「狐のお兄ちゃん、だーい好き!」


 いつもそうやって、無邪気に笑う君。兄弟かと思わせる位に、俺達は固い絆で結ばれている。
 俺は彼を本当の弟みたいに接していた。いつも側にいて、ネスは子供らしく周りから聞いた噂話や、今日あった出来事を毎日毎日お土産に持って来る。聞き入って快い返事をすれば満面な笑顔を見せ、人の話を聞かないと直ぐに怒る。そして、その可愛げの無い膨れっ面に俺が笑うと、意地っ張りになって叩いて来る。気付いたら周りからその光景を見られてしまっていて、若干恥ずかしかった時があった。
 友情以上の関係な気もしたが、もしかしたら、兄弟以上? 正か恋人同士にまで発展する訳は無いだろう。そうだとしても、冗談に過ぎない。皆笑うだろうし、俺だってそう思っているんだから。
 ……そう、思いたかったのだ。








 兄弟≦愛──きょうだいあい──








 ピットは白い翼を広げて空中散歩をしていた。トレーニングの日が続く中、たまには息抜きをしたいもの。広い青空を翔ぶのは好きで、気分転換には最適である。
 上々な気分で鼻唄を歌っていると、ふと下方向から光を感じた。何だと思って下を向くと、森の中から緑色に光った光弾がこちらに向かっている。ピットはギョッとしてその光を避けた。緑色の光はピットの横でピタッと消えたかと思いきや、そこから無数の小さな光が、花火の様に広範囲へ無差別に放たれたのだ。ピットは慌てて両腕で顔を覆うが、光の雨をまともに喰らってしまい、羽を僅かだが傷めてしまい、やむをえず下へと降りた。
 足を地面へつけた時、今度は前方から小さな黄色い光がこちらめがけて発射された。反射的にそれを避けると、その光は火柱を噴き上げたが、辺りの木々は不思議と燃え上がらなかった。その魔法はどうやら標的のみを燃やすらしい。
 こんな技を使えるのは一人だけと思い、放った方へ顔を向けた。攻撃した本人は、そう遠くは無かった。


「……ネス?」

「! あれ?……天使の……お兄ちゃん?」


 ネスは、ピットだと分かる前は戦闘態勢らしく険しい表情をしていたものの、分かった時はその表情も消え、代わりに焦りを見せる。味方が敵に見えてしまったのだろう。だが心が広いピットは冷静に微笑んだ。


「ご、ご免なさい……。うっかり敵だと……思っちゃった……」

「あはは。仕方ないよ、派遣されてまだ間もないからさ」

「仕方なくないよ! だって……」

「? あ、これかい?」


 ピットは苦笑いしながら、自分の羽を親指で示した。その純白した羽には少し焦げ目が入っていた。


「気にしないで。僕の気が元気な限り、これ位は直ぐに治るんだよ」

「…………」

「ネス?」


 ネスは今にも泣き出しそうな顔で、だが必死で唇を噛み締め、自分の服を震える程に握り締めていた。変な事言ったかなとピットは頬を掻いた。
 ネスは泣き声を漏らしながら口を開いた。


「……こんなんじゃ……」

「え?」

「こんなんじゃ……狐のお兄ちゃんは……振り向いてくれない……」

「……?」


 訳の分からない事を紡ぎ出したネスに対し、ピットはハテナマークを出していた。
 彼の言う『狐のお兄ちゃん』とは、スマッシュ戦士のサブリーダー、基、フォックスだと言う事は分かっていた。ネスとの友情関係もとっくに存じている。
 だが今の言葉には何かが引っ掛かった。それは友達に対して言う言葉だと捉えて良いのかどうか、ピットは少し考えた。取り合えず探りを入れてみようと問うが、


「それってどうい……」

「天使のお兄ちゃん、本当にゴメンね! 後でドクターにちゃんと診て貰うんだよ」


 それを遮った彼は素早くその場を走り去った。まるで何かを察し、口に出されては不味いと思ったらしく。


(そうか、テレパシーか)


