悪夢 あれからどれくらいの時が過ぎたのだろう。一気に眠気に襲われ、意識を取り戻した時は、突き刺さる程の冷気が体を覆った。 それに眠気を掻き消され、瞼がハッと開く。初めはまだ夢の中だと思っていたが、冷え込む痛さは嘘ではなかった。 さっきまで明るかった光は完全に無くなっていて、目の前は只暗闇に覆われていた。壁の高い位置にある一つの小さな窓から差し込む光だけが明かりの頼りで、それで自分が今どこにいるのか漸く把握出来た。 石で敷き詰められた狭い部屋。どうやら牢屋の様だ。夜だからか、否、恐らく昼間でも内部のとてつもない寒さは変らないだろう。服が纏ってもそれを突き抜け、肌に直接石の床の冷たい温度が槍となって突き刺さり、痛みが耐えない。 なるべくそこから逃れたくて立ち上がろうとしたが、それと同時に、ジャラ……と鉄が擦れる音がした。鎖である。それにギョッとした途端、それに引き戻されて再び座り込んでしまった。僅かな光に重い感触がする片手を翳すと、黒い手錠が目に映った。翳した時にまた鎖の音がした。それがこの手錠と壁を繋いでいるのだ。 (何……?) マリオの思考は停止していた。普通は力を入れればこんな手錠位外れるのだが、今は呆然状態に至っている為、上手く力が入らない。 そんな中、ある人物を思い浮かんだ。 (ワリオはどこ?) 意識を失う前は、確か自分はワリオと一緒だった。もしかしたら彼もこんな目に遭ってしまったのではないか。ワリオはライバル且つ旧友だ。マリオは今、自分より彼の方が心配な心境である。 暫くすると、縦を描いた外の光がマリオの目を襲った。 「うっ……!」 マリオは暗闇に慣れてしまった視界を光に攻撃され、痛みのあまり瞼を強く瞑った。そして、恐る恐る瞼を開いていき、目の前に現れた人物を確認する。光をバックに目に映る人物がシルエットで分からないが、光が消えた瞬間、漸くそれは色付いた。 「ワリオ……!?」 入って来たのはワリオだった。どこも怪我してないと分かると、マリオは安堵の溜息をついた。 「無事だったんだね、ワリオ!」 ところが、ワリオは何も反応を示さない。只、マリオを冷たく見下ろしていた。それを見ていたマリオの笑顔が次第に失せ、背中にも悪寒が走る。顔は青ざめ、固まってしまった。 「薬が効いた様だな」 「薬? 何云って……」 その時、マリオはハッとした。瞬間、脳内でさっきまでの出来事がフラッシュバックされる。 確か二人はマリオの家にいた。 ワリオがマリオにキノコスープを作ってくれたのはどうも珍しかった。だけど折角作ってくれたのだから頂いた。とても美味しいと感じた途端、目の前が暗くなって、気がついたらここにいた。 正か……自分をここへ連れて来たのは……ワリオ? 「う、嘘だろ? 冗談って云えよ……」 「……」 彼は何も答えない。マリオは嫌な予感がして、ゾクッと鳥肌を立たせた。 「俺様の気持ちに、いい加減気付いて欲しいんだが」 「え?」 「俺様のお前に対する想いは、誰よりも強いってことだよ」 云ってる意味が分からない。否、理解したくても心が自然と拒否っている。 期待していた言葉は、次の言葉で見事打ち破られた。 「俺は、お前が好きなんだ、誰よりもな!」 「っ……!?」 強気な発言にマリオは身を引かせ、言葉を失った。冗談では無い。彼の今の言葉には、本気と言う気持ちが込められていた。 けれど、そんな……。 「だから閉じ込めたんだよ、俺様の気持ちに少しも気付かない、鈍感なマリオをな」 「そ、そんな! だからってわざわざこんなことする必要無いだろう!」 「思い知らせてやるんだよ」 突然低く呟かれ、マリオは身を強張らせた。 ワリオの震えている握り拳が、ゆっくりと緩んだ。 「俺様の気持ちを、体を使って教えてやるってんだよ」 「ワ、ワリオ!?」 いきなり、どうしてこんな目に遭う羽目になるんだ。今まで、ライバルとして、時にパートナーとして共にいた彼に、どうしてこんな仕打ちを受けなくてはならないんだ。 とにかくここにいると、きっと命が危ない。逃げようと試みるが、鎖に動きを止められ、ワリオの手にあっさりと捕われた。そして怪力の腕に寄って床に仰向けに押し倒された。 「うっ……げほ!」 背中を叩かれ、咽せてしまう。 そうさせる暇も与えない位、ワリオは素早く彼に跨がり、彼のオーバーオールのボタンを大きな手で弾いた。上半身の肌を覆う赤いシャツも裂かれ、ビリビリと言う音が石部屋内に反響した。 「い、嫌だ! ワリオ!」 「……うるせえっ」 オーバーオールを引き摺り下ろし、生まれた体にされてしまった。 「やめ……あ!」 