「ううん、何でもないわ」

 ピーチは頬を僅かに染めながら首を軽く左右に振った。マリオは首を傾げたが、

「そうですか」

 と、桜を見上げて言った。
 二人は、暫く暴れ回っているワリオ達を楽しく見物していた。
 そして、ピーチは唐突に口を開いた。

「マリオ」
「何でしょう」

 マリオはピーチの呼び声にスムーズに応じた。ピーチは少し顔を俯かせ、続きを呟いた。

「一寸、付き合ってくれるかしら。二人だけで一緒に花見をしたいの」

 内緒話の様に静かにお願いした。
 マリオは少しドキリとし、顔を少し熱くしてしまった。見られたくないと顔を反らし、軽く咳払いする。
 そして改めて笑顔に戻すと、快く了解した。

「構いませんよ」
「ありがとう」

 それにホッとしたのだろう、ピーチは女神の様な微笑みを浮かべた。
 ピーチは水筒を元に戻し、マリオは団子を食べて串だけになったゴミを袋へ入れると、二人で立ち上がった。

「おや? 姫様にマリオさん、これからどちらへ?」

 酒で微酔いしてしまっているキノじいは二人を見上げて訊ねた。

「二人で花見に行って来るわ」
「おお、さようですか。お気を付けて行ってらっしゃいませ」

 普段はここで一緒に付いて参るとか言うキノじいだが、今の返事は酒のお陰だろう。
 マリオとピーチはこっそり手を繋ぎ、その場を後にした。




 暫く桜の道を歩いていると、人っ子一人いなかった。この道を歩いているのは、マリオとピーチだけである。
 そして、桜並木の他、芝からも桜が咲いていた。ピーチはそれを見ると、パッと笑顔になる。

「あら、芝桜だわ」
「芝桜?」
「そう。その名の通り、芝から咲く桜なの」
「へえー」

 ピーチはそう説明した後、おもむろに芝桜へ足を踏み入れた。奥まで行くとその場に座り込み、寝転がってしまった。

「ちょ……姫っ」

 マリオは予想外の彼女の行動に少し驚いてしまい、慌てて彼女の後を追った。

「うふふ。一度寝てみたかったのよ」

 ピーチは悪戯っ子の様に笑顔で舌を出してみせる。マリオはやれやれと息を吐き、彼女の隣へ座った。
 二人で木から咲く桜を見上げる。風に靡き、小雨の如く舞い散る花びらがマリオ達へ暖かく降り注いだ。
 芝桜からも花びらが舞い上がり、正に全面桜の世界だった。

「こうして平和な場所で二人っきりって、久しぶりじゃないかしら?」

 ピーチは寝ながら呟いた。マリオは振り向く。

「そうでしょうか」
「平和な時間を過ごしている内に、いっつもクッパが現れては私をさらって行くんだもの。一寸うんざりになって来たわ」

 膨れっ面で溜息をつくピーチに、マリオはフフッと笑った。
 そんな彼を見、ピーチは微笑んだ。

「それでも、マリオと素敵な仲間達が助けに来てくれるから、いつも嬉しいわ」
「姫……」

 見れば、ピーチは頬を赤くしてこちらを見ていた。マリオは再び鼓動を高く鳴らしてしまう。
 ピーチとマリオは両想いだ。だから、二人っきりの時間は、競技やパーティよりも、クッパと戦う時よりも、心臓が早く動いているのである。今も、その絶好の域だ。そして、マリオの体の芯も熱くなっている様子である。

(だ、駄目だ、こんな所で……)

 何とか理性を保ちたいと、マリオは密かに脳内で戦っていた。しかし、

「マリオ?」

 ピーチはこちらを向く。小首を傾げ、ジッと見詰めてきた。
 その表情に、マリオは遂に頭の中の何かが切れてしまった。

「姫」

 ピーチの返事も待たず、マリオは彼女にそっと跨がった。

「マ、マリオ? 何……」

 ピーチは突然のマリオの行動に驚き、目を丸くしていた。同時に、不安な色も交えた表情をしている。
 マリオは、ピーチの頬にそっとキスを落とした。思わずピーチの体が反応してしまう。

「姫も分かってきたみたいですね」
「だ、駄目よ、マリオ。こんな所で……」
「大丈夫です。貴方も桜色ですから、分かりませんよ」
「っ……」

 ピーチは冷静であってもパニクっていた。だが、マリオから逃げる力は無い。
 それに、どこにいたって、この状況を嫌がる思いは、いつだって抱いていないのだ。

「ですが、これからは僕の色に染まって貰います」

 ピーチの耳元で静かに囁く。ピーチは、熱い水をブルーアイから頬へと流した。
 そしてマリオは、抵抗を見せなくなった彼女のドレスを優しく脱がして行った。




「桜色に映えていて、綺麗ですよ」

 熱に寄る、ピンク色も交えたピーチの肌に手を這わせる。綺麗な肌のあちこちに愛おしそうに口付けると、ピーチの息も次第に上っていった。
 道より大分奥にいるが、流石のピーチも、部屋内より羞恥があった。それでも、彼の束縛からは逃れられなくて、寧ろ、逃れたくなくて。
 何よりも、心から大好きな人に、こうして触れて貰っている事が、何よりも嬉しくて、これからも、沢山触れて欲しいと願っている。
 逞しく大きな手が彼女の細い太腿を這い、ピーチの体が急速に火照り出す。
 だが、彼の上半身への口に寄る愛撫ばかりに耐えきれず、ピーチは自然と彼に足を開いた。