 消えていく後ろ姿を見守った後、ピットは顎に指で触れ、少し考えた。


(ネス、正かね……)


 深く考えると傷付けると、ピットはこれ以上考えたくは無かった。


    ‥


 フォックスはキノコ城のバルコニーにて息抜きをしていた。
 そこへフォックスの目の前を一枚の白い羽が舞い落ち、何を意味するのかがとっさに分かったフォックスは、素早くそれを掴み、空を見上げた。空から降りてくる羽の持ち主は、フォックスの横へヒュッと降り立った。


「何のご用?」


 羽の先を摘み、羽毛の部分をクルクルと回しながら、フォックスは口の端を上げてピットを見る。ピットは自分の服を軽くはたきながらこちらを向いた。


「いいえ。サブリーダーの様子を見てみたかっただけです」

「あっそ。何で?」

「……気まぐれです……」

「?……ふーん。変なの」


 フォックスはきょとんとしながら言うと、何事も無かった様に、バルコニーからの景色を眺め始めた。
 ピットは立ち去る振りをして、チラッと彼を見た。フォックスは、本当に何も知らない顔をしている。


 ──こんなんじゃ……狐のお兄ちゃんは……振り向いてくれない……。


 ネスのあの時の声を思い出してみた。……この事を彼に言うのは止めよう。それで彼等を誤って傷付ける訳にはいかないのだから。彼等の固い友情を壊してはいけないと、ピットは堪えてそう決心した。


「サブリーダー」


 だが再び飛び立つ前に、フォックスに一つ質問をしようとした。フォックスは無言で振り向いた。


「サブリーダーは、ネスを親友だと思ってますか?」

「? ああ」


 いきなり何を言い出すんだとフォックスは目で語る。ピットはその返事に安心して息を吐いた。この関係こそが、一番にふさわしい。


「ピット、羽に傷が出来てるみたいだけど、翔ぶの平気か?」


 羽ばたかせる度にチクリと痛む羽の部分にフォックスは気付いたらしい。だが、ピットは笑顔で、大丈夫です、と返事をした。


「ではまた、夕食の時に」

「おう」


 ピットは、彼の返事を合図に羽をバサァッと大きく広げ、マッハの如くその場を飛び立った。フォックスは飛んでいったピットを見送る。


「…………」


 フォックスはピットの羽が気になった。何故なら、あの傷はどこかで見たからだ。


    ‥


 夕食の時間。
 スマッシュ戦士達は時間通りに集まり、食事を始めた。


「お代わりー!」

「うわ! カービィ早すぎ!」

「あはは! それ、食べたと言うより明らかに吸い込んだ感じですよね」

「ルイージ〜、バナナが無いよ〜」

「待っててよ、今持って来るから」


 食事でワイワイ騒ぐ中、ピットはふと、フォックスとネスに振り向いた。普段なら騒ぐ連中にも負けず劣らず、楽しい会話をしているだろう。
 ──しかし次の瞬間、ピットの笑顔は瞬時に何処かへ消えた。
 珍しくも二人は一言の会話もせずに黙々と夕食を取っている。それはいつもの光景では無い。寧ろ初めて見た。
 これに気付いたのはピットのみで、他の戦士達は食べるのとお喋りに夢中で気付いていない。
 ピットは、カウンセラーでもある隣のマリオにこそっと耳打ちした。


「あの2人、かなり機嫌悪そうだけど?」


 そう。フォックスとネスは仲が悪くなってしまった雰囲気なのだ。一体この短時間で何があったのか、ピットは気になって仕方がない。
 マリオは他の人との会話を中断して二人の方を見た。すると、呆れた感じな溜め息が聞こえ、ピットは彼に振り向く。