「やめろと云われて、直ぐにやめる俺様だと思うか?」 「うぅ……んっ!」 「ほらここ、もうこんなに濡れてるぞ?」 そう云ってワリオは、寒さに堅くなってしまったマリオの雄を少し力を入れて握り締めた。 「ひ、ぐ……!」 そのまま大きく揺すられ、激しい射精感に襲われる。手から伝わる熱が、更なる追い打ちをかけた。 「ワリ、オ……お願いっ……!」 「素直に出しちまえば良いじゃねえか。気持ち良いぞ?」 イヤらしい笑みを浮かべながら、ワリオはマリオの雄を揺するスピードを上げた。次第にそれは膨らみを増し、マリオは限界までに陥る。 「いや、嫌だ! あ、出る……よ! も、駄目……!」 「まだ、出させねえぜ」 前言撤回の様で、ワリオはマリオのそれの根元を指で抑え込んだ。マリオは涙を流しながら必死で首を横に振る。我慢出来ないからか、彼の先端からは白い液体が一雫溢れた。 「あ……ワリオ、お願い……イかせ、て……っ!」 「先にイかせるかよ。俺様もイかせろよな」 ワリオは自分の服を器用に脱ぎ、下半身を露にした。大きな雄を、まだ慣らしていない孔に押し当てる。 マリオの体がビクッと跳ね、マリオは嫌々と首を振った。 「これが俺様の気持ちだ……確りと受け取りやがれ!」 ワリオはそのまま体を前へ押し進めた。 「い、やああぁ!!」 マリオの頭の中の何かが切れ、遂に半狂乱に陥った。孔は裂かれた音がし、赤い筋が闇色の石を染める。 堅い牢屋に響くのは、卑猥な水音と、ジャラジャラと鳴り響く鎖の音。 ワリオも限界の様で、腰の動きを早める。マリオはさっきまで感じた激痛が次第に快楽に代わり、強請ろうとワリオの首に腕を回す。互いの理性は既に失っていた。 「もう、良いぜ……思い切り出せよ、マリオ!」 「あ、あ、ワリオッ! ワリ……ん、ああああぁっ!!」 ワリオが手を解放した瞬間、マリオの下半身に熱が溜まる。二人は己の想いを目の前の人物に向かって思い切り解放したのだった。 そして、マリオは再び意識を飛ばしてしまった。 ワリオの想いが感じる。だけれど、愛は感じられない。受け取りたくても、それは大き過ぎて、全ては受け止められなかった。 本当のワリオは、こんなことする奴じゃないと、信じてた……。 「……リオ、マリオ!」 「!!」 マリオは、呼び声にハッと意識を取り戻した。 さっきはとてつもない寒さに閉じ込められていたが、今は温かさがマリオの体を包んでいた。柔らかいベッドが心地良い。明かりも太陽みたいで、懐かしい匂いもする。ここは、自分の家だと分かった。 しかし、安心しきったと思いきや、自分を今覗き込んでいるのは、自分を襲った本人だった。マリオは目を見開き、体を起こしては後退った。 「マリオ?」 「っ……あ、あぁ……」 彼に強姦された光景が蘇り、マリオは身を震わせ、顔色を青くした。 その様子に、ワリオは首を傾げる。まるで、さっきまでの出来事を自分は無関係だと捉えているみたいに。寧ろ何もしていないと言う様だ。 「マリオ? 一体どうし……」 「い、嫌だ! 触るな!!」 バシッと、伸ばしてきた手を反射的に手で弾き返してしまった。 彼に対して心に酷い傷を負ってしまった為、彼を見る度震えが止まらなかった。悪夢が未だ覚めない気がして、例え人が変わった彼でも、信用出来るのにかなりの時間を必要とした。 それを驚いた目で見ていたワリオだが、状況を理解したのか、次第に悲しい目を見せ出した。相当酷い目に遭わされたんだなと、マリオから少し身を離した。 その時、ノック音の後に、マリオの部屋の扉がカチャリと開かれた。 「ワリオさん」 部屋に入って来たのはリンクだ。ワリオは暫くマリオを見た後、彼にゆっくりと振り向いた。 「俺がマリオさんに説明しますから、ワリオさんは外で待ってて下さい」 「……おう。今のマリオじゃ、俺の言葉なんて一言も聞いちゃくれねえだろうからな」 そう云い、ワリオとリンクは擦れ違った。リンクは、顔を反らしているマリオを悲しく見ながら、側に置いてある椅子に腰掛けた。 「リーダーの様子は?」 外で待機していたピットはワリオが出て来ると問い掛けた。ワリオは肩を竦めた。 「後はリンクに任せるよ。あいつ、相当俺に怯えてたし」 「そうだよな……正かリーダーまでクローンに襲われたなんて」 マリオが突如行方知れずになった時、その情報を耳にしたリンク、ピット、そしてワリオは、ギガ軍のアジトへ侵入した。立ちはだかるザコ敵軍団を次々と倒しながら、奥を目指す。 マリオとクローンの気配を感じた三人は、とある扉を抉じ開けた。