「姫?」
「私の中も、どうか貴方の色で染めて」

 熱い息を吐きながらマリオの頬に両手で触れる。マリオは少し意外だと言う顔をしたが、それは一瞬だけ。優しい表情になり、ピーチに口付けた。

「外でやるのが恥ずかしいのですか? 結構きついですよ」
「ん、んっ……」

 既に濡れている部分へマリオの中指が挿り込んでくる。ゆっくりと出し入れされ、中は彼の指を思わず締め上げた。

「直ぐ、そんな事も忘れさせてあげます」
「……!」

 人差し指も追加され、中を少しずつ広げていった。中も大分感じて来た所で愛液が見る見る溢れ出、芝桜もその熱に染まる。
 少しずつ抜き挿す速さを上げると、その快楽に耐えられそうも無く、ピーチの意識は朦朧としてきた。

「っあ……はぁっ……!」

 追い打ちと言う様に、解された部分に濡れた感触がし、ピーチの体が跳ねる。舌は敏感な部分を転がし、少しずつ奥へと侵入して行った。

「はっ、あ……はあ……っ」
「美味しそうに熟されてますよ」
「うっ……ん……!」

 マリオの含み笑いが下から聞こえ、ピーチの顔は更に熱く染まる。
 そして、下から熱いものが触れたと感じると思わず体を強張らせてしまう。マリオは落ち着かせようと、ピーチを抱き締め、唇だけで深く口付けた。

「マリオッ……あ……っ!」

 熱い肉棒が彼女の中を貫いた。ピーチの体はビクビクと跳ね上がるが、彼のを必死で受け入れようとマリオを抱き締めた。マリオは、ピーチの背中を両手で撫でた。

「あ、あっ……ん……は……っ」
「姫……」

 囁かれる熱い吐息にピーチはギュッと目を閉じる。
 ゆっくりと出し入れを繰り返され、その熱い時間に甘い吐息を何度も漏らした。時折深く挿し込まれ、うっかり声を上げてしまいそうになる。敏感な部分を何度も擦られても、絶頂の域までは辿り着かないが、快楽が続く事に愛しさを実感する。
 痛みはちっとも感じない。彼が抱く時の優しさが媚薬となって、ピーチの心身を支配した。熱に魘されて涙を流す瞳にマリオはキスをする。その優しさが、逆に辛い時もあった。いつしか二度とこの時間が訪れなかったら、恐ろしくて堪らなかった。

「マリ、オ……ッ」

 不安な色に染まる目がマリオを捕らえた。マリオはそれを見ると、彼女の顔中にキスの雨を降らせた。

「姫、大丈夫です……僕はいつでも、貴方の側にいます……」

 様々な気持ちが入り交じった涙が止まらないピーチを、マリオはギュッと抱擁した。その温もりに、ピーチは心の底からホッとした。
 約束だからね。絶対に、破らないでね……。

「っはぁ……ん……ぅん……っ」

 甘い吐息を漏らす彼女の唇を奪い、中で水音を漏らす。その間でも、彼女の中の熱は彼女の中を己色で染める。それは次第に奥を攻め立て、大きくなり、圧迫した。
 この上無い幸福感に嬉しくて、マリオを抱き締める腕に更に力を込めた。
 花びらを降らす桜達がいつもより輝いて見えた。二人を周りから見えぬ様に優しく包んでいる。彼女達を乗せた芝桜も、熱混じりの白い肌を持ったピーチを美しく魅了させた。
 とても幸せな色をした桜達。己を枯れさせてでも、人々に自分達の幸せを分けていた。
 一生忘れないであろう、二度と訪れないかも分からない、最高の時間を……。

「んんー……っ」

 二人は、同時に絶頂の域へ達した。ピーチの愛液が彼のを包み、マリオの愛液を中で受け止めたのだった。




 マリオファミリーの花見は夕方頃にお開きになった。
 大きな夕日が地平線へ沈む中、彼等は帰路を歩いていた。
 ヨッシーが乗せているのは、人一倍疲れ果てたピーチだった。

「大丈夫ですか?」

 ヨッシーは悲しい目をピーチに向けるが、ピーチは冷や汗を流しながら微笑んだ。

「ふふ、あまり大丈夫じゃないかも知れないわ。有難う、ヨッシー」
「ねえ兄さん」

 少し大きめのゴミ袋を片手にルイージはマリオの隣を歩く。

「何?」

 マリオは後頭部に両手を回して返事をした。ルイージは若干気まずい表情をしながらこっそりと言った。

「いい加減、外でやるのやめてくれないかな」

 勿論、ルイージ達は彼等の行為等見ていないが、兄を知り尽くしているルイージはかなり鋭かった。マリオはギクッと図星を付かれるが、あははと愛想笑いをして見せた。

「ま、ご苦労様とでも言うべきか」

 こっそり話を聞いていたワリオは、ニヤニヤしながらマリオの頭をグシャグシャと撫でた。

(ルイージの言う通りだな)

 マリオは赤い顔をしながら頬をポリポリ掻いた。
 こう言う約束を交わしても、数日後には破られるのが落ちなのだが。




 桜の世界で微笑む姫は、本当に美しかった。
 それで、彼女を染める桜に一寸だけ嫉妬してしまったのは、姫には内緒。
 だけど、また来たいと思っている。彼女と手を繋いで……。










 ──end──








 【後書き】


 裏3100番をゲットし、マリ桃小説をリクして下さったくり2様へ捧げます。
 ノマカプの裏小説は恐らく初めてかと思われます。如何でしたでしょうか?
 御期待に添えられていなかったら大変申し訳御座いません。
 春シーズンと言う事で、桜を題材にして書かせて頂きました。宜しければお受け取り下さいませ。

 それではキリリク有難う御座いました!