「喧嘩したみたい」


 マリオの意外性な返事にドキッとした。凄く仲が良いあの二人が喧嘩をするだなんて。


「喧嘩する程仲が良い……って、言いたいとこだけど」


 マリオは頬杖をつきながら、顔を反らし合っている二人を見、続けた。


「あの2人は本当に冗談抜きだ」

「どう言う事です?」

「今日、ネスが一人でトレーニングしてる時、君を敵だと勘違いしたろ? それでフォックスに凄く叱られて、何度もネスは謝ったけど、仲間思いの強いフォックスはピットを優先にしちゃったらしくて」

「何で僕がネスに傷付けられたって分かったんですか?」

「……君ねえ」


 マリオは苦笑いで大きな息を吐きながら、ピットの肩に手を置いた。


「あいつら、どれだけ一緒だと思ってるの。ピットの傷付いた羽を見て、一発で分かったみたいなんだ、ネスのPKフラッシュの跡だって。事情を聞いたらネスは正直に答えて……」

「じゃあ僕も原因の一人って訳じゃないですか!」


 あの2人の仲を見守りたいのに、二人の縁を切ってしまったのは自分にも原因がある。何とか仲直りをさせたい。
 ピットは彼等の元へ一度行こうと立ち上がりかけ、マリオに腕を掴まれた。振り向くと、マリオは首を横に振っていた。ピットは何故止めると、腕を掴んだリーダーに眉をひそめた。


「自分を責めるな、ピット」

「! 別に責めてなんか……」

「これは二人だけの問題なんだ。関係有ろうと無かろうと、僕らが余計にも首を突っ込んだら、彼等の傷はまた深まるかも知れないだろう」

「──傷?」


 それを聞いたピットはハッとした。昼頃、ネスが呟いていた、あの言葉を思い出したのだ。
 自分の考えが的中しているとするとこうだ。
 ネスは一人前になろうと日々一人で訓練している。自分は戦いが苦手で非力だから、いつしか戦士の資格を失う。するとこの王国を追放されるであろう。
 そうなるとフォックスともう逢えなくなる。それで必死でトレーニングをしていたからか、目の前の者を敵味方判断が出来なくなり、上空を翔んでいたピットをすかさず攻撃してしまった。
 フォックスがピットの傷付いた羽を見てネスが彼を攻撃したとはっきりしたのは、ピットの羽は汚れなき白を持っていて、攻撃の傷跡がはっきりと残るからだ。裏切り行為や精神異常は過ちに値してしまい、それは戦士の恥で、王国の恥でもある。フォックスはそれで怒りを当てたと思う。
 しかしピットは考えた。大親友のフォックスならこれ位は笑って許すのでは?
 他にも理由が……否、フォックスが怒ったのには特別な理由があるのだ、きっと。
 ネスのあの言葉が、未だピットの脳裏をよぎる。


(空耳だと思ってたけど……)


 ピットは二人を痛い顔で見守りながら、観念して椅子に腰を下ろした。


「……リーダー」


 ポツリと言い、マリオの顔をこちらへ向かせた。ピットはうつ向きながら口を開いた。


「同性を好きになるって、有り得ると思いますか?」


 それを聞いたマリオは始め難しい顔をしたが、直ぐにフッと和らげた。


「有り得ると思うよ」


 マリオは微笑みながら、他の戦士と料理争いをしているワリオに振り向いた。



 戦士の就寝時間が来た。


「じゃあ今日の見張り担当は……」


 キノコ城の天辺は見晴らし抜群な展望台になっていて、そこからかなりの範囲を見渡せる。そこを深夜のみ、見張り台として役立てている。
 見張りはリーダーであるマリオが毎晩決め、指名された者は一日中そこで起きていなくてはならない。それもスマッシュ王国を守る務めなのだ。
 リーダーは顎を持って考えた後、指名を出した。


「フォックスとネスにしよう」


 案の定、差された二人は驚いた目をしながら顔を見合わせた。ピットはマリオを見るとマリオは彼にウィンクした。


「お。大親友のお2人さんか」


 ファルコは腕を組みながら感心した。


「2人ならどんな敵が現れてもちょちょいとやっつけちゃうよねー」


 ナナは『頼もしいー!』と言った感じでその場をピョンピョン跳ねた。
 戦士達が各々自分達の部屋へ戻る中、二人はまだ困った顔をしていたが、フォックスを横切ろうとしたマリオは彼にそっと呟いた。