そこは暗い牢屋で、奥を見ると、ボロボロになって倒れているマリオと、目を赤く輝かせている、ワリオのクローンがいた。 リンクとピットがその場から弓を構え、真ん中に立っていたワリオは、クローンめがけてパンチをかまそうとした。しかし、クローンはでかい図体なのにも関わらずヒラリとそれをかわし、二人の放った矢も側転しながら難なくかわした。三人は彼に攻撃を仕掛けようと向かった。その時、ワリオのクローンは床に向かって何かを投げ、一瞬だけそこから強い光が放たれ、そしてその場から姿を消した。 三人は攻撃をやめ、直ぐに次の行動に移った。 マリオは重傷で既に虫の息だった。ピットがマリオを抱えて一目散でそこから飛び立ち、残りの二人も急いでアジトを出た。ピットは運びながら何度も彼を呼んだが、意識を取り戻す様子は無かった。 そして漸くワリオの呼び声に意識を取り戻し、今に至る。 「正かスパイとなったクローンまで現れたとは」 マリオの部屋の前で、ワリオとピットは話を交わす。二人は腕を組み、難しい表情をしている。 「この間なんかは、フォックスのクローンが出来てたよな。確か最初に作られたって言う……」 「だからさっき、リンクさんは『俺が説明する』って云ってたんだね。確かリンクさんも……」 ピットは途中で、ハッと口を抑えた、不味いと言いたけな気まずい顔になって。そんな彼をワリオは少し睨んだ。 「奴に聞こえるだろ。あいつも未だあのトラウマが残ってるんだしな」 「……ご免」 「だから、マリオさんを襲ったのは、彼本人じゃないんです」 「……そう、か……」 マリオは俯いたまま、彼の説明に納得した。 「ごめん。あの時は、全然分からなかったから」 「それはワリオさんに云って下さい」 リンクは微笑みながら、首を横に振った。 「マリオさんの気持ちは分かります。俺も、好きなフォックスに……いや、フォックスのクローンに襲われた。だけど、今でも俺はフォックスが好きだ。マリオさんも本当は、ワリオさんの事好きなんでしょ?」 「……」 クローンはスマッシュ戦士の全てをコピーしたものだが、良心は一切無い。良心が無いだけで、気持ちまでコピーされているのだ。ワリオの偽物が放った告白が事実なら、ワリオ本人も、自分を好きだと思ってくれているかも知れない。 マリオは布団を握り締め、リンクにこう云った。 「ワリオを、連れて来てくれるか?」 マリオは顔を反らしたまま云うが、リンクはそれを聞いた後で少し驚いた後、密かにクスリと笑った。 「分かりました」 立ち上がり、ワリオを呼びに行った。ワリオが事情を聞いた後で入ってくるが、マリオはまだ顔を見合わそうとしない。 「どうしたマリオ。俺様に復讐パンチでも送るつもりか?」 「ち、違う……!」 マリオはとっさにワリオに向くと慌てて首を振った。さっきまでと様子が違うと見たワリオは思わず目を丸くした。 マリオは涙目で彼を見詰めると、自らギュッと抱き締めた。 「マリオ?」 「……僕も、本当は……ワリオが、好き……なんだ」 しゃくり上げながら告白する。 「今迄気付かなくてご免……僕も、ずっと前から好きだったんだ。だけど、云うのが怖くて、黙ってたんだ……」 「……あいつ、そんな事をお前に云ってたのか?」 「っ!」 マリオの顔が一気に赤くなった。ワリオは吹き出し、彼もマリオをギュッと抱き締めた。 「俺様の気持ちは、お前の言う通りだ。俺様は、これからもお前を守ってやる。お前はスマッシュ戦士のリーダーだけどな、一人で解決しようと言う馬鹿な考えはやめろ。一人じゃ抜けられない壁が立ちはだかったら、遠慮なく俺様達を呼べ。仲間なんだからな」 「ワリオ……」 マリオは、彼にしては珍しい優しい言葉に、涙を自然と流し出した。クローンの彼は冷たかったけど、本物の彼は、とても温かかった。心に凍りついてたものが溶かされては涙となって、沢山流れ落ちる。 「助けるの、遅くなってごめんな。ギガ軍の奴らに、パンチを打ち込みに行こうな、リーダー?」 「……そうだな」 「愛してるぜ、マリオ」 「うん」 互いの気持ちが、想いが、やっと伝えられた。二人に、更なる絆が刻まれた。一生消えない刻印を……。 部屋を伺える窓から二人の様子を見ていたリンクとピットは、微笑ましく彼等を見守っていた。 ──了── 【後書き】 サイトに載せた小説はリニュ以来初ですね。 お話にワリオが出たので、逸そスマブラX設定で書いてみました。いかがでしたでしょうか(小)。 にしてもこんな内容になってしまってすみませ……(汗)。相変わらずドロドロ系って好物なんですよ(爆)。 この様な小説を最後まで読んで下さり、有難う御座いました。 |