共生法








 二人が夜を共にするのは既に習慣となっている様だが、今の二人は不思議にも思っていなかった。寧ろ、この様な関係まで築き上げられたことには否定しないし、とても幸せを抱いていた。
 互いに告白するのは、それなりの勇気がいたものである。もし断られたら、一生彼に軽蔑されるだろうと、不安が募ってならなかった。だが、相手も同じ気持ちだっただなんて、もしかすると、断られるよりも驚いてしまっただろう。

 ──これからも一緒にいて。
 ──死ぬまで側にいたい。
 ──いや、死んでもずっと一緒だよ。

 その後、誓い合ったあの言葉は、今でも二人の心に刻まれている。その言葉は、消えることは無いだろう。
 最初は密かにキスを交わし、やがては体も重ね、それを越えれば何てことは無い。愛と幸せだけが成長していく。この気持ちが消えてしまわない様に、何度も相手を求め合った。
 そして今日も──。
 明かりを落とした部屋。窓の外は明るい夜空で、銀色に恐ろしく輝く満月がこの部屋を淡く照らしていた。
 月光に二人の体が踊り狂う。互いを愛撫しあった体は既に高温を持ち、相手の肌が恋しくて、離れられない貪欲に満たされた。
 彼を覆う狐の青年──フォックス・マクラウドは、彼に全てを愛される存在の美青年──リンクへ、己の体を繋げていく。相手の熱い想いが体内へ刻まれてゆくのを、金髪の美青年は快く受け入れる。
 体を揺らす度に、二人の体からは淫らな旋律が生み出され、ベッドの軋みがリズミカルに奏でる。
 フォックスがリンクの白い体のラインを手でそっと撫でていけば、また新しい声が発せられ、それも二人の聴覚を負わせた。
 月光に照らされ、反射して輝く君の体は、何て美しいのだろう。傷一つ無い肌を壊すのが怖いと思えば負けになる。ならば逸そ、自分の手で壊せば良い。それも愛の証となるのだから。

「フォックス、沢山触って?」

 大分感じている表情に、涙が溢れそうな瞳で見つめられる。フォックスは、そんな行動を取る彼に、胸を熱い棒で貫かれた感覚を持った。だが切れそうな理性は何とか押さえ、リンクの望み通り、体に何点かのキスを落としていく。
 その間にも、硬く熱い二人のソレは質量を増し、甘い蜜が先端から膨らむ。リンクの熱くとろける壁に優しく包まれているフォックスの雄。先端から溢れる蜜と、彼の中の分泌液が混ざり合い、潤滑剤の役割を果たす。
 体を愛撫しながら、何度も抜き挿しを繰り返す。密かに肉の音を流しながら。

「リンク……リン……ク……!」

 愛しい名前を何度も呼びながら体を動かす。相手もそれに合わせながら、相手の名前を呼び続ける。

「フォックス……フォックス……っ」

 意識を掻き回され、朦朧し始めても夢中で求め合う。最早理性なんてどうでも良くなり、互いヘブンを目指す。
 どちらからともなく口付けを交わしながら、二人は同時に果てた。




 フォックスは彼を抱いている間に、誰かから聞いた話をふと思い出した。

 ──生き物は死んでもまた蘇る。

 いつまでも共に暮らそうと誓い合った二人だが、フォックスはその話を耳にしてから僅かな不安を覚えた。もし死んだとしたら、二人は何らかの形で生まれ変わるかも知れない。その時が来ても、俺達は再会する事が可能なのだろうか? もしかしたら、赤の他人同士になり、相手への愛は忘れているかも分からない。そう思うだけで、フォックスに何かの拒否反応が起こっていた。

 ──そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。
 ──こんなに愛しい彼は、死んでも野放ししたくない!