「自信を持て」


 そう言い残し、マリオは待っていたワリオと去った。
 ピットも密かに微笑し、部屋を出た。
 2人だけがこの部屋にいた。
 暫し沈黙の時間が過ぎた後、


「……行こうか」


 顔を反らしながらフォックスが言うと、ネスは無言で頷いた。



 展望台は広大なスマッシュ王国を見渡せて、夜空もまるでプラネタリウムだ。無数の星達と蒼白く輝く満月の光が、静かに眠る王国を優しく包み込む。正に幻想的な絵の様だ。
 フォックスとネスは互い背中を向き合って見張りをしていた。


「さ、さっきも言ったけどな」


 フォックスはネスと自分に言い聞かせる。


「これは、王国を守る為なんだからな」

「うん」


 決して仲が悪くなったからだとは言えなかった。マリオやピットに自分達の心境を見抜かれているだろうから、これ以上は恥ずかしくて、例え二人っきりであろうと表に出せなかった。


(……子供っぽ)


 フォックスは小さな溜め息をつき、自分にそう言った。


「…………」

「…………」


 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。2人は一切顔を動かさず、無言のまま同じ方向を見張っている。何だか気まずくなり、フォックスは早く朝が来てくれないだろうかと願った。
 だが暫くすると、フォックスは片耳をピクッと動かした。後ろから何かが聞こえたのだ。……それは子供のすすり泣きだった。ここにいる子供と言えば一人しかいなくて、フォックスは今回の見張りで初めてネスの方を向いた。


「っ……ひ……ぅ……」

「ネス……」


 止まらない涙を両手で必死に拭う後ろ姿を見る。すすり泣きがエスカレートし、ネスの泣き声が少し大きくなった。
 フォックスは辛くなり、今日怒鳴ってしまった時を思い出した。
 あの時つい怒鳴ったのは、ネスの為でもあり、自分の為でもあった。
 スマッシュ王国を守るスマッシュ戦士であろうが、王国の法律は絶対。まだ子供だから一度は許されるだろうが、過ちを繰り返せば異次元へ永久追放される恐れがある。
 フォックスは、大切な親友を失うのが怖かった。弟的存在として可愛がっていたのだから、失う事は死と変わりない。大好きだった父親を失った悲しみの深さは、心に深く刻み込まれている。だからネスは、ネスだけは命に変えてでも守ってやりたい。
 失ってしまう事に恐れ、つい怒ってしまい、怖がらせてしまった。これ以上話し掛けたらまたネスを悲しませてしまいそうで、無言のままでいた。
 だけどネスは泣いている。泣いている彼を放ってはおけない。それに、まだ謝ってもいないじゃないか。謝るなら今だ。仲が悪いまま終わりたくない。後戻り出来ないだろうから。


「ネス」


 優しく声を掛けると、後ろ姿が震えた。


「ごめ……」

「ご免なさい」


 フォックスより先にネスが謝罪の言葉を述べた。


「ご免なさい、ご免なさい……お兄ちゃん……ご、め……なさ……っ……」


 しゃくり上げながらでもその場で何度も謝る。それはフォックスを怒らせた罪を償いたいからであろう。


「それはこっちの台詞だよ」


 フォックスはネスの隣へ移動した。
 彼の顔をそっと覗き込むと、彼の顔は涙でグチャグチャになっていた。フォックスは彼の頬を撫で、親指で涙を拭ってやった。
 ネスは鼻をすすりながらフォックスに向いた。


「俺こそ怒鳴って悪かった。つい……」


 彼の謝罪にネスはかぶりを振った。そして、今度は微笑みを見せたのだ。
 兄的存在の彼の首に腕を回し、強く抱擁した。フォックスも小さな彼の背中に手を回し、優しく抱き締めた。
 互いへの謝罪と、互いへの許し。途切れ掛けた二人の絆は、再び結ばれた。
 久しぶりに抱き合った気がしたけど、前より彼の体温に自分の心臓が早く動いていた。親しみ易くなり、安心感が湧いてきているのかも知れない。
 だけど、何か違和感があった。親友に対してで破裂一歩手前までこんなにも鼓動が高鳴っている。まるで、親友以上の何かがある感じがした。どうしてこんなに熱い気持ちを抱いているのだろう。もしかして俺、……ネスが……?


「……あのね、お兄ちゃん」

「何だい?」


 ネスはフォックスの服を強く握り締め、呟く。


「僕ね、トレーニングをやってる間、焦ってた」

「まだ半人前だから?」


 フォックスは予想して即答してみるが、返事は、違うと頭で意思表示していた。


「それもそうだけど、こんなんじゃ、狐のお兄ちゃんは振り向いてくれないって」

「……ん? ゴメン、言ってる意味が分からない」

「あ。ううん、今のは撤回して」


 ネスは顔を赤くし慌てたが、フォックスは構わなかった。


「教えて、正直に。な?」


 耳元でそっと囁く。ネスの体が反応した。
 自分も彼と同じ気持ちを抱いてるだろうから。友情以上に芽生えた何かが、自分の心の奥底を揺るがす。表してはならない一線を越えそうなのだ。
 勘違いならばはやとちり。どの道、彼を守りたいと固く誓っているのに代わりはない。
 今のネスの、自分に対する気持ちって?


「……お兄ちゃん……」


 フォックスと向き合った彼の涙は止まっている。代わりに僅かに頬を染めていた。そして、涙を流した後の潤い輝く漆黒の瞳が、フォックスのエメラルドの瞳を捉えた。月明かりが二人を照らす為、彼の色は確りと見える。
 今宵は満月。そこから放たれる蒼白い光が、魔力と感情を一気にそそらせた。
 フォックスがネスの背中を抱擁している手に少し力を込めると、吊られて彼もフォックスの首の辺りを引き寄せる。自然と唇が重なった。それは気持ちも重なり、同意しあった行為。触れ合う柔らかい唇は次第に深くなり、ネスは顔を赤く染めていくが、拒否る気配は見せなかった。無我夢中になり、やがてフォックスの舌が彼の小さな舌を捕えた。
 深夜にて二人の心が交じり合う。それはとても熱く、心地が好かった。
 フォックスが彼の中を優しく攻めると、感度の高いネスは可愛らしく溶けた表情をしていた。フォックスはこのまま彼を食べてしまいたい興奮に溢れるが、それは堪え、今度は感じて流している涙を舌で拭ってやった。
 赤い斑点の付いた、白く滑らかで震えている肌を両腕で包み込み、締め付ける内壁を奥まで少し速めに押し込む。早くも腺にフォックスの先端が擦れ、ネスは声を荒げた。
 小刻に漏れる声は、フォックスが繰り返し且つゆっくりと中を刺激しているから。突き上げる度に、ネスは甘い声を上げる。中は凄く熱く溶けていて、フォックスの自身も硬く熱く興奮している。快楽に体がガクガク揺れるが、ネスの体はフォックスの体を決して離さなかった。


「痛くないか?」


 念のために訊いてみた。切れそうな理性を必死で保ちながらであり、最後に問う。ネスは震えた声で応えた。


「へ、平気……。良いから……っ」


 ネスは弱々しい笑顔を見せると、そっと触れるだけのキスをした。それが、フォックスの中の何かを切る合図となった。
 フォックスのがネスの中で膨張し、ネスの先端からも白い蜜が溢れる。


「ネス……」

「……フ、フォック……ス……ッ」


 ネスは名前で呼んだ。それは初対面以来で、今迄ずっと『狐のお兄ちゃん』と呼んでいた彼が、この時に名前を呼んでいた。荒れる息の中、二人は互いの名前を呼び合い、動きも一層激しくなる。
 そして──、二人は絶頂の声を上げたのだ。
 夜は気温が低いのだが、二人はびっしょりと汗をかいていた。
 肩で酷く息をしながら、フォックスは彼から出た。ネスは彼のを全て呑み込んでいた。それが想いならば、全て受け入れたい。自分の中へ残された、彼からの刻印に嬉しくなる。