 そこで、フッと思い出したことがあった。それは、自分の父のことである。
 父はアンドルフの罠に落ち、命を落としたと言う知らせを受けた。だけど、アンドルフを倒した時、父が来てくれたお陰で、爆発するアジトから無事脱出出来た。その後の父は行方知れずだが、死んだと思わせた彼が来てくれたのは、今でもはっきりと覚えている。彼が、何よりの証人かも知れなかった。
 死んでも同じ形で蘇るなら、運命も変わらず蘇るかも知れない。

 ──今、ココデ死ンデモ、キットドコカデ出会エル筈ダ。ソウ、ソウ信ジテル。
「フォックス?」

 リンクは、事を終えて熱い吐息を漏らした後、フォックスの様子に眉をひそめた。
 だが、今のフォックスのどんなに良い耳だろうと、彼の言葉が入って来ることは無い。彼の心は今、闇に支配されつつあった。
 死んでも蘇る。その話が本当ならば、きっと……。
 気付けば握り締めていた果物ナイフ。それを持つフォックスの手が、少しずつ上がっていく。リンクの目にそれが映ると、リンクは顔を青ざめ、逃げようと体をよじる。だがフォックスにのし掛られている今、逃げることは不可能だった。
 そして、リンクの最悪なる予感は的中した。右腕に酷い熱が一気に集まり、そこから何かが噴出される感覚を抱く。驚きのあまり、思わず声にもならない悲鳴を上げた。純白なシーツが、綺麗な赤で一辺に染まる。
 フォックスはそれでも、平然とした目で彼を見下ろしていた。

「フォックス……っ、何で……?」

 何が起きたのか理解出来ないと言った目でフォックスを凝視する。
 が、フォックスは無表情で彼を見下ろしている。心諸とも突き刺す様な冷たい目に、リンクはゾクリと鳥肌を立たせた。
 その間にも、フォックスは再び果物ナイフをゆっくりと振り上げ、瞬時に振り下ろす。さっきの傷と同じ場所へ突き立てるとさっきよりも刃が肉へ深く入り込む。新たな鮮血も飛び散り、フォックスの顔がソレで浴びる。そして突き刺さったままのナイフの柄で円を描けば血はたえまなくシーツに広がる。リンクは見開いたままもがき苦しむしか無い。
 血を散らしながら乱暴にソレを引き抜き、今度はもう片腕に突き立てた。リンクは只それを受け入れる以外考えられず、だがその激痛に必死で耐えようと歯を力強くくいしばる。

「悲鳴を上げたければ上げても良い。俺も直ぐに後を追うから」

 彼の生が尽きたら自分の首に刃を滑らせる。それを余裕で考える程に、今のフォックスはどこかいかれていた。
 苦しい今の世の中だ。最後までいられず途中で終わる時が突然来るかも分からない。お互い死んで、今度は永遠に幸せな時代に生まれて来ると良い。そしたら、いきなり離れ離れになることは無いだろう。と、今のフォックスは、それを信じきってしまっていた。
 フォックスは壊れた人形の様に、リンクの腕を滅多刺しする。リンクは声にならない叫びを上げながら痛みを嫌と言う程味わわされた。
 軈て痛みを感じない程になったと思われ、血で綺麗に染まったナイフを改めて握ると、遂にリンクの首元へソレがあてられた。このまま横へ引けば、彼の命の炎は瞬時で消えるだろう。フォックスは手に力を込め、そのまま切り裂こうとした。
 その時、リンクの表情が目に入った。光を失いつつある彼の瞳から涙が溢れる。その涙は痛みからと言えど、腕を刺された痛みからでは無い様に見える。
 フォックスは、気付けば彼のその涙を見ていた。これ以上の事をやれば、彼のその涙も止まるだろう。
 その涙を止めてはならない。そう思った時、

「フォックス、俺を殺してどうする気?」

 漸く口から出た彼の言葉が、フォックスの耳へ、脳内へ流れ込む。

「……こんなフォックス、嫌だ……もし死んで、生まれ変わっても、俺、こんなフォックス……きっと嫌いになってるよ……!」
「!!」

 力任せに言われ、フォックスは更にその言葉を聞いてハッとした。俺は今、何をしているんだ。リンクをどうして殺そうとした? 生まれ変わらせるって、なぜそんな馬鹿なことを考る……!?
 フォックスは自分を恐れてしまい、ナイフのターゲットを気付けば変えていた。それはリンクの言葉に寄り目を覚ましたが、まだどこか精神の異常を残している彼の真っ先の行動。

「フォックス!!」

 リンクは自分が重傷と言うのも気にせず、フォックスを止めようとしたが、もう一色の液体が、シーツを再び染め上げたのだった。




 こんな自分、消えてしまえば良いんだ。恋人を……愛しい人を殺そうとした。精神異常でもなんだろうと、その事実に変わり無い。
 消えて、別の世界で、自分の罪を償おう。苦しい人生が待ち構えても、俺は喜んで受け入れよう。それが、俺への罰なのだから……。




 目を閉じながら意識を取り戻した。俺はきっと、別世界へ来たのだろう。だって、刺した腹の痛みが全く無いから。あの時は深々と刺したから、死んでもおかしくない。

「……ス……ォックス……!」

 遠くから誰かの声。聞き覚えはある。誰だっけ……。

「フォックス!!」

 突然直ぐ近くで声がしたから、驚いて目をパッチリと覚ました。
 そこにいたのは、涙目で見下ろすリンクだった。
 どうしてリンクがここに? 俺、確か……。

「良かった……気が付いた……!」

 リンクは嬉しそうに笑い、涙を拭った。
 確か彼は腕が重傷だったんじゃ……俺のせいで……。

「フォックス、本当ビックリしたんだからな」
「マ、マリオ? それにネスまで……」

 救急箱を両手に持ち、呆れた息を吐いているマリオと、フォックスが意識を取り戻したことで笑顔なネスも側にいた。

「何の騒ぎかと僕達が駆け付けたら、驚いたよ。少しでも遅かったら、出血多量、もしくはショックで死んでたからね」
「ネスのPSIで応急処置した後、マリオが俺達を手当てしてくれたんだよ」
「そう……だったんだ」

 マリオは、落ち込むフォックスを軽く睨んだ。

「リンクから聞いたよ、あの時何があったか」

 二人の関係を知る者はほんの僅かで、その中にはマリオとネスもいた。フォックスは、グッと歯を噛み締める。マリオはフォックスへ近付く。スマッシュ戦士のリーダーとして何かするのだろう。

「待って、マリオさんっ……」

 リンクが止めようするが、ネスが彼の前に出る。

「大丈夫だよ、勇者のお兄ちゃん」
「ネス……」

 マリオはフォックスの前に立つと、手を出す。殴られる覚悟を決めたフォックスは目を強く閉じた。だが何をされるのかと思いきや、でこぴんをされたのだ。フォックスは目をパチクリさせ、でこぴんされた額を抑えた。

「一先ずはそれで反省してなよ。本当の仕置きは考えとくから」

 マリオはそう言い残して部屋を後にした。ネスもクスッと微笑むとマリオについていった。

「例え過ちを犯しても、仲間に変わり無い。そう言いたいんだろうね」

 リンクは微笑んだ。だがフォックスはうつ向き、今にも泣きそうになる。

「……リンク、俺を許すのか?」
「……」
「俺はリンクを殺すとこだったんだ。なのに、何でそんな平然といられるんだよ……!」

 普通だったら怒ったり憎んだりする筈だ。なのに何故……。
 リンクは目を伏せたが、少し開くと、フォックスをギュッと抱き締めた。腕はネスとマリオの治療で大分回復した為、動かせる様になったのだ。

「もう、フォックスを悲しませたりしない。いつも守られっぱなしだったから、今度は俺がフォックスを守るよ。どんなフォックスでも、俺は愛してるから……」
「!」

 フォックスの目から涙が溢れる。罪は重いのに、許される罪悪感と、彼の想いに胸を締め付けられる。

「リンク、本当にごめん……もう、あんな馬鹿なことはしないからっ……!」

 リンクが抱き締めながら何度も頷いているのを感じた。
 もう、狂うことは無いだろう。
 これからは、二人で互いを守り合おう。きっと、いつまでも共に生きていけるから……。










 ──Fin──








 【後書き】


 來様、大変長らくお待たせ致しました! お待たせした挙句この様な出来で誠に申し訳ありません(滝汗)。
 9400番を踏んで下さった來様よりリクを頂きました、「フォリンのちょいグロ裏小説」です。
 実はグロ表現をどう表現するか悩んだので、時間が掛かってしまいました(掛かり過ぎだろ)。このような小説で良ければお受け取り下さいっ(土下座)。
 それではリクありがとうございました!