「ネス」


 ネスの濡れた黒い髪を掻き上げ、目を見つめる。ネスは力尽きて浅い呼吸を繰り返しながら、何とか焦点を合わせた。


『狐のお兄ちゃん、だーい好き!』


「……俺も、大好きだよ」


 そう囁くと、ネスは嬉しそうに微笑み、そのまま眠りについた。


「見張りは俺がやっておくから」


 気持ち良さそうに眠るネスの額に、そっとキスをした。


    ‥


 数日後の朝──。


「フォックスー! 大変だよー!」


 バルコニーで景色を眺めていたフォックスだが、突然後ろの扉がバンッと開いた音に驚く。ナナが現れたのだ。長い距離を走って来たらしく、ぜえぜえ息をしていて、沢山の汗を掻いていた。


「ナナ? どうした」

「ネ、ネスちゃんが……」

「……ネスが、どうかした?」


 フォックスは、嫌な予感を覚えた。ナナの青ざめた表情からして、良い知らせでは無いのは少なくとも分かるのだ。
 ナナは溢れかけた涙を拭いながら叫んだ。


「王様に呼ばれて、……追放処分にされそうなの!」

「何だって!?」


 フォックスはそれを聞いて直ぐにバルコニーを後にし、王の間へ一目散に向かった。
 突然足を動かした為に呼吸が上手くついて行けず、肺が今にもパンクしそうだが、気にも留めなかった。今は、ネスを救いたい気持ちでいっぱいだった。


「ネス……!」



 王の間にて、スマッシュ戦士達はスマッシュ王の前で頭を下げていた。
 そして、戦士達に囲まれ、王の目の前にて呆然と立ち尽くしているネス。王の命令に、今にも心臓が止まりそうであった。


「ど、どうしてです、こ、国王様……」


 只しどろもどろな状態だった。いきなりの言葉に顔を青ざめるばかりで、酷い動揺を隠せなかった。
 だが、王は無表情のまま、ネスを指した。


「数々の過ちを犯してしまっては、戦士である資格はもう失っている。例え子供であろうと、危険人物だと見れば皆同じなのだ」

「そんな……!」

「王様」


 マリオは頭を上げると抗議に出ようと立ち上がりかけたが、大臣に制されてしまう。


「許可も無く抗議する事を禁ずるぞ、隊長殿」


 マリオは、グッと唇を噛み締め、再び頭を下げた。隣にいるピットは、悲しそうな目でリーダーをチラッと見た。
 さて、と王はネスを見下ろし、声を上げる。


「これより、スマッシュ戦士ネスを異次元へ永久追放に処す……」

「待って下さい!!」


 広い王の間の奥の扉が勢い良く開かれた。
 遅れて来たフォックスに、スマッシュ戦士と王はフォックスの突然の登場に驚いていた。


(サブリーダー!)

(フォックス!)


 ピットとマリオは同時に心で叫んだ。


「き、狐のお兄ちゃん……」


 恐怖にだからか、体を震わせながらネスも彼に見開いた。


「フォックス殿か。何の用かな?」


 スマッシュ王は口の片方を少しだけ上げ、彼をねめつけた。
 暫くフォックスの荒い息だけが、間の部屋に響き渡る。
 漸くゆっくりと前方へ向かって歩む足音。それは、確実にネスの所へ近付いている。そして、険しい顔を乗せてネスの前へ立ちはだかったのだ。


「ん?」


 王は眉間に皺を寄せた。それに構わず、フォックスはネスを守ろうと両腕を広げてみせる。


「ネスが追放される位なら、俺も一緒に罰を受けます」

「お兄ちゃん!?」


 ネスだけでは無く、ピットとマリオを除いて、王の間にいる者全てがどよめいた。残りの二人は密かに微笑していた。
 フォックスは周りを気にせず続けた。


「ネスが多くの過ちを犯したのは、俺にも責任があります。いつも側にいてあげてたのに、彼が罪を背負ってしまい、その行為を許してしまった、或いは見逃してしまった俺も、処分に値するのでは無いでしょうか?」

「しかしだな……」

「僕も、一緒に追放して下さい」


 王が抗議しかけた時、マリオがそれを遮っては立ち上がった。大臣の言葉なんか無視して、マリオもフォックスの隣に立った。


「戦士のミスは、リーダーである僕のミスでもあります。僕も一緒に追い出して下さい」

「僕もです! 一緒に追放して下さい!」


 続いてピットも立ち上がり、フォックス達の側まで歩み寄った。


「僕も一緒に!」

「私も!」

「お願いします、王様!」

「俺様もついて行くぜ」


 それに続いて戦士達が次々と立ち上がり、遂に全員がネス達の前に立ったのだ。後に来たナナも状況を見て把握し、直にネスの前まで来た。目を丸くするばかりの王と大臣。後ろにいるネスは、嬉しさに涙を零さずにはいられなかった。
 王達は顔を見合わせると、フッと笑みを零した。


「素晴らしい防衛隊だ」

「……へ?」


 戦士達は、今の発言に閉じられない口を開いていた。
 大臣は事情を説明しようと前に出た。


「最近、君達のチームワークがバラバラになっていてな、このままではギガの戦力に敵わないと思って、我々が勝手に試させて貰った」

「えぇ!?」


 呆れて良いのか、ショックを受けて良いのか、全員脱力していた。


「しかしな、我々が見たいのは君達の戦力だけでは無い。君達の絆も見させて貰った」

「絆……ですか?」


 マリオがそう訊くと、大臣は笑顔で頷いた。


「王様は君達を選んで正解だと思われている事だろう。私もそう思っている。君達の絆の深さは、この国の誇りでもあるのだ。我々は君達に感謝している。これからも、その絆を忘れぬ様にな」

「……は、はいっ!」


 マリオ達は、笑顔で頷いた王の前で再び跪いた。


「チームワークは絆でもある……か」


 ピットはボソッと呟いた。


「でも、ネスが今喜んでいるのは、嘘の命令だったからじゃないと思うね」


 マリオは微笑してピットに話し掛けた。


「……狐のお兄ちゃん」

「ん、何だ?」


 2人は跪きながら話を交わす。
 ネスはいきなりフォックスの膝を叩いた。フォックスはいてっと静かに呻いた。


「僕が多くの過ちを犯したって、どー言う意味?」


 静かな声で膨れっ面を見せるネスを見て、フォックスは吹き出し、ごめんごめんと謝った。
 そして、未だ怒った顔をするネスの耳元で、そっと囁いた。


「だけど、一緒に追放される覚悟は、本当に決めてたよ。皆もきっとそうだ」

「……うん、分かってる」


 また嬉しさからか、もしくはフォックスだからか、頬を赤らめ、涙を一粒零した。
 そして、密かにだが、いつもの言葉を述べたのであった。


「狐のお兄ちゃん、大好きだよ」


 心から、大好きだからね──。








 ──終──










 【後書き】


 あはは……。やっちまいました……(何をだよ)。
 取り合えず前作のワリマリも含めて、めっさ頭を下げたいと思います。……ご免なさい(汗)!!

 最近、フォクネスに嵌り出してしまいまして、つい書いてしまった代物です。……ハイ、石を投げられる覚悟は出来てますとも。だってこのお話、どう読んでもショt(強制止)。
 え? 何でピット君の出演率が最近多いかって? それはもう、キャラクターとして宜しいかと(意味不明)。まあ、彼も活躍したいと云ってましたので(言った覚え無いって!!by.ピット)。

 兎に角すみませんっ。
 また書く事になっても笑って許して下さい……(反省の色無いし)!